手放す経営ラボラトリー所長の坂東です。
本日のゲストは、株式会社ロジック代表取締役吉安さん。
8年前に設立し急成長を遂げている住宅会社を、半年前に思い切ってティール型組織に移行されました。
(※「ティール組織」の解説はこちら)
ある日突然社長解任。原動力は父との原体験
創業の経緯は?
創業したのは8年前です。それまでは曽祖父が創業した地場のゼネコンで社長をやってたんですが、ある日クビになりまして(笑)
当時は会社を創業するなんて思ってなかった訳ですね。
そうですね。もともと小さい頃からリーダーシップをとるタイプでもなかったですし、
そもそもクビになるなんて思ってなかったですから。「こんな会社辞めてやる!」って売り言葉に買い言葉で言ったら、案外あっさりと「今すぐ出ていけ」と(笑)。それは引っ込みつきませんよね。
それで半日くらい転職活動をしたんですけど、なんかしっくりこなくて。自宅に帰ってカミさんに事情を説明したんです。そうしたら「よかったね。これで自由にできるじゃない。今まではなんかお父さんらしくなかったもんね。きっと自分で会社やってもうまくいくよ」って、その一言でハッとしましたね。
おぉ!その一言なんですね。
起業はなんとなくは頭にはあったのかもしれません。前の会社では雇われ社長みたいなもので、実権は会長が握ってました。だから、「もし俺が思い通りにできる会社があったらこうするのにな」って、妄想はしてましたよね。思えば子供の時からそんな考えはあったなあと。子供の時からずっと父親から押さえつけられてきたので。やりたいことを全て否定されるんですよ。今は、父親ともすごく仲が良いんですけどね。世の中の働く人って、私と似たような印象を会社に対して持っているんだろうな、というのは、ずっと思ってました。
それが当たり前ですもんね。
ですから、会社を創った時から、「今身にまとってる鎧や仮面をどうやったら脱ぎ去ることが出来るだろう」って、考えていました。
役職を全て廃止。ティール型組織へ。社員の反応は?
ティールスタイルを標榜されたのは去年ですよね?
明確に“ティール”という単語を知って「これだ!」と確信したのは、2017年ですね。創業の時に「誰もが働きたいような組織にしたい」と思ったものを何か表すとすると、それは“ティール”なのかなっていう気がしてますね。
実際に組織の運営方法もこれまでの役職を全部廃止して、それまで権限を持っていたマネージャー層も全員一兵卒に戻りました。
いや〜すごいですね!その当時社員数はどのくらいだったんですか?
50人くらいだったと思います。
役職者はどんな反応でしたか?
半々に分かれました(苦笑)。役職を廃止して半数のメンバーは気づいてくれました。「どうやら自分たちマネジャーは“こうあるべきだ”という“鎧”を着て、たいして仕事もせず、言いたいことを言うだけのおじさんになっていたようだ。」と。残る半数はネガティブな反応です。そのうち1人は「こんな会社無理だっ!」と言って辞めました。彼はうちの逆ピラミッドという組織の中で“逆王国”を作っていました。
逆ピラミッドっておっしゃいましたが、はじめからそんな発想があったんですか?
そうですね。うちの古株で、今も活躍してる社員がいるんですけど、彼はフラットな組織をずっと求めていました。「なんで社長だけ給料が高いんですか?」とか、そういった疑問を率直にぶつけてくるんですよ。今の感覚だと新鮮だし面白がれるんですけど、最初にその質問をされた時には面食らいました。「こいつ、どうしてやろうかな」と(笑)
確かに思いますね(笑)
でも、そういう質問と向き合う日々があったんですよね。もしかしたら彼の言ってることって組織にとって本質的なものかもしれないと思って。「社長だけが」っていう不平等感ってなんなんやろうって考えて行くと、彼らより給料を多くもらえるだけのことをしていると証明できる働きぶりだったり、そういう影響を与える存在でなければならないとか、そういうことを考えさせられましたよね。
ある時、彼から「同じ釜の飯を食う仲間みんなで出した利益。平等に割ったらいいじゃないですか」と言われて、「うう〜」って思いました。
どうしたんですか?その時そう言われて。
それに対して返す言葉がなかったんですよ(汗)実際その当時私は、狂ったように働いてました。ただ、それは当然。好きで会社作って自分のために働いてて、苦労してるなんて思ってないし、むしろ楽しいくらい。一方で、成果が出ていない人は評価が低いというのは、なんか違うのかも・・・と思って。だからもっと正当に評価される仕組みを作らないといかんなって思ったんですよね。そういうわけで、一期目の終わりには人事考課制度を作り始めていました。
人事考課制度を作れば納得感があるのでは?と考えた。
そもそも中小企業には、人事考課制度自体がないところが多い。基本的にはオーナーの頭の中で鉛筆なめなめしながら考える。それでだいたい当たる訳ですよ。ただ、働いてる側からするとどこまでやったらどう評価されるってのがわからない。だから、制度を作った時に平等で公平だなって思ったんですよね。その時はティールという概念がなかったので、これがすごく平等なものだって思ってました。
公平・公正という点に興味があったんですね。
管理するためではなくて、迷わないためにあったほうがいいんじゃないかって。私としては、社員へのプレゼントのつもりで、700万くらいのお金をつぎ込んだ。(創業間もなかったので)お金がない盛りでしたけど(笑)。
それはちょっと普通じゃない感じですね。
会社に帰って怒られました。「なんで今こういうところにお金使うんですか?」って。
理想の組織にしたいっていう強い思いがあったんですね。
私自身欲求はいろんなものにありますけど。利益を出して私腹を肥やすってことは考えてないですし、そうするなら社員や会社に投資したいと思ってます。
バランスがユニークですね。自分のやりたいことを実現したいという思いがありつつ。でも会社は自分だけのものじゃないし「みんなのために」と。そのバランスをどうとっていたんですか?
最初の頃は、私の一存だったので、みんなからすればいい迷惑だったと思うんですけどね。
「みんなのためにやってるんだぞ」ってことですよね。
ほんの少し前まで絵に描いたような達成型組織だったんですよ
ただ、その頃はいわゆる“達成型”で、理念経営の組織でしたから、結果的に管理がうまくできてたんじゃないかと思います。
結果的にはそうだったんですね
社員は皆モチベーションが高くて、キラキラしているように見えていました。多分今私が見たら「おぞましい」と思うほど(笑)。今は、理念経営の宗教っぽいところになんとなく嫌気がさして変わってきました。それが3年前くらい。教育にものすごく投資をした甲斐あって、みんな詰め込まれて一見キラキラしてたかもしれないけど、実際は無理やりお仕着せてそういう仮面をかぶらされてたんじゃないのかな・・・?と思ってます。
違和感があったんですね
業績も好調、社員もモチベーション高くキラキラしている中、次のステップに進んでいたなんて。いよいよ手放す時が来るんでしょうか?