個人を管理しない進化型組織について、よく話題になるのが「売上目標がない」「事業計画がない」ということです。
「目標がなかったら、どこに向かって仕事するの?」
「高い目標を設定するからこそ、達成しようと思って頑張るものでは?」
という疑問が止まりません。
私もかつては組織構造でいう、達成型(オレンジ型)の組織にいたので気持ちはよくわかります。
(その時の合言葉は「未達は死」でした笑)
確かに目標を掲げた方が、やることが明確になり頑張れそうです。
たとえば、今年引退したイチロー選手の小六の時の作文「僕の夢」。
あるいは、本田圭佑の「将来の夢」。
一流の人は、目標の立て方が違う。
だから、夢や目標を持とう!
確かに、説得力がある意見です。
ただ…
だからといって「目標を掲げなければ、人は頑張れない」と言えるのでしょうか?
日本一子供が育つ幼稚園
私の子供が通っていた幼稚園の話です。
子供たちが通っていたのは7〜8年前ですが、当時からその幼稚園は“高い成果”を上げることで有名でした。
具体的に言うと
「卒園までに男子全員が逆立ち歩きができる」
「女子は全員側転、後方宙返りができる」
「全員、跳び箱8段を飛べる」
など、幼児教育の世界では珍しく数値目標があり、その達成度がとても高いのです。
受験して入るような英才教育の園ではありません。
園児は地元の子供ばかり、どこにでもある地域の幼稚園です。
それなのに、園児が“全員”、大人の想像を超えるパフォーマンスを発揮するようになる。「日本一子供が育つ幼稚園」として、全国から見学が絶えない幼稚園でした。
では当時、園ではどんなマネジメントがされていたのかというと…。
「日本一になろう!」という目標を掲げて、園児に毎日唱和させ、
モチベーションを鼓舞し、
目標管理を徹底していたのか?
違います(笑)
私の子供たちは、ただ毎日楽しく幼稚園に通っていただけです。
いまは中学生になった子供たちに、聞いてみました。
「2人が通っていた幼稚園はさ、日本一のレベルだったんだよ。
つまり幼稚園の頃は、2人とも体操の日本代表になれる位、誰よりも上手だったんだよ。」
そう話すと「マジで?!知らなかった!」と驚いてました(笑)
個人を管理しない。目標を掲げなくても、組織として、飛び抜けた成果を実現できる。
これは子供相手だから、できることなのでしょうか?
子供と大人は違う?
園児は正直です。
楽しければやるし、興味がなければやりません。
仮に目標を掲げたとしても、それが将来自分のためになることだったとしても、興味が湧かなければ、いくら強制したって、叱ったって、やらないのです。
大人は子供と違って、興味がないからといって、やるべきことを放り出しはしません。
目標を掲げたら「承知しました!頑張ります!」と口では言います。
けれど、心が動いていなければ、パフォーマンスは上がりません。
その意味では大人も子供も同じなのだと思います。
つまり人は、
「目標を掲げるから、がんばる」
のではなく、
「目標に共感したら、やりたいことだと思えたら、がんばる」
のです。
成果を出す組織の3つポイント
先の幼稚園が、なぜ日本屈指の成果を出せていたのか?
私は3つのポイントがあったと思います
1.「どの子もできる」という理念を、先生達が理解し、共感していた。
たとえば「全員が逆立ちできるようになる」という目標について、達成を阻むのは、先生の“価値観ブロック”です。
『私も子供のころ出来なかったし、幼稚園児にできるはずがない』
『そもそも、全員ができる必要、ないよね?』
そうした自分の経験に基づく先入観や価値観が、障害要因になります。
「15年後、園児達が大人になった時に役に立つように、すべての子の可能性を引き出してあげたい」という幼稚園の教育方針に、先生たちが強く共感していたこと。
そして「できるようにしてあげたい!」と“自分ごと化”できていたのです。
2.先生はコーチでありパートナー
先生は、園児の達成度合いを管理しません。
一人ひとりのレベルに応じて、適切で楽しい課題を用意してくれるコーチであり、一緒に泣き、笑い、寄り添ってくれるパートナーでした。
高いレベルにチャレンジするということは、失敗の連続でもあります。
しかし毎日の体操の練習を、“達成のためのタスク”ではなく、“楽しい体験”だと感じさせてくれる、大好きな先生が寄り添ってくれるから、子供たちは安心してチャレンジができるのです。
3.「みんなでできるようになる」という連帯感
「どの子もできる」という理念は、チームワークの醸成に一役買っています。
「跳び箱8段を飛べる人の方がえらい」ではなく、「みんなで飛べるようになろう」がゴールになると、園児達はお互いに協力し合い、全力で応援しあうようになります。
子供がもっとも影響を受けるのは、周りの友人からだと言われます。※
みんな頑張っている。そして、応援してくれる。
そういう環境が、1人ひとりの“もうひと頑張り”を後押ししているのです。
まとめ
個人を管理しない進化型組織では、売上目標を掲げていないのに、急成長を遂げているというケースが見られます。
それは、
■数値目標ではなく「なんのためにやるのか?」という“目的”を理解し、それが“自分ごと”になっている。
■組織の場づくりが最適化されている。
のが要因なのです。
上記の3つのポイント、ぜひ自社にあてはめてみてください。