創業して12年間経営をしていた会社を手放した武井浩三さん(ダイヤモンドメディア株式会社 創業者)。
1年たってみて、どんな心境なのか? ラボ所長、坂東がつっこんで聞いてみました。
一つの場所で全てを表現しなくてもいい
坂東:武井さんがダイアモンドメディアを去年の9月に手放して1年以上経ちましたね。今どんな感じですか?
武井:変わったのは感覚。
今まで僕自身、会社の中に自分が居るという感覚がありました。
僕が何か活動をする時は「ダイアモンドメディア」という会社のためになることをしないといけないっていうちょっとした脅迫観念があったんですよ。自然経営研究会や不動産テック協会という社団法人を立ち上げても、ダイヤモンドメディアの為になる、ビジネス的な売り上げに繋がらないかな、とか思ってたんですよ。
でも会社を手放したら、武井浩三の中に「手放す経営ラボ」があったり、「自然経営研究会」「不動産テック協会」「アフリカローズ」いろんなコミュニティがあるという感覚になりました。
自分自身が外枠になったんですよね。
この身体感覚はすごく大きいなと思っています。
そうすると1つ1つへの執着が弱くなるので、すごく人に優しくなれるし、自分の自己表現や生き方や考え方がこうだっていうのを1つの組織やコミュニティだけで表現しなくてよくなる。
すると、ここではこれぐらいでいいかな、こっちでこれはやりたいなとか、他にやりたい事が出てきたら新しい会社作ればいいかなとか、そんなノリなので、昔は1つの会社で全部自分の全てを表現したいと思っていたので。
その無理がなくなりましたね。
社長も会社の奴隷?そこからの脱出方法とは?
坂東:なるほどね。会社の代表って結構自由にできるように見えるけど、それでも?
武井:社長でさえも会社の奴隷になっちゃいますよね。
だって収入だって会社からしかもらってないと、身動きとれないじゃないじゃないですか。
だからいろんな人に言うのは、必ずそうしろではないんですが、収入源が複数ある状態になると身動き取りやすいよって。
坂東:僕もそうします。
武井:無理しなくていいけど、徐々にね。
坂東:僕もブレスカンパニーの奴隷ですよ。
武井:例えば、坂東さんの収入がブレスカンパニーから半分、残り半分を他の会社やプロジェクトからという状態になれば、何か選択肢が変わりますよね。
坂東:優しくなれるって言うのが分かります。執着が減りますよね。執着って会社のメンバーにも向かうじゃないですか。
武井:全然変わりますね。
企業がお金を稼ぎすぎている
武井:今の社会って企業がビジネス・経済・労働者を管理する仕組みになっている。日本という国がそういう戦略で作ったわけですよね。
労働者を企業に管理させるという。だから企業中心の資本主義なわけで、実態のない人間の集団でしかない企業がお金をどんどん集めて、おこぼれを労働者とか働いていない人に配る関係性。
だから企業ばかりお金持ちになって、個人にお金が回らないという仕組みになっている。
坂東:利益相反しますよね。
武井:本来逆ですよね。もっと個人にお金を出して、この企業を残したいなと思ったら、個人が企業に寄付するぐらいな。
例えばeumoという会社の枠の中で、eumoの取締役岩波さんと一緒にギフトというコミュニティを作っています。そこはギルド型組織になっていて、みんながそこのプラットホームを使っていろんなプロジェクトをしています。お金の流れは、売り上げが上がったらみんなに分配する。残った1、2割をプラットフォームの母体に残すという関係性なんですよね。
坂東:愛知県にある株式会社TXTさんもそうですよね。社員の出資制度があって、会社に利益が出たら配当としてもらえるということですけど、儲かれば儲かるほど会社にお金が残るのではなく、出資してくれれば社員にも分配される。
※TXTインタビュー記事はこちら
武井:企業がお金を抱え過ぎてるんですよね。だから結局金持ちになるのは所有権のある株主だけ。それはおかしい。
ワーカーズコープ型の会社?
武井:最近、株式自体をみんなで持つ組合型株式会社に加えてワーカーズコープ型株式会社を作ろうと思っています。ワーカーズコープっていうのは労働者共同組合のこと。お客様も労働者でもあって、その労働者が経営権や運営権に対する議決権を持つという仕組みなんです。
坂東:生協っぽい感じですか?
武井:そうです。生協は大きくなり過ぎて顔が見えないから自分がそこのメンバーであるという実感がないんですよね。僕が地域コミュニティで作ろうとしているレストランは、メンバーシップ型。メンバーはお金を払うのではなく労働を差し出します。月に4〜8時間働かないといけない出資。メンバーはそのサービスを安く購入できる。そうすると経営としては人件費下がるから別に安く提供しても問題ないよねとという具合に、お金が介在しない経済が生まれるんですよね。
坂東:それめちゃめちゃいいですね。地域でシェアスペースやコミュニティも出来てきていると思うんですけど、成立させるのに苦労している話を聞きます。お金の配分が難しいとか、ボランティアだと強制はできないなとか。
武井:そうなんですよね。ワーカーシップのメンバーになれば、コーヒー飲み放題だけど、4時間働かないといけないというような仕組み。
そうしたらコミュニティ内で生産者と消費者が混じり合ってくる。主客一体を概念とかコンセプトだけでなく制度として作れる。そういう制度をちゃんと言語化して規約みたいにしようと思っています。
今そんな事を考えているんですよね。
組織も、お金の流れも、ビジネスの構造も自律分散型にしたい
武井:フラクタル構造の話ですけど、僕は組織が自律分散型になれば、お金の流れも自律分散型にしたいし、その為にはビジネス構造自体を自律分散型にしていかないといけないと思っています。
これからSDGsが進めば進むほど、旧来の重工業とかエネルギー系のビジネスは縮小していかざるをえないと思うんですよね。自動車もそう。
そうすると、今まで大きい経済の中で食ってた人達が食えなくなるってことが現実的に起こってくると思っていて。そうした時に、そういう人達が住んでる地域でお金を回る仕組みを作らないといけなくて、そういうのを色々試したいなと思っています。
坂東:組織の形とお金の仕組みの新しいデザインですね。
武井:DXOのロジックと全部一緒。それを1つの会社ではなくて、1つの地域とか街とか商店街でもいいですけど、自治体にDXOを導入してみたいなと思いますね。
坂東:いいっすね〜。できそう。
武井:できるところありますよ。
手放したダイヤモンドメディアの変化についてどう思ってる?
坂東:ダイヤモンドメディアの話からだいぶスケールが広がったんですが、話を最初に戻すと、ダイヤモンドメディアという会社もどんどん変わってるじゃないですか。社名や組織の形など。それについてどんなこと考えてます?
武井:今代表をしてくれている岡村とは普通に仲良くて一昨日も一緒に飲んでました。
彼が今やるべき事をしているので、純粋に応援したいですよね。
会社自体というよりは、私の友人である岡村が頑張っていたら応援したいということですよね。彼が会社を畳むと言って別の事をするとなってもそれも応援したいし。
会社ってどこまでいっても、それをやってる人が誰なのかでしかないですよ。
坂東:ダイヤモンドメディアという会社がどうなっているのかという事には興味がないんですね。
武井:他の会社も全部一緒で、誰が中心的なところでやっているかが重要で、今の社会のガバナンスは誰がやっても同じようにできる仕組みを作ろうとしていますけど、そんなの無理ですから。
坂東:なるほど。じゃあ、岡村さんに対してのアドバイスは何もないんですね。
武井:全くないです。組織は置かれた環境に対する最適化でしかないので。不動産テック業界も競争関係が激しいマーケットになってきたので、意図的にオレンジ組織になってるんですよね。情報の透明性もあえて制限してコントロールしようとしているし、でもそれは良い悪いはなくて、置かれた環境下における最適化。これは本当フレデリック・ラルーが言ってる通り、オレンジが悪いとか、ティールがいいとかの話ではなく、置かれた環境とそれをやっている人たちの意識構造なので。
坂東:おもしろい。そういう感覚なんですね。
指示命令を必要としない組織は増えていく
武井:人に依存しない組織を研究した結果、組織はやっぱり人だったって。戻ってきたんです。
坂東:やっぱり人だったんだ。笑
武井:もちろんその過程でその思いをどう形にするという話で。形にする部分の方法論がDXOだったりする。
今感じるのは、ティール組織とか、指示命令しない経営をしたいという社長さんはめちゃくちゃ増えてると思っていて、それって別に売り上げ伸ばしたいとかではなくて、みんなで一緒に幸せになりたいという人達が増えてきた結果だと思っています。
そういう人たちにとっての具体的なやり方がDXO。思いはあるけどできないって、やり方が欠如しているケーがほとんどだと思っているので。DXOには価値があると思っていますよ。
坂東:DXOが唯一のやり方でもなくて、こういうやり方もあるよという選択肢ですよね。合う人は使えばいいし、別の方法もあるし。僕らとしては、人にアプローチしないで仕組み、組織の外枠にアプローチする。するとスムーズに移行できると思っています。
武井:DXOではないやり方をしても同じようなロジックに辿りつきますけどね。人間っていろんな活動領域において発達度は違うので、僕もオレンジ領域のものは持ってます。それを全部ひっくるめて人間の意識構造なので、だからみなさんね、自分はまだまだティールには早いとか遠慮することもなくて、本来だれもが全ての発達段階を持っています。ただ、ゴリゴリの営業会社にずっといたら、そういうモードが長く続いちゃってそれに慣れちゃうということはありますけどね。
坂東:それしかないと決めつけてしまう。変化ができない。
武井:だから重なり合いが必要で、いろんなコミュニティや組織に属して、いろんな自分を多面的に持つという事がティールでいう全人格性なので。だからぜひ、手放す経営ラボにも関わってねと言いたいですよね。
坂東:確かに。アカデミアにも入ってもらいましょう!無料ですから。
武井:ずっと有料化で話していたのに、結局無料になりましたね。
坂東:どうなることやら。この先に次の未来が待っているという事が今の僕にはイメージが出来ているので楽しみです。
武井:すごいな。
坂東:ダイヤモンドメディアの話おもしろかったです。ありがとうございました。
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