メンバー全員テレワーク、副業が義務、週休3日、週30時間労働制、会議の禁止などなど、一般的な会社では考えられないような仕組みで事業を推進している株式会社クロスリバー。
今回のインタビューでは、代表の越川さんがどういった思想で会社経営をされているのかをお伺いしています。
やりたいことをやるために、徹底的にやりたくないこと、無駄なことをやめる。
結果として、働く人の幸福度も上がり、生産性もアップする。そこに導かれるまでのプロセスや仕組み作りは学ぶべきものがたくさんありました。
坂東:越川さんの会社のことをお聞きしたいのですが、越川さんの会社は週休3日ですよね?
越川:そうですね。
坂東:そういった会社の仕組みは、どういう意図をもって設計されてるんですか?
越川:土日と、平日1日休むようにしていて、さらに週30時間しか働いちゃいけないっていうルールもあります。平日の1日は教養の日にしています。それから、うちの会社、複業じゃないと入れない会社なので、みんな何かしら他に仕事をやってます。
坂東:複業が義務?
越川:全メンバーが他の仕事も持っていて、お医者さんもいますし、お坊さんもいます。
坂東:お坊さん?(笑)
越川:はい。そういった、「他の分野で学んでいて、刺激を受けて、うちの会社の仕事に活かしてください」というお願いをしています。
違う分野の仕事を持ってる方々がほとんどですね。
だから、うちの会社の仕事は、たとえば週3日しかやってなかったとしても、他の仕事で週2日やってる可能性はあります。
坂東:なるほど。では、他の分野の仕事ということも含めて、平日1日は「教養(インプット)」に充てられているということですね。
越川:そうですね。あと、僕は個人的には親の入院する病院に通うこともあったりするので、やっぱり週休2日だとちょっと厳しい。教養と家族の対応を平日に1回入れるような形にしてます。
坂東:具体的にはどんな平日休みを過ごされているんですか?
越川:明日実は休みなんですけど、午前中は病院に行きます。午後はインプット。僕、大学で授業なんかも教えてるんですけど、生徒として学びに行くこともあります。
社会人セミナーとか、大学院の授業を受けに行ったりですとか。
読書は週7冊読むって決めてるので、それができる日に一気に読んでしまったりとか、そういったのをインプットの日にはしてますよ。
坂東:猛烈なインプットですね!越川さんも週4日週30時間労働ですか?
越川:そうですね。週30時間でAIがアラートを鳴らしてくるので、それ以上は仕事をしないようにしています。
坂東:じゃあ、越川さんもルールを守ってるんですね。
越川:守ってます。はい。
坂東:すごいですね。では、もう一つ質問を。時短をして生産性を高めることと、働きがいを両立することが働き方改革の成功だということですが、越川さんはどんな状態の時に働きがいを感じますか?
越川:実は僕は「残業削減」とか「働き方改革」っていう言葉はあまり好きじゃなくて。
坂東:そうなんですね(笑)
越川:はい。働きたいときは、健康が大前提で働くべきだと思ってまして、100年ライフという長いスパンの中で最適な時間配置ができればいいと考えてるんです。
その中で、「僕が仕事に対してクレイジーになれるときって、どういうときかな」って考えた時に、要件が3つあります。1つ目は、「誰かに頼られること」2つ目は、「心が疲れないこと」3つ目が、「生活の安心があること」。この3つが組み合わされたときはすごく仕事に魂を入れられるので、この状態であることが僕の働きがいですね。
坂東:なるほどね。安心感っていうのは、「生活面で」っていうところですね。
越川:そうですね。ずばり経済的な基盤がないと好きな仕事を選べないので、しっかりと稼いだ上で、仕事を選ぶ側に回らないといけないという意味が3番目ですね。
坂東:なるほど。面白い。うちの手放す経営ラボラトリーでは、ティール組織とかホラクラシーといった進化型組織について研究をしてるんですけど、ティール組織という概念についてはどのようにお考えですか?
越川:そういった意味では、うちのメンバーは39人全世界に散らばっています。実は日本以外にもパリとバンコクとシアトルとニューヨークと5拠点に存在しているんですが、全員テレワークで、全員週休3日で、副業が義務です。さらに、自由と責任を現場に渡してるのでティール組織と言えるのかもしれません。さらに面白い取り組みとして、会議を禁止にしてるんですよ。
坂東:会議を禁止!?
越川:はい。多くの会議って情報共有の会議になってしまいがちで、Zoomで会議ををやっていても会議中に6割の人が内職するので、あまり意味がないんですよね。なので、情報共有はSlackとかTeamsとかChatworkでやることにしています。
坂東:おぉ~。
越川:ただ、アイデア出しが目的のブレインストーミングは、Zoomよりも対面のほうが圧倒的に効率も効果も高いんです。なので、四半期に1回はコワーキングスペースや貸会議室を使って、メンバーを集めてブレインストーミングをします。会議はそれだけですね。
坂東:会議それだけですか!?
越川:はい。定例会議は禁止にしてます。
坂東:へぇ~。面白い。
越川:だから、お取引先でメンバーに会うとか、そういうことが多いですね、あと、社内で面白い取り組みは、エクセル利用の禁止です。
坂東:へぇ~。
越川:僕、エクセルの責任者だったのですごく心苦しいんですけど。エクセルは作業充実感で時間が奪われるので、データの分析と取りまとめは積極的にAIを使おうと社内で決めています。作業に時間をかけないという意味でエクセルも利用禁止にしました。
そして、アシスタントもオンラインに変えました。
キャスターという会社のオンラインアシスタントにお願いしています。キャスターは僕も執行役員やってるんですけど、オンラインアシスタントが30時間、僕の仕事を代わりにやってくれるので、資料作成も、打ち合わせのアレンジもしてくれます。アシスタントの方と実は会ったこともないんですけど、チャットでお願いすればパッと出てきてくれます。
もともとパワーポイントの責任者だったので、パワポで資料をつくるのは得意なほうなんですけど、僕が資料作りに1時間費やしちゃうともったいないので、手書きのシナリオや、つくり方だけアシスタントにお伝えして、アシスタントの人に全部つくってもらってという形で分業しています。
大山:徹底的に作業の効率化をしているんですね。この時間をどうすればよりパフォーマンスが上がるかっていうのを、瞬時に判断している感じですか?
越川:働き方改革のコンサルタントなので、自分たちが働き方を改革できてないと、お客さんに偉そうなこと言えないなと思っています。
自分たちが、ティール組織を含めて、新しいことに挑戦して、その学びをお客さんに伝えようというのがうちの会社のビジョン。だから失敗も多いですが、毎月のようにやってる新しい挑戦が学びになっている感じですね。
大山:それだけ挑戦し続ければそりゃ失敗も多いですよね。これまでの失敗例で、これはヤバかったなというのはありますか?
越川:そうですね。うちは副業を義務にしてはいるのですが、入社してはじめの頃は、クロスリバーの仕事がおざなりになってしまったりする人がいたりとか。あと、やっぱり会社の忠誠心が薄くなってしまうので、お客さんのアポに来なかったりっという人もいたのはたしかです。
だから、我々も学習しまして、最初はある程度心理的安全性をとらなきゃいけないということがわかったので、入社してしばらくはリモートでも対面の機会を増やしたり、雑談の時間を結構とって、「信頼関係が生まれたら自由にやってください」という方式に変えたら、なんとかうまくいくようになってきましたね。
大山:社員一同が一致団結するのは、なかなか難しいですか?
越川:そもそも全員が一致団結する必要はないと思っています。プロジェクト単位で仕事をしているので、プロジェクトの中で一体感があればいいなというのと、各プロジェクトの学びとか知見を他のプロジェクトに共有できればいいと思ってるので、物理的にも精神的にもつながりというのはそんなに必要ないかなと、いまのところ思ってます。
大山:目的ドリブンな感じなんですね。
越川:目的ドリブンですね。まあ、ちょっとえげつないですけど、「いかに時給を上げられるか」っていうゲームをやってる感じですね。
坂東:ゲームっていいですね。
越川:そうですね。もうゲーム感覚です。
大山:ゲームのスコア的なものは可視化されてたりするんですか?
越川:そうですね。プロジェクトごとの利益率なんかはデイリーで日別に可視化されますし、うちは報酬も全部透明化して全員見せてるので、月給が高いことでほめられることはなくて、あくまでも労働時間で割って、1時間あたりどれくらい稼いだかっていうので、みんなで競ってます。
坂東:なるほどねえ。
越川:だから、中には僕より稼いでいるメンバーもいますよ。
大山:へぇ~。
越川:彼はちゃんと利益出してるので、まわりがすごく刺激されますし、そういう働き方を見ていたら、エクセルに3時間4時間かけてるのは、ちょっとばからしくなってきちゃうので。一番の時給を上げるコツは、「勇気をもってやめることを決める」こと。これで自由度が一番上がるとわかりました。業務変革では、DXとかデジタル化とかIT化よりも、「まずはやめることを決める」ということを最優先しています。それで会社の贅肉を取って、生まれた時間でビジネス開発をするという循環を生んでいます。
坂東:徹底的に生産性を上げることを考えて生み出された時間でやりたいことをやる。会社の売り上げ、利益だけを上げることが目的ではなく、働く人、一人一人にとって幸福度が上がる働き方改革になると大成功ですね!
いや〜面白かったです。今日はありがとうございました。