そもそも人は、会社に何を求めているのでしょうか?
第16回も引き続きコミュニケーション論・モチベーション論を中心に研究されている、
若新さんに取材を行いました。
若新さん、今回もよろしくお願いします。
会社の中でもおしゃべりっていうのは結構大事なんだというようなことを言われてたんですけど、すごく興味深い話で、おしゃべりがどんどん会社の中で少なくなっているっていうのが今の1つのテーマかなと思うんですよね。
じゃあ、そういう中でどう考えれば良いのかってことですね、おしゃべりっていうことと。なかなか難しいと思うんですよ、入れていくのが。
でも、特に若い人を中心に求めていたりするわけじゃないですか。組織の中でいうとどんなふうに考えたら良いですかね。
そもそも労働集約型の工場とかオフィスみたいなのをつくって、そこに人が来てもらって、労働関連についての研究とかっていうのは、まだ生産性とかの研究って100年も経ってないみたいなんですよ。
で、アメリカで色んな実験が始まったんですけど、何から始まったかっていうと、最初は照明の明るさとか隣の人との距離とからしいんですね、作業をするときの。
ところが、生産性の研究みたいなことがまったくされてない時代はまあまあ有効だったんですよ。みんながいわゆる場に集って一緒に働くっていうこと自体もそんなに産業革命が起こるまではなかったことなんで。
だから、嫁が来られたら嫁も苦労するわけです。
そんな中で、天気に関係なく毎月確実にいくら給料いくらもらえるっていう、この工場ワーカーっていうか月給取りっていうのは、言ってみれば合コンで超モテる存在ですよ。
それは、だから、月給に反映されるってこともあったから、機械に見立てられて管理されるっていうことの価値もあったと思うんです。
でも、それはある程度のところまでの話だと思うんですね。これをずっと突き詰めてやっていくんですけど、究極のところ、残念なことに人間はマシンじゃなかったっちゅうか、経営者からしたらマシンだったら最高なのに、毎年毎年大学から出てくる新作のマシンを買えるとかだったら良いと思うんですけど、まさにパソコンのような感じで決まった表示されたスペックどおりの仕事をするわけじゃないんですよ、人間なんて。
でも、これ、残念なことに、職場で働く人間はそうはいかなくて、パソコンに置き換えるんならこうやって言ってくるわけですよ。
突然作業してたら「すいません。こんな使われ方をしていたら僕はもう頑張れません」って言って、「おい!資料つくってんのに止まんなよ!」みたいな(笑)それが人間っていうことだと思うんですね。
その上で、だから、結局、元々の労働管理っていうのは「何メーターおきに立つと効率が良い」とか、「電気はどれぐらいの明るさが良い」っていうとこに始まり、調整していくわけですけど、そういう管理だけでは限界が来て、多分、人間が人間であるっていうところに立ち戻らないと、それ以上のとこに行かないんじゃないですかね。
融合っていう問題じゃないのかな。つくり直しかな。何なんでしょうね。
だけど、職場でずーっと120点を出し続けることもできないし、会社としても120点っていう評価を与え続けられないんですよ。「だったらボーナス払え」ってなってくるんで、「僕の給料上げてくれ」ってなるので。会社だって常に同じ人に120点あげ続けられないし、そもそも人間って120点は出し続けられないですよね。すごい一流のアスリートだって失敗するんだから。
てなってくると、単発の評価って限界があるっていうか、もちろんマシン的に働いてもらうっていう意味では評価なしはいけないですよ、評価があるから僕らは評価のために頑張るんだけど、それでは人間としての満たされ方が不十分で、だから友達同士とかって、例えば思春期のときに親友ができて、親友同士で「俺ら親友だよな。じゃあ、もうあんまり話す必要ないよ。だって親友なんだもん。信頼してるし」とかって言って一緒にいなくなっても「俺らは親友だ」っていきなりなるかっていうと、長い時間かけて「1年に1回しか会わなくてもどっかで繋がってるよね」っていうようなレベルの友達はいても、すぐはそうならないじゃないですか。
昨日も友達の結婚式行って、新婦のほうの友達が手紙読んでて泣きながら喋ってたんですよ。
「何本も駅のホームで一緒に電車をやり過ごしていったよね。『次のに乗ろう』『次のに乗ろう』って言いながらずーっと乗らずに駅のホームでおしゃべりしてたよね」ウルウルウル……。
なんで駅のホームで何本も電車を目の前で乗らずにやり過ごしていったっていう風景で涙が流れるのか?って話じゃないですか。
そう思いません?
だから、べつに喋らなきゃいけないことがなくなって帰っても良い状態だから、駅のホームまで行って次の電車来たらどっちかが乗るねっていう話なんだけど、喋ってたら楽しくなってきて、何本も何本も電車乗らずにやり過ごしていって1時間ぐらい経っちゃった、2時間ぐらい経っちゃった、みたいな。
それを今喋って涙が流れると。それが人間。
例えばそうやって時間をかけて受け止め合うみたいな、そういうものを残念なことにいくらマシンが進化してっても人間って結局ずっと変わってないんで、人間の文明のすごいとこって、自分たちはあんま進化しないじゃないですか、寿命とか若干伸びてますし、平均身長とかは伸びてますけど、でも、パソコンのスペックの進化に比べたら人類の伸びた身長とか寿命っていうのはせいぜい歴史で見ても1.5倍とか2倍にしかならないわけでしょ?身長も2倍にはなってないと思うんですよ、伸びてきてるけど、平均身長も。
っていうことは人間は大して進化してなくて、人間は自分たちは進化しないから周りを拡張させたっていうか、文明をつくって。だから、元々人間であるっていう素質は太古からそう変わってないんですよ。マシンがこんだけ洗練されてるから、友達とも3秒喋れば分かり合えて絆が深まるってわけじゃないじゃないですか。
なぜなら月給がもらえたからと。
それから、居てくれないと。要するに月給取りがステータスじゃないから、そこまでしてこんなに自分のアイデンティティもよく分からないし、自分らしさがよく分かんないし、コミュニケーションもとれない中で、ここにべつに居なくても、仕事だったら他でもいくらでもあるし……ってなりがちだっていう。
だって、色んな機器があるわけだし。
それはそもそも社会の土台が貧しくて、やれば何だって儲かることがいっぱいわけだから、雑に働いてても給料は増えていったわけであって。それがないわけでしょ。
全部がきちきちまでつくり込まれてるわけだから、その中で残念なことに人間であるということはそんなに変わらなくて、人間である部分っていうのに向き合わざるを得ないっていうか。
で、その中の1つが、常に僕らは他人の中の自分っていうのに生きてて、人との関わりの中で自分を確かめるっていうとこは変わんない。
だから、今までの管理っていうのは1回手放さなきゃいけないんじゃないかっていうのが僕は若新さんの話から感じるし、シンクロするところなんですよね。
とにかく人間がやってきたことっていうのは外部に拡張しただけなんで。大事なんですよ。「いや、そんなことないでしょ」って言う人もいるかもしれないけど、人間が道を走るスピードってどれぐらい速くなってきたかっていうと、何十年で1秒とかじゃないですか、100メートルとかにしても。そうですよね。
じゃあ人間が何をしてきたかっていったら、チャリンコつくったり、バイクつくったり、車つくったんですよ。車はすげえ速くなってんですよ。
だから、車をつくったことによって人間の移動速度っていうのはめちゃくちゃ速くなったんですけど、人間そのものは速くなってないんですよ、あんまり。
だけど、もうだいぶ行き着くところまで来ていて、物も溢れてるし、じゃあ僕ら人間自体はこれからどう振る舞っていこうか、どういうようなチームをつくっていくのか、まずどう働いていくのか、みたいなところが今新しい働き方が求められてるみたいな感じですかね。
つまり、常にデジタルなネットワークがあることによって個人で生きていけるっていうか、買い物も1人でできるし、仕事も1人でできるって言われてきたんですけど、じゃあ個人化ってことが人間にとって完成したかっていうと、結局人と関わりたいんですよ。
じゃあ、人が関わり合っていくっていうことをマシンをメンテナンスするように考えれるかっていうと、なかなか難しくて。
次回、引き続き、その関わり方みたいなところをもうちょっと深くお聞きしていきたいと思います。
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