8/11【手放すTALK LIVE#22】『金融業界のど真ん中から腐るお金へ ~元鎌倉投信 新井さんが手放してきたモノ~ 』ゲスト:株式会社eumo 代表取締役 新井和宏。 をテーマにトークライブを開催しました。トークライブのダイジェストを①をお届けします。 1~3回のyoutubeの再生リストはこちら♪
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金融ど真ん中、超エリートを手放し自分の「生きる」に向き合うストーリー
武井:本日のゲストは株式会社eumo代表の新井和宏さんです。僕は普段「かずさん」と呼んでます。
かずさんは、鎌倉投信という「良い会社にしか投資をしないっていう投資信託の会社を13年前に創業されてます。この鎌倉投信は金融業界では伝説なんですよね。
もともとかずさんはブラックロックという世界で1番資産運用している会社のファンドマネージャーをされていて、うん兆円という日本のGDPよりも多い額金額を運用されてたんです。
もうバリバリ!30代でもものすごい高給を稼いでいたんです。
一般的に見ると超勝ち組というか、超エリート。
なんですけど…
「なんかこれ違うな」ってことで、それを手放し、いい会社にしか投資しないという鎌倉投信を創業したんです。
かずさんは、バリバリのファンドマネージャーとして仕事している時、トマピケティの21世紀の資本論という本を読んで衝撃を受けたんです。
この本には「資本家の資本と経済成長は、資本家の資本の方が成長速度が速い。」と結論づけているんです。つまり、金持ちがもっともっと金持ちに成っていく社会システムでしかない。この富の格差は絶対に埋まらない、と。
金持ちがもっと金持ちになったら、一般人もその恩恵を被るから、金持ちが金を稼ぐことはいいことなんだっていう理屈、これが嘘だったということが数字で証明されちゃったんですよね。
当時かずさんが経営されていた鎌倉投信という会社は、上場企業の株式に対しての出資しかできない。そういった法的な枠組みの中で、「自分は富の格差を生む活動をしてしまっているのではないか」という疑念が湧いてきた。
これでいいのか?と気づいてしまって、勢い余ってというと失礼かもしれないですが、eumoという会社を立ち上げられたわけです。
それで僕も今、一緒に共同経営という形で「腐るお金」を作って、貯めるためのお金ではなく、使うためのお金、循環するためのお金、この人を応援したいというお金をもっともっと世の中に流通させていこうと、そんな活動を一緒にさせていただいております。
坂東:新井さんって、金融業界のど真ん中にいたじゃないですか。そういう方でも、格差は広がっていくばかりなんだよっていうのを知らなかったのが意外ですね。
新井:知ってるんですよ。暗黙の了解で。でもそれをリアルに突きつけられると、「やっぱそうだよね」って思っちゃったんですよね…。
ピケティの本と鎌倉投信始めた頃に出会っていたら感じ方が違ったかもしれないんですがね。
鎌倉投信が形になった頃で、さらにNHKのプロフェッショナル仕事の流儀という番組に取り上げてもらったり注目もされていた頃だったから、逆に刺さったんですよね。
1つの形ができあがった状況の中で、メッセージが聞こえたんですよ。
「格差が開いていく事実を見て見ぬふりをすることはできない」って。
このまま格差を生み続けるような仕事をし続ける必要性はないなと思っていて、鎌倉投信は必要な仕組みだけど、それを自分の「生きる」にしていいのか?っていう疑問が湧いたんですよね。
「人生でこれを最後にして良いのか」っていう。
やっぱり本や人との出会い、なんでもそうですけど、その時の自分の状態で見え方って変わってきますよね。
坂東:そうかそうかタイミング。鎌倉投資も形になって、日本一になって。
それだけ作り上げたっていうところで。ハマったという感じなんですかね。
新井:そうですね。「これを作りたかったんだ」って納得させようとしている自分と、「このままでいいのか」っていう自分と両方いるわけですよね。その葛藤があるわけですよね。葛藤の連続ですよ。
生きる目的が「お金」って変じゃない?お金の本質とは!?
坂東:そんな中で鎌倉投信を手放してeumoという会社を作られた。腐るお金である「eumo」という通貨ですね。共感コミュニティ通貨と言われてるんですけど、お金というものをずっと取り扱ってきた新井さんがeumoに至った経緯やeumoが何なのかということについてお話しいただいてもいいですか?
新井:ありがとうございます。eumoという言葉そのものは、Eudaimonia(持続的幸福)という言葉から来ていて、この言葉の1番前のeuと真ん中のmoをとってeumoっていう言葉にしてます。造語ですね。
なんでかっていうと、eumoって発音がユーロに近いでしょ?通貨単位に近いものがいいなと思って、それで短くしたんです。
Eudaimoniaっていうのは、その意味はウェルビーイングのいち属性なんですけれども、持続的幸福。分かりやすく言えば「生きがい」「働きがい」を感じられる生き方。これって、これからの時代すごく大事。
人間の生きる目的が「お金」って変じゃない?
だってお金って所詮ツールなのに、お金が完全に資本主義を支配してしまっている。
要はお金という土俵の上で皆さん踊ってるわけですよね。お金って絶対的なもののように扱われるんですけど、そんなこと全然なくて、あまりにもお金のパワーが強すぎて、それにみんな引っ張られちゃってるっていう、そういう感覚なんですよね。
だから本来お金のあるべき姿は、「目的化せずに手段である状態」。これができればいいんだけれども、あまりにもその仕組みの中でお金が強すぎたために、行き過ぎた資本主義が生まれてしまったんだろうと僕らは考えています。
じゃあどうやって修正していけば良いのか?
それについて過去いろんな人たちがトライしてるわけです。
例えば、昨今、電子マネーが普及してきて、スマホのボタンを押すだけでいろんな電子マネーが選べるような状況になってるわけじゃないですか。すると、そもそもお金ってなんだろうって思いませんか?
お金そのものには価値はあまりないですよね。
例えば1万円紙幣そのものはたかだか製造原価20円ぐらいであって、20円のものを1万円で取り引きしてるわけですよね。つまり価値がないっていう前提の中で、みんながこれをお金って思ってくれているから成り立ってるだけの話じゃないですか。
ということは、みんながお金と思ったらやっぱりお金なんですよ。
坂東:1万円もみんなが1万円と思ってるから、お金になり得ているということですね。
新井:そうなんですよ。だからみんなが共感するコミュニティのお金を、みんながそれぞれ定義すれば、100個位作ったら1個ぐらいいいもんできるんじゃないかっていう考えなんです。僕は基本的に他力本願なので、自分のアイディアが全てだと思ってません。
これからの金融はそういう発想も含めていろんなものをイメージしてもらうようなプラットフォームを提供するのが、役割だと思っているので、じゃあみんながその大切なものを大切にできるようなお金って、自分たちで定義できるようにしちゃえばいいなと思ってるわけですよね。
だから、コミュニティの中心となる。
お金を再定義する。循環するためのお金。
自分たちが守りたいものに、お金がちゃんと行くようにしてあげれば良くて、それはコミュニティにおけるお金が、ど んな風に使われるのかを自分たちで定義することなんですよね。
通常、富の再配分というのは、税で行われるわけですよ。たくさん儲けた人から税金を取って、それを福祉に充てるとか。
それが今、機能してないんですよ。
お金持ちの人たちが稼いでいるのは有価証券なわけですよね。それが1番税率が安いってどういうことですかって話ですよ。
なぜ税率が低いのかというと、流動性の高いものは海外にも行けちゃうので、逃げられちゃうんですよ。すると税金とれなくなっちゃう。だから国内に残しておきたいんですよね。すると税率下げるしかなくなるんですよ。それでどんどん税率を下げる。
結果、本当に真面目にやってる人たちから税をとる。要は動けない人たちから税をとる。これはもう再配分が機能してない証拠なんですよね。
武井:その通り。
新井:再配分の限界なんですよ。だったら自分たちのお金を定義して、その中で再配分すればいいんですよ。
腐るお金っていうことで、期限付きのお金。eumoの場合は3カ月で切れるんですけど、3ヶ月経って期限が切れたお金をどう処分するかは、コミュニティの中で決めればいいんですよね。
つまりコモンズ(共有資源)にするってことですよ。
武井:みんなのお金。
新井:そう。だからそれぞれが違うお金を定義するっていうのは、僕は素敵なことだなと思っていて。もう一回立ち戻るんですけど、みんながお金と思えばお金なんですよ。
坂東:eumoがお金だと思えばお金だと。
新井:そう。共感して、これが自分たちのお金であることをイメージできればいいんですよね。お金ってすごく言語性があるんですよ。自分たちの共通言語でeumoというお金を出すとeumoの人なんですねっていう風に、お互いが認識する。つまりこれが言語性ですよね。この言葉をしゃべろうとする人なんだって。
坂東:eumoを使ってることでメッセージが伝わるということですね。
新井:その通りです。
坂東:eumoを使うことで、共通認識ができてるわけですね。
新井:共感コミュニティ通過eumoには経済合理的な行動がなく、ギフトが循環する社会をつくっているので、いわゆる世の中のギバーの人たちが一生懸命giveしてるって、そんな共通認識があるんですね。
武井:ユーザーメリットがないんですよ。
坂東:ないっていうのはすごいですね。
武井:PayPayとかだと、使う人にこれ使うとお得ですよ。20%ポイント還元しますよっていう。だからユーザーの目的が自分が得をすることなんですよね。
だけど、eumoって上乗せして払う仕組みなんですよ。今も平均で8.5%ぐらいみんな上乗せして払っているんです。
坂東:例えば1000円のものを払うとしたら1080円わざわざ払うんですね。上乗せってチップっていうことですか?
武井:上乗せはデフォルトでついてて、ピッてスキャンすると最初からまずデフォルトで10%乗ってるんですけど。
坂東:本当にメリットないですね。笑
武井:でもそもそも目的が応援したい人に頑張って!って送るためのお金なんで、クラウドファンディングみたいなもんなんですよね。
坂東:だから対価交換の費用ではないってことなんだ。
武井:そうそう。まあ、ほとんどが応援するため。しかも3ヶ月で消えちゃう。消えちゃうんだったら、自分の好きな人に渡したいってみんな思うんですよ。
好きなお店や好きな人に大目に払うとか、あと個人間送金って言って、個人同士でいつもありがとうとかって言って、みんな結構eumoを送るんですよね。
だから送り合うことで循環するためのお金になります。
お金は増えない。奪っているだけ。
新井:よくお金が増えたとか言うでしょ。増えてない。
武井:誰かのお金を奪っているんですよ。
新井:増えたら、どこかで減ってるんですよね。みんなが豊かになるためには、このお金がちゃんと循環することなんです。増える行為じゃなく、ぐるぐる回ってる状態が何回なのか?回転率の問題です。
まずそこから認識してほしいなあと思って、この新しいお金の教科書って書いてるんですけど。
増えることってないんですよ。まずそこから考えましょう。
自分の手元に来たお金がいつもより増えたかどうかっていうことにしか関心がないから、損得にしか関心が行かないようになるんですね。
新井:例えば、この3人の間で1万円をぐるぐる回すとするじゃないですか、1ヶ月間に20回転すると20万手元に入ったってことですよね。
でも実際あるのは1万円だけでしょ。ここがポイントです。
経済は、この循環を知ることが大事で、循環が安ければ安い方が良いってことは、なるべく払いたくないって言ってるのと一緒なんですよ。
できるだけ払いたくないとなると、うまく回らないですよね。
だってたけちゃんに払うのは1万円じゃなくて8千円にしたい。坂東さんに払うのは6000円にしたい。いわゆるデフレそのものですけど、こういったものが続いていていては経済はうまくいかないんですよ。
実は、価格が下がること自体は、物やサービスが飽和してない状況の中では意味がある。
だから新しい商品は当然プレミアムが付いているので高いわけですよ。そこに競争する人が現れて参入して価格が下がっていくっていうところまではよかった。
それが行き過ぎるとどうなるかというと、児童労働とかそういったものに移っていくわけですよね。
つまり、自分たちが支払うものを減らそうという行為をし続けるとSDGsで言われていることは達成できないんですよ。
坂東:どこかにその分のしわ寄せが来るっていうことですよね。
新井:そう。だから、そうじゃなくてみんながハッピーになるようなお金の循環を作ればいいんですよね。自分達の経済圏をちゃんと定義するのはすごく大事。
つまり、こういう人たちと僕らは経済を作っていきたい。
経済は共感による分業なんで、僕ができないことを坂東さんがやり、僕ができないことを武井さんがやってくれてるだけの話じゃないですか。
そのありがとうをお金で表現してるだけに過ぎないですよね。損得で考えると、なるべく払いたくないっていう圧力がかかるんですよね。
だから共同体感覚がすごく大事。自分が得するっていう思考になってしまうと、自分の事しかフォーカスできなくなるんですよね。
そうすると社会が悪くなっていく。
みんなと、「幸せ」にフォーカスして行けるような経済メカニズムを作ってあげることのほうが大事で、みんながお金は変えられないと思ってるんだけれども、僕が伝えたいのは「お金は変えられる」ってことですね。
坂東:それが、この期限付きの腐るお金、eumoによって変わってくるということなんですか?
新井:発想が変わりますよね。つまり、「なるべく得をしよう」と思うと払いたくない。
坂東:払う時もちょっと舌打ちしながら。もっと安くならないかなとか思って。(笑)
新井:そうそう。そんなふうになっちゃったらみんな幸せじゃなくなるじゃない?
例えば、オーガニックなものって、当然、環境や人権に配慮すればするほどお金かかるんですよ。それ、わかってることじゃないですか。だから本当に信じられるお店たちに対して「ありがとう」を表現していく。「ありがとう」とお金を渡せるのであれば、お金を渡した相手から「ありがとうございます」と言われるのが変だと思えてくるんですよ。
ありがたいことじゃないですか。やってくれてるんだから。
それがいつの間にか、自分が損するのが嫌だって言い始めるんですよ。みんな家族だと思えばいいじゃないですか。少なくとも自分たちのコミュニティの中では。
坂東:会社もコミュニティって考えると、会社の中は損得での分業ですね。
新井:そうそうそうそう。
坂東:経営者はなるべく人件費払いたくないです。
新井:その時点でCreating shared value(共通価値の創造)がわかってないってことになります。
坂東:eumoの場合はプラスで8%とか10%を払うことによって、ありがとうを表現できるってことなんですね。
新井:そうです。でも、当然ながら「ありがとう」と言いたい先と言いたくない先があるじゃないですか。
坂東:わざわざ乗っけて払いたくないとかはありますよね。
新井:うん、それは自分で選べばいいんですよね。つまり、自分が払いたいところに払っていくことをしていけば、その人の思考が幸せになるんですよ。だって人はギフトしたほうが幸せになりますからね。
坂東:ギフトした方が幸せ度が高まるんですね。
新井:日本人の幸福度が低いのは、この「低下」という概念に縛られていて、「ありがとう」の表現ができないことによって、幸福度が下がってしまうことにあるんじゃないかと思っていて、わざと上乗せして払う仕組みを入れてるんですよね。
ギフトすることが習慣化されれば、その人たちはギバーになってギバーの人たちが、giveし続けても生きていけることが確立されれば、どんどんgiveするはずなんですよ。その経済の循環を「いい経済」って僕らは呼んでます。
坂東:お金に期限があることによってgiveする後押しになります。
新井:そうなんです。その後押しが欲しかった。例えば、私が農家で、板東さんがお金を持っているとするじゃないですか。坂東さんと僕しかいなかったら、明日には野菜が傷んじゃうわけですよ。すると野菜の価値が下がる。お金って腐らないから価値下がらないんですよ。
そしたら圧倒的に農業生産者不利じゃないですか。これが作る人の力を削いでしまうと、僕らは見てるんですよね。当然ながら社会実験なので試行錯誤ですけど、既得権益化しないという意味で、腐ってしまえば目的化しないですよね。お金を貯めようという概念がないので。明日には0になっちゃうんですよ。
だから、そうした場合に権力化しないお金のデザインができるんじゃないかと思って「応援するお金」をデザインしているんですよね。
坂東:応援するお金。なるほどね。
ブレスカンパニーもeumoの代理店なんですけれども今日は応援を受け付けております。寄付投げ銭ですね。
受け付けておりますので、もし今日良かったよっていう方がいたらですね。応援のeumoを払っていただけると嬉しいです。是非やってみてください。giveをですね。
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