鈴木商店株式会社で5ヶ月間にわたって関わった「給与デザインプロジェクト」。
今回は、社長の鈴木史郎さんをゲストにお迎えして、プロジェクトのふりかえりをしました。 新しい給与制度を、社員も交えて話し合いながらつくっていくという、フツウじゃないプロジェクト。
お金のことって、タブー感が強く、最初はなかなかデイスカッションが盛り上がりませんでした。鈴木社長はどんな印象を持っていたのか?手応えはあったのか?
また、参加されたプロジェクトメンバーの気づきや感想もお聞きしています。
■ラボメディアでの取材記事はこちら↓
作りたいのは、エンジニアが光り輝ける場所 株式会社鈴木商店 (前編)
ティール組織化実践中!鈴木商店 ”中の人”に現場の「リアル」を聞いてみた (後編)
鈴木商店プロジェクトについて話してるyoutube関連動画はこちら
■鈴木史郎さん プロフィール
「作りたいのは、エンジニアが光り輝ける場所」
そう語るのは、株式会社鈴木商店の代表、鈴木史郎氏。
株式会社鈴木商店の創業は2004年。鈴木氏の父親が経営していた印刷会社を業態変更する形で創業した。
鈴木商店は現在次世代型組織に組織改革を実行中。
坂東:皆さんこんにちは。坂東孝浩です。今日はゲストに株式会社鈴木商店の代表取締役の鈴木史郎さんをお迎えしてお届けいたします。史郎さん、よろしくお願い致します。
鈴木:よろしくお願い致します。
坂東:史郎さん、会社のslackではみんなあだ名でやっていますよね。
鈴木:創業当時からのこだわりでみんなニックネームで。
坂東:僕も鈴木商店での仕事中は「ばんちゃん」でやってもらってましたよね。今回は、給与制度を作り直すという「給与デザインプロジェクト」に関わらせていただいたんですが、そのことについてざっくばらんに振り返ってみたいと思います。まず、去年の秋にティール化をしようということで決意されて、自社で史郎さんが決断されてスタートしたんですよね。その経緯やいきさつを聞きたいんですが。
鈴木:会社もおかげさまで順調に成長して社員数も35人を超えてきました。
これまで組織ではなく完全文鎮型だったのですが、これでは僕一人でみんなのことを管理できないと思い、組織を作ろうと思いました。
当時、ヒエラルキー型の組織しか頭になかったので、ピラミット型で管理職をつくると全然うまくいかなくて…。ものづくりが好きでやっていたので、マネジメントという仕事をしてこなかったし、勉強もしてこなかったし、そもそも好きではないので…。それが急に上下関係ができても、組織が機能しなかったんですよね。ヒエラルキーを作った時に、会社対社員という対立構造ができてしまって、何か問題が起こった時に、「会社は何をしているんだ」という感覚になってしまって。ベンチャーで未熟な会社なので、会社とはこうあるべきだという突き上げもあったり。そういう中で管理職やエンジニアの方も組織に疲れ始めてしまって。そういうのを見ていて、「ティール組織」という概念に出会ったんですよね。僕はティール信者でもなく、ティールはあくまでも組織をうまく回すための方法の1つだと思っていました。本を読んだ時にうちの会社に親和性が高いなと思ってヒエラルキーの組織を解体したということです。
坂東:管理職をなくして、みんな自主経営でやろうよということですよね。もともとはそんな感じだったんですよね?
鈴木:そうです。上場も視野に入れて事業を拡大させるために動いていました。あとは、ティールの「複雑な社会に、よりスピーディーに対応するにはヒエラルキーには限界があるという」言葉に賛同して、本当にその通りだと思って。
坂東:去年の秋にティール化してみて何が起きたんですか?
鈴木:ティールもよく理解してないし、概念はわかっているんですが、実際どうやって進めていけばいいのか、いまだに発達はしていないんですが、まず組織を解体したら利益が出始めました。マネジメント業務が増えていたのがなくなったのと、ヒエラルキーの時は会議も多くて、それを手放すとお客様のためになる仕事に専念することができ、そうすると利益が出始めました。
坂東:なるほど。給与制度を見直してからはどのような状況だったんですか?
鈴木:ヒエラルキーの時に、給与評価をして年俸を決めた時にものすごい不満が出たんですよね。
坂東:なんでですか?
鈴木:僕が全員の給与を決めたのですが、社長は何も知らないのになぜそんな決め方をするのだとか、基本的に給与は公開していないのですが、メンバー同士が飲みの場などでお互いの給与をばらして不満が出てきました。
坂東:今までも史郎さんが決めていたんですよね?
だけどヒエラルキーになった途端、会社が決めるみたいな感じになって、納得感が薄まった感じですか?
鈴木:ヒエラルキーになる前には、僕が決めていて、少人数だったので大丈夫だったんですが、ヒエラルキー時代に入社してきた人達にとっては、会社の決めた給料に納得がいきませんとなって…。
坂東:結局決めているのは史郎さんなんだけど、会社という認識になるんですね。
鈴木:このままだと不満が貯まるだろうなと思って、そろそろ組織改革をやらないとまずいなと思って。ティール化していく中で、給与はかなりコアな部分だと思ったので、そこに手を入れることで全体がティールに向かって加速していくんじゃないかと思いました。
坂東:それでスタートしたんですよね。実際に、プロジェクトチームという形にして、私もチームに入って、社員の中から有志でメンバーを集めましたよね。何人来るか読めませんでしたが、結構きましたよね。8人ですね。そのメンバーと定期的にミーティングをして進めていきましたよね。
実際に進めていく中で、思ったことや大変だったことは振り返るとどうですか?
鈴木:今思うと、めちゃくちゃ楽しかったし、学びも多かったです。
楽しかったのは、やっぱり会社をみんなで作っていく感覚が浸透したことですね。今まで会社の制度は上が決めて、その制度に対してしたがっていくので、そこに不満が溜まっていくということなんですけど、会社は自分たちで作っていくものという感じになってきましたよね。
坂東:最初は盛り上がらなかったですよね?
鈴木:やっぱりお金の話をするってすごくよくない話をするっていうイメージで。タブー感がすごいですよね。
坂東:そもそも会社が決めるという前提があるからどこまで口を出していいのかも分からないし、制度のことを勉強しているわけでもないし、決め方を決めるというのも難しいですよね。
鈴木:でもずっとミーティングしていくとタブー感も和らいでいきました。自分の給料を決めるというよりは、給料の制度を決めるんだという方向に行き始めて良くなっていった気がします。
坂東:たしかに。メンバーの方も会社の給料や評価を決めるということは、会社の根幹を決めるようなものだから、会社を作ってる感を感じられましたという意見もあって、嬉しかったですね。
鈴木:未熟な会社だからみんなで育てていこうぜという感じができたと思います。
坂東:最初、給料の決め方を決めるということでスタートしたんですが、結局それは評価制度とリンクしているから、評価も決めないといけないという風になっていって大変になってきましたよね。裏でメンバーは大丈夫だったですか?
鈴木:今回の給与プロジェクトに対しての不満は一切出てこなかったですけどね。
坂東:2チームに分かれてもらって、評価の仕方とか給与制度をお互い考えてもらってシェアしてもらう時間をとってもらいましたよね。評価の仕方も難しいですよね。今までが鈴木商店では評価があまりなかったので、新しく作ろうとなると他社を研究しながらだったので、皆さんにとっては大変だったのではないかなと…
鈴木:途中混乱もありましたね。給料という定量的なものと普段の仕事という定性的なものをどこで変換するんだという。営業だったら売り上げで一旦変換されるので、そこの定量点から給料の定量点をそのまま方程式で持っていけると思うんですけど、僕らのようなクリエイティブな仕事をしていると、定量点をどこで作るのかが課題だったので、そこと戦っていましたね。
坂東:さすがエンジニア集団だなと思ったのは、評価についても、社内アンケートでどの人がいいとか、そうじゃないとかアルゴリズムを決めて、それを給料の金額と連動させようとシステム作ったりしたじゃないですか。
鈴木:うまくいかなかったですね。
坂東:すごい精密にしたのに。やればやるほど、エンジニアの人のツッコミもすごいですよね。
鈴木:普段のトレーニングから例外係数に目がいくので。
坂東:頭がいいんですよね。あの時いやじゃなかったですか?
鈴木:時間も迫っているし、いやでした。
Spotifyはこちら