今回のインタビューは21世紀の経営はコントロールしないが当たり前になる。(前編)の後編。
引き続き、株式会社Everforth代表取締役CEO森下将憲さんにお話を伺います。
「好きなことを見つけ、好きなことができる世界をつくる」と言うビジョンのもと、気持ちよく生きているように見える森下さんのリアルに突っ込みます。
「ギリギリからの起死回生」
坂東
ビジネスとして成り立たせるときに、事業としては波もあったり、会社として死にかけたことはありましたか?
森下さん
それはありますよ。
資金繰りは常に苦しかった。我々のこの思想だとIPOするような会社ではない。簡単に資金調達もできないし、自己資金で回すのは相当苦労しましたね。しかも、プロダクトとしてすごく分かりやすいものというよりは、抽象度が高いものを売っているのでセールスも難しいですし。そんなこともあり、Everforthという会社は今年ウイングアークという会社に売却しました。
資金繰りは常に苦しかった。我々のこの思想だとIPOするような会社ではない。簡単に資金調達もできないし、自己資金で回すのは相当苦労しましたね。しかも、プロダクトとしてすごく分かりやすいものというよりは、抽象度が高いものを売っているのでセールスも難しいですし。そんなこともあり、Everforthという会社は今年ウイングアークという会社に売却しました。
坂東
そうなんですか!
森下さん
はい。ですが、全くネガティブではありません。ここが結構面白くて、こんな個人の思想性に紐付いた会社なのに、資本と思想を分離して資本側だけを売ったんですよ。だから思想は残っている。私の思想がこもった会社なので、これはこれでやっていこうと思っています。まあ、クビにされる可能性はありますけどね(笑)
坂東
買収した会社の目的や、メリットは?
森下さん
彼らのサービスとして伸ばしたい事業性がとても近いということと、採用ですね。彼らのビジネスがこれから規模を拡大していく時にエンジニアが全然足りないし採用が大変。ただ弊社にはありがたいことに月に120〜130人程エンジニアから応募があります。
坂東
それはすごい数ですね。なるほど。Everforthは非常に採用もしやすいと。
森下さん
そうですね。ありがたいことに。
坂東
だから、買収した親会社からしても、そこで採用もしやすいし、ひいては自分たちのグループにも下地があるだろうと。
森下さん
はい。
坂東
じゃあ、経営は基本的に任されてると。
森下さん
そうですね。
坂東
資金繰りの問題がなければビジネスは非常にやりやすいし、より安定性が増したわけだ。
森下さん
もう、めちゃくちゃ安定してますね。
坂東
そういう意味ではスッキリですね。
森下さん
そうですね。
「結局はどうありたいのか」
坂東
「森下さんみたいな会社つくりたいなと思うんだけど、どうしたら良いか」と聞かれたら、どう話します?
森下さん
結局「どうありたいか」でしかないってことですよね。正解はない。従来型の組織やピラミッドが悪いわけでもないし、そこに合理性はたしかにある、それは21世紀になっても間違いなくまだあり続けると思います。
経営者も含めてみんな安易に正解を求めすぎなんでしょうね。「ティール組織」という本が売れるのもそうだと思う。ただあの本にも正解なんかない。
経営者も含めてみんな安易に正解を求めすぎなんでしょうね。「ティール組織」という本が売れるのもそうだと思う。ただあの本にも正解なんかない。
「こういうふうにしたいかどうかでしかないでしょ」と私は思ってます。
坂東
ただみんな正解を知りたい。答えが欲しい。
森下さん
すごい難しいと思うんですよね。私は今お話したとおりで、色んなことを統合してこれをつくり出してるので、部分部分でやったときにどうなるかは分かりません。ただ、「なるべくみんなが気持ち良くやったほうが生産性上がるよね」とか当たり前の話もあるし、部分部分で取り入れやすいこともあるんだろなとは思います。ただ、自分では試したことないので。なんとも言えません(笑)
坂東
統合してやってるというのは、つまり根底にあるベースの思想ですよね。「どうしたいのか」っていう。
森下さん
そうですね。
坂東
「どうしたいのか」っていうのは、「どうありたいのか」みたいなこと?
森下さん
どうなりたいのか、どういう世界にしたいのか。その中で、それに紐付いてこの会社とこの事業がある。なので、私の中ではそれが自然と、合理的に繋がっているんですが、すげー儲けたいっていう人が、だからこそ組織をティールみたいなものにする!というのも間違ってはないと思います。それが上手くいく可能性も全然あるとは思うんで。まあ、正直何も言えないですね、ちょっと。
「Everforthが示してくれた未来へのヒント」
森下さん
このやり方はエキセントリックですけど、でも、最近、働き方改革とか、色々こういうものを取り入れる会社ありますけど、我々のようなスタートアップがここを突き抜ければ大きな会社にそれだけでも買収されるっていう実例ではありますよね。
坂東
たしかにね。そうですね。
森下さん
組織のこういうエッセンスを大企業が取り入れたいという流れが今後出てくるような気はします。ここまで本当に振り切ってやって優秀な人が集められれば、それだけでも買いたいという会社が出てくるくらいの価値は作れる。エッセンスを学んでできるかっていうと、また別の話なのかもしれないですけどね。
坂東
こういった組織づくりのエッセンスを学んで、自分たちの組織を変えようっていうことはなかなか難しいですから、大企業からしたら、こういう組織を経営者ごと買っちゃったほうが早いということもあるということですね。
森下さん
そうですね。その文化を部分的に導入してシナジー効果を生んだり、全体の採用力向上に繋がったりはすると思います。
「今後の事業」
坂東
今後の事業についてはどうお考えですか?
森下さん
プロジェクトとか会社をたくさんつくりたい。私、1,000個ぐらいつくりたいと思っていて、それを1個1個今つくってってるっていう感じですね。今まではアパレルやったりとかメディアやったりとかしたんですけど、「かわいい」に特化したモールやったりとか、オタクのモールやったりとか、あと、ドラッグストア向けのサービスやったりとか、いっぱい色んなことがあって、たくさんのプロジェクトの中からみんなが好きなことを見つけてジョインし、そこで活躍し、提供されるサービスがユーザーや会社にとっても気持ち良くなっていく状態をたくさん作っていこうと考えています。
坂東
「たくさんつくる」っていうのは会社を大きくしたいっていうことではなく、たくさんの人が自分の好きな人を見つけられるというような、そういう世界をつくりたいということですか?
森下さん
そうです。
坂東
「何のために」が常に連動してるんですね。
森下さん
そうですね。
坂東
創業時からの思いが一貫してぶれていない。今後、プロジェクトやチーム、会社が増えていくことで、好きなことを見つけられる人が増え、好きなことができる世界が広がっていくということですね。そのスピードもどんどん上がっていっている感じですね。
森下さん
上がっていきますね。
坂東
いや〜面白い。森下さんがやってこられた組織づくりを急に真似るなんてことはなかなか難しいかもしれませんが、これを読んだ経営者はたくさんの気づきが得られたのではないでしょうか?
本日はありがとうございました!
本日はありがとうございました!
編集後記
「生きる意味なんてない」と、真顔で答える森下さんに衝撃が走った私でしたが、宇宙視点で見ると本当にそうだな、と。
じゃ、面白い方がいいじゃん!って単純な発想。何だか、いろんなことを小難しく考えがちな私にとっても新鮮な息吹を送り込んでくださいました。
「どうありたいのか」まずは個人のビジョンでこのことをじっくり考えてみようかな。