ティールという概念を取り入れている組織は、実際にあるのでしょうか?
今回は、新しい組織体制を取り入れている企業事例をご紹介いただきます。
(※「ティール組織」の解説はこちら)
手放す経営ラボラトリー所長の坂東孝浩です。
今回もラボを飛び出して、嘉村賢州さんとの取材の模様をお送りいたします。それではどうぞお聞きください。
嘉村さん、今回もよろしくお願いします。
同時に、ラルーさんが調べたときに、同時多発的に新しいパラダイムの組織があったというような形で、日本にもいくつか、今までとはまったく違う価値観でやった組織は実際存在しているので、ティールに近い事例みたいなものはいくつかあるのかなっていうのは私も思ってますし、それをいくつか見せていただいて、「ああ、これはティールを実現していく上で学べるな」っていう事例は結構あるなというふうには思います。
これは肌に包む衣なので、体を整える上ではすごい役に立つというか必要不可欠で、化学繊維じゃなくて本当に質のいいもので服をつくりたいと思った経営者、デザイナーさんが探し求めた結果、タイの麻と出会うんですね。タイの麻を使って服をつくろうということで始めたんですね。
そのときに、すごい「自然でありたい」ということを大事にしていて、何をしたかっていうと、タイの村に訪れて布を織る人たちを集めるんですけども、そのときに「あなたたちが美しいと思う布を、自分たちのペースでいいから縫ってください。ノルマ・納期は決めません。それをぜんぶ買い取ります。それで売っていきますから」っていうようなやり方にしたんですね。
要は、すごいサボるときもあれば、頑張るときもあって。
売り方もすごいユニークで、すごいファンが多いんですけども、展示会販売という形式で、日本各地で、ファンがたとえば、「北海道で展示会販売やりたいです」って手を上げると、京都が物流の拠点なんですけど、京都から200着送って、それで北海道の人がそれを受け取って展示会販売して、売れ残りを元に戻す、送り直すみたいなことをやっているような展示会販売方法で、なので、日本中に100か所ぐらいそういうことをやる人たちがいるような状態なので、展示会販売してる人にとっては本当はもっと安定的に供給されると嬉しい人もいるんですけども、タイの生産者に無理をさせないという思いに共感する人たちが集まってるので、それが成立しているっていうような、そんな組織です。
「今まで私が物流で200着を数えて、展示会販売へ送った。50着たとえば売れたとしたら、150着返ってくる。それを物流の人たちが数え直して終わりっていうことをやってきたんですけど、この数える行為をやめようと思うんです」と言ったんです。なぜか。結構こういうことをやると、違う数で戻ってくることが多いんですね。
そのときに何度も数え直しますよね。電話して確認したりとかします。そのときに、いろんなことが生まれると。
ひとつは、「自分が数え間違えたのかもしれない、大事なものを」っていうので何回も何回も数えますし、「展示会販売をする人が数え間違ったのかもしれない。
あるいはお客さんが盗んだのかもしれない」とか、そういうマイナスのことを結構考え始めるわけですよ。
でも、そんなこと考えたくもないので、一生懸命また数え直したりとかってするこの時間が、私たちのこの思いをもって広げてるコミュニティの健全さを阻むものかもしれないので、もし年に数点なくなるぐらいだったら、それが私たちのコミュニティを豊かにするんだったら、神にあげるぐらいの気持ちでいいんじゃないかと。
だから、数えることをやめにしたいと思いますが、どう思いますか?というのをみんなに投げかけたんですよ。
そしたら、満場一致で「いいんじゃないか」というふうになって、数を数えることがなくなったんです。マネジメントからすると大後退だと思うんですね。
展示会販売が少ないときとかっていうのがあって、そういうことがあったっていう問題が起こったときも、みんなでゆっくり話し合いながら「そのときって、じゃあ、みんな1か月休暇にすればいいんじゃないの?」と。
そうすることで、他の組織で働いてもいいし、旅に出てもいいし、そうやって経験したりとか、他の経験することがまた自分たちに多様的な価値観をあるものになるし、「じゃあ休んじゃおうか」と。「そのときの給料どうするの?」とかっていうのがあとで出てきたんですけど、「あ、それも考えなきゃね」ぐらいな感じの、「絶対もらわないと無理です!」とかではなくて、みなさんすごい自然に、どうやったら無理せず自然であれるかっていうこと、いいモノが広まるかって考えていて、権利主張する人が少ないですし、「何か問題があったら、みんなで考えて対処していけばいいんじゃないか」っていうことが自然にできているので、まさにティール的だなっていうふうに思った組織のひとつでございます。
どうやったら自然にいられるかっていうことが一番大事なんだという。
ティール組織っていうのは、本当に恐れとかエゴとかっていうものをどれだけ手放せるかが、ひとりひとりの本当のパフォーマンスというか、仕事への情熱に繋がるかっていうことで言うと、ティール以外の組織で言うと、採用部門を切り分けて、そして合理的に採用して雇うわけです。
だけど、そうすると採用された人は、1日目の職場の日に「はじめまして」で職場の人たちと話すわけですね。そうすると、そこってもう恐れの塊ですよね。「上手くいくかな」と。
で、ある組織はまったく違うやり方なんですね。それはすごい面白くて、出版社なんですけども、まず履歴書関係なくエッセイで見ると。
履歴書とかすると「学歴がこうだから」とか「こういう経験をしてるから」って頭が働くんですね。
面接はほぼ全員のスタッフが会って、ひとりでも「働きたくない」って言う人がいたら一切雇わないっていうことは徹底していて、それで決まっていくっていうことをしてるんですね。
そうすることで、雇う前から全員がちゃんと関与をしているので、その人柄も知っていて、「働きたいな」と思って雇うから、ひとりでも「これ、ちょっとちゃうんじゃないかな」と思ったら、そういう思いを持ってる人に新しい人が増えるわけなので、それはギクシャクもするかもしれないですね。
そういうことが一切生まれない採用プロセスの中でやっていっているっていうような組織ですね。雇われた人も全員社員に受け入れられてますので、たぶん安心感ありますよね、働くときに。
当然、元いる人にとっても、急に自分と合わない人が来るかもしれないってことがまったくなくて、ウェルカムすることもできて、すごいスムーズに仕事に移れるんじゃないかなっていう感じで思いました。
それが縛られる理由がわからないというか、人生で探究したいときに、2・3か月探究したいときもあれば、親が残念ながら亡くなられたときっていうのはショックを癒やすとか、そういう人たちとの思い出を味わう時間をなんで2・3日で回復するとかって、普通、人間として逆にあり得ないじゃんっていうふうに思いますので、たっぷり休んだらいいと思いますし、「休暇これ以上取得したら、お金が……」みたいなんでためらってほしくないなっていうのもありますし、そもそもそこを制限する理由がないというような思いで、「好きなようにやったらいいんじゃない?」っていうふうに思っている人なんですけど。
なので、かなりティールに近かったとは思います、元々。
そこから割と自分のエゴが増大していって、ちゃんとやりたいというようなことから、トップダウンまではいかないですけど、「それはティールにいくよね」っていう感じで、みんなにティールを読むようにも求めるようになるし、ジョージというコンサルタントを絶対に入れるっていうことも決めるようになるし。
自分としてはどんどんこのティール組織とはなんぞやっていうのを、もっとディスカッションして、もっと「こうだよね」「ああだよね」「試してみようか」ぐらいの熱が欲しいわけですよ。
自分で責任とってやるというよりも、「会議でみんながOKしたんだからやります」っていう。失敗したときも、どっかで「みんな会議でOKって言ったやん」っていうのがあると安心なわけですよ、何か行動するときに。
だから、みんな会議にかけがちですし、それは代表の僕も何か決めるときに、「会議でみんながOKだから進める」っていう、これに慣れきっているので、アドバイス・プロセスで助言だけもらったら自分で決めるっていうときも、なんかみんなの会議で「いこう」と決めたが、みんなと一緒に……
実はそれは取り入れ方が雑だったっていうことがわかるんですけど、ホラクラシーでは、そのプロセスで反対意見が出てきたときに、日本って人が新規提案するとか新しいことをやろうとすると、「ちゃんとそれが成功する理由を説明しろ」って言われるんですね。
それで説明すると、誰かが論理的に突っ込むわけですよ。「この視点が足りないんじゃないか」とか、「それはエビデンスとして弱い」とかいうような感じでいろんな突っ込みが入って、結局シュンってなってしまったりすることが多いっていうのが起こっちゃっていて、実はホラクラシーって、そうやって気軽に反対を言えるんだけども、そのあとファシリテーターがしっかりと反対意見のほうに論証責任を求めていくんです。
今「反対」っておっしゃりましたけど、それはこの提案が、たとえば「そんなことやったら組織がギクシャクするよ」とかって反対あったりしたときに、ファシリテーターが「その提案をしたときにギクシャクするのか、そもそもうちがギクシャクしてるのか、どっちですか?」って。そしたら、「べつにその提案をやるから生まれるギクシャクではない気がしました」「じゃあ、反対意見じゃないですよね」とかですね。
「それは、やってみてトラブルが起こって戻ってくるものでもOKなものなのか、やってみたら取り返しがつかないのか、どっちですか?」とか。「やってみてからも取り返しがつきそうな気がします」「じゃあ、反対意見じゃないですね」みたいな感じで、気軽に言う反対意見をどんどんパッパッパッパッパッって弾くことで、その発言者がずっと守られていて、かつ、守られてるって本当に感じると、反対意見がすごいスムーズにヒントになるんです。
今回は本当に貴重なお話、ありがとうございました。
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