モチベーションが上がらない原因
「部下のやる気が感じられない・・・。」
「モチベーションをどうやって上げればいいか分からない・・・。」
わたしの周りの経営者や管理職の方からは、ひっきりなしにそうした声が聞かれます。
各社とも、社員研修に行かせたり、評価制度を取り入れたりと、
様々な施策を取り入れて努力をしています。
そういった施策を取り入れて、いっときは効果を感じられてもまたすぐ元の状態に戻ってしまいます。
こういった社員のモチベーションが高まらない本質的な原因は、
“組織のヒエラルキー構造”にあると、私は考えています。
組織構造が社員に及ぼす影響
ヒエラルキー構造の最大の特徴は、上司(管理職)
と部下という上下関係があるということです。
この場合「上司の方が仕事ができるし、正しい判断ができる。」
というのが前提になっています。
裏を返すと
「部下は正しい判断ができない。仕事もできない。
だから管理しないと、ミスをするし、サボる。」
というスタンスです。
つまり、会社(上司)は
「君のことは信じていないよ。管理しないとサボるでしょ?判断を間違えるでしょ?」
というメッセージを、毎日発信しているようなものです。
そんな状態で、部下のモチベーションは上がるでしょうか?
難しいでしょう。
組織構造の昔と今
「いやいや、自分もヒエラルキー組織でずっとやってきたけど、
そんなことを感じたことはない!」
という方がいます。
昔と今とでは、2つの違いがあるのです。
ひとつには、昔は頑張るメリットがあったということ。
「頑張れば、出世できる」
「生活が良くなる」etc.
だから、ガマンする“甲斐”があったのです。
でもいまの若い世代は、お金やモノ、
役職といった“ニンジン”に食いつく人が減っています。
「信用されてない上に、頑張るメリットもないし、
モチベーションを上げろって言われても、何のために?!」
という感覚なのです。
もうひとつ。
高度成長期は、上司の方が正しくいられることができました。
変化のスピードが今ほど速くなかったために、
上司の成功体験の有効期間が長かったのです。
しかし、今は日替わりで答えが変化しています。
上司の方が正しい判断ができる、という「前提」が崩れているのです。
部下からは
「上司の言うことは、ほんとに合ってるのか?
過去のやり方を押し付けられても・・・」
と思われている可能性があります。
このように、
ヒエラルキー組織の中では日常的に
社員のモチベーションを下げる環境がつくられています。
その一方で、モチベーションを上げるために、研修を受けさせたり、
福利厚生を充実させようとしたりしている。
でもそれは、“体調が悪い時のニンニク注射”のようなもの。
瞬間的には効果がありますが、根本的な解決にはなっていないのです。
モチベーションが勝手に上がる組織構造
では、どうすればよいか?
まずは上司が“新たな視点”を得ることです。
「部下の方が、正解を持っているのかもしれない。」
「部下も判断できるかもしれない。」
「管理しない方が、うまくいくのかもしれない。」etc.
視点が切り替われば、おのずと言動が変わってくるでしょう。
昨今、ティール組織やホラクラシーと呼ばれる進化型組織が現れています。
ティール組織とは、「目的に向かって、
組織の全メンバーがそれぞれ自己決定を行う自律的組織」のことを指します。
ティール組織では、上司が部下の管理を行わないなど、
従来の組織形態では考えられなかった特徴をもっています。
すぐにティール組織のような進化型組織に移行することは難しいかもしれませんが、
まずは、短期・長期での打ち手を考えましょう。
短期的には、“心理的安全性”をつくること。
チームメンバーに対して信頼を注ぎ、安心して発言できる場づくりをするのです。
長期的には、上司の役割のアップデートです。
あなたの会社での上司の定義は、何でしょうか?
たとえばgoogleでは、下記のように定義されているそうです。
「部下が最大の成果を挙げるための場作りができる人」(※2)
「マネージャーは階層組織の中で管理することで評価されることはない。
より若い人材に様々なチャンスを与え、
イノベーションや変革を起こすようにエンパワーすることで評価される」(※3)
大量生産時代には、社員が画一的に効率的に働くよう、
上司が管理することが有効でした。
しかしこれからの時代、上司はなんのために存在するのか?
どういう役割を果たすのか?
それは業態によっても、企業の成長ステージによっても、
チームの人材レベルによっても、変わります。
固定観念を手放し、自社にあった上司の再定義をすることが求められているのです。
まとめ
上司の方が優秀で、正しい。
部下は管理しなくてはならない。
その“思い込み”を手放すことが、進化型組織への第一歩となる。