感情の蓋を手放せ! これからのチームづくりに必要な感情のトリセツ
ゲストは中村 真広さん。株式会社ツクルバ 共同創業し、上場に向かう中で毎月10人単位でメンバーが増えていき、会社はどんどん成長する。私生活でも、第一子が誕生し、順風満帆!と外からは見えたでしょうが、中村さんは行き詰まりを感じていた。
なぜか??
トークライブでは、会社として成長する中で感じたメンバーとの関係性、パートナーシップの苦悩についてぶっちゃけていただき、それから5年経った今、とても生きやすくなったという中村さんに何が起こったのか?
手放す経営ラボ所長の坂東と、武井の3人で2022年3月22日にトークライブを開催しました。トークライブのダイジェストを3回に分けてお届けします!
ゲスト 中村 真広さん (株式会社ツクルバ 共同創業者/株式会社KOU代表取締役)
◆経歴
株式会社ツクルバ 共同創業者・取締役
株式会社KOU 代表取締役
一般社団法人Whole Earth Life 代表理事
1984年千葉県生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。建築家 塚本由晴氏のもとで学ぶ。
不動産デベロッパーの株式会社コスモスイニシアに新卒入社、その後ミュージアムデザイン事務所にて、デジタルデバイスを活用した展示や空間プロデュースを経験。
環境系NPOを経て、2011年8月に株式会社ツクルバを共同創業、代表取締役就任。2019年東証マザーズに上場。2021年8月より取締役。
株式会社KOUを創業し、2019年には同社代表取締役に就任。KOUの活動を通じて世の中の会社をもっと幸せな居場所にするべく、組織の対話の促進ツール「emochan」を皮切りに、職場のおもちゃづくりを行なっている。
「場の力で人生を肯定できる世界をつくる」をミッションに掲げて、時代の兆しから新たな場を興すことがライフワーク。
◆著書
「自分とつながる。チームとつながる。」(アキラ出版/2020)
モデレーター 坂東孝浩(手放す経営ラボ所長)
大学卒業後から、一貫して大企業~ベンチャー企業まであらゆる組織の課題解決に携わってきた。その数800社以上。しかし、時代や環境の変化が激しさを増してくるとともに、研修や採用ブランド力向上などの手法では根本的な課題解決ができないと感じ始めた。そこで、手放す経営ラボラトリーを設立。最先端の組織や経営スタイルを研究、自社でも“手放す経営“を実践している。
現在は新しいカタチの組織デザインと、組織改革の実行支援を通じて全国のクライアント企業のサポートを行なっている。
スピーカー 武井浩三(社会システムデザイナー)
ダイヤモンドメディア株式会社創業者、(一社)自然経営研究会 発起人/代表理事、(一社)不動産テック協会 発起人/代表理事、ホワイト企業大賞 企画委員会 委員 手放す経営ラボラトリーCPO
2007年にダイヤモンドメディアを創業。
経営の透明性を徹底的にシステム化した独自の企業文化は、「管理しない」マネジメント手法を用いた次世代型企業として注目を集めた。現在は、創業した会社を自ら手放し、ティール組織・ホラクラシー経営等、自律分散型経営の日本における第一人者としてメディアへの寄稿・講演・組織支援など多岐に渡る活動を行う。2019年10月手放す経営ラボラトリーにCPOとしてジョイン。
著書
『社長も投票で決める会社をやってみた。』(WAVE出版)
『管理なしで組織を育てる』(大和書房)
『自然経営 ダイヤモンドメディアが開拓した次世代ティール組織」』(内外出版社)
創業した会社が上場、そして代表を降りる。その葛藤とは!?
中村:今日のトークライブのテーマは「手放す」ということですが、僕が手放したものは、二つあります。
一つは、ツクルバ創業から丸10年を機に、執行側を手放して、共同代表という立場から取締役になりました。なので今ツクルバの執行サイドはメンバーに託しています。
これはかなり大きい変化でしたね。
あとは一つは都心の生活を手放しました。今は相模湖の近くに住み始めて、まさに東京手放し自然に近い、地球を感じられる生活をしてます。
坂東:まず、めちゃくちゃ興味深いんですが、なぜ代表を手放したのか?ってところを聞いてもいいですか。
中村:もちろんです。共同創業で共同代表なので、代替わりで全然別の人にお願いしたって話ではなくて、共同代表の片割れである僕が、降りたっていうことです。
相方の村上とかなり話をして、決断をしました。
創業者として会社に関わることと、経営者として関わることは意味合いが違ったりするじゃないですか。
創業当初は特にそうだったんですが、創業者である自分とツクルバくんという生き物を同一視しちゃってる部分がありました。
会社を分身みたいに思ってましたね。
それで今回、切り替えの儀式を行いました。
創業者としての2人は、この創業10年で一旦降りますと、改めて2代目の経営体制として、今回は創業者としての村上ではなく、経営者の村上として2代目CEOになりますという儀式ですね。
坂東:なるほど〜。
中村:その時に、僕は2代目の体制では、執行側としては関わらず、取締役として関わらせて欲しいということで、執行を手放しました。今は、取締役です。
坂東:なるほど、一旦区切りをつけたわけですね。
全体の中で自分をどうキャスティングする?自分の願いに聞いてみよう。
中村:武井さんも、創業した会社を手放した経緯があるじゃないですか。
武井:そうですね。会社って作ることよりも、終える方が難しい。次の人に渡すことも含めて。
だから相続の問題で、お家騒動みたいなのが起こったりする。やっぱり利害関係の中で揉めてしまう。
結局、お金なんですよね。
誰が得するのかっていう、自分の利益のために走った人同士が争い、争いをふっかけたりするわけですよね。
そういうところからも明らかに、中村さんは抜け出てますよね。
上場企業で代表から降りるって大きな意思決定だと思いますし。
坂東:これまで共同代表をやってきた2人の思惑は違ったんじゃないかと思うんですけど、そこら辺はどうなんですか?
中村:ツクルバという企業にスポットライトを当ててみると、創業者だから経営してるという状態から、今のツクルバにしかるべき経営体制に切り替えていこうっていう話です。
次に、個人にスポットライトを当てて話すと、やっぱり僕の願いと、相方村上の願いは違います。
僕自身は、事業を0→1で生み出していくところ、これまでなかった世界のビッグバンを作るのが大好きなんです。
それがやりたくて起業してた部分があるので。
全体の事業や組織をしっかりマネジメントして、いわゆる経営をしっかりやるっていうことは勉強してきたものの、そこが自分の最大限パワーが発揮できるところなのか?と言われると、そうでもないかもしれないと思ってしまったんですよね。
むしろ描くところが自分の喜びだし、そこがやりたいのであれば、しかるべき比重に変えれた方がいいよなって思えてきたんです。
だから僕からすると、自分の本当の願いと、今やってることがどうやってリンクしていくのか?ってところを考えた時の悩みがありました。
そこで、実際のアクションで変化を起こした。それが経営体制の変更です。
僕のストーリーとしてはそんな感じです。
坂東:とはいえ、葛藤はあったんじゃないですか?
中村:ありました、ありました。結構生々しい話でいくと僕のメンタルモデル的なところもふんだんに影響していて。
坂東:ふんだんにね。
中村:代表を手放す、手放さないという話の前に、自分の価値を発揮したいっていう思いがある一方、「しなきゃいけない」ってところで自分自身を縄で縛っている感じもしてました。
僕の内側にある「痛み」の根本は、自分の価値はないんじゃないかっていう恐れなんです。
だから価値を発揮しなきゃ!価値を発揮できなかったら認められないと考えちゃうところが、奥底にあるんですよね。
だから、代表というからには、こういう人間になんなきゃ、経営しているからには・・・、ってところがずっとありました。
でも、やっぱり描くところが好きだし、元々、建築設計出身なんで0→1で構築していくみたいな、社会の文脈に落とし込んでいくところが好きなんですよ。
坂東:なるほどなるほど。
中村:それが経営の輪郭が強くなってくると、やっぱりこれって、自分の本当のwillなんだろうか?
本当にそれって自分の願いとリンクしてるのか?って上場前後で自問自答してましたね。
坂東:なるほどね。たけちゃんも、自分の会社を手放すときの葛藤はいろいろあったと思うんですけど、覚えてますか?
武井:いや、忘れようがないですよ、
坂東:忘れようがない。そうっすよね。
武井:僕は資本主義の次の世界を見てみたいっていう欲求と、そういうふうに生きていたいという思いがある。生き方の話でもあるんです。
資本主義が正しい正しくないっていう話ではないんです。
二元論は争いを生み出します。
究極、もう全部正しい道しかないんです。
その上で自分が何したいかだけが残ってくるわけですよね。
あなたはどうしたいの?しかないわけ。
中村:僕もそう思いますね。
正しさより、それぞれの見えてる世界で気持ちよく生きられるポイントを探す話なんだと思ってます。
森の中では、雑草も役割があるし、全てが役割を持って生きているから全体が成り立ってますよね。
坂東:生態系。
中村:生態系だと思ってるんですよね。自分の役割って何だろう?って思った時に、メタな視点で自分をキャスティングするプロデューサーとして、この配置の方がいいなって。
坂東:なるほど人事異動。
中村:そう、人事異動。
こいつ、ここよりこっちのがいけそうだな。だったらこのポジションが良いんじゃないかと思った感じですかね。
坂東:なるほど。それがツクルバっていう会社の中では、具体的にどんな役割だったんすか。
中村:まさに0→1を生み出すとかですね。
そして、その役割を担おうとした時、やっぱり何かを手放さないと新しい荷物は取れないというか・・・
身軽になって、別の装備に持ち替えて別の山に行くぞ!違うとこ登るぞ!という感覚です。
その時に手放すしたのが、執行の部分だったっていうんですかね。
坂東:なるほどな〜。
新規事業のような何か新しいことをやるっていうような役割なんですか?ツクルバの中で。
中村:いやツクルバで執行は全く持っていません。
会社の中だけでなく、もう少し広い動き方をしていくっていうのが、創業者であり、取締役である自分のキャスティングかなっていう感じです。
坂東:なるほど〜。ツクルバという会社自体も、俯瞰して生態系の中でキャスティングしていくみたいな感じ。
中村:そうですね。企業体を超える目線を持ってるのって創業者だからこそだと思ってるんで。
坂東:そうかも。うん。
中村:企業の中の話ではもっとうまい人がいるんですよね。プロ経営者とか。
このツクルバくんが社会の中でどうキャスティングされるべきなんだろうかを考えるのは創業者の役割かな。
坂東:ツクルバくん、いいですね。
会社にも人格がある。自分のコントロール下にあると思うのはエゴ。
中村:法人も生き物じゃないですか。成長していくと、創業者の意思とか、トップの意思よりいろんな慣性の法則が働いたり、本当に生き物かのように動いていくなっていうのが、面白くもあり、だからちゃんと相対化して扱ってあげなきゃなっていう感じはしてます。
坂東:どこら辺で感じました?ツクルバくんみたいな存在は。上場したときですか?
中村:いやもうちょっと手前ぐらいからですかね。社員が100人弱ぐらいの頃からかな。
自分の意思ではなく、ツクルバ君が意思を持ち始めてるなって感じはじめました。
会社なんて書類出せば誰でも法人作れるわけじゃないですか。
それに魂も糞もないはずなのに、いつか魂が帯びていく瞬間っていうのが確かにあるし、なんかそれって気配で感じる部分はあると思うんですね。
そもそも、会社が自分のコントロール下にいるって思うこと自体がエゴイスティックだなと思っていて。
ツクルバくんには魂がある、自分と違う人格なんだと思って接するようにしようって決めたのは社員が100人弱ぐらいの頃でした。
坂東:子離れっていうか、自分と一体化してたのに、自分と違うもんなんだって思うのって寂しさに似てそうですね。
中村:僕は共同創業だったんで、そこまで自分の所有物みたいなことはなかったんですが、意思を持って育っていくのは寂しいなっていう気持ちもありましたし、こっから先は自然と育っていくんだろうな、という感覚はあります。
最後にツクルバくんに、何かプレゼントできることなんだろう?と考えて実践したのが、CI変更、ミッション、ビジョン、バリューなどを整えることでした。
社員みんなとやってから体制移行しました。
坂東:なるほど。ツクルバくんをちゃんと整えた。
中村:そうですね。トップの意思で決めるよりかは、ファシリテーター役に徹して、ワークショップをして、メンバーが自律的に委員会をつくってやっていることの後方支援をしてました。
意思決定プロセスにはあまり口を出さず、最後みんながこれがいい!って、100人で決定した感じで、極力トップダウンでは決めないCI変更プロジェクトを一通りやりました。
坂東:DXOというプログラムで、僕らも最初に言葉を整理するんですが、そのプロセスと一緒だなと思いました。
中村:そうですよね。
まさにこの手放す経営ラボも一つの理想的な場のシステムが回ってると思ってました。
坂東:ツクルバでの組織作りは工夫してたところがあったんですか。
中村:一時期チーフコミュニティオフィサーと名乗っていて、ステークホルダーを巻き込んでその同心円状のコミュニティを作ることをテーマに動いてました。
その時にはまさに企業文化祭じゃないですけど、ユーザー、取引先、いろんな人たちが集まって、みんなで文化祭をやろう、ご縁が集うお祭りだからご縁祭!そういうフェスティバルみたいなことを仕掛けたりしてましたね。
外と内の境目を持たず、ユーザーも取引先も、株主もみんな一緒にムーブメントを起こす仲間だと捉えられるなって。
当時は外と内を混ぜていくっていうことをメインでやってました。
坂東:場作りに関心が高いんですね。最初から言われてますけど、だから会社も組織っていうか、場っていう感じなんですよね。
中村:そうなんです。
武井:だからツクルバなんですけどね。そもそも理念が「場の発明」ですよ。
中村:もう一生場作りするんですよ。
だから何をやっていようとも、全部が場作り的な感覚でやってるんです。
本当にもう自分のライフワークになってます。