経費の使い道をオープンにしたことで社員から大ブーイングを受けた「手放す経営ラボラトリー」所長・坂東さん。
その時ツイッターで「パンドラの箱を開けてしまった」とコメントしたのは境目研究家の安田佳生さんでした。
「それって、どういう意味?」と坂東さんが直撃インタビューする様子をライターの栃尾江美がレポート。
安田さんに切り込むつもりだった坂東さんでしたが、反撃に合い……?
【安田 佳生(やすだ よしお)】
境目研究家 / 株式会社ブランドファーマーズ・インク代表 / 株式会社安田佳生事務所 代表 / NPO法人中小企業共和国 理事長
<経歴>1965年生まれ。大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。現在はブランドファーマーズ・インク代表として、ブランド作り・メディア作りの支援、コラムの執筆や講演活動、ポッドキャストなどを行っている。著書に『千円札は拾うな』『自分を磨く働き方』など。
「仕事なのか私用なのか」を分けるものとは?
社長の給料も全部オープンにしてメンバー全員で決めています。経費も同じようにオープンにしたところ大ブーイングが起きたんです。
安田さんはその時「経費はパンドラの箱」とおっしゃってましたよね? あれってどういう意味ですか?
でも経費は「何にいくら使ったのか」という使い道がバレてしまうじゃないですか。
社長の好き嫌いで金の使い道を選ぶ部分はありますよ。
私的利用だと社長が認めていればまだいいですけど。
頑なに「会社のためだ」なんて言っていると社員から見たら“ちゃんちゃら”おかしい。
例えば、マンガを読んでいてアイデアがひらめくことだって、本当にある。
だからマンガの購入費を経費扱いにしようと思えばできる。でも、それって微妙ですよね。
私は前に社長だった時、オフィスで小説を読んでいたら社員に激高されたことありまして。
その覚悟がないと社長には言えないでしょうけど、多分みんな不満だったんですよ。
社長が会社で小説なんか読んでいることに。
でも私は本気で「会社のためだ」と思って読んでたんですよ。
その時に僕は気が付きました。つまり「社長室は、社員に隠れて小説やマンガを読むためにある」って。
意識の違いに気づいていなかった
「これは何かの役に立つんですか?」と。
また「手放す経営」では日本の文化を取り入れて次世代の組織づくりをしたい。
そのためにクオリティの高い日本人の精神や日本文化が詰まっている茶道はとても学ぶことがあると思っています。
でもその境目が難しい。例えば銀座や中洲の飲み屋さんだって社長は集まって来るじゃないですか。
「だから毎日飲んでるんだ!」って社長さん、たくさん知ってます。
そんなこと言い始めたら、盆栽からだって、骨董品からだって、柴犬からだって日本文化は学べます。
その場合「じゃあ社員はどうなんだ」となりますよね。「いくら以上の給料ならタクシーの方が安いのか」「体調が悪い時はダメなのか」「社員の健康はいくらの価値があるんだ」と、どんどん広がっていく。みんなが納得するのはとても難しい。
飲み歩いていたわけでもないし……。
社長だけが経費でおごるのは不公平?
経費に対する不信感を知ることが出来たのは良かった。
過去、会社を辞めた人にも、経費を不満に思っていた人がいたし。
ただ、信頼関係が崩れるきっかけだったのかもしれないとは思っています。
うちのメンバーがインターン生とご飯を食べに行くと自腹でおごるのに、社長と学生の交流会、二次会や三次会は経費で出していました。
それを「不公平じゃないか」とも言われました。
今は「社長がいれば経費から出す」というのをやめました。
「ランチ経費」を用意して担当メンバーが出します。
社長が連帯保証人になっているのなら、それは「社長が借りて来た社長のお金」と言えます。
上場すれば別だけど、オーナー企業がその部分であいまいになるのはある程度仕方ない。
「100%みんなのお金」という考え方は偽善だと思いますけどね。
新しい経営の形に必要なこと
つまり、社長はその分の給料をあらかじめ減らしてるんですよね。
社員も同じことを求めているなら、給料を経費分減らせばいいと思いますよ。
でもそれは嫌だと言うでしょうけど。
それは私がずっと経営をやっていてたどり着いた結論ですね。
立場の違いがあってもメンバーひとりひとりに納得感があって、主体的に働ければそれでいい。
納得感を高めるために情報をオープンにしようとしています。
だから上手くいけば凄く説得力がある反面、上手くいかなければ全く説得力がない。
自分で自分を追い込んでいるというのは、ある意味すごい決断ですよ。
<編集後記>
厳しいところにバシッと球を投げてくる安田さんに、なんだか居心地悪そうだった坂東さん。
「経費とはそもそもグレーゾーンなものである」という考えの安田さんと、真っ向から対立してしまいました。
ただ、手放す経営ラボラトリーでは、安田さんが諦めている領域にチャンレジしようとしているということも分かりました。
後編は、安田さんが目指している組織の在り方について、今度こそ突っ込んでいきます!<後編はこちら>