このところ、かんぽ生命の不正契約問題がクローズアップされています。
その背景には「現場に過剰なノルマがあったから」と言われています。
実際私の妻も、郵便局に行くたびに(主にメルカリの商品発送で、笑)窓口で毎回保険を勧められて「毎回断ってるのに、しつこいんだからー!」とグチっていました。
私も昔はゴリゴリのプッシュ営業をやっていましたから、職員に対する締め付けのほどは想像がつきます。
先日、かんぽ生命は2019年度の営業目標や販売員のノルマを廃止すると発表していましたが、私は違和感を覚えました。
それは、今のかんぽ生命においては、営業を強化しなくてはならない事業があるからです。
まず当然ですが、かんぽ生命(も含めた日本郵政グループ)は、経営を維持していかねばなりません。
民営化されたとはいえ、全国にはりめぐらされた約24000店舗の郵便局とサービスを、簡単に事業を縮小したり、廃業するわけにはいかないでしょう。
事業の維持のためには売上が必要です。
しかしその一方で、かんぽ生命には商品力を高めることが難しいという事情がある。
新商品の発売や新規事業を開始するには、他の生命保険会社の経営を圧迫しないようにしなくてはならないそうです(※)
つまり、事業は継続させねばならないが、武器が弱い。
この場合・・・営業を強引にでも頑張るしかないわけです。
もしそうならば、
目標達成に最適なピラミッド型の組織づくりを行い、
営業のノルマを設定し
指示命令と管理を徹底し
営業に力を入れまくっていく
ことが、合理的な組織づくりだと思います。
(好き嫌いの問題では言っていません。もちろん私はしたくないです)
では、今回はなにが問題だったのか?
これはノルマがあったかどうかではなく、会社側の管理統制が中途半端だったということに尽きます。
ノルマをきつくすれば、当然職員は売りに走ります。
「バレないければ、多少ヤバいことをしてでも達成しなくては…!」という思考回路にもなるでしょう。
ですから会社側は
「社員は当然、ギリギリの営業をするだろう」
「不正取引などの事態が起きてもおかしくない」
ということを見越しておかなくてはいけません。
そして、絶対に不正が起きないように注意したり、何かあった場合には即時対応できる体制を取っておくことが当然かと思います。
(民間の会社なら厳しく手を打っているでしょう。)
それを「不正を起こすなんて社員のせいだ。そんなことをするとは思わなかった」などと言ってみたり、何万件も不正が起きるまで把握できなかったなどとは、脇が甘すぎます。
では、かんぽ生命の組織づくりとして、私たちのテーマとするティール組織などの進化型組織に向いているのか?
社員の自主性をもっと発揮していく形の組織づくりができるのか?
それは、無理です。
なぜか?
進化型組織では“自主性の発揮”がポイントになります。
それには前提として、会社の存在目的が明確であり、かつ社員が納得感を抱けるものであることが必要です。
しかし…かんぽ生命の場合はそれがあるようには思えません。
先程も触れましたが、客観的には「会社を維持することが目的」になっているようですし(公共性の高い事業だという背景もありますが)、商品力が長けているわけでもない。
「自信をもって売れるような商品でもないものを何のために売るんだろう?」という職員の疑問を、解消することはできないでしょう。
組織の求心力が弱いのに、個々の意欲や主体性を発揮させていく組織づくりをするのは難しい。
そもそもティール系の組織は万能ではありませんし、逆にヒエラルキー型組織が一概に悪いとも思いません。
(※「ティール組織」の解説はこちら)
(ただし時代に合っているか?とか、これから若い人材に受け入れ続けられるか?ということは別です)
上記の理由で、かんぽ生命のような会社はピラミッド型の組織づくりが理にかなっていると思います。
かんぽ生命は、郵便局という確固たるブランドがあります。
これは他にはない抜群の「武器」です。
こちらから出向かなくても来店してくれるし、基本的に信頼を寄せてくれています。
そんな会社はなかなかありません。
ですから、ノルマはあるにせよ、きちんとした売り方で、不正は徹底的に防ぐ組織づくりを整えておけば…
今後も高齢者を中心に(永遠ではありませんが)売れ続けていくことができるでしょう。
※ ほかの生保各社と比べて、販売に関わる制度や商品設計・認可などの点でかんぽは自由度を欠いていたと指摘する声もある。