2022年9月1日、HOLIS株式会社 代表の片桐拓也氏が手放す経営ラボラトリーのコモンズに就任しました。
コモンズ就任イベントとして開催された「経営3.0」〜社員が自由に決裁できるのに赤字にならない仕組み〜の様子をイベントレポートとしてまとめました。
Youtubeで「経営の話なのにこんなに笑うのは初めてです」というコメントをいただくくらい、盛り上がった90分。
あまりにも内容が盛りだくさんのため、前編・後編の2回に分けてお届けします。
▼大変好評だったため、12月15日に「経営3.0」の続編が開催されます▼
今回のイベントは片桐氏が経営するHOLISグループの1事業である結婚相談所 プリヴェールのパーティールームで行われました。
司会進行は手放す経営ラボラトリー所長の坂東と、DXOテキスト開発者の乾が務め、メインスピーカーとしてこの度コモンズに就任した片桐氏と、手放す経営ラボラトリー取締役であり社会システムデザイナーの武井浩三氏にお話を伺います。
目次
- 1.日本の共有財産「コモンズ」とは?
- 2.DXOが目指すじり自立分散型組織とは
- 3.自立分散型組織は危険?
- 4.どんな状況でもプロフィットファーストは通用するのか?
- 5.自立分散型組織はお金の情報の透明化が鍵となる
- 6.人を管理しない為に他の仕組みを管理する
- 7.プロフィットファーストの基本的な仕組みとは?
- 8.従業員が会社にお金を貸し付ける
- 9.従業員が自由に会社を運営し始める
- 10.何度言っても減らなかった残業が勝手に減っていく
- 11.会社代表の引き継ぎが2時間で終わるお金の仕組み
- 12.経営者意識が勝手に育まれる仕組み
日本の共有財産「コモンズ」とは?
坂東:この度、片桐さんには手放す経営ラボラトリーの「コモンズ」に就任していただいたわけですが、そもそもコモンズとは何でしょうか?
武井:コモンズは顧問です。顧問ですが、「みんなの共有財産」という意味のコモンズでもあります。名誉職ですね。
坂東:私達の顧問になっていただくけど私達のものではないということですか?
武井:そう。日本の財産ですから。みんなで活用していきましょう。
坂東:なぜ片桐さんにコモンズになっていただいたかというと、それによって私たちが今作っているDXOというプログラムをさらにアップグレードしていくことが出来るからです。
乾:そうですね。DXOはですね、ピラミッド型の組織を自立分散型の組織にアップデートしていくというプログラムになっています。DXOの中にお金の仕組みであるプロフィットファーストについて書かれているんですが、片桐さんの会社で実際に導入していらっしゃるんです。我々はまだ事業の段階的にもプロフィットファーストを実装できていないので、片桐さんの経験値をお借りしてDXOを更にアップグレードしたいと思っています。実は既にDXOテキストがアップデートされている部分がありまして、それが「自然経営」という概念なんですよね。
DXOが目指す自立分散型組織とは
坂東:自然経営ってなんなんだ?と。そもそも自律分散型組織ってなんだ?と思っている方もいるかもしれませんね。
武井:僕らが自然経営研究会という社団法人をやっていて(自然経営研究会は2022年11月8日に解散)、人間の営みも会社の営みも自然の摂理に則って、無理なく、成長する時はするし、しない時はしなくてもいい。会社の役割が終わったら閉じてもいいし、あるがままでいたいねという想いから、こういう経営を「自然経営」と名付けました。
自然経営で定義している3つの条件というのがあって、それが、
・情報の「透明性」
・力の「流動性」
・境目の「開放性」
です。
この3つのエッセンスが高まっていくと、勝手に自立分散化していくんですよね。逆にいうと、組織を自立分散化するにはこの3つの要素がきちんと育まれていないとできないんです。でも今回のDXOとかプロフィットファーストの話しというのは、それをシステム的に最初からデザインしてあるようなものです。自然経営は哲学みたいなもので、けっこう思想より、つまり「在り方」なんですけど、DXOとかプロフィットファーストは「やり方」ですね。でも、根底にある「在り方」は一緒です。
坂東:3つの要素が育まれると勝手に自立分散になっていくということですが、自立分散というのはどういうイメージというか、どういう状態なんでしょうか?
武井:なんだろう。簡単にいうと、上司部下とか、指示命令がなくても、いい感じにみんながやりたい放題できるという、そういう状態ですね。
自立分散型組織は危険?
乾:でも、やりたい放題やると、会社がバラバラになるのではないかとか
坂東:はいはい。めちゃめちゃみんな恐れがあるじゃないですか?めちゃさぼっちゃうじゃないの?とか。悪い事するんじゃないの?とか
武井:みんなが給料100万円欲しいって言い出したらどうするの?とかって
武井:そんなのお金なかったらできないじゃないですか?だからやっぱり、お金と仕組みと考え方とか、全部繋がっているんですよね。
坂東:やりたい放題やれた方がゴキゲンでいられるというか、その方が結果的にパフォーマンスも高まると思うし、仕事に対するヤリガイも出るということなんですね。指示命令されたことだけやるのではなくて、やりたいことをやりたいようにやれるというのが、いい形ですよね。
武井:義務じゃなくて、生きがい、やりがいが大切なんですよ。
坂東:それをどうやって安全な形でやるかってことですよね?
乾:そうですよね。そこにはお金の仕組みがしっかり整っていないといけないのではないかということで、それが「プロフィットファースト」なんですよ。
坂東:これによって自律分散型組織、意思決定したい人ができるということが、安全にできて、お金も自由に扱えるようになって、だけど赤字にならないということが可能になるんですね。
どんな状況でもプロフィットファーストは通用するのか?
片桐:私がティール組織とプロフィットファーストを導入してから4年目になるのですが、これまで本当にいろんな組織にこの仕組みを導入してみて、どんなことが起こるのかということを試していたんですよ。
作り立ての組織から、長年やっていた組織、事業としてはどう考えても人口が減っていって右肩下がりの組織に対して大丈夫なのかとか、新卒の女の子が多い会社とか、「ゴルフドゥ」みたいなおじさんばかりの会社とか。
坂東:いろんな組織で経験を積まれたんですね。しかも4年というとコロナもありますもんね?その時はどうだったんですか?対処とかされたんでしょうか?
片桐:コロナみたいなことはなかなか起きないじゃないですか?売上がひどいところは2020年2月にコロナっていうのが出てきたぞってなってから、4月の地点で売上が95%下がった事業部もありました。95%になったわけではなく、95%下がったんです。
坂東:100万円が5万円になったということですね?
片桐:そうですそうです。6億が5%くらいになったので3000万円くらいです。けっこうな衝撃です。それでも、今の所乗り切っています。
そういった極端な環境の影響もあっていろんなケースが出てきました。売上が伸びていくとどうなるのか、逆に下がった時はどうなるのか。あとは働いているメンバーが減っていくパターンもあるんですよね。子供が産まれて、育休になって人数が減っていく時に、これは増員するのか、増員しないのか、とか。いろんなパターンを経験したんですが、かなりうまくいっています。
再現性と即効性がすごいんですよ。最初に思っていた効果の何十倍、何百倍という効果が出ています。
坂東:片桐さんにはコモンズになる前から、DXOを導入していただいている企業に携わってもらっています。DXOとプロフィットファーストが掛け合わさった形でスタートして、やばい形になっている会社も出てきているのも実際に目の当たりにして、私達も凄さを実感しているんですよね。
片桐:プロフィットファーストを導入するときは、先ほど話題にでた情報の透明性とかが合わさると効果が出やすいです。実際に情報の透明性をつくるために、会計ソフトを見直して、誰でもいつでも見れるようにするのをグループ各社でやっています。後からM&Aをした会社もそういうお手伝いをさせていただいて、必ずやるようにしています。この透明性の部分がいろんな会社で実践する際に高いハードルになりやすいのですが、私はそこが比較的得意なんですよね。それがコモンズに就任した理由かもしれません笑
乾:あのね、比較的得意というレベルじゃない。ちょっとおかしいくらいすごいです!!
自立分散型組織はお金の情報の透明化が鍵となる
乾:実際に会計ソフトを乗せ換えて全てのお金の情報を透明化するというところを見せていただきました。具体的にいうと、弥生会計からfreeeに乗せ換えるという作業ですね。2日間で終わっていて衝撃的でした。
片桐:これをしないと透明化されないですからね。月末過ぎて、10日にならないとお金の情報が見れない、、、というのは透明化されていないので。
坂東:リアルタイムで誰でも見れるようにすることが大切なんですね
最初、経理担当の方も税理士さんも、弥生会計からfreeeに乗せ換えましょうと伝えた時に、3か月か4ヶ月かけて頑張りますみたいな感じでしたよね。
乾:freeeにも問い合わせましたが、一番高いプランでも3か月はかかりますと、そういう話を聞いていたんですよ。専門家ばかりだから、それくらいかかるものだと思うじゃないですか。それで片桐さんに聞いたら多く見積もって5日って言うんですよね。「えぇ??」ってなりました笑
まあ、一回行ってみましょうと。会社に実際に行って、実際にその作業を進めていくと、2日間で完全に移行できてました。
いや、もうみんな「???」で・・・目の前で何が起こっているんだという感じですよ。
片桐:最初、乗せ換えは1日目で終わったんですよ。2日目にお金を10日と25日に分配する仕組みとか、請求書をアップロードして、テンプレートにして分けるというのも含めて2日で終わらせました。最初に依頼された時に、「教えてほしい」と言われたんですよね。でも、教えると時間がかかるんですよ。なので私一人でやりますということで、本当に1日中ずっと作業してました。弥生会計からfreeeへの乗せ換えは何回目かだったので、全然1日か2日あれば大丈夫という想定だったので、予想通りでしたね。
武井:すげー
片桐:ダメだったら夜中までかけてでもとにかく1日で終わらせるという感覚で行っていました。そこの会社のすぐ目の前のビジネスホテルを借りてましたからね。私はさっきの話し(専門家達が数か月かかると言っていた話し)を知らなくて、1日目で「終わりました」って言ったら、皆さんがめちゃくちゃビックリしてました。私、1日か2日でやりますって言って来ていたんですけどね笑
武井:おもしろい。こんなのアクセンチュアとかに頼んだら3000万円くらいかかりますよ
片桐:私もfreeeに乗せ換える時、一番最初は頼んだんですよ。
でもなかなか進みませんでした。結局、これまで自分で試行錯誤してやってきたので、かけてきた時間が普通の人の何十倍も積み上がっているんですよね。
武井:俺も会計ソフトめちゃくちゃいじってましたもん。ダイヤモンドメディア時代に勘定奉行からマネーフォワードに乗せ換えるとかで、IT企業だったこともあって、足りない機能を自分達で外で作って、こっちのデータをこっちで作って、戻してみたいなことをやってました。それでマネーフォワードから取材が来ましたよね笑。日本で初めてkintoneとマネーファワードを連携させたのが俺達だったみたいです。
人を管理しない為に他の仕組みを管理する
坂東:じゃあ、この進化型組織の特徴というのは、会計をバシっと管理しているんですね。人は管理しないけど、お金は管理するじゃないですか。管理会計もやるし、会計に詳しい経営者が、業務レベルでもきちんとできるようにするというのがけっこうポイントなんですね。
武井:普通の中小企業は逆ですよね。お金は全然適当なクセに人のことばかりを管理してますよね。
坂東:やっべ!どこかで聞いたことある!笑
武井さんに関わってもらうようになって、「まず経営者は家計簿つけれるようにならないとダメ」って言われて、毎日家計簿つけるようになりましたね。マネーフォワードも入れました。「自分のお金を管理できなくて会社のお金は管理できないですよ」って言われて、「あれ、管理しない経営じゃなかったっけ?」とか思ったけど、そうじゃないんですよね。
武井:人を管理しない為に他の仕組みを管理するんですよ。
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プロフィットファーストの基本的な仕組みとは?
乾:一旦、どういう管理をお金のところでやっているのかというのを知っていただくために、プロフィットファーストの簡単な仕組みの話をしましょう。片桐さんから、そのポイントを踏まえてお聞きできたらと思うんですけどいかがでしょうか。
片桐:「プロフィットファースト」という本がもともとありまして、これは言葉の通り、利益を先にきちんと取りましょうねということで、売上をまず、利益口座に分けます。次にオーナーの口座ですね、次に税金口座、次に返済口座、次に経費口座と5つの口座に分けます。なので、一番初めに口座を5つ作ります。そして、売上は入金口座に一旦全て入れます。それを毎月2回、10日と25日に5つの口座に決められた比率で分けていくんですね。
坂東:まず、利益を先に確保するというのが常識と違うじゃないですか?
片桐:そうですね。通常の会社だと売上からいろんな経費を引いて残ったのが利益という形なので、利益が出たり出なかったりするじゃないですか?プロフィットファーストは初めに5つの口座に全ての売上を分けるんですけど、利益口座は利益口座に〇%、オーナーの口座は役員報酬とかですね、オーナーはオーナー口座、税金は税金口座、あと銀行の借り入れがある会社は年間で返済する金額を売上で割った%を決めます。、最後に残った金額が経費になります。この経費口座に入ってきたお金の中で何とかやりくりをするんですよ。
坂東:先に利益を確定させるってそういう意味なんですね。
片桐:そうです。その利益口座からは何も引かれないので、3ヶ月に1回、うちの(HOLISグループ)場合は半分は社員に、半分は会社として新たなM&Aや新規事業に投資するお金として取っておく形で分けています。それをずっと繰り返していくというシンプルな仕組みです。
乾:プロフィットファーストの本では、5つの口座にお金を分けて管理するというのは書いてありますよね。でも、そこから先は片桐さんのオリジナルの仕組みになると思うんですけど、その部分をもう少し聞かせていただけますか?
従業員が会社にお金を貸し付ける
片桐:そうですね。うちの返済口座というところに従業員、正社員もアルバイトも含めてなんですけど、会社にお金を貸し付ける制度があります。これを出資制度と呼んでいます。お金を入れてもらったパーセンテージに合わせて利益口座からお金が分配される仕組みです。
例えば入金(売上)口座に1000万円入った時に、利益口座への比率が5%だとすると50万円が入ります。これが3カ月続くと、50万×3カ月で150万円、この半分の75万円を3か月に1回、会社にお金を貸付た人に分配します。金額は、例えば坂東さんが10万円一人だけ入れていたとしたら貸付金の100%を占めていることになるので、3か月後の75万円は一人占めできるようになります。
この仕組みによって、従業員の方がお金を返済口座に入れてくれるので、そのお金で銀行に返済がどんどんできるようになります。
乾:社員が会社に出資(貸付)できるというのは、ちょっとおかしくないですか?聞いたことないですよね?株を社員が戻すというのは聞いたことがあるんですけど
片桐:株と違ってあくまで会社にお金を貸しているという状態なので、これはさっき言った、最初に坂東さんが全部一人占めしたやつを、あとでお金を全部出すこともできるんですね。でも、お金を引き出すと出資比率が減るので、元々の分配が坂東さんと乾さんで半分ずつだった場合、坂東さんが引き出すと乾さんへの分配が増えます。
乾:よっしゃー!笑
片桐:そういう仕組みになっています。通常は出資金を入れると出資者は利益分配金の半分がもらえます。
何か月か経ってくると、さっきの経費口座で残ったお金というのも、例えば4人で働いていたら、経費口座に例えば3か月で400万円残りましたってなると、4分の1の100万円を4人の月給が同じだったら、4人均等に分けるという形でお給料がもらえるんですね
坂東:賞与みたいな感じですね
片桐:そうです。3か月に1回賞与(経費分配金)がもらえる。それともう1つは利益分配金でお金がもらえる。会社がうまく回ってお金が回りだすと、そのお金をまた会社に入れる、銀行の借り入れが減っていく、そうすると銀行に返済する金額がいずれゼロになっていくじゃないですか?
そうすると、一番初めに決めた会社の売上の返済が5%だったとすると、その5%は経費口座だったり、利益口座にパーセンテージが変わっていくことになります。同じ売上でも75%だったのが、5%が10%になったら倍もらえるという形になっていく仕組みですね。
これをやる為には全ての数字が見えていないと困ります。
どの金額を下げれるのかとか、売上がいくら入ってきただとか。
同じ物でも金額を下げて仕入をしたりだとか、1回でドンと仕入れていたのを3回に分けて仕入れることで出ていくキャッシュが減るとか、みんなが考えてやれる仕組みになっています。
社員が自由に会社を運営し始める
片桐:この仕組みを入れると瞬間的に経費は減るんですよ
それで売上はですね、業種によってだいぶ違いますけど、うちは店舗ビジネスが多いので、このプロフィットファーストを導入して、お客様がいきなり増えるということはないんですよ
ただ、無駄ではない広告費まで最初に下げちゃうこともあるので、そうすると売上が下がるじゃないですか?
坂東:使いたくないですよね?だって、経費口座にお金が残った方が賞与(経費分配金)が入ってくるので
片桐:ただ粗利100%だとして、広告50万使って、売上100万下がったら、すぐに広告やった方がいいじゃないですか?
それに早い段階で気づくので、というのがどんどん変わっていきますね
乾:それは気づくまでほっておくんですか?
片桐:ほっておきますね
あんまり減らすと売上が減るんじゃないかなと思っていても、あえて言わないです
坂東:そこは我慢ですか?
片桐:経営者も創業した時って最初はそういうことやるじゃないですか。必要な経費なんだけど、めちゃくちゃ絞ったりして、痛い目にあってやっぱり売上上がらないってなる。
それをみんなも1回は通り抜けていくんですよね。それが自分のお金になって返ってくるので、誰に言われなくてもすぐに気づくんですよね
乾:勉強というか、それを経験してもらう為に黙っているという感じですか?
片桐:そうですね。それでお金の使い方もすぐに変わります。
何度言っても減らなかった残業が勝手に減っていく
片桐:あとは、上下関係、上司部下がなくなるので、役割自体が最適化されていきます。
うちの場合だと、その仕事が得意な人とやりたい人がやるということにしていて、それに合わせて役割を交代するんですよね。
例えば役割が4つあったら、最初は好きとか嫌いとかなしで、今やっている役割はそのままやってもらいます。
ただ、私がちょっと苦手で疲れる仕事だけど、乾さんが得意な仕事、別に乾さんが苦手な仕事があるなら、私と役割を交代できれば、これをどんどん変えていくんですよ。そうすると、得意な仕事ばかりになって、働く時間も減って、なので残業時間もだいたい導入すると10%くらいは減ります。
残業しないと残業代が減るじゃないですか?でも、経費口座に残ったら3か月後にみんなでもらえるじゃないですか?それって何も説明していないんですけど、これ今まで導入した企業、全事業部がほぼ同じ結果が出る。みんなめちゃくちゃ早く帰るようになります。
坂東:帰るんだ?今までは帰れ帰れって言ってたのに?
片桐:経営者は社員を帰せばお金が増えるので帰れって言うじゃないですか?でも、いろんな理由で帰らない。やっぱ忙しいんだなと思っていたんですよ。でも、瞬間的に帰ります
坂東:帰れたんだ?笑
片桐:はい。笑
坂東:上下関係をなくしたのはなぜだったんですか?
片桐:提案助言制度という誰でもどんな内容でも決めれるという提案制度があるんですけど、上下関係があるとやっぱりそこで損得が出てしまうので、そういうのをなくす為にフラットにしました。境界をなくしていくということでやっています。
坂東:意思決定を誰でもしやすくする為にということですね。
片桐:そうですね。実際に導入すると、提案助言制度で何かをやりたいというお金を使う提案よりも、何かをやめたいという提案がバーっと出てくるんですよ。無駄な仕事ですよね。そういうのがどんどん出て来て、労働時間も減って、やりたいことというよりは、最初はやりたくないことがやめられる。毎日日報を送るとか、そういうのはほとんどなくなりましたね。
会社代表の引き継ぎが2時間で終わるお金の仕組み
坂東:たけちゃんも自立分散組織は自分なりに実践していたけど、お金の管理はこういうプロフィットファーストみたいなところまではやってなかった?
武井:ここまで口座を分けてとかはやってなかったです。ただ、ダイヤモンドメディアの頃は、3か月に1回お金の使い方会議というのを開いてました。これが給与会議とかぶっているんですけど、僕らの給与会議って給与をいくらにするかということを決めているわけでなくて、利益がいくら出るか、出たらいくら賞与で返すかとか、新規事業にどれくらい出すかとか、同時に話していたので、だからこのパーセンテージの調整みたいなところをずっとやっていたんですよね
坂東:自分達でそういうことをやっていたと
武井:そうそう。僕たちの場合は利益を出すことが目的じゃなかったので、スタートアップの活動をしているから、ちょっとでも新しいものにどんどん投資するという考え方でやってました。だからけっこう近しいことをやっていたんですけど、ここまで仕組化すると何がいいかっていうとメンバーがお金を扱いやすくなることですね。
ダイヤモンドメディアの時に言われたのは、現場だけに集中しているメンバーからすると、「全体のことを言われても分からない」って。考える範囲が広すぎるから、利益が適正なパーセンテージがいくらか、社長の給料がいくらくらいが適正なのかとかとか分からない、と。分からないことを考えろと言われるのがストレスだったということも、小さい会社だからすぐにキャッチアップできたんですけど、こうやって仕組化して従業員の方はこの中で考えればいいよというのは、すごい扱いやすいと思うんですよね。
片桐:そうですね。なので従業員の方は自分には関係のない口座には関心がないです。オーナーも経費口座にはだいぶ関心が薄まります。
オーナー口座のパーセンテージがあって、オーナーが使うクレジットカードも経費も全部見れるようにしてあるんですよ。それが全て見えてしまうんですけど、みんなあんまり気にしないですね。最初は見ているみたいですけど、同じような物を同じようなところで買っているんだなくらいな感じで。だから、関係ないから見せないじゃなくて、全部見えるようにしています。見たい人は見れるように。誰かに確認しなくても勝手にIDとPASSを打てば誰でも見れます。
武井:俺もダイヤモンドメディアの時に全部オープンにしてやっていたんですけど、これをやっていると経営人材が出てくるんですよ。そういうのが好きな人とかが出てきて、「こいつこんな能力あったんだ」みたいなことがある。だから、事業承継だったり、役割をパスするとかもしやすくて、俺がダイヤモンドメディアの代表抜ける時の引継ぎが2時間。2時間でおしまい。やることなさすぎてビックリしましたよ。
一同:笑
坂東:それくらい分散していたということですよね?
武井:うん。でもそれは情報がオープンで、お金までオープンじゃないと、絶対無理ですよね。
経営者意識が勝手に育まれる仕組み
坂東:なるほどね。元々片桐さんがプロフィーットファーストをやられたのにはいくつか理由があると言われていましたけど、ひとつは今の経営人材の話しにも繋がると思うんですよ
片桐:そうですね。もともと10社作って10社の社長を育てるというのが昔の目的だったんですよ。その為にはお金の管理もしてもらわなきゃいけないから、それこそ資金調達であったり、そういうのを覚えてもらう為に比較的に会計帳簿のことは教えてはいたんですよ。でも、全然効果がなくてですね
一同:笑
片桐:PLもBSも見せて、うちは店舗経営なので店長研修でいろんな研修制度を作っていて、けっこうしっかりやっていたんですよ。でも、この仕組みの導入の効果の方が圧倒的に高いですね。
坂東:圧倒的に?というと?
片桐:はい。圧倒的に高いです。やっぱりいくら勉強しても、会社の中で自由に使えたり、減らしたりというのができないと、お金について考えないと思います
武井:お金を使う時に経営者意識って育まれまれるんですよね?
片桐:そうですね
坂東:本当よね。使い方よね。使う練習よね。経営者も最初から上手いわけではなくて、散々失敗しながらね
片桐:そうそう。お金がなくなったりして困ると、やっぱり現金で買わずにリースにしとけば良かったとか考えるんですよね。
武井:そうそうそう
片桐:リースも5年でなくて、7年にしとけば良かったとか、そういうことを感じながらやっていくと思うんですよね。店舗をどんどん作っていくと閉店していく店舗があるじゃないですか?そうするとリースって残っちゃいますよね?それを残債として払うのが嫌で、昔はうちリース禁止だったんですよ。この仕組みにしてから、これになってから買うエアコンはほぼ全部リースですね
坂東:え、なんで?気にならないから?
片桐:いや、経費口座にちょっとでも多くお金を残したいので。そうすると月々何千円で済むじゃないですか?というのが増えましたね
武井:キャッシュフローを勝手に意識しちゃうんだ?
片桐:そうなんです。キャッシュこそ命みたいな
乾:キャッシュでしか見ていないですもんね?
片桐:そうなんです。キャッシュでしか見ていない。だから減価償却とか一切関係ないです。店舗を解約して保証金が戻って来ちゃうと分配されちゃうので。
一同:笑
片桐:それは資産だからとかじゃなくて、全部分配されちゃうので。だからお店借りる時に保証金6カ月分とか言ったら、それも経費口座から出ていくので、一生懸命に6カ月じゃなくて4カ月にしてほしいなとか、フリーレントつけてほしいとかを言い始めるんです。
坂東:そういうのを自ら言うわけですね?
片桐:そういうのは以前はないじゃないですか?言っても、ちょっとこの物件は厳しいと思いますとか言っていたのが、自分で散々交渉をするんですよ。
武井:会社のお金と自分のお金が繋がっちゃうんですよね。これがすごいことですよね。
片桐:人数が何人いて1ヶ月の給与合計というのを、うちの社員はほぼ分かっています。そうするとボーナス500万残ったら、社員の給与が100万だったら、今回5ヶ月だねというのが払われる前からみんな分かってます
坂東:そういうのは研修とかしてないんですか?
片桐:いや、全く
武井:いや、研修で覚えないですから
片桐:覚えないんですよ
武井:僕もダイヤモンドメディアの時に、管理会計講座を社内の中で勉強会開いて、強制ではないけど、できれば全員に来て欲しいみたいな
坂東:だいぶ圧強めのね。笑
武井:それを強い提案って呼んでいたんですけど。
一同:笑
武井:これ強制じゃない。強い提案ねって言っていたんですよ。みんな分かりましたってけっこう来たんですけど、すごい寝てるんですよ笑
一同:笑
坂東:わかるー笑
武井:うわ、意味ないなって思って。でも、ダイヤモンドメディアの時は利益出るってなったら、どうやって使うかをみんなで考えてたから、決算賞与で分配するかとか、社員旅行に使うかとか、けっこうそういう議論をし始めてから、勝手にみんな意識が向いていくので。
まだまだ話は盛り上がっていますが、長くなりましたので、前編はここまでです。
次回、後編では、プロフィットファースト導入によってとんでもない金額がボーナスとして支払われてしまった、、、というところからスタートします。
そんなにボーナスが支払われることになった時、代表である片桐さんはどんな心境だったのでしょうか?
ぜひ、後編もお楽しみにください!!
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