先日、アリババ株式会社のCEO、香山誠さんの講演を聞きました。
今までよく知らなかったのですが、アリババグループがとてつもない規模でビジネスを展開し、そこに集まるデータも桁違いだということがよくわかって、とても衝撃的でした!
水晶玉を手にしたアリババ
アリババのビジネス規模をまとめると、こんな感じです。
ECの取り扱い高
Amazonは世界で年間20兆円。
アリババは中国で年間97兆円。
ちなみに、2018年11月11日(独身の日)は、1日で約3兆5110億円を販売。
楽天の一年間の取扱高を1日で上回っています。
扱う物流の個数。
クロネコヤマトが一年間で16億個。
アリババは10.4億個。
しかもこれだけの商品を出荷するのに、人手がほとんどかかっていないそうです。
Alipay
決済総額は500兆円以上。
日本国内のpay系サービスは、総額で64兆円。
ビッグデータについては、Amazon、google、facebookがよく代表的なケースとして語られます。
しかし、これらの企業は自社のデータを他社には公開していません。
一方で、アリババはグループでSNSも、金融も、小売も、リアル店舗も、動画配信サービスも、全て持っている。
日本の人口の5倍、5.5億人のデータを、多面的に持っているのが他にはない強みなのだと。
「日本には“ビッグデータ”はない。」と言ってました…(汗)
それ位大量のデータが集まると、まるで占い師が水晶玉を覗き込むように、人の行動パターンが見える化できているそうです。
す、すごい。
ビッグデータで、信用が見える化する
中国では最近、合コンの際に必ず女性があることをするそうです。
それは、男性のスマホで“ジーマクレジット”を見せてもらうこと。
ジーマクレジットとは、個人の信用度が数値化されているもの。
Alipayアプリに自分の点数が表示されます。
Alipayの利用状況や保有資産、学歴やキャリア、交友関係などのビッグデータをAIで数値化。
950点が最高で、高いほどモテやすいし、逆に500点台は人間と見なされない、とか!(笑)
また、異性にモテるだけではなく、ジーマクレジットの点数が上がると、
・貸出限度枠の拡大
・金利の優遇
・為替ルート優遇
・国際空港での優先出国レーン利用
・外国でのビザ審査が簡易化
といった優遇がされるようになる。
公的な信用証明にもなっているって、コワいですが、スゴいですね!
このテーマで面白かったのが、シェアサイクルの事例です。
アリババではシェアサイクル事業もあるのですが、かつては自転車があちこちに放置されてしまうという問題がありました。
それをある時期から、自転車についているGPSと連動し、きちんと置き場に戻すと、ジーマクレジットの点数が上がる、という仕組みにしたそうです。
すると、どうなったか?
なんと、9割以上がきちんと返すようになったそうです!
日本ではどうなる?
よく、ティール組織など、次世代型組織について話をする時に、人を性善説でとらえるか?性悪説で考えるか?という議論になります。
私は「善か悪かのどちらかではなく、人はみな両面があり、状況に応じて行動を変える」という考えなのですが、まさにそのことが現れているケースだと思いました。
同じ人間が、バレなければ自転車を放置するし、自分の行動が(信用度として)見える化される場合には、放置しないのです。
ここで大事なのは、行動が変わったのが、管理をしたり、指導したり、叱ったからではなく、見える化したから、です。
セルフマネジメント型の組織では、上司の権限や管理を手放す代わりに、見える化を徹底します。
各人の仕事内容やパフォーマンスが見える化されれば、サボったりごまかしたりができずらくなります。
そうした環境では、おのずと自分で自分を律する、つまりセルフマネジメントが機能するようになるのです。
シェアサイクルの例では「自転車をどうしようと勝手ですよ。ただしちゃんと行動すれば信用度は上がりますからねー」という図式。
企業に置き換えると「いちいち指示命令も管理もしませんよ。ただし今日どんな業務をこなしたのか、生産性が高かったのか、低かったのかは、みんなに見えてますからねー」
となるわけです。
ジーマクレジットのような信用度の可視化は、いずれ日本でも実行されるでしょう。
組織での仕事の見える化は、いまでも相当実現できています。
そうなれば、いま、管理職をしている人の役割や、組織内の階層構造は、根本的に変化するでしょう。
企業としては、管理のためのコストが劇的に減り、自主的に正しい行動をとる人材が増えてくるのでいいことづくめです!
組織の進化は、すぐそこまできているのです!