「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019」でマネジメント部門賞に輝いた『ティール組織』。
(※「ティール組織」の解説はこちら）
読んでみて「自社でも取り入れたい！」と考えている経営者は多いのではないでしょうか。
しかし書籍『ティール組織』では、進化する組織の特徴や事例は載っていますが、
「やり方」は書かれていません。
私たちは「ティール」は手法ではなく、“概念”だと捉えています。
進化型組織づくりを行なっていく際には、何らかの進め方やフレームワークが必要です。
そこで、ここでは手放す経営ラボ的“進化型組織デザイン”のフレームワーク（導入のステップ）をご紹介します！
組織デザインのための“進化型組織”的フレームワーク
私たちのフレームワークでは、次の4つの導入ステップで、新しい組織のデザインと実行を進めていくことができます。
1.存在目的の整理
2.情報公開と見える化
3.ガイドラインのデザイン
4.セルフマネジメント
このステップをひとつずつ解説をしていきますが、その前に・・・
手放す経営ラボラトリーが考える「進化型組織づくりをする狙い」を説明しておきます。
それは
■働き方をラクにするための組織デザイン
■セルフマネジメント（自主経営）が機能することで、しなやかで活力あるチームに進化し、企業の存在目的をよりスピード感をもって実行できるようになること
この２点です。
セルフマネジメントとは、経営者や上司が持つ権限を分散し、
個人あるいはチームが主体的に意思決定できるようになることです。
それによるメリットは、経営者や上司への依存度が減り、
逐一稟議をあげる必要もなくなるので、事業のスピードが速くなること。
こうしたことがしたい経営者には、進化型組織は向いていますし、
逆に権限を分散したくない（または分散する必要がない）組織では、導入する必要はありません。
さて、それではひとつずつ見ていきましょう！
1.存在目的の整理
まず行うことは「企業理念の整理」と「進め方のデザイン」です。
進化型組織化を、なんのためにするかというと、企業の存在目的追求のためです。
ですから、企業の存在目的（ミッション・ビジョン・バリュー）が明確になっていることが大切です。
曖昧だったり、古くなっていたりしたら、整理し直しましょう。
その上で、進め方を決めていきます。
※詳しく知りたいかたはこちら【ディテール①】「事前準備〜問いを立てる〜」
1-⑴:対象範囲を決める。
導入を、特定の部署などで部分的にスタートするのか？それとも一気に全社導入するのか？
会社の規模や状況によっても取り組むステップは変わります。
株式会社フリープラスのように、一気に全社導入するケースもあれば、株式会社ISAOのように、
数年かけて段階的に導入していくケースもあります。
1-⑵:誰が進めていくかを決める。
組織のデザインとアップデートは、経営者の役割です。
経営トップが関わることは必須ですが、導入を進めていく際には人事部など特定の部署だけではなく、
部署横断で有志を募り、プロジェクトチーム化することをおすすめします。
1-⑶:スケジューリング
どれくらいのペースで進めていくのか？ざっくりとでいいので決めます。
私たちがプロジェクトに関わる場合は、3ヶ月〜半年かけ、
月2回程度のミーティングを重ねながら1~4のステップを踏み、
スタートしていくケースが多いです。
2-⑴:情報公開
つづいて情報公開です。
目的はふたつ。
ひとつめは、会社と社員との信頼関係をつくることです。
人は、隠されている部分には不信感や不満を抱くものです。
会社が社員に対してオープンであることを、まず会社側から表明する。
それは口で言うだけではなく、情報を公開することが、一番わかりやすく効果があります。
ふたつめは、自主的な意思決定に必要な情報提供です。
もし「経営者視点で判断ができるようになってほしい」と考えるなら、
社員も、経営者と同じだけの情報を持つことが必要です。
具体的には、「経営情報（企業理念、財務情報（PL,BS,CF）経費）」「人事情報（評価、給与）」etc.
など経営に直結する内容です。
「給与って絶対オープンにしないといけないの？」とよく質問されますが、もちろん“絶対”ということはありません。
進化型組織的な経営スタイルの企業にも、給料は非公開にしている例もあります。
ただ、社員にとって見えない部分があることは、会社に対する不信感につながります。
会社に対する信頼関係ができていないのに「主体的に行動したい！」という気持ちにはならないだろう、
というのが私たちの考え方です。
しかし、給与や経費の公開は、難易度が高いです。私も経験者ですが（苦笑）
どのように進めるかというペースや、公開する範囲は、企業によって十分に検討すべきでしょう。
2-⑵：見える化
主体的な意思決定と業務遂行に必要な情報を「見える化」していきましょう。
具体的には「ビジネスモデル」「組織形態」「顧客情報」「戦略・マーケティングの流れ」
「予算策定・管理」「業務フロー」「コミュニケーション」「経営者の想い」
などです。
ここが曖昧なまま権限を分散していくと、個々の判断や行動の方向性がバラバラになってしまいます。
3.ガイドラインのデザイン
いよいよ最後のステップです。
「自由に意思決定していいよ！」
と言われたところで、セルフマネジメントに慣れていない人にとっては
「どこまでやっていいの？」
「本当にやっていいの？失敗したらどうしよう？」
と、不安が先行しがちです。
そこで、ガイドラインをつくります。
意思決定していい範囲や、役割を決めるのです。
制約やテリトリーを決めることで、”この中では自由に動ける”いう体制ができます。
「意思決定のプロセス」「職務内容と権限」「ミーティングの仕方」「紛争の解決」
あるいは
「目標設定」「評価・給与」「働き方」といったところがポイントになります。
※詳しく知りたいかたはこちら【ディテール③】「ガイドラインのデザイン」
4.セルフマネジメントがスタート！
さあ、ここまでできれば、いよいよセルフマネジメントのスタートです！
スタートして水を得た魚のように、意思決定をバンバン行なっていく若手社員もいれば、
慎重に意思決定を進めるチームもあります。
いずれにせよ、セルフマネジメントによって、自社が素晴らしい進化を遂げていくことは間違いありません！
個人とチームがイキイキと躍動し、事業のスピードが上がっていく様子が実感できるでしょう。
スタート後に重視したいことは、運用です。
組織が躍動感をもって進化していく過程で「これで完成！」ということはありません。
よりよい方法を模索しながら、試行錯誤と改善を積み重ねていく。
そして、自社らしい組織と文化をかたちづくっていく。
その旅路こそが、素晴らしく価値のあることなのです。
どうぞ、社員の方々と楽しみながら、歩みを進めていってください！
