進化型組織と呼べる経営をされている
株式会社ソニックガーデンの代表取締役社長、倉貫義人さんが
2019年2月に出版された本です。
ソニックガーデンはシステム開発会社ですが「納品のない受託開発」
というユニークなビジネスモデルを展開。
(船井財団「グレートカンパニーアワード」ユニークビジネスモデル賞受賞)
また会社経営においても
「本社オフィスなし」「通勤なし」「上司なし」「評価なし」「売上目標なし」「教育なし」といった
常識では考えられない、
まさに進化型組織と呼べるような独創的な取り組みをしています。
この本ではそうした自社での取り組みが具体的に書かれていて、とても刺激的です!
Q.なぜ「管理ゼロ」ができるの?
この本を読む人がいちばん知りたいこと、ですよね。
「いやいやまさか、いっさい管理しないなんてありえないでしょ〜」
って、私も思ってました(笑)
著者の倉貫義人さんは、
「管理をなくすことが究極のマネジメント」というテーマを掲げて、
様々な取り組みをしています。
ただし、管理ゼロのマネジメントを行うにあたっては前提条件があります。
それは「管理しない方が、成果があがりやすい仕事かどうか?」です。
世の中にはたくさんの仕事があります。
単純作業や、スキルが要らない仕事については、管理した方が効率が上がったりします。
一方で、新しい価値を生み出す提案や、創造的な仕事においては、管理しない方が生産的になるはずだよね、という前提なのです。
「創造的な仕事をしろ!」と指示命令されたり「付加価値を50%つけなさい!」と数値管理されても
それで実行できるかというと微妙ですよね・・・
(多くの企業ではそうしたマネジメントが行われていますが)
ですから、管理ゼロのマネジメントは、どの企業にでもあてはまるわけではありません。
「どうやったら管理を手放せるのか?」と考える前に、「そもそもウチの仕事は、社員が創意工夫したり
主体性を発揮した方が、成果が上がりやすい仕事なのか?」
という点についてチェックをしてみましょう。
Q.管理を手放して成果をあげるポイントは?
本書ではたくさんの取り組みが紹介されていますが、私が特にグッ!ときたのは2つです。
① 急募(急ぎの人材募集)をなくす
ソニックガーデンでは採用をとても重視しています。
その“重視っぷり”がハンパない。
一人採用するのに、なんと1年から1年半も時間をかけているのです!
まるで、男女が出会って→つきあって→結婚を決める、という“恋愛結婚”のような感覚ですね…!
なぜ、こんなにも時間をかけているのか?
それは、管理をしない「セルフマネジメント型の組織」で活躍できる人材かどうかを見極める際に、一般的な企業とは異なる下記のようなポイントがあるからです。
★会社の価値観と合うかどうか?(ヒエラルキー型の組織と考え方も、組織文化も異なるため)
★セルフマネジメントができるかどうか?(管理職がいないので、自己管理ができる人材であることが必要)
★信頼関係を築けるかどうか?(信頼関係をベースにした、管理ゼロの進化型組織体制なので)
こうしたポイントを確認するためには、数回の面接では難しい。
そのため、時間をかけて、お試しで働いてもらったりしながら、信頼関係をつくった上で入社してもらう、というカタチをとっているのです。
管理がない進化型組織を実現するために、入社後の教育を充実させるのではなく、管理が必要なく信頼関係をつくれる人材の採用に徹底的にこだわる。
そのため、ソニックガーデンでは、会社の事業計画に合わせて人を増やすのではなく、
人を採用してから案件を受ける、というスタンスにしています。
つまり、会社の成長ありきではなく、人ありきの経営。
これってコトバにするのは簡単ですが、マネするのは難しいですね。
どう経営するか?という根本に関わるテーマですから。
② ザッソウを増やす
売上目標も、評価も、教育も、これでもか!という位に
断捨離しまくっているソニックガーデンが、あえて増やしているもの。
それが「雑談」です。
私は勝手に、一人ひとりがモニターに向かって、黙々と仕事をこなしているんだろうなあ、
などとイメージしていました。
なので、社員同士が雑談することは推奨していると聞いて、意外な感じがしました。
なぜ雑談を増やすのか?
それはソニックガーデンでは、作業的な仕事よりも、創造性を求められる仕事が多いからです。
そうした仕事の場合は、お互いに相談したり、意見交換することで、いいアイデアが生まれたり、抱えている課題の解決に至ったりするのです。
では、どうしたら相談しやすい環境をつくれるのか?
ひとつには、人間関係をつくっておくこと。
ふだんから雑談していれば、お互いの人となりも知ることができるし、声をかけやすくなります。
もうひとつには、気軽に相談できる機会をつくること。
倉貫さんは「雑な相談」というナイスなネーミングをつけていますが、
雑談ついでに、カジュアルに相談できた方がいいよね、と言っているのです。
雑談+相談=「ザッソウ」を重視しているという話。
なるほどー!!と目から鱗でした!
昭和の時代は、社内に余白がたくさんありました。
給湯室や喫煙所でのひととき(懐かしい笑)。
残業しながらの雑談。
仕事終わりの飲み会。
徹夜で麻雀したり、上司の家に泊まらせてもらったり…etc.
昔は、そうした就業時間以外で人間関係を育んだり、考え方や生き方を教わったりしていました。
でも今は残業も少ないし、就業中は効率重視で、雑談をする機会も時間も激減しています。
最近では、エンゲージメントを高めるというテーマで、運動会や部活動を行ったり
福利厚生に力を入れている企業も見られます。
しかし倉貫さんはより本質的に「いかに成果をあげるか=付加価値の高い仕事を増やすか」
というゴールから逆算して、
→気軽に相談できる機会を増やす
→雑談を増やす
と「ザッソウ」の設計をしているのです。
運動会などの非日常の機会を増やす(=負担を増やす)のではなく、
日常的に継続しやすいやり方におとしこんでいるのが、倉貫さんの真骨頂だと感じました。
まとめ
倉貫さんの文章はとても読みやすい。
わかりやすく整理する天才だなあと思います。
以前インタビューをしましたが、話もとても面白いですよ!