進化型組織の研究として創業当時からティール組織経営をされているBONDZSALONの共同代表 鈴木太一さんにお話を伺い、仕組みの観点と経営者の物語として記事にしてきました。
今回は、BONDZSALON代表の鈴木太一さんから伺った話を、組織デザインプログラムであるDXO(ディクソー)の観点から改めて考察していきたいと思います。
目次
- 1.DXOとは?
- 2.UNIT01言葉 l 創業のの想いが詰め込まれた「美容師の理想郷」
- 3.UNIT02形 l 店舗運営の全てが書き出された「役割分担表」
- 4.UNIT03数字 l 前期の実績がない中で組み立てられた「プロフィットファースト」
- 5.UNIT04場 l じ自由に参加できる雑談の「場」づくり
- 6.UNIT05流れ|美容師のクリエイティビティを発揮させる「助言プロセス」
DXOとは?
手放す経営ラボラトリーでは、最先端の組織や経営スタイルについて誰よりも研究を重ねてきました。膨大なリサーチをもとに、独自に開発した組織デザインプログラムが「DXO(ディクソー)」です。
DXOは13回のワークショップを通して、企業に進化型組織の構造をデザインすることができる設計になっています。
プログラムは大きく6つのUNITに分かれて構成されています。
今回はメインとなる5つのUNITごとにBONDZSALONのティール組織を考察していきます。
UNIT01言葉|創業の想いが詰め込まれた「美容師の理想郷」
【DXOメモ】
人と人がコミュニケーションをとるには言語や状況などの前提条件が共有されていないと意思疎通が上手くいきません。そのために「文脈」「背景」「脈絡」のようなコンテクストを整えることが必要になってきます。DXOではコンテクストを整えるためにトップダウンで言葉を作るのではなく、組織のメンバーそれぞれが大切にしたい価値観から「言葉」をつむぎ出していくのが特徴です。
通常、DXOを導入する企業は、既存の組織があった上で進化型組織を目指したいという場合がほとんどです。
そのため、改めてメンバーと一緒に言葉を作り出していく過程が必要です。
しかし、BONDZSALONは創業当時からティール組織を作り上げているため、「改めて言葉をつむぐ」というプロセスがありませんでした。
最初にオーナーである鈴木さんと髙木さんを中心に、組織が向かうべき指針やサロンの存在意義として「言葉」を作り、それを発信しながら、その言葉に共感するメンバーを増やしているという特徴があります。
DXOでは、「ビジョン」「ミッション」ではなく、言葉の定義がブレないようにWhy・What・Howの3つの問いを用意しています。
これにBONDZSALONが大切にしている言葉を当てはめると以下のようなイメージになります。
BONDZSALONの「言葉」
なぜ私たちの組織は社会に存在しているのでしょうか?
→美容師の理想郷
なぜ私たちが会社や顧客に届けている具体的な価値は何でしょうか?
→全ての美容師が輝けるサロン
その価値を私たちはどのような姿勢や想いで届けるのでしょうか?
→隣の人が幸せになれる選択をする
UNIT02形|店舗運営の全てが書き出された「役割分担表」
【DXOメモ】
進化型組織は「言葉」で明確にした存在目的を果たすために必要な業務を洗い出し、「作る」「売る」「回す」「支える」「経営」の5つの役割に分けて行きます。各々は自分の得意なことや好きなこと、など全体のバランスを考えながら最適な役割をになっていくことができます。職能(役職)に人を紐付けるのではなく、人が役割を選択するという部分が特徴です。
BONDZSALONの業務形態が「美容サロン」であることを考えると、新規・リピーターのお客様に来ていただいて、店舗がしっかり運営できれば事業継続ができます。
そういった集客も含めた店舗運営に必要な業務を一覧にしたものが「役割分担表」です。
所属する美容師は、役割分担表の中から自分が担いたい業務を選んでいます。
また、BONDZSALONのユニークな点としては、担った役割の「負担度」を主観で点数化していることです。
同じ役割だったとしても人によってどのくらい負担に感じるのか?は違います。その違いを他者が評価するのではなく、あくまで主観で1〜3点で点数をつけます。その点数の合計が分配金に反映される仕組みを持っています。
分配金についてはこちら:https://tebanasu-lab.com/pickup/16473/
UNIT03数字|前期の実績がない中で組み立てられた「プロフィットファースト」
【DXOメモ】
組織には様々な「数字」がありますが、全て「目的」に対して機能しているかどうかの判断に繋がる「数字」でなければ意味がありません。また、「数字」は組織全体で共有できることが重要です。特に組織全体の経営に関する「数字」の<財務情報>に関しては、そのままでは一部の知識のある人しか意味を理解することができないので、分かりやすく<管理会計>に加工することが必要になってきます。DXOでは現場が主体的に動きやすい仕組みとして「プロフィットファースト」を推奨しています。
BONDZSALONにおいても、DXOで推奨しているHOLIS式プロフィットファーストを導入しています。
通常の会計では、売上からかかった経費を引いて残った金額が利益となりますが、プロフィットファーストは名前の通り、先に利益を確定してしまいます。売上から確定させた利益を引いて残った金額が、経費として使える金額の範囲という考え方です。
▼プロフィットファーストの詳しいやり方についてはこちら▼
いくら利益を先に確定させると言っても、無謀な数字を設定しては経営が破綻してしまいます。
通常であれば前期の実績を参考に売上に対して先に確定させる利益の割合を算出するのですが、創業当時からプロフィットファーストを導入したBONDZSALONには、前期の実績がありませんでした。
ではどうしたのかというと、代表の鈴木さん曰く「何となくこれくらいだろう、、、という勘です!!」とのこと。
ただし、最初に決めた割合をずっと使用するのではなく、全体の数字を見ながら3カ月に1度、割合の見直しは丁寧に行っていたそうです。
前期の実績がない中でプロフィットファーストが機能した要因はビジネスモデルにもあると考えています。
美容サロンのビジネスモデルはシンプルで「客数×単価」で全体の売上が決まります。単価アップのコーチングなども実施しているBONDZSALONでは、「こうすれば売上があがる」という明確なビジネスモデルがあります。
だからこそ、前期の実績がなくてもある程度利益の割合などを決められたのではないでしょうか。
逆に、売上をしっかり立てるビジネスモデルが確立していない場合は、投資先行(赤字)になり、プロフィットファーストの導入は難しいかもしれません。
※既存事業で収益を上げる事業があり、追加で新規事業を立ち上げる場合はプロフィットファーストの導入は可能です。
UNIT04場|自由に参加できる雑談の「場」づくり
【DXOメモ】
「目的」に少しでも近づくように各自が活動を行っていきますが、ミーティングでこれからどのような活動をしていくことが効果的か仮説をたて、実際に行動してみて検証する。この定期的に検証する頻度や内容をあらかじめ設定することを会議体の設計と呼んでいます。会議体の設計は、フォーマルな業務上のコミュニケーションだけでなく、アンフォーマルな雑談の「場」作りも重要視しています。
BONDZSALONでは、月に1回飲み会の場を設けることで業務に関係のない雑談の「場」を作っています。参加は自由です。
それ以外の業務に関する連絡や情報共有は全てSlackで行っています。
現在は登録美容師が15名ですが、これからメンバーも増えてくるので関係性作りの場をもう少し手厚くしたいとおっしゃっていました。
UNIT05流れ|美容師のクリエイティビティを発揮させる「助言プロセス」
【DXOメモ】
進化型組織の意志決定の仕組みは「助言プロセス」と呼ばれています。様々な意見を持った個人が集まって集団となっている組織において、集団としての意志決定をどのように行うか、その仕組み(ガイドライン)は組織の性質を決める最大のポイントとなります。「助言プロセス」は個人の意志が尊重され、人が意志を持って主体的に動くことが可能になります。
BONDZSALONにおいても、意志決定の仕組みである「助言プロセス」を採用しています。
BONDZSALONでは、美容師が自分の使いたいカラー剤・薬剤などを使うことができます。しかし、その選択はUNIT01「言葉」の部分にもあったように「隣の人が幸せになる」ものでなければいけません。自分の利益にしかならないことはできないようにしたい。そのためにも助言プロセスは必要だそうです。
助言プロセスは全てSlack上で行われ、意志を持った人が関係者の意見を聴いた上で意志決定する仕組みです。Slackに最初の意志を上げてから、関係者の意見を聴く期間は2日間と決められています。
例えば、新しく使いたいカラー剤があった場合、そのカラー剤を導入したい理由やかかる金額などを記載してSlackに投稿します。そうすると賛成意見や反対意見、懸念点などが関係者から意見として集まってきます。その意見を踏まえて、最終的にカラー剤を購入するかどうかを起案者本人が意志決定するというものです。
例えみんなから集まった意見が全員反対だったとしても、その反対意見があることを知った上で、起案者の意志によって実行することも可能になるのが助言プロセスです。
助言プロセスを取り入れることでBONDZSALONでは、
・やりたい美容ができない
・好きなプロダクトが取れない
・決定権が持てない(自分の決めたことが通らない)
・経費を思うように使えない
・マーケティングをやりたいようにできない
という美容師の働きにくさに繋がる要因を排除し、自分の責任で全てやりたいようにできる環境を作っています。
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ここまで、DXOの5つのUNITに照らし合わせてBONDZSALONの仕組みを改めて考察して来ました。
いかがだったでしょうか?
個人がごきげんに働きながら、組織もごきげんになっていく、、、そんなDXOの輪郭が少し見えてきたでしょうか。
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