ティール組織は、既存の組織運営の延長線状には存在しません。(※「ティール組織」の解説はこちら)
以下3点のブレイクスルーを経てティール組織に進化します。
①自主経営 セルフマネジメント
②全体性 ホールネス
③組織の存在目的
今回は一つ目の、セルフマネジメント(自主経営)について解説します。
セルフマネジメント(自主経営)とは
誰かの指示を受けることなく、課題に気づいた人が、適切な人と連携して意思決定し、実行していくこと。
要するに、情報を透明化し、権限移譲することによって、個々人が意思決定し実行できるようになる。
そうか!情報の透明化と権限移譲がポイントなんだ!
と、大まかに理解することも間違いではないと思うのですが、今回は「そもそも」のお話をしたいと思います。
もう少し詳しく見ていきましょう。
ヒエラルキーの否定
セルフマネジメント(自主経営)はヒエラルキー(階層型組織)であることを前提としていません。
現在、多くの企業が取り入れている組織構造である「達成型組織(オレンジ)」に所属する方々の常識を前提とすれば、ヒエラルキーを否定された時点で頭が混乱するかもしれません。
上層部が指示をしないで、一般社員はどうやって動くの??毎日何をするというの?
こんな発想が浮かんだ方は、達成型組織(ヒエラルキー)のパラダイムに染まっている証拠なのです。
筆者自身、新卒から10年間、金融機関というヒエラルキーど真ん中の組織に所属していましたので、頭が混乱しました。
ちなみに達成型組織とは、現代における会社組織の多くが採用している組織形態。(下図参照)
※達成型組織の多くはヒエラルキー型の組織構造を取り入れている
どうしたら、達成型組織のパラダイムに染まった思考を変えることができるのか?
その一歩目として、私たちが、無意識レベルで当たり前になっている前提を突き詰めることから始めてみましょう。
当たり前を疑うことからはじめよう。セルフマネジメント(自主経営)を支える前提とは?
セルフマネジメントを機能させるためには、その「前提」をはっきりさせることが必要で、それを従来のヒエラルキー組織における「前提」と比較することが、思い込みを手放すことに有効だとされています。
私の解釈を結論からいうと、
ヒエラルキー組織の前提は性悪説であり、セルフマネジメントが働く組織は性善説が前提にあるということです。
ヒエラルキー組織にある前提
・一般的な組織で働く労働者が感じている前提
「上司は自分のことをこう思っているに違いない」
・労働者は怠け者。見張ってないと働かない。
・労働者は組織にとってのベストより、自分の利益を優先させる。
・労働者には会社の重要問題について正しい判断をする能力がない。それが得意なのはトップや組織の管理職。書籍「ティール組織」より一部抜粋して引用
※ヒエラルキー組織の前提について、米国の電力会社AES社の創設者デニス・バーキが要約したもの。
(AES社:書籍「ティール組織」の中で、ティール組織を実践している会社の事例として紹介されている会社)
言葉にするとかなり厳しいですね。ただ、これが現代における組織が前提とする考え方とされています。
気づいてしまったヒエラルキー組織の前提
私は、こうして言葉として突きつけられてハッとしました。
この考え方が前提にあるからこそ、ま、まさか・・・
・勤怠管理をされている?(ほっといたら会社にこない前提か?)
・稟議書というフレームワークがあるのは?(あなたの判断は信用できないこと前提なのか?)
要するに、労働者は信頼するに足らない存在だと考えられており、リーダーは労働者を階層構造のもとで管理し、ルールによって報酬や罰を与える必要があるということです。
だから、社内におびたただしい量の「社内規定」があったのか!?
と、私自身、あまり意識していなかったこの前提と向き合わなければならないことになりました。
平社員でヒエラルキーの下層に位置していた私は、なんだかフラれた気分。悲しくなってしまいました。
ただ、書籍を読み進めていくと、悲しむ必要がないことを理解しました。
「こうした考えは無意識のうちにそういうものだとみなされている」と表されているように、「当たり前」の思い込みから生まれたものなのです。
必ずしも経営者や上層部が意図してルールや階層を作ったわけではありません。「組織を良くしたい」という思いからたくさんのルールが作られていったのだと思います。
組織とは、こういうものだ!という無意識の思い込みの元に。
暗黙の前提を完全に否定する
ティール組織のセルフマネジメント(自主経営)では、これらの前提をはっきりと否定し、それとは異なる前提を定義づけています。
例としてAES社の前提は・・・
AES社の人々は、
・創造的で、思慮深く、信頼にたる大人で、重要な意思決定を下す能力がある
・自分の判断と行動に対する説明義務を果たし、責任を取れる。
・失敗したって構わない。私たちは失敗するものだからだ。時にはあえて。
・自分たちの才能とスキルを使って会社と世界に貢献したい。書籍「ティール組織」より一部抜粋して引用
この前提に立てば、労働者をヒエラルキー組織のもとでおびただしい量の管理システムにさらす必要はない。ということになります。
書籍「ティール組織」では、従来のヒエラルキー組織と統制システムの核心は、恐れと不信を育てる強力な機械だとしています。
一方、社員を信頼し、任せるセルフマネジメント(自主経営)は長い時間の間に「同僚同士の信頼」という広大な共同貯水池をつくりあげるとしています。
恐れは恐れを生み、信頼は信頼を育てるという最も基本的な真理に行き着くことになります。
感覚的には、やはり信頼の泉の中で働いていたい、と私は思います。
セルフマネジメント(自主経営)が受け入れられにくい理由
社員に権限委譲し、主体的に働くことができるセルフマネジメント(自主経営)を取り入れたいと考える人は多いですが、ティール組織そのものがなかなか受け入れられない理由として、2点が挙げられています。
一つは、セルフマネジメントの価値観が、これまでのヒエラルキー組織における常識とあまりに異なっていること。
二つ目は、私たち自身が、人々と仕事について「人と仕事は恐れで動く」「組織には階層と統制が必要」これら二つの思い込みが心の中に深く刷り込まれ、その前提から逃れられないでいるから。
これまでの価値観とあまりにも異なる常識なので、その常識を受け入れ変化することを恐れるのは、現状維持バイアスがかかる人間の心理でもあります。
ただ、セルフマネジメント(自主経営)をしている組織は現実に存在します。
不可能ではないのです。
その存在が不可能ではないことの証明なのです。
では、どうすれば、これまでの前提から逃れることができるのでしょうか?
セルフマネジメント(自主経営)を機能させるためのはじめの一歩
実際にセルフマネジメント(自主経営)が行われている組織では、職場の仲間達で、この2つの前提を知り、それについてなんども語り合うことを通して思考パターンを変化させていったそうです。
セルフマネジメント(自主経営)は、人間性に関する基本的な前提を語り合うことから始まるのです。
この前提がしっかりと共有できれば、恐れに基づく統制メカニズムが入り込んできたとしても、「このプロセスは、私たちの前提にあっているか?」という問いがその恐れによる統制のメカニズムを排除するのだそうです。
まとめ
あなたの会社にあるルールの前提は何ですか?
今ある組織のルールは何が前提となっているのか考えてみると、突破口が見えてくるかもしれません。
「そもそも、このルールってなぜ必要なんだっけ?」
合言葉はこれでしょうか。