■社員全員で話合い、社員全員で経営している。
■社長の給与も社員に決めてもらっている。
■誰か1人に責任を負わせる文化はない。
■会議への参加は自由、退席も自由。
■常勤以外にもWワーク(副業)、パラレルワーク(複業)など、多彩な働き方が選べる。
■成長するもしないも、自由
といった、一般常識とはかけはなれた経営スタイルを実践している、有限会社せれくとの代表取締役、木元秀典さんに話をお聞きしていきます。 木元さん曰く「社長の管理人」だという、泥谷 佳織(ひじやかおり)のツッコミも入りながら、楽しく刺激的な会話が弾んでいます!
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■有限会社せれくと https://www.select-net.jp/
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■デジタルトランスフォーメンション時代の組織デザインプログラム「DXO」
■手放す経営ラボラトリーでは、“ティール”“ホラクラシー”など進化型組織や最先端の経営スタイルを研究。また自社でも実証実験を重ねており、その様子をYouTubeやコラムでお届けしています。 また、組織をアップデートしていきたいという企業の支援をしています。
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写真左 手放す経営ラボラトリー坂東孝浩
写真中 有限会社せれくと代表 木元秀典さん
写真右 有限会社せれくと社員 泥谷 佳織(ひじやかおり)さん
奇跡の経営は再現性があるやり方を書いていない。だから「奇跡」なのか?
木元:手放さなければいけない事を手放せるようになっていったんですが、うちの会社は時間がかかりすぎたんですよね。奇跡の経営にはやり方は何も書いてないし。
坂東:そうですよね。
泥谷:何も書いてないのに、「希望だー」って取り組めるってバカじゃないとできないんですよ。
坂東:僕もやり方は全然分かってませんでした。木元さんも行かれた奇跡の経営著者のリカルドセムラーさんが来日された3年前のセミナーが「手放す経営」をしようと最後に背中を押してもらったきっかけです。
セミナーが6月にあって、会社の新年度が翌月の7月だったのでそのタイミングで全てをパッと手放したら、大変な事になりました。汗
木元:レシピにも「パッとやったらダメ」と書いてありますよね。
坂東:僕、自分の何が正しくて何が間違っているのかが分からなかったんですよ。分からないから全部リセットすればどこが悪いのかが分かるだろうと思ったんですが、やりすぎましたね。
泥谷:2人ともやりすぎているパターンですね。
坂東:セムラーさんのセミナーの後に懇親会があって、30人ぐらい経営者が集まっていたのですが、大半の人はすでに本を読んで実際にやってみた経験者だったんです。それで、失敗してほとんどの人が途中で元のスタイルに戻していた。そういうかしこさがある。突っ込む勢いはあるけど、ダメだと思ったら戻しちゃう。
木元:ただ、戻してうまくいく方法があるならいいんですよね。
坂東:そうですね。セムラー氏が唱えている組織のスタイルは相当な覚悟がないとやり続けられない。奇跡の経営的な管理統制を手放すのは、宗教を変えることに近いと思っていて。それをセムラーさんのセミナーで感じました。これって哲学の問題で、例えばキリスト教で毎日アーメンと言っていた自分が、明日から仏教に変えて、毎朝、南無阿弥陀仏を唱えることになるようなものだなと。
それはやり方の問題ではない。心ではキリスト教を信じてるんだけど、やり方は南無阿弥陀仏というように表面なものをなぞってもうまくいかない。
信じるものを変えるという事。これは難しいなと。思った以上に大変でした。
それでも自律分権型をしたいと、今も試行錯誤されていると。
自分で生み出した「やり方」。重要なのは「見える化」と「読める化」
木元:試行錯誤のうち、まずやり方ですが、見える化はすごく重要。
同時に読める化も重要。
読める化は、対象物を理解するためのリテラシーが大事。リテラシーが上がる事で見たい範囲が広がる。すると見たいものが見えるようになる。そうすると興味関心が増して次のリテラシーが上がる。
いつでも見てもらえるように準備はしていたけど、いきなり全部を見せるわけじゃなくて、興味関心がある所から見せるようにする。
もしくはコアで必要な所を見ることができて、それを読めるようにするのが絶対に重要。
ここはつるべの動きで上がっていかないといけないし、どのつるべを登っていくかは人によって違う。それがやり方です。
これが前提で、まずは財務と生産性。この2つは重要です。これらを見れるようになっていく過程でいろんな事が決められるようになっていく。「見える」「読める」ようになるのはその流れかなと思います。
個人のステップは意思決定と振り返りの機会を必ずセットにすること。他人との比較ではなく自分の中での比較を醸成させていく。
会議は参加してもしなくてもいい。途中で退席してもいいということがなぜできるのかというと、会議に参加するかしないかは、優先順位を決めた上で意思決定しましょうという前提がある。
その上で、参加しない人は、参加メンバーに自分の意見を託す、一任をすることの意思表示でもあります。軽いノリで参加しないということではなくて、自分の重たい分まで背負ってくれてありがとうという託し方なんです。「参加しない」の意味が違うんですよね。
坂東:それも意思決定なんですね。
木元:そのプロセスを会社の中で試行錯誤しながら体感することで、やった事と振り返りで次の意思決定が変わっていく経験が積めるといいなと。
坂東:なるほど。面白いですね。泥谷さんからみて今の組織はどうですか?
泥谷:「意思決定」でいうと、こんなに意思決定をさせてもらえる会社はないと思っています。
ただ意思決定って質やレベルが違ったりするじゃないですか。言葉遣いの意思決定と、朝ごはん何食べようかな?の意思決定と、会社の投資における意思決定は全然レベルが違うと思うけど、それを触れる機会が日常の中にあるというのがすごくありがたいなと思っています。
私は経営者になりたいわけじゃないけど、先日、会社の借り入れをどうするか?というテーマで話した時に、メンバー全員が集まりました。中堅メンバーと新卒メンバーも同じ立場で話を聞いて、どうするか実際に決めることはできないけど、同席させてもらえるのがありがたいし、決めてくれた人への感謝。担ってくれていることへの価値が見えるのは大事だと思いました。
やる事もやらない事も自分で決めていて、日常で全部自分に返ってくるのはすごく尊いと思います。
日常で先輩が帰らないから帰りにくいシーンがありがちですが、先輩が帰らないから帰れないのは言い訳で、自分が帰らないという選択をしたんだよね。というのも自分で決めていると認識する事が大事です。
先輩達が意思決定しやすい環境をサポートするのも大事なので、環境も作るし、自分も意思決定していくのと両方大事ですね。
坂東:先輩が圧力かけて帰りにくい雰囲気を出してて、「帰るか帰らないか決めていいよ」というのはおかしいよね。ということですね。
泥谷:自分で決めるのは大事だけど、環境づくりも大事。環境に甘えて意思決定しないのもずるいし、私はどうしたいの?と常に自分に問いを立てる機会があるのはせれくとならではだと思います。
最適解を模索し続ける組織づくり
坂東:せれくとでやっている経営スタイルは価値観経営という呼び方でいいですか?
木元:価値観経営メソッドという形で体系的になってるようななってないような。
セムコ自体もどんどんやり方を変えていっているし。せれくとでもそうですし、半年前に作った制度が機能してなかったりするし。
坂東:いろんな会社に話を聞くと、その時はそうやってるけど、1年経つと全然変わってたりするし。切り取ったらそうだという事でしかない。
木元:なぜなら市場が変わるし、社内の環境もメンバーも変わるし。いろんなものが変わっていくと最適解も変わるし、最適解を模索し続けるのが僕らの自律分権型の良さなので。
坂東:このメソッドが向く会社と向かない会社ってありますか?
木元:どうあれ今の会社の作り方って基本的にはトップダウンだと思っているんです。そうするとトップの信念がない所には一切向かないです。結局ちゃぶ台をひっくり返すので。大きな組織の中の一部分の中がそこで醸成できたとしてもそれ以上に発展するかどうかは別の問題で。それをやる価値がないとは思わないんですけど、結局はトップの哲学が変われるかどうかが重要なポイントかなと。
坂東:たしかに。自律分権型にしたいっていうのがトップダウンですもんね。
木元:トップダウンのトップのダウンする事がどのレイヤーになるかが肝だなと思っています。我々の存在意義としてこういう事、それ以外は何も問わない。HOWとかWHATとか具体的な細かい所まで下ろしていくようなトップダウンのやり方ではなくて、私たちの存在意義とそしてそこを担保するにはみたいな所だけかな。
坂東:そこがブレない信念があるかどうかという事ですかね。
木元:ただ一足飛びにそこの思考に行く人はほぼいないと思っていて、僕もそうだったし。ちょっとやってみると、自分の思っていた事とは違う反応が得られて、病み付きになるというか。
坂東:病み付きになるんですね。すげえな。
木元:だって、ダブルワーク許可したらダメでしょって思ってた人間が、でもいいんじゃないってやらせてみると、そっちの方が世界広がったね。いいね。成長したねって。その方がいいよねって。お前の時間投資していろんな事学んでいるんだもんねとか。
坂東:どちらもですよね。いい意味でのフィードバック、それからうまくいかなかった事、摩擦が起きた事もフィードバックじゃないですか。それが次のステップに行くきっかけになるというか。やっぱりすごく変な人だなと言う事がよくわかりました。木元さんがわくわくしながら目指すものをせれくとというチームで追いかけている。すごく楽しかったです。ありがとうございました。
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