ある企業で5ヶ月間にわたって「給与制度プロジェクト」をサポートしました。
新しい給与制度の導入を、社員も交えて話し合いながらつくっていくプロジェクトを終えてのふりかえりと、参加したプロジェクトメンバーの気づきや感想をお伝えします。
また、新給与制度のもと行われた社長面談でも予想外のことが起きました。 お金のことって、タブー感が強いですよね。 でもそれに向き合って、乗り越えた時に生まれる信頼関係や、納得感は得がたい価値があります。
■鈴木史郎さん プロフィール
「作りたいのは、エンジニアが光り輝ける場所」
そう語るのは、株式会社鈴木商店の代表、鈴木史郎氏。
株式会社鈴木商店の創業は2004年。鈴木氏の父親が経営していた印刷会社を業態変更する形で創業した。
鈴木商店は現在進化型組織に組織改革を実行中。
坂東:皆さん、こんにちは坂東孝浩です。
小野:こんにちは小野です。
坂東:今日は、ある会社のプロジェクトが一つ終わったので、そのことをお話しします。
大阪のIT系の会社で、「給料デザインプロジェクト」という給与制度を新しく決め直すことになりました。その会社は2018年の秋に進化型組織化をしまして、2019年から僕がサポートに入らせてもらいました。
給与制度を刷新したい。今まで社長が1人で決めていたのをアップデートしたい、と。そのプロジェクトは、社員の中で有志を募ってスタートしました。それが5ヶ月位かけて終わったので、そのことについて話したいと思います。これまでの流れを小野さんは知ってるんだっけ?
小野:はい。編集長がTwitterで見つけて、メッセージを送って…
坂東:そうそう。うちの会社がティール組織(進化型組織)を導入するらしいというのを社員の方がTweetしていて、それを編集長の大山亜矢子さんが見つけて、「取材させてください」と連絡をとったのが出会い。
その時は取材で終わったんだけど、何ヶ月かしてプロジェクトをサポートもらえないかという話をもらいました。
それがちょうど10月末で一区切り。最後、振り返りのミーティングをしたんですけど、それがすごいよかった!
普通、会社の給与制度とかって、誰かが決めるものというよりは、社長が決めたり、人事が決めたりって感じで、一般の社員が決めるという事例があまりないよね。
小野:ないですよね。
坂東:そんな事考えもつかないよね。僕たちも社内で給与の話をしていても進まないじゃん。
小野:いや、希望があったとしても言いにくいし。他の人がそれに対してどう思うか気になるし…
坂東:他の人の給料をどうやって決めていいか分からないし、そんな視点で考えた事がないというか。そもそも、給与は会社が決めるものだと思っているから、「決め方」を自分たちで決めるとなるとかなり難しいわけで…そこにチャレンジしてくれて、とてもありがたかった。
給与制度を決める時、ほとんど評価制度とくっついてくるんだよね。どんな評価をしてそれが給与と紐づいていくのか、という話になるので、給与の決め方だけに留まらなかった。
チームに分かれて評価制度と給与制度について、お互いに仮説を立てて考えて議論していったんですけど、時間も結構かけていった。
小野:みなさんの評価なども全部オープンなんですか?
坂東:そこではまず「仕方」を考えるので、自分たちの評価は置いて議論していった。
最後終わった時に、
「評価と給与というのは、会社にとってすごい大事なことだから、それを自分たちで考えていくというのは、自分たちで会社を作っているんだ、という実感が得られた」
とか、
「自分達が会社に関わっているという感じが強く持てた」
とか、
「このプロジェクトには、他の社員の人にももっと関わってほしいと思った」
こんな感想をいってくれたり、社員の人の手応えや充実感が伝わってきたのでそれはすごくよかったなと。
小野:なんか分かりますね。モチベーションも変わりますよね。給与はグレーの部分が多いし、実際の売上げと自分たちの給料の割合が分からないから、頑張っても変わらなかったりするし、中身を知れて納得できたら働き方も変わりますよね。
坂東:ただ今回は結局、評価や給与の決め方は曖昧なままで行こうってことになって。
小野:やっぱり。でも前よりは曖昧さなども少しはクリアになったり?
坂東:前は社長が一人で決めていた。今回は基準は特になくて、社長と本人しか分からないんだけど、ただ月に一回、全社員からアンケートをとるという事になった。
他の社員のパフォーマンスのコメントを書いて、それを元にチームでミーティングをしようという事になって、それをまず一回だけやってみた。
これは良さそうだという事で続けていくことに。
普段から社員同士の関係性がよくなるような積み重ねができていたり、5ヶ月間、議論をし尽くした、その過程の中で納得感が得られたこともあって、「あとは社長に任せよう」という感じになったんだよ。
小野:なんか…すごくいいですね。5ヶ月間が意味があったんですね。
坂東:大事なのは納得感があるか、ということ。
それから、給与を決める際には自己申告を社長にして、社長と面談をして社長が最終的に決めるという事になって。社長が1人1人の社員に対して2時間以上時間時間かけて準備したという。
小野:社員に対する愛を感じますね。
坂東:社長はもともとすごく情熱を持った方なので。それが社員の人からよかったという声が出ていて。そういうのって伝わるよね。そこまで考えてくれてたら、分かりましたってなるよね。
小野:それ嬉しいですね。2時間の中で自分だけのことを考えてもらえるって、色々気づけますね。
坂東:今までも社長面談はやっていたけど、忙しかったりでそこまで時間をかけてやってなかったみたいで。それを実際やってみて、社長自身もこれが社長の一番大事な仕事なんじゃないかと思ったと言っていて。一人一人について考えて全身全霊でフィードバックしてコミュニケーションをとるということの積み重ねが大事なんじゃないかと。こういう信頼関係のベースがあって納得感があった先に制度があると思うんだよね。僕自身制度はできるだけシンプルな方がいいと思っているし、評価制度や給与制度を時間をかけてきちっと作ったらそれが業績に繋がるかといったら、必ずしもそうでなかったりするし、なので今回はその運用や制度はシンプルなんだけど、お互いのコミニケーションやフィードバックには時間をかけるってことになってすごくよかったなと思う。それに手応えを感じてたのがうれしかったっていう話です。
その時に自分たちだけでやっていくと、例えば社長主導で社長が議長になるとお金も絡むしやりずらかったりするけど、僕たちみたいな存在がサポートすることで、スムーズに効率よく進むということに価値を感じてくれてたのがありがたかったです。
そんな仕事がこれからもできて進化型組織の導入が進み進化型組織が増えていけばいいなと思いました。
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