手放す経営ラボでは、経営者を対象に毎月第3木曜日「手放す経営アカデミア実践勉強会」を開催しています。
※アカデミアに関する詳しい内容はこちらから♪
今回は、全国から40名近くの経営者の方にご参加いただきました。
ゲストは「ティール組織」の第一人者である嘉村賢州さん。
「ぶっちゃけどうなの?進化型組織」をテーマにトークセッションが繰り広げられました。
内容の一部を抜粋してお届けします!
乾:ティールという言葉の扱い方、難しいですね。ティールの書籍でも、「進化型組織」の漢字の上にティールというルビが打たれたり。
賢州さんの中で、進化型組織とティール組織の定義はあるんでしょうか?
嘉村: 本当に本当に難しいです。
「ティール組織」著者のフレデリックは、世界中の、メンバーが輝いていて、お客さんも喜んでいて、経済も回っているようなユニークな組織をいくつか見つけて、これらの組織の共通項を見出しました。
それに対しインテグラル理論のセオリーを活用しながら、その段階をティール組織と言いました、ということなんです。
僕は、「最先端の理想的な組織はこうだ」というフレデリックの言う「ティール組織」を捉えているので、「ティール組織」を使う時は、フレデリックが抽出した共通項的なもので語りたいという想いがあります。
「進化型組織」の場合は、アジャイル組織やセムラーのセムコ社のやり方とか、いろんな自律分散的なものを含んで、広く言える気がします。
乾: なるほど。
今ここに自然経営の武井さんと手放す経営の坂東さん。「進化型組織」を語っている方々が集まっているので、三人の考え方の整理ができないかな?と思っています。
坂東さんがこんな図を作ってみました。
坂東:私はこのように整理したんですが・・・
自然経営、ティール組織、手放す経営。これら3つは進化型組織としてのそれぞれのあり方だ、という捉え方です。
3つそれぞれのありたい姿に、定義や特徴があるんですが、私はかなり重なりが大きいと思っています。
お互い全く別なものでもないですし、お互いどっちが正しいとか正しくないではない。
この重なる部分を一言で言うと「人が人らしく働ける組織」を思考しているのではないか?と考えています。
手放す経営としては、「人が人らしく働ける組織」のことを「ごきげんな組織」と名付けました。
ごきげんな人と組織が増えると良いよね、といことを、現在手放す経営ラボラトリーの「WHY」である存在目的に置いています。
ありたい姿があって、それをどう実現するのかっていう時にDXOは「やり方」だと整理しています。
このやり方これも一つじゃないです。
ホラクラシー も含めていろんなやり方がある。DXOはその中の一つ。
進化型組織のありたい姿にアップデートする為のプログラムとして、手放す経営ラボラトリーで開発しました。
これは自然経営やティール組織にも一部当てはまると思っています。ということで、こんな整理をしてみました。フィードバックをもらいたいんでが、武井さんどうですか?
武井: 僕は自然経営として・・・ということなんですが、DXOも僕が結構作ってますから笑。
もともとホラクラシーというやり方があったじゃないですか。
ティール・ホラクラシー・自然経営を便宜的に整備するとどうなるのか?どれがいいんですか?と聞かれたりするのに困っていました。
そういうことじゃないんだよな、とモヤモヤと思っている時に・・・
ティール組織には「全体性」・「自主経営」・「進化する目的」という三つの特徴を示した。
ホラクラシーにはホラクラシー憲法に基づいたロールマネジメント・ジョブディスクリプションマネジメントのようなかなり厳格なやり方を示した。
自然経営が「透明性」・「流動性」・「開放性」が増したら、なるようになるさ、というあり方を示しています。
だから、全部同じと言えば同じ。
自然経営的なことを突き詰めると、ホラクラシーとかDXOみたいなやり方にかなり近しくなるし、結果としてティール組織のような特徴が出てくる。
でもそれは国民性や業種業態、規模、ジェネレーション、ジェンダー、いろんなものによって最適な着地点が変わる。
変わってしかるべきじゃないですか。生物の進化と一緒で。
だから在り方、やり方、結果と分けて語ると、比較的整理しやすくて、どれがいいんですか?という質問が来なくなるからいいな、と思っています。
乾:どれがいいんですか?という質問は、全部やり方みたいな捉え方をしているからそういうことになるんでしょうね。
武井: 個人的には、とにかくあるがままでいたいという欲求がすごく強い。透明性・流動性・開放性を高めたい。経営だけじゃなくて、そんな生き方をしていれば、なるようになるんですよっていう話。
乾:賢州さんはこの図を見ていただいた感想はいかがですか?
嘉村:これティールをどう捉えるか、なんですよね〜。
発達理論的な視点で言うと、オレンジ組織は、マネジメントの時代で、能力主義で、評価制度があって・・・という組織。
グリーン組織は、より多様な価値観や人間性やカルチャーを大事にしている状態。
ティール組織に進化した生命体的な自律分散型で流動的な組織ということで言うなら、「ティール組織」も広範なものを指すと言えると思います。
ただ、フレデリックがすごく大事にしてる部分は、けっこう狭いんですよ。
例えば、フレデリックに相談にくる大半の組織は、まだその時期じゃないと断られる。
それぐらい狭いものなんです。
それが何か?一つは存在目的です。
組織活動を通じて、何をこの世に表現したいのか?に誇りを持って、情熱的に取り組める。
これを世の中に出したいんだというものがあるかどうかということ。
それに対して働いてるみなさんがそのことに関われているのが人生の喜びですっていう状態になっている。
そんな存在目的があるのかっていうところなんですね。
よくあるのが、「会社のこと紹介してください」と質問した時に、ティール的なしくみばかり説明される方がいるんですけど、それはフレデリックの言うティールには入らないんですよ。
というのも、書籍に掲載されている海外の事例の人たちは、ことごとくティール組織って自分の組織の事を言わない。
これやるとお客さんやこの地域が素晴らしくなりますよねって。
これが私の目指したい世界なんですっていうのが、まずある。
そこが第一なんです。
業種・業務・業界じゃない。
親から継いだからやらざるを得なくてやってるんです、とか。
他の会社の保険とうちの保険、比べてもそんなに差はないんだけど、まあ今のビジネス環境の中ではなんともならないから・・・とか。
そういうことではなくて、根本的な部分に内省してチャレンジできてるか?ということ。
そんな存在目的に共鳴する仲間が集まってきたときに、その仲間を同じ人間なのに、例えば採用でふるいにかけたり、ビジョンを浸透させるとか、浸透ってそもそも上から目線だったり。
同じ思いに共感する仲間を、人間性をもって関わっていきたいねということ。
今のいわゆる軍隊式のような、人はサボるし、怠けるもの、機械の部品のように管理コントロールするものだという前提で発展してきた組織論を忘れて、同じ人間を人間として大切にすることに生命体的なヒントがあると思うんです。
存在目的とか自分のビジネスに誇りが無かったら、何が起こるか?
例えば、結果出したらお金もらえるけど、結果出さなかったらお金もらえなくて当然だよねという、どうなろうとも経営者は安泰という仕組みを設定して、どんなビジネスでも自律分散的に回りますという仕組みを作ろうと思えば作れる。
ただ、それはフレデリックの言うティール組織ではないですね。
「存在目的」と「人を人として人間性を持って関わっていきたいという願い」を同時に持っている組織に、キュッと絞られる。
その実現方法としては、ホラクラシーとかいろんな方法がある中で、DXOさんが構築されているのはホラクラシーに割と近い型の方法論で構築されたなと、私は見立てています。
乾:なるほど
嘉村:ホラクラシーよりDXOさんの方が柔軟性は高い感じがしますけど。
乾:ありがとうございます。坂東さんフィードバックを頂きましたけど。
坂東:ありがとうございます。
人が人らしく働ける、人を人として扱う、そういったあり方を目指すいうところは重なっている。
さらに中でも、存在価値が大事だということですね。
それが本当に世の中に、社会のために役立っているのか?というところをかなりストイックに考えることがポイントですね。
武井: 僕はフレデリックさんが今環境問題に意識が向かれてるってすげーわかるなって、個人的にはすごいシンパシー感じてて。
というのも組織論で語るとやっぱり組織の中からの目線で、どうやって仲良くするかという内側にフォーカスちがち。
どうしても人にフォーカスが寄ってくんですけど、人間が人間として生きるためには、生物って生態系の中じゃないと生きられないわけで、自分の外との調和っていうことが大事になってくる。
そこで、やっぱり資本主義とかって収奪的だとか言われますけど、自然からどれだけ資源を奪うか、他人から奪うか、ほかの国から奪うかという、やっぱりその力学のなかで、自分達だけ幸せにしようという文脈で語ってたとしたら、ご機嫌な組織を作るっていう言葉が誤って解釈されることはありうると思っています。
組織をアメーバ経営やティール組織っぽく作り上げている経営者と話した時に、「あ、この人とはすごい馬が合うな」と共感する人と、「なんか違うな」という人がいます。
別にいい悪いじゃなくて僕の感覚なんですけどね。
ただ、僕なりに解釈すると、どこかでお金儲けのツールとして捉えているのか、それとも本当に世界を社会をよくするためにサービスを作ろうとしているのかという、サービスに対するとらえ方の違い。
そうすると環境を破壊して高収益を上げている企業はやっぱダメなんですよね。ラルーさんなんかは大企業との付き合いが多かったから、そういうジレンマって多かったと思うんですよ。
僕は大企業と接点は彼ほどないんで、実態とか内側は分かんないですけど、例えば、化石燃料を掘りまくっている企業から売上二倍にしたいんですって言われたら、今までだったらじゃあ二倍掘りましょうってなるけど、もう掘るのやめましょうしか言えないじゃないですか。
原発作るとかもそうですけど、その辺やっぱり組織の一個上のレイヤーから組織を見ないと、会話が噛み合わないのを感じますね。
嘉村:そう。そこがなくて一番よくないのは、世の中のティール組織傾向の方で存在目的が抜け落ちて広がっていたりする時に、ティール組織ブランディングをして採用すると、自由に意思決定できる組織なんだね、ルールが少ない組織なんだねっというところで入社してしまう。
やっぱり何でこの組織があるのか?がなく採用してしまうと、組織としての社会貢献を表現する時に一致団結できないんですよ。
そもそも、この組織はこれを表現したい!という思いを共有している人に関しては、管理統制や指示命令がなくても自己組織化で生み出しちゃいますよねっという感じですね。
乾:存在目的が抜け落ちているかどうかってすごく大きなポイントなんですね。
嘉村:かなり重要だと思います。