2021年進化型組織の作り方セミナー DXOテキスト Q&Aシリーズ
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目次
Q3. 管理型組織と進化型組織。理念の取り扱い方は何が違うの?
Q1:組織の「コンテクスト」が大事って、どういうこと?
武井:コンテクストは「文脈」「背景」など、共通して理解している前提条件のことです。
例えば日本はハイコンテクストな国と言われています。一方、アメリカはローコンテクスト。日本は島国で単一民族が人口のほとんどを占めているから、事細かく物事を説明しなくても「急いでやっといて」と言った時の「急いで」の解釈がそんなにズレなかったりします。
一方、アメリカは、色んな国の人たちが集まっているのでコンテクストが共有されていません。だから、コンテクストが違う人同士でも協力しあえる仕組をを作る(ルールを言語化する)ことで、法治国家として社会全体が発展していきました。だから契約社会と呼ばれていたりします。
組織の中でも、創業者や創業の頃からいるメンバーは阿吽の呼吸ができていたりします。それ自体はお互いの関係性として良いことなんですが、新しい人が入った時に、これまでの文脈や背景をキャッチアップするのって大変ですよね。
とっかかりとして、会社がこれまでのコンテクストや、大事にしてきたことを言葉化するのがファーストステップになります。
Q2:理念やビジョン、あると何が問題なの?
武井:理念やビジョンが、経営者のコントロールのためのツールになってしまいかねないケースがあることです。
最近感じるのは、本当にいい経営者や会社の理念をみると、正解を押しつけるようなものではなくて、どちらかというと「問い」なんですよね。
考えさせるための仕組みだったり、ツールとしての役割が大きいです。
Q3:管理型組織と進化型組織。理念の取り扱い方は何が違うの?
武井:良い悪いの話でないですが…。管理型組織ではトップが作った理念をメンバーに浸透させるケースが多いです。そうすると、その会社は社員が自己実現をするための組織ではなく、トップのやりたいことをみんなが手伝わされている、という構図になってしまうんですよね。
どんなに社会的に素晴らしいことを言っていても、そのトップがやりたいことをやってるだけの会社になってしまう。まぁそれが悪いわけではないんですけどね。
「この人(社長)が素晴らしいから、自分は彼を手伝いたい。」と社員が思うなら、それはそれでいいんです。
一方、進化型組織は、一人ひとりやりたいことがあって、それが重なり合っている部分が組織だ、というイメージです。その組織に集まってきた人が、「なぜこの場に関わっているのか」というそれぞれの想いを共有し合う。その想いが重なり合っているものをみんなで確認する。その“手触り感”を味わうことが大事だというスタンスです。
もし、お互いの想いがズレていたら、同じ会社にいる必要はないわけです。
だから、進化型組織においては、カッコいい理念をつくることが目的ではなくて、理念をつくるためにそれぞれのコンテクストを共有するプロセスこそが大切だと考えています。
乾 進化型組織では、そのとき集まった人によって生まれてくる言葉(理念)が変わってきます。ですから、一度つくった言葉を絶対的なものとして固定化するのではなく、言葉(理念)自体を定期的に見直しをすることが大事です。
メンバーが変われば、大切にしたいことも変わってくるはずなので、そうしたコンテクストを共有する時間を定期的にしっかり取っていきましょう。
Q4:「ことばを紡ぐ」why・what・howとは?
武井:「why」は「私たちはなぜこの事業をやっているのか」という必然性のこと。僕は「必然性」という言葉が好きです。だって、どの会社がどんな事業をやってもいいじゃないですか。本来会社ってそれくらい自由なものですよね。それなのに、ある会社は飲食店やったり、ある会社は研修会社をやってたり。なぜそれをやっているのか。しかもその地域で。それが「必然性」。その組織の存在理由が「why」なんですよね。
「what」は主語がとても大事。顧客や社会が受け取っている価値が何なのか?を定義すると、自分たちが何を届けたいかという話になる。
主語を「お客さん」とか「社会」が受け取っている「価値」と整理すると、クリアになります。
「how」は、その価値をどうやって届けるのか、伝えるのかという「スタンス」、「姿勢」ということになります。
Q5:組織のコンテクストを共有する「2循環の法則」とは?
武井:組織の人数が100人、1000人と増えていった時に、全員で話し合うのは非現実的。
それでも、できるだけ全員の想いを汲み取りたい。かといってそして汲み取った上で、一人ひとりの考えがあるよね〜と、とりまとめないことも不便です。
とりまとめて、言葉(理念)として整理していく時、「みんなでこれを生み出したね」という感覚を一人ひとりが持てるかどうかは重要。
一人ひとりの想いや感情がつながっている状態をどうやってつくるか。
DXOでは最初に、「①全体から言葉を集める」とありますが、これが重要なんです。
たとえば、経営陣がいきなり「理念を3パターン考えてきたからみんなどれがいい?投票して!」っていうと、「いきなり3つって言われても…」ということになる。
仮にその3つに落とし込むまでに、労力をかけてものすごく良い議論をしてきたとしても、やっぱり「いきなり言われても」ってなるじゃないですか。
それは、提示されたものが良いか悪いかではなくて、それが出来上がるまでのプロセスに関与してないから、自分ごとになってないってことなんですね。
当事者意識はプロセスに主体者として関与することでしか育むことができないんです。
だから、最初にみんなから声を集める。それがどんな適当なことでもしょぼいものでも、とにかく発言する、声に出す、自分の意見にすることにすごく意味があります。
それを踏まえて言葉に落とし込む。そして、「みんなの提案を踏まえてこの3つにしました」と言う。このプロセスを踏むだけで、いきなり出てきたものは全然違いますよね。例え結果が一緒だったとしても。
で、さらにみんなで投票して絞り込んだ結果、「最終的にこうしようと思います」と決定する。この全体と部分のやりとりは2回転が効果的です。
べつに何回転してもいいですし、ものによっては3回転とか時間がなければ1回転とかでもいいんです。それも会社のフェーズによりますね。目の前の売り上げの見込みがないのに何回転もしている場合ではないよね、とか。
全体を2回転させるだけで全然違うというのは確かですね。ぜひ試してみて欲しいです。