「大阪で面白い組織作りをされている会社さんがあるみたいです」
ラボメンバーの一人から情報が入ると、すぐに所長のばんちゃんが反応した。
「よし、みんなで見学に行こう!」
さっそくラボ内で希望者を募ると、総勢10名ものモノ好きが集結!
1、2、3、、、あれ、一人足りない。。。
あ、いたいた!
こんな愉快なメンバーで、噂の「木村石鹸さん」にいざ突撃取材!!
さて軽く挨拶を澄ませると、さっそく着替えて工場見学へ。
人数が多いので、2班に分かれます。
1班は木村社長直々にご案内をしてくださいました。
木村石鹸、製品づくりのこだわりがスゴイ
冷蔵庫に菌を保管中。
なぜ菌を保管しているのでしょうか・・・!?
実は、実際に製品を使って菌が落ちるのか?テストするための菌を培養しているんだそうです。
製品化する前の菌検査の検査料って外注すると一回あたり〇十万? くらいかかるそう。また結果が出るまでに時間もかかる。
となると、自社でテストした方が、菌の管理料を考えても良いのだとか・・・。
↓こちらのプリンターっぽい機械は、洗剤の成分を調べるためのものだそうです。
クレームがあったときの品質チェックや、競合製品の分析などに使うらしいです。こんなコンパクトな機械でいろいろ調べられちゃうんですね。
↑ふわっふわの石鹸の元。薄い羽根状に加工し、ここからさらに細かく砕いて圧縮してくそう。
僕は石鹸をカッターで削ってリバースエンジニアリングをしたい気持ちになりました。(え?)
「この会社、終わってる」と言われてからのスタート
「社長、この会社は言ったもん負けです。もう終わってますよ。」
元々エンジニアだった木村社長が8年前に家業であった木村石鹸に戻られたとき、一番のベテランスタッフから最初の面談で言われた言葉です。
「あかん、なんとかせなあかん」
木村社長の心に火がつきました。
木村社長の前職はご自身で企業されたITベンチャー。
会社が大きくなるにつれ、だんだん自分が目指していた組織作りとは乖離していったそうです。
リカルドセムラー(※)に憧れ、そんな組織を作りたいと願っていたなかでの失敗。
※ブラジルにあるセムコ社の経営者。
「同じ轍は踏まんとこう」
そう心に決め、木村石鹸の事業を立て直すことに。
とはいえ、IT畑で18年。木村石鹸の事業は全てが門外漢。
そこで目指したのは
「現場で意思決定をしてもらう組織」
でした。
しかし「自分で決めて」と伝えても、「責任を取りたくない」と突き返される。
以前の組織文化のなごりを、根本から変えなければいけない。
そう感じた社長は、「責任」という言葉を定義し直します。
「責任とは、自分がやりたいと思ったことと最後まで向き合うこと」
結果責任ではなく、遂行責任。
やるだけやったら、失敗しても構わない。だから自分たちで判断して、自分たちで決めていい。
実は、木村社長が戻ってくる前の2年間は事業承継をして家族ではない方に社長をお任せされていました。そこで、会社の文化が違う方向にズレていったそう。
ですが、木村社長が定義したこの「責任」という言葉は、木村社長のお父様が事業をされていた時代のスタイルと同じでした。
そのことは、後から知ったそうです。
組織文化の醸成は1日にしてならず
メーカーの命は商品開発。
「まずは面白いと思ったものはお金や稟議は気にせずどんどん作っていこう」
そんなメッセージを伝えるために、最初の3年間は半期に1度の面談を全社員に向けて行うほど、徹底してコミュニケーションを取られたそうです。
あるとき
「食べられるシャボン玉があったら面白くない?」と社員の方に話を振ってみた。そうしたら2年くらいして「社長、できました!」と試作品を持ってこられたそうです。
「まだやってたんかい!」
文化が広がっていることを実感するのは、えてしてこんなエピソードだったりしますよね。笑
そんなことを繰り返すうちに、「試作品になる精度がめちゃくちゃ上がった」そうです。トライアルの回数を圧倒的に増やしたら、トライアルの精度が上がったという。まさに量稽古による質の向上。今は開発コストも意識しながら、何を残すか、何を選ぶかに少しずつシフトしていかれているそうです。
メーカーの命は商品開発。この文化を作っていったことが今の木村石鹸さんの土台になっているのだなぁと感じました。
社員さんにもお話を伺いました。
入社3年目の尾崎さん(女性)は、新入社員のときにいきなり「商品開発」を任されたそうです。「他の会社じゃ絶対できない経験をさせてもらっている」とのこと。素敵ですね。
入社2年目の河合さんは営業部門。思いついたことをどんどん試すのが習慣になっておられるようで。小さく試して、できそうだったら予算をもらいながら進めて行くのだそうです。
現場の方からもこういった声があがるということは、とにかくやってみる文化が醸成されているなぁという印象を落ちました。
報酬設計は覚悟の交換
最後に印象的だったのは、報酬設計について。
半年に一度、自己申告制で会社に提案をするそうです。出された提案を一旦マネージャー陣で話し合って、妥当かどうかを判断する。これを「投資額決定委員会」と呼んでいるそうです。
この制度を作ったときには、大きく報酬額(たとえば月30万だった人が100万)を上げて提案をしてきた社員がいたそうです。しかしそのあとの個別面談で、「本当にこの内容と貢献度でこの報酬が妥当であると思っているのかどうか」を確認したそう。
その結果「もし本当にこの内容でこの報酬が妥当であると思うなら、会社との価値観は合わないから、その価値を認めてくれる会社を探した方がいい。」そうフィードバックしたそうです。
お互い真剣に、どれほどの貢献度がどれほどの価値であるのかを議論する。
これを「覚悟の交換」と呼んでいました。
好きなことをやるということの裏に、それだけの覚悟の交換がある。
だからこそ自分事として向き合うし、本気でチャレンジしようという気になるんだと思いました。
最後にみんなで記念撮影。
お土産も頂いてごきげんな研究員たち!
(これからも応援してます、尾崎さん!)←えこひいき
※左から二番目がわたくし野見
以上、進化型組織見学ツアーレポートでした!!