2021年進化型組織の作り方セミナー DXOテキスト Q&Aシリーズ(過去記事)
目次
Q4. せっかく情報共有しているのに、見てくれない…。そんな時は?
Q6. 「完璧な人間はいない=問題のある人間もいない」7.「組織で起こる問題は、人にはなく人と人の間にある」とは?
Q7. 「誰かが組織を整えるのではなく、全体が自然に整う」とは?
Q1:組織のアップデートを進める時に一番大切なこととは?
乾:大切なのは関係の質です。これは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の教授ダニエル・キム氏が提唱した成功循環モデル理論に則っています。
組織は、企業が成長するために結果を求めます。
メンバーとのやりとりが結果の話からスタートすると、関係性が悪くなってしまいがちです。メンバーの関係性が悪くなると思考も悪くなる。そして行動の質も悪くなる。その結果、結果が出ないというマイナスのサイクルが起こりやすい。
一方、メンバー間の人間関係をよくすることからスタートすると、思考の質が上がり、思考の質が上がると行動の質も上がる。行動の質が上がると結果がついてくる。いい結果が出てくると関係性もさらによくなる。
これが成功循環モデルと言われているものですが、面白いなと思うのはどっちのサイクルも順序が同じなんですよね。
一番最初に取り掛かるのをどこにするかで悪循環なのか、好循環なのかが変わってくる。これがこのモデルの面白いところだと思っています。
武井:シンプルだけど強力なんですよね。
物事が順調に進んでる時って数字を追いがちですよね。それでも、「調子いいね」っていうテンションでいけちゃったりする。そうすると関係性の質を気にしなくても、結果の質のマネジメントだけで、回っちゃったりするんです。
で、営業会議とかが特にこのマイナスサイクルに陥りがちなんですけど、数字の管理で現場で数字を読ませて、なんでこの数字未達なんだ?みたいなことをし始めちゃうと、急激にマイナスのサイクル入っていっちゃうんですよね。会議の空気が重かったり、出口がないなっていうときほど、この成功循環モデルを思い出して、関係性の質。つまり、1人1人が何をしたいのか?っていう対話。ここに立ち戻るのが大事ですね。
そもそも結果は、現象。色々やった後に生まれてきたものでしかない。その現象自体をコントロールするよりは、関係性にアプローチした方が良いです。
Q2:関係の質を高める方法とは?
乾:“i message”で話すことを、話し方の選択肢の1つとして持っておくと、関係の質は全然違ってきます。
会社の中って、正しいことをすべきだっていう大前提があるじゃないですか。「あなたはこうすべきだ」これを“you message”と言います。
you messageでコミュニケーションをとると、人と人の関係で話をしにくい。
私はこう思う。あなたはどう思いますか?が対話ですが、「あなたはこうすべき」という話をされると、受け入れるしかない状況に追い込まれます。
i messageでコミュニケーション取れるようになると、関係の質が高まると思いますね。
大山:「実は子育て論の中ではi messageはよく言われていることなんです。
子供に何か伝えるとき、「お母さんはこう思うよ」って言いましょうって。
子供に対してそれを貫くのって難しいなって思ってたんですよ。
だけど、メンバーに対してはけっこうできてるなって思ってたんです。
それ何でだろう?って思った時に、やっぱり私の中で、どこかで子供は自分がコントロールできちゃう対象だと思っているんですよね。なので、you messageになりがち。
子どもも一人の人間として尊重するのであれば、会社のメンバーと同様にi messageで会話ができるはずですよね。
やっぱり、根底に相手を“コントロールできる対象”だと思っているとyou messageになっちゃう。だから、言葉づかいの違いはリトマス試験紙になりますよね。
坂東:コントロールできるってことは、自分の方が正しいって思ってるってことよね、きっとね。
例えば、「私は、あなたが●●した方がいいと思う」って、これはどうですか?
武井:ははは。でも、「私はあなたがこうした方がいいと思うけど、あなたはどう思う?」って伝え方するだけで全然違いますよね。you messageだと「あなたはこうすべきだよ」ってなっちゃうんですよね。それが正解だと。
本当にi messageは超重要ですよ。俺も子育て、夫婦喧嘩の時にめっちゃ使いますね。で、嫁も最近はこなれてきて、「俺はここを片付けて欲しいんだよね」って言うと、「私はそうは思わない」って言われる。そうすると、「じゃぁとりあえず俺はそうして欲しいってことだけは伝えておくね」と。じゃあ、おしまいで喧嘩は終わるんですよ。
坂東:私は、喧嘩になる時にはyou messageの投げ合いですね…。それで喧嘩になります。
武井:you messageはコントロールで i messageは願いですよね。
Q3:人と人の間に流れる情報の取り扱いとは?
武井:情報は権力です。権力って金と情報と権限なんですよね。
権限は意思決定のOSのところですよね。誰もが意思決定できるという前提をつくると、権限が民主化する。情報も、基本的には誰もがアクセスできる状態になっていれば、情報で人をコントロールすることができなくなるんですよね。
今までのヒエラルキー組織の階層構造と、アクセスできる情報の範囲は基本的には比例するんですよね。
なぜヒエラルキー組織があったかというと、インターネットがなかった時代の情報伝達法として、情報認識の齟齬が生まれにくくする上で最適だったからなんです。
だけど、インターネット時代においては、データベースを作ってアクセス権限解放。これでおしまいなんですよね。
組織の形は、形が先にあったわけじゃない。情報の流れが先にあって、情報伝達を繰り返すうちに自然と形がヒエラルキー型におさまっていったんですよね。
だから、ティール組織は目指すものじゃなくて結果としてそうなるだけですし、別にティールが偉いわけでもない。
ティール組織を目指そうって目的になってしまっている時点で実はティール的なパラダイムではなくて「ティール組織目指すぞ!」っていうとオレンジ型(目標達成型)組織なわけですよ。
Q4:せっかく情報共有しているのに、見てくれない…。そんな時は?
武井:見てくれないのはその人が「見る必要がない」と思ってるってことなので、それはそれで健全だというのがティール組織の考え方ですよね。
つまり、情報はみんなでシェアしなければいけないっていうのはどちらかというとグリーン組織のパラダイム、同意型ですよね。
でも、本来組織に集まっているのは、能力や得意、不得意がバラバラな人たち。基本的には自分の好きな領域や得意なことをやって、その組織に貢献するのが健全な関わりですよね。
なので、重要なのはみんながその情報を知っていることよりも、知りたい時にアクセスできる状態にあるってこと。
それが権力が個人に紐づいてない証拠だったり、特定の個人が会社を私物化しようとしたり、思い通りにしようとした時に、構造的にそれができない。
ヒエラルキー組織で素晴らしい経営者は、世の中にはたくさんいますよね。
それは本当にすごいんですよ。それはそれでいいとも言える。
だけど、例えば世代交代とかで社長が変わるとか、社長の心持ちがちょっと変わって保身に走り始めるとか、そういうことももちろんあるわけで、そうした時にヒエラルキー組織だと社長の暴走を止められないんですよね。
それって会社全体やお客さん、ステークホルダーにとって、健全ではないと僕は思います。
基本的には情報をオープンにしておいた方が、そうした不測の事態にも耐えうるレジリエンス(回復力)の高い、耐久性のある組織になると思います。
乾:情報をどうオープンにするかは、自律分散型組織にとっては必須だし、DXOでも重視してます。
DXOではユニット0で、ワークショップと並行しながら、情報の流れを整えることを、並行して進めていくことができるように考えられています。
Q5:基本思想の前提とは?
坂東:進化型組織の基本思想ということで、DXO導入にあたっての最初の段階です。
ここで前提を共有したいんですが、最初からこの項目全てを理解して、共感できる経営者はまずいないです。
これから変化していきたい会社がDXOをインストールする時に、DXOのワークショップを実施しながら、一つずつ項目が理解できてくるというケースや、逆にやっている間はピンとこなかったけど、インストールし終わった後、時間が経って染み入るように理解できてきた、というケースなど、さまざまです。
理解のスピードには個人差がありますから、最初から全て合意できていなければ始められない、というわけではありません。
DXOを通じて組織の外側を整えることで、働く人が結果的に変化していく、というのが、私たちが目指すところでもあります。
ですから、最初からこれが分かってないといけないとか、理解できていないのなら、また1年後にきてくださいねってことではありません。私だってまだしっくりきてない項目がありますしね(笑)。
武井:DXOのような取り組みって、経営者の優秀さや能力よりも、考え方の方が重要だと思うんですよね。
DXOは組織のデザインで、そこに関わる人たちができるだけ居心地の良い状態でいられることを大切にしています。
Q6:「完璧な人間はいない=問題のある人間もいない」7.「組織え起こる問題は人にはなく、人と人の間にある」とは?
武井:DXOは、人間と人間の間にあるものを、いい具合にチューニングする仕組みです。
人間関係は目に見えないので、つい感情の矛先が「人」に向きがちですが、だからこそ人間関係を可視化して、共通認識を取れるような状態をつくる。
それを可視化したものが、DXOでいう「言葉」と「形」と「数字」です。
結局、会社も学校も街も国もそうですけど、実体ってないんですよね。お互いに「自分たちはこの共同体のメンバーだ」っていうメンバーシップが組織を形成しているだけなんです。
つまり組織は共同幻想なんです。それは、すべて関係性でできているんです。
ただ目に見えないと、人によって認識がズレた時に、不幸が起きる。
だから、「言葉」と「形」と「数字」を整えることが大事。
つまり相手を変えるより、認識やズレを整えましょうというのが、DXOの一貫したメッセージなんです。
Q7:「誰かが組織を整えるのではなく、全体が自然に整う。」とは?
武井:組織に正解の形はない。正解の形を作って、メンバーをその役割にはめ込んだとしてもその役割を担えなければ、形があるだけで意味がなくなってしまう。
乾:このDXOのプログラム自体がそうなんですが、メンバーで大切にしてるものを見つめていくと、勝手に組織の形が自然と浮かび上がってきます。DXO的な正解があってそこに当てはめて、そこに向かっていくことではありません。
武井:そうですね。今までの組織論では、先に売り上げ目標、営業利益目標をつくって、それに必要なお金と人員、これらをどう配置するかをマネジメントするにつきる。要は、全部逆算思考で決めていくわけですよね。
これ自体が悪いわけではないです。ですが今はVUCAの時代と言われていて、外的変化がすごく大きかったり、そもそも急成長するマーケットも少なくなってきた。こうした状況では、理想や目標を先に決める逆算思考の場合、状況が変わっても目標を変えられなかったり、成長マーケットじゃないのに無理矢理目標を追いかけなくてはならない、という状況になってしまう。目標達成スタイルは、いまの時代に合いづらいんですよね。
そこで、今、自分たちは何がしたいのか?、どうしたら楽しいのか?という点にフォーカスする。そうすると、全く予測してなかったようなことが起きたりします。それがイノベーションを生んだりするんです。
イノベーションは逆算思考では生まれないんですよね
ただし、実際に仕事していく上では逆算思考も大事です。だからハイブリッドがおすすめ。この両方のやり方を、それぞれ状況に応じて適切に使い分けられるのが重要です。
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