6/10【手放すTALK LIVE#20】『人と組織の「痛み」は手放すな!』をテーマにトークライブを開催しました。トークライブの一コマをお届けします。
ゲスト:由佐 美加子さん
◆経歴
幼少期からヨーロッパ、アジア、米国で育ち、米国大学卒業後、国際基督教大学(ICU)修士課程を経て ㈱野村総合研究所入社。その後㈱リクルートに転職し、事業企画職を経て人事部に異動。次世代リーダーのあるべき姿を模索する中でMIT上級講師ピーター・センゲ氏が提唱する「学習する組織」と出会う。以降、ソーシャルテクノロジーと呼ばれる最先端の人と組織の覚醒と進化の手法を探求し続ける。2005年Appreciative Inquiry(AI)を生み出したデビッド・クーパライダー教授が教える米国ケースウェスタンリザーブ大学経営大学院で組織開発修士号を最高成績で修了。出産を経て2006年よりグローバル企業の人事部マネジャーとして人材・組織開発、新卒採用・育成を担う。2011年に独立、3年後に合同会社CCCを設立。いい・悪い、正しい・間違っているという二元的な世界観に立脚した生き方ではなく、すべてが”ただある”という内なる世界の受容と自己愛を源とした「全体性」から生きるための智慧や手法を生み出し、統合して個人や組織の覚醒と進化を様々な形で支援している。
◆著書
「ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー」
「無意識がわかれば人生が変わる – 「現実」は4つのメンタルモデルからつくり出される -」
※参考
メンタルモデルとは「外側で起きていること、体験していることのすべては、その人の内側にある内的世界から創り出されている」という仮説に基づく。
私たちは、各自のメンタルモデルに向き合うことで変容を果たし、不本意な現実に振り回される人生から決別し、本来創りたい世界の実現に向けて邁進することができる。
乾:今日は「痛み」がテーマなんですが、由佐さんがおっしゃっている「痛み」とはどういうことか、またメンタルモデルって何なのかということも踏まえてお話聞かせていただけたら思います。
メンタルモデルはこうして生まれた
由佐:メンタルモデルは心理学用語で、元々その人が内側に持っている観念とか思い込みとかビリーフとかって言われているようなものです。
元々私は人事の仕事が長いんです。人事の仕事って1日中、相談に来る人達の対応をしているみたいなことになるわけですよ。
それで、私のスケジュールは常にパブリックに開かれていて、そこに社員の面談がずっと入ってるみたいな感じになるんですよね。
それで、相談者の話をずっと聞いているとだいたい、部下の問題、上司との関係性の問題、チームの問題、家族の問題、子供の問題…。
要は悩みとして抱えているものを聞くわけなんですけど、どんなにそれを改善しようと努力しても、どうにもならない現実がある。それが「悩み」。
みんな悩んだ挙句相談しにやってくるんですけど。
まずは、表面的にできる行動やハウツーのレベルをいろいろ変えてみることをする。
例えばパフォーマンスが出なかったら飲みに連れてってみる、アサインメントを変えてみる、コミュニケーション方法を変えてみる、聞き方を変えてみる…そうやって、いろいろ努力するんだけど、一向にパフォーマンスが変わりません。こんなことっばっかなんですよ。
そのtodoが封じられた時に為す術がないって気付く。
私としては、悩みを聞くことで相談者のガス抜きはできるんですね。
それはそうだよねって、うんうんって聞くところまではできるんですけど、これが毎日5時間とか6時間とかってなってくると、もうヘロヘロになってくる。聞いているのも大変。
もともと私自身のメンタルモデル的な痛みは、無力だっていうのが自分の内側ですごい痛みなんですよ。だから人が本当に苦しんでたり悩んでたりすることに対して、自分がただガス抜きで聞いてるだけってのは私にとっては苦行なんですよね。
これはもう苦行すぎると、ある時ふと思って、課題解決できるソリューションはもう何もないし、アドバイスも全部やってるから、もうしてあげることもないなって思っていました。
そんな時に、U理論と出会いました。その人の内側にある構造が、その現実を引き起こしているんだって。現実はその人の内側の状態に依存しているってことが書いてありました。
なるほど、じゃ内側になんかあるってこと言ってんだよね?と。
でも抽象概念が高すぎて全然わからない。それどこ見ろって?内側ってどこ?みたいな。
来る日も来る日も目の前の相談者と向き合いながら、とにかく外側で何が起きたのか、その行動はどういうところからやってきたのかということを構造的に整理し始めました。
自分なりに調査して、どんな気持ちなの?とか、どうしてそれをやってるの?っていうのを対話し始めたのがメンタルモデルの始まりなんですよね。
痛みとは「○○がない」!?
毎日5、6人と面談をやるから何年か経つとすごい数になるじゃないですか。
で、こういう構造になってるんだっていうことが、ある日全部カチャカチャってはまって構造が見えるわけですよ。
すると、その人の信念、その内側の1番奥のところに何かいつも「何かがない」っていう信念が来るんですよ。
認められないとか、繋がれないとか、価値がないとか、居場所がないとか、いられないとか。
必ず〇〇ないっていう文言なんです。何でいつも「ない」って世界にたどり着くんだろうって思うじゃないですか。
みんな同じだから。話を聞いていると。
その「ない」っていうことがその人にとって「痛み」なんだなってことがわかるわけですよ。
こんなに頑張ってるから上司に認めてほしいのに認められないってなると、感情がすごく動くんですよね。
それで怒りながらやってくる。
何かがないっていうこの人間の何かが欠損している、欠けてるっていう世界を人間は必ず奥に持ってるんだなってことが分かりました。
そこからこの「ない」っていう世界が、いったいなぜこんな人間にとって痛みとなっているのかということを散々検証し始めてみるわけですよ。
乾:でも、その「ない」っていうものを持ってない人はいないんですか?
由佐:いないんですよ。少なくとも抱えている悩みの奥に、何かがないんだっていう痛みに必ず辿り着くんですよ。
すると、なんでこんなに構造的にみんな同じパターンなんだろうって思い始めて。
その構造が見えちゃうと、今度そのパターンを当てはめて検証できますよね。それを永遠にやっただけなんですよ。メンタルモデルって。
それが100人、何100人になり、今度1000人とかになっていった時に累計があるっていうことに5年ぐらい前に気づいたけど、それが今のメンタルモデルいわれている、愛なし・価値なし・1人ぼっち・欠損っていう4つなんです。
ずっと検証してきただけ。なので何の理論にものっとってないんですよ。
とにかく人間の内側がどうなってるかという事をひたすら検証してできたのがメンタルモデルなので、別に心理学の何のセオリーでもないし、誰かさんがしたわけでもない。
ただただその現実はどういう構造になってるのかっていうことを見ようとしただけなんですよね。
説得されても、人って変われない。変化できるのは・・・?
すごい面白かったのが、気付くとですね、その人の現実が変わるんですよ。
その人が自分でこういう風になってるのかと、構造が見えるじゃないですか。
こんなところを自分は持ってるんだって、それまで知らなかった自分の潜在意識の中にある思い込みを、そのプロセスで発見するんですよね。
だからこういう風に振る舞ってるんだ、って。
だから部下には助けてるって口では言ってたけど、本当は俺の評価が下がるのがいやだから重要な仕事を任せてないんだよね、みたいなことを言い始める。
だったら現実はそうなるよね、って。
自分で内側の自分に気づいたら、なぜか現実が変わっていくんですよね。
私は超現実主義者で、変わらないことは意味がないって思ってるから、変わるんだったらこれけっこう面白いんじゃないの?って思った。
坂東: なんか心の内側の世界とか目に見えない世界とか、スピリチュアルな世界とか言われるけど、由佐さんにとっては見える世界なんですかね。
由佐:使える世界。 別に目に見えないものをスピリチュアル的に素晴らしいものがあるからとかっていう感覚じゃなくて、人間が現実を塗り替えられる可能性があるものが内側の気づきの中にあるんだったら、それ使わない手はないんじゃないぐらいの感じなんですよ。
乾:自分の「〇〇がない」っていう痛みに気づけば、その構造が見えてくるから、事実が自然に変わっていくという。
由佐:そう。面白いのが、多くの人達は何でこんな事が起きちゃったんだって思ってるわけですよ。
俺がこんなにやってやってんのに、なんで部下は上手くやらないんだ?とか、なんでこんなに努力しているのに、奥さん、俺のことを認めてくれないんだ?とか。
「何で〇〇ないんだ」これが悩みなんですよね。
その、なんで〇〇ないんだ?っていう世界が悩みになってて、そのなんでないんだっていうふうに被害者っぽく見えていた現実が、俺がこういうものを持って、そういう行動をしたらそりゃそうなるわなということが腑に落ちちゃうんですよ。
そしたらその瞬間、これって自分が作り出してたんだっていう感覚にならざるを得ないじゃないですか。
だって私が諭してるわけじゃないし、説得もしてないし、自分でそうだって言ってんだから、自分で見出したことなんですよね。こっちは質問しただけで。
なので自分で気づけるっていうことと、自分で腑に落ちるっていうのが人が変わる要素で1番大事なんだなっていうことがすごくわかったんですよ。
乾:自分で気づかないといけないんですよね。
由佐:それを教えたり諭したり説得しても、1ミリも現実って動かないんですよね。
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