乾:コミュニティカンパニーってどんなものなんでしょうか?
武井:共同体的組織って言い換えると分かりやすいです。
一般的な企業って社内でも社外でも競争してます。
社員は、会社の目標達成のための手段としての労働力として会社と契約関係にあるんですよね。
でも、共同体的組織はそうじゃない。そこに存在すること自体を許される助け合いの集団です。
お客さんとの関係も内部の関係も、契約や上下とかそういうのがない状態で運営するんです。
コミュニティカンパニーってさらっと言ってますけど、ティール組織の次のレベルの組織のことなんです。
具体的にいうと共同利用、共同所有を通じて主客一体、お客さん、店員さん、株主、労働者の関係を超えて、株主でもありながら中で働くこともできるし、お客さんでもありながら株主にもなれるし、株主にはならないけど、働いて自分もお客さんになったり、自分が関わりたいように組織・集団と関わることができる。
その関係性を、法的にもきちっと整理をして整えてある会社なんです。
僕の中のコミュニティカンパニーの定義は34%以上の支配権を持つ株主が存在しない会社ですね。
手放す経営ラボで言うと、創業者の坂東さんの議決権は今何%ですか?
坂東:これまでは100%だったんですが、今、14.7%に格下がりしました。(笑)
武井:だから、坂東さんが「この会社はこれからこうする!」って言っても他の株主が「嫌だよ」っていったら、坂東さんの思い通りには法的にもできなくなってるっていうのがすごいところ。
坂東さんだけじゃなくて、会社を自分勝手にコントロールできる人がいないんですよ、本当に。
坂東:私の代わりに誰かができるわけじゃないし、たけちゃんもぬいさんもできないし。
武井:これ、マジでかなり世紀の大発見!
ティール組織の本の中には株式のこと扱ってないんです。
マネジメント論としては扱ってるんですけど、組織は法治国家の中で存在していて、法律に基づいたもの。
その中で極限まで自律分散化させたのがコミュニティカンパニーです。
だから実態は権力が法的にないから、ティール組織的に運営するしかないですし、それ以外の術がないんですよね。
誰かがオラオラやることもできますけど、そうした時に法的に争うと排除されかねない。
あとは株式自体が循環型になるので、バトンを渡していけるのがすごく重要です。
だからサステナビリティが高いんですよね。
乾:株が誰かのもので滞っちゃうと、事業承継で困ってるところ多いですもんね。
武井:めちゃくちゃ困ってます。株は個人の資産なんで基本的に子供が受け継ぐ。でも子供はやりたいことやり始めてるから、家業継ぐ人自体が減ってる。
でも、子供じゃないけど、その事業をすごく応援したいやりたいという人がいた場合、その人に株を渡した方がいいじゃないですか。社会全体として見た時に。
でもそれを阻害しているのは個人の株式。
そもそも資産として増やしていくという考え方ではなくて、みんなでその会社やその事業、その場所を守りたい人が引き継いでいくのが一番良いですよね。
これは不動産もそうですが、金儲けのために持つ人がいるからモラルハザードを起こす。不動産も会社もそこを守りたい人が持つべきですよ。これは珍しく、べきって言いました。
乾:今までは、会社が誰かのものだったんだけど、コミュニティのものになるイメージですね。
武井:そう、みんなのもの。
乾:法的にもみんなの会社になっていて、実際、サービス提供する側、される側という区別もなく、コミュニティのような形で運用されているのがコミュニティカンパニーですね。
手放す経営ラボで年末に忘年会をやったじゃないですか。
そこに集まってくるメンバーはラボの研究員として活動してたり、DXOのサービスを受けたお客さんがいたり、株主の方もいたり、みんな一体となってその場を楽しめたんですよね。
そういう関係の組織って本当ないんじゃないかな。今、手放す経営ラボはそんな形になってますもんね。
武井:なっちゃった。
坂東:なっちゃったな〜。まさかこういう風になるとは思ってなかったですけどね。
乾:株の比率が14%になっちゃった。(笑)
坂東:そうですね。私って何のためにいるんだろう?という葛藤も味わいながらコミュニティカンパニーをつくっています。
ごきげんな人と組織が増えちゃうという存在目的を持って活動していまして、ここに事業活動とコミュニティ活動がありますが、これはどういう感じなんですか?
武井:これが「関わりしろ」のデザインですね。
会社広げてお好きにどうぞってやると難しいのは、僕らがまだまだ貨幣経済の中で生きてるのでお金をお客さんからいただかなきゃいけないし、それをみんなで分配しないといけない。
法人格である以上はお金が回る状態もつくらないといけない。
これは現実問題ですよね。
それを整理した時に、事業体は一般的な会社のような働き方をしている。働いて報酬をもらう人たち。
で、コミュニティ活動の活動体の方は労働の対価として報酬をもらう関わり方ではなくて、その中で仲間を得たり、経験を得たり、知識を得たり、趣味だったり、この活動を通じて自分の本業につながるとか人それぞれ目的が違うんですよね。
で、こういう関わりしろをゆるやかに線を引いて整えることで、こっち側と向こう側みたいに見えてしまいかねないですが、線を超えたい人は超えたいですって言えばいいだけの話なので、ルールを整えて、コミュニティ活動のような非営利活動と、事業活動のような営利活動を同居させることが現実的にできるます。
かなり工夫しながら1年ぐらいかかって自然とこの形になっていきましたけど、僕もまさかこうなると思わなかったし、これは明らかにティール組織の事例には載ってない、さらに進化した形だと思いますね。
乾:現在、手放す経営ラボには研究員っていう活動体の人が120人近くいる。その人たちは毎月お金を払いながら活動しているんです。そういう関わり方が、関わりしろがあるってことですよね。
坂東:そして、私たちも会費を払ってますよね。払いながら活動してて、さっき言った金銭的な報酬がないじゃないか!みたいなことじゃなくて、人によって目的も違うし、受け取り方も違うってことですよね。
武井:そうですね。すごい極端なことをいうと成り立てばいいんですよね。公平性とかパフォーマンスが高いから給料が高いというのも1つの考え方ですが、自分の会社で十分な収入があって、暇だから遊びにきてますという人は金銭的報酬がなくてもいいよって言えますし、逆にこの活動で自分の生活を一部支えたいという人は月10万、20万とかそういうデザインもできますし、フルタイムの労働者ってなると、社会保険に入って、給与もある程度払うこともできる。
例えば業務委託だと、法律上契約関係にはなっちゃいますが、月3万円でいいよっていう人もいれば、10万円欲しいって人もグラデーションをいくらでもデザインできるんで、選択肢がすごい広いですよね。
乾:会社とか組織に貢献したからそのパフォーマンスに対して給料はいくらって決めていくと、その幅の中でしか関わりようがないってことですよね。
人それぞれ報酬だと感じるものが、お金以外にもいっぱいあるから、あえて決める必要がないっていう感じなんですかね。
武井:会社自体をゆるやかに開いて、みんな別の仕事もやってたりするからこそ、他の選択肢も含めた中でそれぞれが調整できる幅を持ってるから、ゆるやかに成り立ちやすい。
レジリエンスが高いというか。選択肢が多いのは豊かってことですから。
坂東:たけちゃんから何年も前に、これから境界線が溶けていきますよって、そんなのなくてもいいじゃないですかって言われてて、意味がわからなかったですもんね。
社員かそれ以外かっていう感じでしたけど、今結果的に境目がわからない。
普通だったら仕事は仕事。プライベートでやりたいボランティアがあったら外でやる。
分かれてるじゃないですか。だけど、僕らは溶けてる。
コミュニティという海の中でプロジェクトがポコポコ生まれていて。
表現が難しいんですけど、株主も増えて、24人の方に出資いただいて、その方達には、手放す経営ラボの運営会社であるブレスカンパニーの株価を上げることはないですって言ってるんです。
なので、出資する経済的なメリットはない。私たち事業は伸びていくといいかなと思ってますが、株価はそれでもあげないつもりでいるのでキャピタルゲインがないのに出資してくれるというところが不思議な世界。
出資していただいてなんなんですけど。それなのにお金を出してくれてありがたいなっていう。
乾:応援でしかないですよね。こういう活動をしているところがなくなったら悲しいからっていって出資してくださる方とかね。
坂東:お金がなくなっちゃうことで志が途中で切れちゃう。
それがもったいないからってそんな風に考えて出資してくれるなんて、そんな人が世の中にいるなんて素敵すぎる。
株主の人たちはお金だけじゃなくて知恵も貸して欲しいし、一緒に活動も手伝って欲しいし、観てるだけでもいいんですけど、一緒の仲間だよね、コミュニティの一員だよねという感じなんですよね。
乾:ただ株を分散させて、お客さんの垣根をなくしてコミュニティ化していくとこういう組織体が成り立つかっていうと違いますよね?
武井:それは難しい。たいていトラブルになりますね。
そういう相談が僕のところに何件もきてます。
最初は思いに共感して出資してくれたと思ってたけど、いざ株を手放す時に、株価あげて買い取って欲しいって言われちゃったり、外に大株主がいて、その人がちょっと気が変わったとかで経営権をよこせみたいな話がでてきたり。色んなことが起こる。
活動体と事業体の間でも、お金をもらってる人と貰ってない人。これはNPOでもよく起きるんですけど、手伝ってる人の方が能力高いとか、そういうこともたまにはあるわけで。
そうした時いざこざが起きたりしやすい。
こういうところは極論いうとすべてお金っていう存在のせいで起こってる不具合でしかない。お金が邪魔してるだけ。
今の貨幣経済、法律のもとでも、ある程度理想を実現できるように整えないといけなくて、僕は会社の整理整頓みたいなことばかりしてるわけですよ。
そのコツがあるわけで。ここはテクニック、知識。
知っていれば解決できることが7、8割じゃんじゃないかと思ってます。
あとはやっていく中でだんだん手に馴染んでくるんで、僕はそのコツを15年間かけて、失敗しながらやってきましたけど、ある程度コツが分かったんで、僕のコツ聞いておいた方がいいよとは思いますよね。
乾:そのベースの部分をDXOのテキストにまとめてます!
オススメ
(1)コミュニティカンパニーについてもっと知りたい方はこちら。
※以下の2つは内容に重なりはありますが別の動画です。多面的に知りたい方はぜひどちらもご覧ください。
・ショートバージョン(約14分)
・ロングバージョン(約54分)
(2)コミュニティカンパニー実践者の声
・プロセスにおける経営者のリアルな葛藤とは?(約13分)
・初の株主交流会を開催した時にいただいた株主からの言葉