進化型組織実践中の経営者の実践事例を聞く、インタビューシリーズvol.24です。
今回は、手放す経営ラボのコミュニティーメンバーでもいらっしゃいます、株式会社美永遠 代表取締役会長、手島秀和さんです。
手島さんは愛知県に、42店舗リラクゼーションサロン等を展開されています。
株式会社美永遠 代表取締役会長(通称:あの人)手島秀和
手島秀和(てしまひでかず)
株式会社美永遠 代表取締役会長(通称:あの人)
韓国生まれの美容法コルギという小顔技術と日本の整体、リラクゼーションの3つを融合させた「小顔整体コルギ」をサービスとした店舗を2014年に設立。現在、東海地方を中心に42店舗展開中。
自らをリーダーシップがないと自覚し、トップがいなくても自分で考え行動できるチームにしたいと考え、会社をティール組織的に進化させている。
代表である自身のことを、「あの人」と社員に呼んでもらうなど、あらゆるところに独自の組織文化醸成の仕組みがある。
■会社概要
株式会社 美永遠(https://k-s-labo.jp/company.html)
設立 2014年11月
従業員 50人
事業内容 エステティックサロン、リラクゼーションサロン等の店舗運営事業/整体・マッサージ業/整体、マッサージ及びエステの施術に関する人材育成のための教育及び養成
進化型組織におけるリーダーの在り方
坂東:お客さんとして来店していた方と結婚して、奥さまに「社長やって」とお願いした、とお聞きしました(笑)。その後、奥さまとは同じブランドで会社の運営は別という形態を取られていますが、奥さんと、手島さん、お互い経営スタイルが違いますよね?
手島:そうですね。夫婦の形がずっと続く保証はないので、最初から会社は別にしましたね。
坂東:面白い!でも「永遠に続く保証はないから、その前提で会社をデザインする」というのは共感ですね。
同じブランドでも、経営の仕方はまるで違うんですよね?。手島さんの会社は進化型。一方で、奥さんはカリスマ性があって、トップダウンでぐいぐいと引っ張っていくスタイル。手島さんは、会社経営でどこに注力されていますか?
株式会社 EMIASU 代表取締役 手島明日香さん
手島:入社するまでですね。僕、入社まではけっこうしゃべるんですよね。でも入社してからはピタッとしゃべりません。
坂東:(笑)。入社まではどんなことを話してますか?「こういうことを求めてるよ」とか?
手島:そう。入社までに見ていてほしい動画はこれだよとか、ビジネススキルをどう磨くか?とかを話します。そんなやりとりをしてると、社長との距離を近く感じてもらうのか、「本当に社長といつでも会えるんですね。こんなに気軽なんですね」って言われるんですけど、「まあ入社までね」という感じ。
坂東:入社したら話さないのは、なぜなんですか?
手島:入社してからもどんどんしゃべっちゃうと、僕に導かれてることになってしまいがちだなあと。
坂東:手島さんの影響力が発揮されちゃう、みたいな?
手島:そうそう。僕に褒めてほしいとか、意見も僕の言ってることに寄せてきちゃいません?
坂東:なるほどなるほど。
手島:まあ、そんな力もないんですけどね。(笑)
僕が面接をしていて入社してもらう基準は「自分より優秀な人材であること」。これ、ちなみにリクルートの社長も同じ考えですよね。僕も一緒っていうのはおこがましいんですけど・・・(笑)リーダーシップがないんですよ。僕。
坂東:江副さんもそうだっていうふうに言われてましたよね。(※書籍「起業の天才」より)
手島:「自分より優秀な人を採用する」って江副さんの考えに本当に近いです。
坂東:なるほど。うんうん。
手島:僕のいいところって、自虐ネタでもなんでもなく、能力が低いこと。
坂東:繰り返しますね(笑)
手島:学生時代、べつにヤンキーとかなんでもない普通のオタクだったのに、通知表とかほとんど2とか1ばっかりだったんですよ。
坂東:おぉ、そうだったんですね(笑)
手島:国語と社会が3ぐらいで、あと残り全部2と1っていう。しかも、べつにサボるタイプじゃないんです。意外にまじめなんですけど、基本的にできないんですね。リーダーシップがない。 やりたくないことが多すぎるし。
坂東:やりたくないことが多すぎるんですね(笑)じゃあ、逆に何に興味があるんですか?
手島:「仕事して生きる」ということに興味がありますね。だから採用の面接時にはその人の歴史を根掘り葉掘り聞いてしまいます。
坂東:では、経営者として仕事する中で、興味がないこととかやりたくないことって?
手島:いっぱいあります。まず、美容に興味がないです。
坂東:おぉ、ど真ん中きたぞ(笑)
手島:なので小顔にも、整体にも、リラクゼーションにも行かないんですよ。自分がやってる事業3つとも行くことないんですよ、僕。
坂東:それは根本的な問題ですね(笑)
手島:根本的です。でも、美容師さんとかも、美容師免許を持ってない人や、現場に出てない人が経営をやるとうまくいくっていうじゃないですか。
坂東:ほうほう!
手島:江副さんも「ビジネスはビジネスをやった人よりも素人のほうがいい」と。僕も同じ考えで。美容業界の常識を知ってしまうと、それを押し付けられるので。
坂東:たしかに。
手島:それは違うかなって。なので、僕がこのままトップダウンでやっていると絶対うまくいかない。だって、新しい美容法も新しいことも学ぼうとしない人がトップなんだから。だからスタッフが自分で考えてほしいって思ってます。
坂東:なるほど。それが自律分散型組織をつくる理由でもあったんですね。
手島:うちの組織づくりの面白い取り組みでいえば、入社したあと、僕、しゃべらないじゃないですか。なので、入社する前にYouTubeを見る癖をつけてもらっています。
中田さん、マコなりさん、サラタメさんとか、坂東さんのYouTubeも見せたことあるんですけど。そういうふうに僕以外のメンターを見つけるように勧めています。
メンター探しってあんまり癖づかないというか、メンターを社長がしちゃったり上司でする人が多いと思うんですけど、それ失敗すると思うんですよ。
メンターはYouTube上で探すのが、まあ、本で探すのもいいんですけど、本って結構読まない人も多いので。
坂東:なるほど。面白い。
手島:この文化すごいハマってて、みんな見るようになってますよね。
坂東:へぇ~。
手島:みんな、まこなりさん、サラタメさん、中田さん見てます。
坂東:ビジネス系のユーチューバー?
手島:はい。
坂東:「メンターはYouTubeで探せ」って、いいですね。
手島:そう。ほんとにいいです。あと、基本的にコミュニケーションをとらないので、相手の気持ちが理解しづらい。だから日報ではなく日記を書いてもらっています。
そして、迷ってたらアドバイスするんじゃなくて、「このYouTube見たほうがいいよ」って言ってますね。自分の言葉で言って失敗するの嫌なので、「たぶんこの人の言ってること役立つかも……」っていうふうに、その日記に対応した解決できるYouTubeメンターを紹介してます。
コロナ禍でのリーダーシップ
坂東:ところで「あの人」と呼ばれてるのは、 なんでですっけ?(笑)
手島:社長やリーダーがいない組織だっていうのを実感してもらうためです。
坂東:なるほど。
手島:本当にリーダーがいないんです。管理職も私を含めて3人だけ。そして私以外の2人は位置付けは管理職ですが、役割としてはサポーターと総務です。
坂東:サポーターの役割ってなんですか?
手島:他の仕事は一切せずに、9時から3時まではオンラインを開放していて、誰かがふらっときたらそれに対応する。スタッフが何か悩んだらそのオンラインの部屋に行くっていう仕組みです。毎日やってると、さすがにポツポツ来るようになってますね。
坂東:毎日9時〜3時で開けるって、すごいなあ。その人は、それは楽しくやってるんでしょうね。
手島:まあ、そうですね。みんなとしゃべれるし、総務が開けたりもするけど、仕事しながら誰か来たら話してます。そんなにみんな長居しないので。10分ぐらいですよ。
坂東:なるほどね。保健室みたいな感じだ。
手島:リーダーシップでいうと、コロナ禍でどうリーダーシップをどう発揮する?って話題になったじゃないですか?
坂東:なりましたね。
手島:僕、すごい困って。普通に「どうしよう」ってなりました。コロナになって店を閉める?開ける?とか。うち、回数券ビジネスなので、そのまま回数券を売り続けちゃうと、コロナで会社がつぶれて「返して」って言われたら、詐欺になっちゃうじゃないですか。
みんなも不安で、「回数券、どうしたらいいんですか?」って言われました。
で、正直に「どうしたらいいか、わかんない」って答えました(笑)
坂東:正直すぎますね(笑)
手島:「ぜんぜんわかんない。自分で決めて」って言いました。リーダーとしては最悪な回答をしたなっていう。恥ずかしい話なんだけど、自分らしいなとは振り返って思いますね。
坂東:いや、正直でいいと思いますよ。店を開けるとか閉めるも任せたんですか?
手島:「どうぞ、自分で決めてください」って。「コロナが怖ければ、お客さんには来ないでもらって大丈夫だし、自分で決めましょう」って。
もちろん「従業員がコロナになったら、その時はその対応を保健所に聞いてくれ」と。
それで人によっては「だめだなこいつ」みたいな感じにはなったと思います。
でも、それも含めて自分の弱さなので、いいですって思いました。そしてよりティール化(自律分散化)しようという気になりましたね。
坂東:無理やり答えを出すリーダーより、よっぽどいいと思いますよ。
手島:その当時「コロナ禍のリーダー論」みたいな本を読んでグサッと刺ささりました。あの頃、コロナに対して意見を言う人はすごいリーダーシップがある、大阪の吉村さんはリーダーシップがあるとか、言わない地方議員はどうだとかってなってたので、それもグサッと。
坂東:なるほど。私は、これからは正解がわからない時代だって思っています。そういう時代にどう組織づくりをしたらいいのかとか、どうリーダーシップを発揮したらいいのか。
進化型組織は、正解がわからない時代に集合知を集めるっていう経営スタイルだと考えています。
リーダーだって正解が分からなくて当然だと思うんですよね。だから、自分で考える人が増える、そしてどんどん意見が出てくる組織が、これからの組織づくりのポイントになりますよね。