自社に進化型組織をどのように導入するのか?
その方法について、以前「ティール組織 導入4つのステップ」に書きましたが、それぞれのステップについて触れていく第三弾。
(※「ティール組織」の解説はこちら)
今回は「ガイドラインのデザイン」についてです。
ディテール①ティール組織導入のステップ「事前準備〜問いを立てる〜」はこちら
ディテール②ティール組織導入のステップ「見える化」はこちら
※手放す経営ラボラトリーでは、ティール的な概念を、実践可能な進化型組織デザインのフレームワークにしています。
コンセプトは「人が集まる組織づくり」です。
ガイドラインとは?
ガイドラインとは、セルフマネジメントを機能させるためのものですが、改めてセルフマネジメントとは何かというと、主体的な意思決定のことです。
最終的な意思決定を誰がするのか?
通常の組織であれば、社員が稟議をあげたり提案をして、それを上司が承認するプロセスで、意思決定は上司がしていると思います。
しかし進化型組織では、最終的な意思決定を上司や部下、関係なくそれぞれの社員自身がするところが、通常の組織と決定的に違います。
このメリットは、幾つもあります。
セルフマネジメントのメリットとデメリット
まず主体性の発揮です(これは当然ですね)。
そして、判断スキルが向上します。
「仕事とは判断である」と言われるほど判断は重要です。
自分で判断を重ねていくことで、仕事ができるようになります。
そして、エンゲージメントの向上です。
仕事において主体的に自分で決められるということになれば、当然やりがいが増しますし、その会社に対してのロイヤリティも高まるでしょう。
結果として、パフォーマンスの向上、事業のスピードアップが実現できます。
ただし、スピードアップについては即時というよりは長期的になるでしょう。
一方、デメリットとしては(短期的に)スピードが落ちる可能性があります。
判断を任せていくということになると、慣れるまでは部下とのやりとりや、示唆、問いかけなど時間がかかります。
トップダウンでパッパッと何でも決めていく方が、短期的にはスピードは速いでしょう。
もう一つのデメリットは、判断ミスによるロスです。
判断が上手にできないうちは失敗もありますよね。
上司は本当に“できる人材”なのか?
先ほど述べたデメリットは“上司の方が判断力が高い”“スピードも速い”あるいは“主体的である”という前提に立っています。
しかし、多くの組織を見てきて、必ずしもそうではないケースが見られます。
上司の方が意欲的だったり判断に長けているとは限らない。
あるいは新しい事業に対しては上司がついていけていない場合も多かったりします。
今後、環境の変化が激しくなればなるほど、社会人経験が長い人の方がよりよく判断できるとは限らないケースが出てくるでしょう。
個人やチーム単位で主体的に判断ができるようになった方が、変化への対応もしやすいし、事業のスピードも速くなる。
それが、セルフマネジメントを進める目的なのです。
とはいえ…部下にどんどん意思決定を任せていくのは怖さもありますよね。
そこで、ガイドラインのデザインが重要になる訳です。
ガイドラインづくりのポイント
ポイントは3つあります。
一つは「意思決定の範囲を決める」ことです。
なんでも好きにやっていいぞ!
ではなく、個人やチームの役割や実力に応じて、どこまで意思決定していいのかという範囲を決めておくと、無茶苦茶なことにはなりません。
二つ目は、意思決定をする判断基準を明確にしておくことです。
判断基準とは、
個人的に好きだからやる。やりたいからやる。
のではなく、
ミッションに沿っているか?事業の成長につながるのか?
です。
つまり
「なんのためにやるのか?」
これを常に念頭に置いておくと、判断が間違いにくくなります。
ポイントの三つ目。
意思決定のプロセスを決めておくといいでしょう。
ティール組織では「助言プロセス」という言葉で説明されていますけれども、これは意思決定をする前に、利害関係者にアドバイスを求めるというプロセスを踏むという意味です。
適切なフィードバックや意見がもらえることで、判断の精度が高くなります。
この際大事なのは、アドバイスを求められた上司が意思決定をしてしまわないこと。
アドバイスを聞いた上で、最終的には自分(部下)自身で決める。それが大事なのです。
まとめ
というわけで、上記のポイントを押さえながらガイドラインのデザインを是非進めて進化型組織を導入していただきたいと思います。
ちなみに…ガイドラインづくりは、突っ込んでいくと、評価制度や給与体系とも絡んできます。
結局、意思決定の権利だけを部下に渡しても、その後の成果を上司が評価するとすれば、部下は本気で自主的に取り組むでしょうか?
いくら「好きにやっていいよ」と言われたところで、「失敗したら評価が下がる。それなら上司に答えをもらった方がいいじゃん」と思いますよね。
結局、評価する人の顔色を見ながら、意思決定をするようになるでしょう。
つまり、社員のセルフマネジメント=主体的な意思決定を引き出していくならば、
★評価を、誰がどのようにするのか?
さらには、
★給料を誰がどのように決めるのか?
というところまで連動していくということになります。
すぐにそこまで取り組むのは難しいでしょうが、その点は念頭に置いておいた方がいいと思います。