2021年進化型組織の作り方セミナー DXOテキスト Q&Aシリーズ
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目次
Q3. 「意思」か「意見」か?これを分けるだけでスピードが上がる理由とは?
Q1:進化型組織における意思決定の仕組みを教えてください
武井:まず前提として、物事の決め方、進め方に絶対的なものはなく、その時々で適したものをやればいいんです。
その上で・・・進化型OSでは「意志がある人が決められる」これが意今までの組織にはない新しい仕組みなんです。
ただし、何でもかんでも助言プロセス(アドバイスプロセス)で決めなきゃいけないわけじゃないことを認識して欲しいです。基本的に物事はコミュニケーションや対話の中で進んで行くので誰が何を決めたという静的な切り取りはできません。
誰が決めたっていうのはなく、みんなで決めたってことになります。文脈を共有しているから。
決まったというより流れの中で生まれてたってことになります。
Q2:主体性が生まれるしくみとは?
武井:コンテクストは、人が物事にどう意味づけしているのか?ということです。そしてその意味は時間軸の中にしか存在しません。
つまり、当事者意識はプロセスに主体として関わることで自然と育まれるんですよ。
例えば、トップが「現場の奴主体性ないんだよな」って言ってたらプロセスに主体として関わる仕組みがないだけ。能力の話ではないんです。この物事の決まるプロセスがオープンになっていると、自然と関与したい人が自分で決められるようになります。
Q3:「意思」か「意見」か?これを分けるだけでスピードが上がる理由とは?
武井:「意思」と「意見」という言葉を使い分けることによって起きている出来事を解像度高く扱えるようになります。
「ティール組織」でいうグリーン組織にありがちなこととして、「グリーンの罠」と呼ばれるものがあるんですけど、1人1人の意見を平等に大切にしようとした時に、違う意見が出ずらかったり、出たとしても、前に進めなくなるんです。
そうすると会議の時間がどんどん伸びていくんですよね。だからグリーン組織の特徴として会議時間が長いというのがあります。
これは良い悪いの話ではなくて、会社がそういう状態だとしたら今グリーン組織っぽいんだなと客観的に認識していればいい話です。
ただ、それぞれの「意見」を大切にしながらも、その件を進める「意思」がある人がどんどん進めた方が、合理的なんです。
意思決定と言うと意志ある人がみんなの意見を聞いてから最終的に決めると捉えられ、結果その人個人が決めたこととして受け止められがちですが、違います。
みんなの意見を真摯に受け止めてまたその相手にフィードバックすることを繰り返していると下図のように、組織の中でぐるぐる回って結果的にその人1人の意思で物事が決まるというより、組織全体の意思として流れていきます。自然と組織やチーム全体の意志に育っていきます。
結果として、組織がいい状態で回っている時は、誰が意思決定したのか分からなくなるんです。
誰もが意思決定できることが本質ではなく、組織全体の想いになっていく方が重要ですし、その方が実態に近いですね。
Q4:権力とは何を目指しているのでしょうか?
武井:権力は「お金」と「情報」と「権限」を指します。それを個人に持たせるから「権力者」が生まれます。自律分散型では、お金と情報と権限を真ん中に置いておいて、使いたい人が都度使うという状態にします。
Q5:進化型組織で階層構造はタブーですか?
武井:僕自身、2014年頃はフラット型組織の方がいいんだ!とにかく階層は作らない方がいい!って言ってたんですけど、組織の人数が30人以上になってくると役割や能力の違いもあるんで、フラットにこだわるのが難しくなりました。でも、役割分担が悪いわけじゃないので、階層がない状態かどうかは重要じゃないんです。
その企業が行っているビジネスを健全に回す上で最適な役割構造は必要です。
例えば、ギグワーカーみたいに小さい仕事をいっぱいやってくれる外注さんをたくさん抱えている組織だと、それをマネジメントしたりハンドリングする本部機能が必要。これってどっちが偉い偉くないというわけではないけれど、階層構造ではあるんですよね。
階層構造は2種類あって、1つは支配するための支配型のヒエラルキー。
もう1つは、行っている物事を最も健全に回すための実現型ヒエラルキー。
実現型ヒエラルキーは健全な役割分担なんですよね。図に書くとどうしてもヒエラルキーっぽくなるんですけど。
そういった意味でも、階層構造があっていいじゃんと言えます。でも、進化型組織では、ここに開放性のデザインが実装されているかどうかがポイントです。開放性がないと、やっぱり立場の強い弱いが固定化されちゃいます。
「開放性のデザイン」とはつまり、組織の形に人が囚われないこと。
その人と組織の関わり方において心地よいポジションや役割に異動したいと思った時に可能かどうかの話。
例えば、この仕事が好きだし、もう少し報酬も欲しいから、週3じゃなくてフルタイムの正社員になりたいですって言った時に、マッチするのであればポジションチェンジができること。これがすごく重要です。これが組織の内部における開放性ですね。
だから、実現型ヒエラルキー構造に開放性の要素を加えてそれぞれの役割に対して人間が役割をまたいで動けるような状態をつくると、階層構造が良い悪いっていう話はなくなるんですよね。
だからティール組織とか、自律分散型組織は階層がないフラットな組織なんですよね?って言うのは、必ずしも正しいわけではない。
間違ってるわけでもないけれども、それはその企業が行っているビジネスモデルに準拠するっていう話です。
役割が権力と紐づくとコントロール型の支配型ヒエラルキーになっちゃうけれど、権力を開放したデザインをすると健全な実現型のヒエラルキーになれます。
組織を役職ではなく役割でデザインするのがポイントですね。