田原真人さんプロフィール
「生きている状態とは何か」この問いに興味があり、大学院では複雑系の物理、生物物理を専攻。その中で出会ったのが、「自己組織化」という考え方。
2012年にオンラインコミュニティ「反転授業の研究」を立ち上げここで人間の活動を自己組織化できないだろうかと考える。かつて学んだ知識をもとに試行錯誤をしながらコミュニティ運営を行った結果、4400人の活発なコミュニティへと成長。また、Zoomを使った参加型のオンライン講座のノウハウを確立。
このような経験を元に、コミュニティが自己組織化するプロセスを体系化。
(プロフィール)
早稲田大学物理学及び応用物理学専攻博士課程中退。元河合塾講師。「反転授業の研究」代表。Zoom革命代表。国際ファシリテーターズ協会日本支部理事。Flipped Learning Global Initiativeアンバサダー。『微積で楽しく高校物理が分かる本』『Zoomオンライン革命』など著書10冊。
田原真人さんHP:https://masatotahara.com/
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コミュニケーションは聞き方が全て?
田原:その「何でそう思うの?」の聞き方が全てなんですよ。その聞き方で「こいつ、私のこと論破しようと思ってるな」と思われたら、絶対喋ってくれないじゃないですか。一方、聞き方に好奇心が全面に出ていて、「この人、本当に私の事を知りたいんだな、こいつ聞こうとしているな」と思ってもらえて初めて人って本音で話し始めるんです。この「何でそう思うの?」のセリフの後ろに漂うものが何かでそのコミュニケーションが成立するかどうかの90%は決まります。
武井:すばらしい。
坂東:僕ー…。
武井:坂東さん、何で反省しているんですか?笑。
坂東:昔は論破する気満々でしたね。
田原:僕もです。
坂東:手ぐすね引いて何でそう思うんだ?って。 やだなー。どんどん深掘りしまくってその先には論破が待ってるというか…、いや、コントロールだな。相手はいやだっただろうな。だから僕は、人の話を、その人の劇場ではなくて僕の劇場で聞いてますよね。いや〜聞き方が全てですね。そもそものスタンスですね。
武井:正解がない前提だと好奇心が前面に出た聞き方になりますよね。そういう考え方もあるんだ!何でそう思うの??教えて?って。
組織論になぞらえると、グリーン組織とティール組織に大きな壁が1枚ある。それが何かと言うと、「答えがある世界」と「答えがない世界」なんですよね。
グリーン組織とティール組織って似てるけど実態は全然違うんですよね。企業経営で言うと、グリーン型経営の方が安定していたりするので、働いている人の満足度は高いとかありえますけど、ティール組織の方がカオスが入ってくるので不確実性が出たり、正解がないからみんなが毎回考えないといけない。それを負担に感じる事にもなるけど、でもその考えないといけない場面が、自分の価値観で考える事自体が人間性を発達させるので必要なんです。だけど、時間がかかったり、手間だったり、ストレスになったりもする。でも僕はそれを排除したくないんですよね。
面白い事例があって…僕はホワイト企業大賞の活動で、ホワイト企業の社員を対象にアンケートを全員にやってもらうんですけど、グリーン型組織の点数が1番よくなるんですよね。ティール型組織っぽい会社は点数が下がるんですよね。
なぜか?社員が周りに忖度しなくなるし、言いたい事を言えるようになるしってことです。
これおもしろいんですよね〜。さらにグリーン型組織は社員のアンケート回答率がほぼ100%になるんですけど、ティール型組織は答えてくれたら嬉しいという感じなので、回答はあなたの意思に任せるという風になるので回答率も下がるんですよね。
坂東:答えがないって不安になるし、時間もかかりそうですけどね。
武井:僕は、いい不安だと思うんですけどね。
坂東:答えがない中でどうやって最適解をみつけるのか。だからこそ共に創っていこう、と。社会そのものがよくなるようなアプローチですよね。
武井:画一的な答えがないので、今自分たちが置かれた状況の中で自分たちにとってはこの辺かな?みたいな。それって企業や学校や地域ごとで答えが全然違っていいはずで。
田原:答えがあると外にこれをやっていれば批判されないみたいなものがある。だからみんなとりあえずそれをやろうとするんですよね。それをやって批判されたら、だってこれをやれって言ってるからやってるのにって反論が起こりやすくなる。それって安定するし、それに向かって協力するし、それに従うか、別のものに従うなら何なのか?正解がなくなると、外に従うものがなくなると、自分の内側から立ち現れてくるものに従うしかないわけなので、言ってみれば、目標や計画に従うのではなくプロセスに従うようになるんですよね。
プロセスの中が時々カオスになったりするから、今カオスに入ってきた、固まってきた、カオスになってきたというのをプロセスの中で感じられるようになる。
武井:カオスの中で地に足を付ける。これ天外伺朗さんがよく言うんですよね。ディープグラウンディングって。自分の人生に自分の足で立つって。それができてないと、カオスに負けて何かにしがみつきたくなるんですよね。自分なりの答えがないから、他人の答えにすがる。それが依存ですよね。宗教や家族だったり。そうすると自分の人生を生きれなくなっちゃうんですよね。
田原:僕それをカオス温泉って呼んでいるんですけどね。
武井:いろんなワードでてくる〜。笑
田原:カオス温泉に浸かってれば、何か立ち現れるものが出てくる前に先に出ちゃう人がいるわけですよ。もうちょっと浸かってれば、何か出てくるのにって。カオス温泉にどれだけ長く浸かってられるかでプロセスが立ち現れるかを待てるのか、熱いと思って出ちゃうのかみたいな。そういうのあるなと。
坂東:ぬるぬるして気持ち悪いとか?
田原:ぬるぬるしている時もあれば、皮膚を刺すような時もあれば、ですよ。
坂東:思い出したことがあるんですけど、ニートだけで組織を作っているニート株式会社をつくった若新さんという方がいるんですが、昔、ニートで行う会議を見学したことがあって。その会議、若新さんは一切コントロールしない。ニートの人がまさにカオスで。コニュニケーション力が低い人もいたり、全然目を合わせないでずっとパソコンしてたり、グループなのに後ろ向いて話している人もいたり…。経営者何人かでに見学に行ったら、大半の経営者は見てられないと出て行ったんですよね。カオス温泉見てられないって。
会議ってもっとアジェンダ決めて、結論出して、効率的にやる考え方なのにって。でも若新さんはこのカオスの先に何かが生まれると信じていて、実際にこの時も朝から初めて、夜19時ぐらいに盛り上がってきたらしいです。すごいいろんなものが生まれて決まって、それを信じて待ってたって。でもそんなこと一般企業でできるのかなって。
武井:僕はカオス温泉大好き男なんで。僕がいるとカオス温泉が湧いちゃうんです。笑
坂東:温泉の源泉だ!
武井:天外さんにそんな風に言われて、僕が場をもうけるとカオスになる。
急に仕切りたくなったりする人もいるんですけど、それが最近はカオス温泉が好きな人しか集まらなくなったので、そこから湧き出て形にするフェーズでは秩序も必要なので、ヒエラルキー的な秩序の作り方ではなく自律分散的な秩序の作り方にしないといけない。
その前例が足りてないので、カオス力高い人でも意図せず支配型の形になっちゃったりするんですよね。具体的な自律分散的なチームの作り方を知ってる人たちが広めていく事がすごく重要。
広め方も色々あると思うし、このトークライブもそうだし、本を書いたり。そんなフェーズなんだなと思ってます。
坂東:自律分散的組織を作っていくファシリテーター役は、田原さんが言うには、カオスと秩序の間をゆらゆら歩いていく先導役なんだ、と。カオス温泉に浸かってるだけではないんですよね。
武井:よろめき歩く。これ温泉のサウナと水風呂みたいな感じじゃないですか!それで整うんだー。
坂東:繋がった!今、共創が生まれましたよ。イメージは湧いたんですけど。改めて田原さん説明お願いします。
田原:僕は結構フォシリテーター的な役割をする事があるんですけど、肩書きにもデジタルファシリテーターとあるように、
Art of Hosting (アートオブホスティング)という参加型の場を作るファシリテーションでは、ちゃんと教わったわけではないけど・・・ちなみに僕は、大体ちゃんと教わった事がないものを、聞きかじりながら適当にやってるものの集合体なんですけどね。AoHもその1つで、それを読んで、自分なりにやっていて、結構人数が集まった時に想いの共有をかなり丁寧にやりました。例えば、僕がこの3人でプロジェクトをやろうとした時に、なぜ坂東さんと武井さんを誘ったかという想いの共有から話しはじめて、武井さんや坂東さんに、僕の想いを聞いてどんな気持ちが湧き上がってますか?を丁寧に聞いて、最初に意図を練るんですよね。このプロジェクトがどんな風になっていけば嬉しいだろうか?という事を3人で対話して言語化していくことをやります。
坂東:意図を練るの意図とは、目的とかWHYみたいなものですか?
田原:目的とはちょっと違うんですよ。例えばこのプロジェクトを通してもっと世界が平和になっていったらいいよねとか。
坂東:ありたい姿ですね。
田原:ありたい姿とか、3人が集まっている意味を話して、ちょっと3行ぐらいの言葉で表して、自分自身ありのままでプロジェクトに関わるみたいな事をやりますね。
そのあとに何かをやる時に人を誘うじゃないですか。外の人を誘って、コアのチームが私たちの意図を共有して、その人たちの想いも聞いていく。その中で具体的にやる事が決まっていって、それから一般参加者にまで広がった時にはコアのチーム外のチームとで一般参加者の方にホストしていくというか、その人たちがありのままでやれるように場を作っていく。
ありのままでやるという非暴力的なやり方が広がる時に、いきなり100人集めて、今から非暴力的にやっていくぞと言っても絶対ならないので、同心円状的に段階を踏んで広げていくやり方をします。やっていくと、カオスが発生するんですよね。当然混乱もする。その時に「何でそう思うの?」が聞きあえる事が大事になります。
背景が広がっていって、世界が広がっていって、集団の中でやるべき事が見えてくると最高だなと思います。
武井:なるほど〜。
坂東:今のは自己組織化のプロセスと言っていいですか?
田原:対話的なプロジェクトの自己組織化のプロセスですね。
武井:ちょうど僕、こんな本をもらって、こんまりの旦那さんの川原卓巳さんが出版したの
『Be Yourself 自分らしく輝いて人生を変える教科書』があるんですけど、
彼は10年来の友人なんですけど、こんまりメソッドのときめくかときめかないかは自分の心しか分からないから、それを感じとる心を育むんですよね。こんまりメソッドをやるとありのままになっていくんですよね。自分がこれが好きなんだなとかこんなにときめかないものに囲まれてたんだなとなっていくらしくて。
マインドフルネスだし、瞑想みたいなもんだし。
坂東:こんまりメソッドで片付けようと思った時に頭で考えちゃうんですよね。いやでもこれまだ着るかもしれないしなーとか高かったしとか。そうじゃないんですよね。ときめいてないんだもん。
武井:面白い、みんなが繋がってくなー。
坂東:フォアグラ型教育だと、ときめく感情を自分自身で押さえ込んでしまう。こうあるべきとかこれが正しいと。
田原:ときめいていたら試験に間に合わないんだよって追い込むわけだから。
坂東:いつも子供が言われてます。そんなの受験が終わってからーって。
田原:そのときめくとか面白いのを麻痺させてやるべき事をやるという訓練を長時間かけてやってるんですよね。
坂東:その訓練を上手くできた人がその世界ではヒエラルキーの上に位置できます。
田原:正解を持ち込んでやろうとしたらヒエラルキーが自己組織化しちゃう。できてしまう。
坂東:自分でも気づかないうちにそれを作っちゃう。
田原:それが当たり前な人たちが集まるからそれができちゃう。
武井:一方向の力学が止まらないんですよね。ヒエラルキーって拡張拡大している時はそれでも機能するんですけど、拡大が止まるとガラガラガラって崩れるんですよね。僕が田原さんから教わったアメーバの分裂の話。それがまさに今の社会のメタファーとしておもしろいと思ったんですけど。
社会構造をアメーバで説くとは?!
続きは後編をお楽しみに♪
■手放す経営ラボラトリーでは、“ティール”“ホラクラシー”など進化型組織や最先端の経営スタイルを研究。また自社でも実証実験を重ねており、その様子をYouTubeやコラムでお届けしています。 また、組織をアップデートしていきたいという企業の支援をしています。
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