現在は、ティール組織、ホラクラシー、自然経営といった次世代型の経営スタイルの総称。
(※「ティール組織」の解説はこちら)
(※「ホラクラシー 」の解説はこちら)
ヒエラルキーではない組織で、社員の主体性が発揮され、組織が成長中のものを括っている。
■手放すもの
経営トップのエゴ/役職とそれに紐づく権力/管理/固定観念(こうでなければならないという過去の踏襲や習慣)
■手に入るもの
社員の自主性/権限委譲/変化に対応し進化し続けることのできる組織構造/採用力/事業の成長/利益
「手放す経営」では組織そのものの在り方を変えるという、組織課題の本質的なアプローチを行います。
手放す経営ラボラトリーは、手放す経営の導入を目指す企業のサポートを実施しています。
CASE001 企業データ
業種業態:住宅
創業:2008年
社員数:80人
本社所在地:熊本
導入の経緯「創業当時の状態を取り戻したい」
住宅事業を展開する株式会社ロジック。
8年前に設立以来、毎年150%成長と、業績は絶好調。
地域では確固たるブランドをかたちづくっている。
創業して数年間はまさにティール組織のような状態で、社員一人ひとりが主体的に意思決定をして行くことが急成長の要因だった。
人材育成や評価制度などの人事施策はもともと力を入れていた同社であるが、
組織が急拡大するなかで、この数年、組織課題が増えてきたと感じていた吉安社長。そんな時に書籍「ティール組織」と出会い、「これだ!」と導入を決断。
1年間かけて準備した上で、役職制度の廃止などティール組織化に舵を切った。
ところが導入後、なかなかスムーズにセルフマネジメント経営に移行が進まない。
社長自ら毎週「ティール勉強会」を開催するも、浸透がうまく進まない。
導入から半年経過した社長の所感
『社員の半数以上は、ティール組織になることが辛く哀しいことだと思っている気がする』
『9割は、意思決定のスピードが遅くなったと感じているのではないか』
そこで、ティールなど次世代型の組織づくりに詳しい手放す経営ラボラトリー所長の坂東に相談。
STEP1 ビジョン・目的の確認
当初の依頼:「ティール組織への理解が深まるような研修をしてもらえないか」
坂東の見解:組織改革は一朝一夕には進まないものであり、単発の研修をするだけでは不十分
社長にヒアリングをすると、
企業理念は「資産価値が落ちない、美しい建築を残していくこと」また、組織ビジョンは「誰もがストレスなく働ける組織にすること」
ということだった。
吉安社長は、以前父親の会社で10年間社長を務めていた。しかし当時は会長の権限が絶対で「雇われ社長のような状態。権限もなく、ストレスが多く、自分が会社をつくった時に、そういう思いを社員にさせたくない」この思いが組織ビジョンを掲げる原体験だったのだ。
組織づくりに対する本気度の高さを感じた坂東は、現状把握を行った上で、研修の是非も含めた施策を検討することを提案。
STEP2 現状把握と、組織課題の整理
全体会議や、勉強会を見学したり、インタビューを行うなどした結果、現状を以下のように整理。
■良い点:
◎社員のレベルが高い。
◎吉安社長が社員から慕われている
■課題:
・組織改革における社員の熱量に差
週に1度ティール組織の勉強会を社長自ら実施。参加は自由だが、共感している人とそうでない人のギャップが大きい。共感していないリーダーがいるチームはヒエラルキー構造のままで、チームがうまく機能していない
・手段の目的化
組織ビジョンの共有が道半ばの状態で「ティール組織にしなければいけない」「助言プロセスを使わねばならない」など、組織改革の手段が目的化してしまっている。
「ティール」ということばにアレルギーを感じている社員も多い。
・リーダーの不在
社長の想いを具現化、実行できるリーダー層が少なく、社長1人のマンパワーでは限界がある。
STEP3 課題解決策の策定・実行。
1プロジェクトチームの結成
組織づくりをミッションとしたプロジェクトチームを社内で結成。吉安社長と坂東も加わり、スタートした。
・チームづくりのポイント
①人事部や管理本部だけではなく部署横断でメンバーを人選。
②ティール組織にすることが目的ではなく、ロジックらしさを活かした組織デザインを研究・実行していくチーム。
第一段階テーマ
「組織づくりを実践する仲間づくり」
「“ティール組織”アレルギーの解消」
「社内コミュニケーションの場づくり」
これらをテーマに下記3つを実行。
① 会社の存在目的と組織ビジョンの共有を徹底
プロジェクトメンバーの理解度、共感度を高めることに注力
② ティール組織勉強会の中止と「ティール」をNGワードに
「ロジックらしい組織デザイン」を合言葉に。
③ 社内BARでコミュニケーションの活性化
本社地下のスペースを生かして、社内バーを開設。毎週一回、社員が自由に集まり、コミュニケーションがとれる機会を創出
STEP4 成果・今後に向けて
成果:メンバーの共感度が高まった
「より自由に、自分たちらしく判断をしながら、ストレスなく、スピード感ある成長をしたい」という共通認識が育まれる。。
第二段階テーマ
「ロジックらしさを整理」「社内行事にロジックらしさを付加」「人事施策の導入サポート」
これらをテーマに次の施策を実行中。
① 経営方針発表会、全社会議などのイベントの企画・運営サポート
② ロジックらしさ(ブランド)の見える化
③ 新しい目標管理制度、評価制度の導入支援
組織変革の効用
組織変革プロジェクトを進める中で、なかなか目に見えるカタチで成果は現れにくい。しかし確かな手応えとしては、プロジェクトメンバーの理解度・共感度が目に見えて高まったこと。いままで「ティール組織なんて・・・」とネガティブに受け止めていたメンバーも、今ではすっかり協力的になってくれている。また、採用面で嬉しい効果も生じている。組織のビジョンを明確にすることで、その価値観に共感する人が採用できるようになった。「こんな組織で働きたい。」そういう人材は話が早い。初めから共感度が高いからだ。
組織の形は、会社がこうありたいという意思表示でもある。採用力も向上し、ビジョンに共感する人が増えてきたので、今後はもっとスピードが上がってくるだろう。
まとめ
企業は存在目的の追求が第一義であり、組織づくりはそれを可能にする手段のひとつである。
つまり、組織づくりを考える上では、まず自社の存在目的を明確にすることが欠かせない。
その上で、自社らしさを生かした組織(OS)をデザインしていくという発想がポイントとなる。
注意したいのは、次世代型組織(ティール組織)にすることを目的化しないこと。
目的化すると、やらされ感が出やすくなる。それは主体的な組織をつくる上で阻害要因となる。
組織改善は一朝一夕にはできない。社長は長期的に取り組む覚悟を持って、組織づくりに共感してくれる社員を、1人づつ増やしていき、チームで取り組んでいくと、うまくいきやすい。
引続きリポートしていきます。