2019年6月にティール組織への移行を宣言した株式会社フリープラスのリアルタイムレポート。第四弾は、社員の皆さんのナマの声をお届けします!
(※「ティール組織」の解説はこちら)
マネージャーという肩書がなくなった人、上司から指示されなくなった人、それぞれにどんな変化があったのでしょうか!?
奥側中央:ブランドンさん(以下ブラ)欧州語のリーダー
奥側右:基さん(以下基)中国籍マネージャー
手前左:功祐さん (以下功祐)基さんの元部下
手前中央:花さん(以下アヤ)ベトナムチームのリーダー
手前右:ビンさん(以下ビン)アヤさんの元部下
7つの承認ステップが一気に削減。効率アップ!
坂東:お集まりいただき、ありがとうございます。今日はティール組織への移行が宣言されてからの1ヶ月で起きた変化や、良かったこと、困ったこと、こんなハプニングが! みたいなことまで、具体的に聞かせていただければと思っております。
須田さん、何を話してもらってもいいんですよね?
須田:もちろんです。みんなを評価する立場でもないので、僕がいても関係ないです(笑)
坂東:ということですので、自由にいきましょう! まずはティール組織化で良かったことは?
功祐:承認にかかる時間がかなり短縮されたことです。以前は、何か新しいことをする時の承認を得るのに、7つくらいステップがありました。「承認リレー」です(笑) それだけチェックしても、大体のことは結局は通るんですよ!
坂東:ハッハッハッ(笑) そういうものですよねぇ。
功祐:大体は通るものの、時間がかかるんですよね。ティール組織になって一番よかったのは、それがなくなったことです。1人で決めるわけではなく、もうひとりがチェック機能を果たしてくれるのでクオリティは保ちつつ、一気に時間が短縮されました。
坂東:実際に、どんな意思決定ができました?
功祐:先月、ツアーガイドの方との契約内容を変えました。ガイドさんは業務委託でやっていただいているのですが、僕は以前から、フリープラスのDNAに沿ったガイドさんが必要だと考えていて。適任の方がいたので、とりあえず1年間はFREEPLUSと独占的に契約してもらうことにしたんです。
坂東:新しい契約のパターンを作ったということですか?
功祐:そうです。助言プロセスを経て問題なかったので、実行しました。
坂東:面白い! ほかの方はどうですか? ティール組織化のメリットを感じていますか?
基(中国籍の元マネージャー):僕はもともとマネージャーで、各メンバーの日々の業務や会社の業績などを分析した上で、指示を出していました。今は指示を出すという役目がなくなって、メンバーがそれぞれの責任でやっています。
坂東:指示命令系統がなくなって、正直やりにくい、なんて思ってません?
基:ないです。僕としては今の方がいいですね。というのは、以前は僕が指示を出さないとみんなは動けなかったので。
坂東:動く権利がない?
基:情報量が違うということです。メンバーは会社の業績や数字を全部は見られなかったから、どう動いたらいいかわからなかったわけです。
坂東:ほかに、マネージャーだった方は?
アヤ:私は、ベトナムチームでマネージャーの下のリーダーでした。個々のメンバーの管理みたいなこともしていて、例えば何かの数値の更新が漏れていたりしたら「やってくださいね」と声をかけたり……。
坂東:お尻を叩くんですね。
アヤ:そうですね。今はみんな自立しているという前提で、あまり管理をしなくなりました。ただ、実際は自立できていない人もいるので、たまに「自立しましょうね」と発信したりもします。
坂東:お尻を叩きたくなることも、ありますよね。
アヤ:私はもともと叩きたくないんですよ。だからティール組織のやり方自体はすごく賛成で、私が求めていたものでした。そうは言ってもまだ1ヶ月ですから、「これができていないですよ」と言わなきゃいけないときもあって。全員が自立できたら、すごく強いチームになるだろうと思います。
ビン:アヤさんは元は私の上司でした。アヤさんからの指示がなくなって、メンバーそれぞれに自己責任で動けるようになってきたと感じています。自分から動かないと何も進まないですから。ほかのメンバーは分かりませんが、私は業績なんかも毎日チェックするようになりました。
宮澤:私は普段は本社で採用と研修を担当しているんですけど、ホテルの採用とトレーニングにも関わることがあるんですね。それがすごくやりやすくなりました。以前はホテル事業部の本部長がいてマネージャーがいて、という階層構造があったので、なにか問題に気づいたらまずは上司の方に言って、その方からメンバーに言ってもらったりしていました。直接メンバーに言うこともあったんですけど、その人の上司がどう思うかということが気になっ
て……。今は当事者に直接「それは問題だと思うのでこうしてください」と言えるようになって、すごくラクです。
坂東:一般的には、本社部門というのは事業部に気を使いますよねぇ。
宮澤:もう一つ、私が「こうしてください」と言ったことに対してほかのメンバーが「いやいや、こっちの方がいいよ」などとストレートに言ってくれる環境になったのも、すごくいいです。自分がベストだと思える意見を遠慮なく言えるようになって、仕事がしやすくなりました。
坂東:すごい。率直に言い合える関係ができてるんですね!
宮澤:常に「FREEPLUSにとって効果的かどうか」という前提で話ができるので、反論があっても私個人を否定されているわけじゃないということはよく分かるんです。心理的な安全性はすごく確保されていると感じます。
一経営者として扱われるようになって、自分がいかに甘やかされていたかを実感。
坂東:宮澤さんは、ティール組織への移行を準備するチームの一員だったんですよね。実際にスタートしてみて、「こんなはずじゃなかった〜」みたいなことは?
宮澤:始まってみると「厳しいな」というのが、個人的な感想です。 例えば電話一本かけたあとにも、それを聞いていた須田から厳しいフィードバックがあったりします。以前は私のレベルに合わせて話をしてくれていたんだな、ということをひしひしと感じました。それでちょっとだけ悩んで、須田に「話が合わなくなったんですけど、どうしたらいいですか?」と聞いたら、「同じ経営者として全力投球でお話しているので、話が合わなくなるのは当然だと思う」と言われまして……。自分がいかに甘やかされていたのかということを、すごく感じました。
坂東:あ〜、さっき須田さんが言っていたのは宮澤さんのことだったんですね!(レポート第三段の最後の部分参照) 前に戻りたいな、という感じもあったりして?
宮澤:う〜ん、戻りたいわけではないんですが(笑) がんばらないといけないな、と感じていますね。
坂東:他に、課題に感じていることはありますか?
基:強いて言うなら「ホールネス」の部分が難しいです。メンバーそれぞれ出身国も違うし、これまで生きてきた人生も性格も違う。そういう人たち同士で共通認識をもつのには時間がかかるので、最近は勉強会の回数がかなり増えました。
坂東:何のために勉強会を?
基:お互いの理解のためです。交流会や飲み会も積極的に開きたいという気持ちになっています。お互いの国の文化を話す機会が増えてくると、理解が深まるので。
坂東:ティール組織への移行が始まって、そういうことが必要だと感じ始めたんですか?
基:そうです。
須田:指揮命令系統があったときは、相手のことなんて理解していなくても仕事が進んでいたんでしょうね。指示に従えばいいわけだから。今は、チームとしてまとまっていくためには相手のことを知らないといけないということが、見えてきたんじゃないですか。
「ティール組織では指示ができない」は間違い。そうすべきと思うことがあれば、誰もが立場に関わらず指示すべき。
ブラ:僕はもともと欧米語チームのリーダーでした。以前から指示というよりは「これやった方がいいですよ」と提案することが多くて、ティールを導入してからもあまり変わっていないんですけど、ときどきメンバーが行動するまでに時間がかかることがあります。いろいろな国籍の方がいて文化も違うので、指示が欲しい人もいれば、アドバイスがいいという人もいるんですよね。そこを配慮しないと上手くいかないと感じています。
坂東:指示しちゃった方が早い、と感じることがありますか?
ブラ:指示をすることができればもうちょっと人を動かせる、と思うことはあります。「やってください」と指示した方が、相手も「やらなきゃいけないな」と感じたり、言い方によって効果が変わりますよね。
須田:みんな勘違いしていると思うから、ちょっとアップデートしましょう。作りたい世界は、メンバー全員がお互いに指示しているチームなんですよ。指示してはいけない、ということではないんです。例えば「今日、これをやった方が絶対FREEPLUSにとって効果的だ」と思うことをやっていないメンバーがいて、ブランドンさんがそれに気づいたとしたら、「やってください」と指示すればいいんです。ただ、従うかどうかは相手が判断することです。相手が指示を聞かなくて、それが明らかにFREEPLUSにとって損失になることであれば、紛争解決プロセスですよね。
坂東:常に誰かから誰かに指示するという上下関係はないけれど、「気づいたことがあれば、どんな立場の人でも言える」ってことですよね。
須田:そうです。スピードを速めるためにティール組織でやっているのに、「指示できないわ〜、どうしようかな〜」とゴニョゴニョやっていたら意味ないです。指示が嫌ならリクエストでもいいです。「どうか、やってください」と言うべきなんです。
基:多分、「指示ができなくなった」と誤解しているメンバーは多いと思います。今のお話でクリアになったので良かったです。
須田:これはめっちゃ重要な話ですから言いますけど、人の感情なんて気にしなくていいんですよ。みんなそれぞれの文化的背景があって、考え方も違うけれど、僕らがコミュニケーションするのは、FREEPLUSにとって効果的なことをするためです。それがうまくいくのが嬉しいという人だけが残って欲しいんです。個々人の感情をいちいち気にしている暇があったら、目的のために指示する、コミュニケーションする、ただそれだけ。超シンプルなことです。
坂東:このチームにいる限り、感情より優先するものがある、ということですね。
給料を自分で決めてみて、普通の給与制度に疑問が生じた。
坂東:給料のことにについても聞かせてください。初めて、自己申告で自分の給料を決めたんですよね。社内は相当ざわついたでしょう!?
須田:ざわつきまくりですよね(笑)
アヤ:「私は給料をこれだけもらいます」という申告と同時に、「業務でこれだけのコミットをします」ということを宣言するんですけど、それを達成できなければその給料をもらう資格はないと思うようになりました。「今まで甘かったな」と。コミットへの気持ちが強くなったのは、ひとつの変化です。
坂東:いい変化ですね!
アヤ:それと、チーム内の他の人に対しても給料が高いとか低いとか、フィードバックするんですよ。そのためには、どういうふうに働いているか、どういう業務や目標を持っているのか、普段から全員を見ておかないといけません。ひとりひとりにちゃんと接しようと考えるようになったのも、大きな変化ですね。
坂東:なるほど〜。
基:ひとつ面白いなと思ったことは、僕自身は自分の給料は最低限でいいという考えなんです。それは、現状を見れば最低限にするしかないということもあるし、それでも僕は生活には困らない。むしろ僕の分を他の人に回して、より幸せになってもらうほうが嬉しいくらいなんですね。でも、メンバーの中には「あなたがその額だと、自分の希望額を言いにくい」という人もいました。そういうことを気にする人がいるんだな、というのが僕にとっては意外でした。
坂東:自分は気にしてないのにね(笑) それぞれの価値観が出てくるものですねぇ。
宮澤:私は、一般的な給料の決め方に疑問を持つようになりました。同じマネージャーでもそれぞれやっていることが違うし、追っている数字も違うのに、同じ等級なら同じ給料って、型に当てはめて思考停止させてるんじゃないかな、と。自分で会社の数字を見て自分の
給料について考えざるを得ない今の制度になって、FREEPLUSのメンバーはちょっと違う視点で給料のことを考えられるようになったんじゃないかな、と思います。
坂東:確かに、世の中の制度というのは思考停止させるために作っているという面もありますよ。いちいち考えさせない方が、会社としてはコントロールしやすいですからね。
宮澤:社員が思考停止しちゃうのは、もったいないなぁと思います。
坂東:同感です。いやぁ、皆さんのナマの声を聞くのはとても面白い! 今後もぜひ、こういう機会を持てればと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました!