手放す経営ラボラトリーでは「組織づくりについての過去の常識を手放しましょう!」と言っていますが、ただ手放せばいいワケではありません。
よく考えずにいままでの制度や取り決めを捨ててしまうと、うまくいきません。
今回は手放す経営ラボでのカラダを張った実験例を紹介しながら、組織変革のポイントをシェアしていきます。
坂東:「私たち手放す経営ラボラトリーということでやっているじゃないですか。それで手放す経営ってどんな感じ?って聞かれるんですが、実際に僕らは2年前にブレスカンパニーっていう会社の中でほとんど全てを手放してみた、リセットしたみました。そして、そこから組織のアップデートの実証実験をやっているんですけど、実際に色んなことを手放したりするとどうなるのかについて体験談を交えて共有ができればと思っています。」
小野:「後悔してないですか?」
坂東:「それは全然してないわ。」
小野:「もう戻りたくない?2年前のあの時に。」
坂東:「戻れないけど、進め方、やり方ではもっとこうすればよかったっていうのはいっぱいありますね。やっぱりやってみて分かったこととか、実際うまくいかなかったこととかいっぱいあるんで、それも実験として非常に貴重なデータは得られたんですけど、痛みも伴いましたね。2017年は小野さんがいなかったんでその時の状況は話で聞いてたりしてもあまり詳しくは分かってないもんね。」
小野:「でもスタッフの人とかもめちゃ変わったって。私は変わった坂東さんしか知らないから。もしあの時のあれだったらこう言ってたよね、みたいな。」
坂東:「以前だったらこういう風に言ってたんじゃないかと。」
小野:「よくなったよ〜、みたいな。上からですが。笑。私は何も知らないから。」
坂東:「自分ではあまり変わったかどうか分からなくて、そういう風に言われることは多いっていうか、陰でも言っていただいてますね。まぁまぁよくなったよと。笑。2017年は、それまであった事業計画とか会社の理念とか、唱和するという習慣とかもなくしました。勤怠も若手社員がその当時いて、若手社員は僕も一緒に8時に出勤してまず掃除すると。8:15から新聞を読むと。それで8:30からミーティングするということでやってたんですよ。だけど、それもなくしたんですよ。その時は勤怠も決まってたので1分でも遅刻したら遅刻だからそこらへんもけっこう厳しくしてた。で、8時に集合って言って8時に来てなくて。だけど若手社員はまだ一人前になってないからそういう生活習慣を身につけた方がいいし、ちゃんとインプットもした方がいいよねっていうように僕的にはそういう風に思って若手のためにという気持ちで教育してあげたいと思ってたんですよ。その時は。よかれと思って。だけど、それは僕自身の正しさの押しつけだったなと思って。僕はやってやってる感があるからそういうのがたぶん伝わってたと思う。やってやったのにもうちょっとやる気出してよ、という心の声がたぶん顔に出てたと思うんですよね。でも、そういうのも自分が正しいと思って良かれと思ってやってたことは朝のことだけじゃなくて、仕事の隅々、経営の隅々にあったんで、それが何がよくて何が間違ってるのか僕の中で分からない部分、ごっちゃになっている部分もあったんで、一旦リセットできるものはリセットしようと思って、給料を決める権利、評価できる権利、仕事を選ぶ権利も僕自身が持ってた権利は一旦手放したんです。で、必要なことは全部話し合って決めていくというスタイルにしようと。例えば、掃除とかも分担決めてたんだけど、そういうのもやめたので掃除しなかったら汚くなっちゃうじゃんか。どうしようかみたいな。で、基本的には僕がそれまで決めてたんだけど、じゃぁ掃除とかそもそもするのかどうか考えようみたいな。」
小野:「それでルンバを買ったんですか?」
坂東:「そうそう。色々話していて、どうすればいいのかみたいな案も出てこないし、そのうちに外注しようかという話も出たけど、ルンバでいいんじゃないですか?ということになった。それはいいかもね!となったけど、うちがその当時、ルンバがなかったから、ルンバの便利さに気づいてなかったんですよ。会社でもやっぱりそうで、あ、これでかなり解決するじゃんみたいな。でも僕が決めるって言ってなると、ルンバの良さ知らないからそういう発想が出てこない。だからみんなルンバでいんじゃね?って思ってても、きっと分からないだろうしなって忖度して言わなかったりすると思うんですよ。というようなことも僕が最終的には僕の正しさ、判断基準を持って決めるっていうことになってると、すべてがそうなってるとじゃぁ勤怠管理とかどうしようってことも僕はミーティングでどんどん意見を発して決めて欲しいという風に思ってても何か出てこない意見が。」
小野:「言いづらいんですよね。どうせ社長がうんって言わなかったらダメだし。」
坂東:「なんて言われるか分からないから様子見ておこうかなという風になる。そんなに圧力をかけているつもりは全くないんだけど、聞く姿勢を持ってたつもりだったんですけど、それも僕ものつもりで。」
小野:「柔軟性ですね。」
坂東:「頭と心の柔軟性ね。それがなくなってたんだわ。僕が決めた方がいいとか僕の方が正しいって基本的に思ってたので。一番責任感も感じてるしとか。だけど、すべてにおいてそういう訳じゃないし、自分一人で何もかも決めるよりかはみんなの知恵を結集した方が正しくなるケースの方が高いっていうのがやっていく中で分かってきたんですけどね。でも、けっこう時間かかりましたね。で、そんな中でそういう風にほとんど一切手放してほとんど話し合いで決めていったんですけど、そういう風な会社が世の中にあるんですよね。例えば、ティール組織って本を読んで、これからはセルフマネジメントだと。じゃぁ、ルールもなくして上司もなくしてこれからみんな好きに決めていいよってやる会社がけっこうあるんですよ。」
小野:「いきなりですか?」
坂東:「これはあまりうまくいかないんですよ。」
小野:「理想と現実と違いすぎるというか。むやみやたらにやったら逆効果な感じしますね。」
坂東:「そうそう。それは実際にうちのラボでも起こったんですけど、決めていいよって言っても今まで決めてる経験がないんで、だから、やっぱり決めるのに躊躇しちゃうっていうか。意見を言うのにも躊躇するし、本当にそれでいいのかっていうのも分からないし、そういう習慣づいてるっていう感じですね。誰かに決めてもらうっていう。上司に決めてもらう。」
小野:「人任せになってる。」
坂東:「その方が楽っちゃ楽なので、そうなるとなかなか意見が出てこないんで、でも上司みたいな決める人をそのままなくしちゃうと、全然決まらなくなっちゃうということがよくあります。そういうの全部話し合いで決めようとすると話が長くなる。会議が長くなるんで、いたずらに時間が取られたり、結局色んな人の意見を尊重しようとすると落とし所が何となくのところになっちゃって、とんがったところが全部削ぎ落とされて、丸い普通の意見・アイデアになっちゃったりする。なので、結果的に全然いい話し合いや結論にならないというのが多く出ているんですよ。時間がかかるし、まとまらないし、あいまいな結論になっちゃうし、みたいなケースがよく出てくるんで、それは注意した方がいいですよっていうのが僕が今日一番言いたいことですね。ただ手放せばいいっていう訳じゃなくて、僕らも手放す経営って言ってるけど、全部手放していいですよって言っている訳じゃないじゃないですか。」
小野:「失敗例がありますからね。でも、それがあるからこそ言えることもたくさんありますもんね。アドバイスできること。」
坂東:「だから、手放すっていうのは固定観念とか今までの常識とかやり方を一旦手放してみるっていう発想ではよくて、その際に全部これからフリーだよっていうとやれない人の方が大半なのでやっぱりその中でも話し合いの仕方を決めておくとか、例えば、時間決めて最終的にはこの人が決めるっていうことにしておくとか。あるいは、意思決定を何でもやっていいよって何でもって言われても、いきなりできないんで、準備も必要だし。すごく小さな細かい誰でも決められるようなことから決める経験を積んでもらうとか。」
小野:「リハビリしていって。」
坂東:「そうそう、トレーニングね。例えば、掃除のやり方を決めるみたいなことだったら会社の売り上げとかに関係ないからそれを若手社員の人たちに任せてみるようなことで小刻みにステップを作っていって、そういう経験を積んでいくとか、あとはやり方とかガイドラインとかを決める決め方を決めるというようにやっていくと、カオスになりにくいですね。」
小野:「確かに。何かなった時もそのガイドラインを見て、初心に戻るじゃないけど、戻ってやり直せますもんね。間違った方向に行ったとしても。」
坂東:「で、テーマもできるだけ細分化したり、これを何のためにやっているのかっていうのがすごい大事で、社員の自主性を高めたい、そのためにやりたいっていうケースが多いんですけど、もっと言うと何で社員の自主性を高めたいのかって言ったら、何でか分かる?」
小野:「心の満足?」
坂東:「それ大きい。その方がやりがい持ってくれる。結局、その方が仕事のパフォーマンスが上がって会社の事業がより伸びていくんじゃないか。そこがすごく大事だと思うんですよ。事業が伸びていく方向にいっているのかどうかっていうのは常にチェックをしないといけないし、会社によっては社員の自主性とかをそんなに思い切りあげなくてもビジネスモデル上みんな役割分担して効率的にカチカチとやった方が事業が伸びていくケースもあったりするんで、どういう組織を作りたいかっていうのはどういう組織をつくったらより事業が伸びていくか、生産性が上がっていくかということとちゃんと紐づけて考えておいた方がいいですね。うちはどちらかというと、ラボなんで、実験として色々試している。それを実験と思ってやってるから別にいいと思うけど、会社の目的はやっぱ事業の成長を通じて会社の存在目的を追求していくということなので、そこにちゃんと立脚しているのかというのは念頭に置いておいた方がいいですね。」
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