うちの給与制度は、半年に一度自分を転職市場に晒す感覚。
坂東::ミッションやビジョンが無いことに違和感を持てるようになった、という話でしたが、給与制度を変えるのは、
そこにも違和感を持ったということですか?
関戸:給与制度に違和感があったと言うより、今の会社の組織構造に違和感があったんです。
で、「みんなが組織について一番考える機会っていつか?」と考えてみると、
やっぱり自分の給与が決まるときじゃないかな、と。
坂東:なるほど!
関戸:なので、給与制度をリニューアルするのが、この会社に一番インパクトを与えられるんじゃないかと思ったんです。
坂東:組織をブラッシュアップするには、給与に手を付けるのが一番早いんですね。
関戸:そうなんです。実は、給与制度のマイナーアップデートは何度もやっているんですよ。
それによって出た歪みを正すために、1on1などをはじめとするいろんなHRの施策が生まれてきた。
給与制度の変更を軸に組織づくりがブラッシュアップされた経験があったので、もう1回ゼロベースで見直すことにしたんです。
坂東:そうだったんですね。
関戸:ちなみに今までは、実名制のアンケートによる360度評価と、
社員の給与をお互いにすり合わせるというスタイルでした。
坂東:「この人は20万だと思う」「私は25万だと思う」みたいな?
関戸:そうですね。うちは、基本給の他に実力給という変動する給与があり、
その実力給をみんなで話し合って決めていたんです。「この人は今20万円だけど、25万円に上げてもいいと思う。
なぜなら……」みたいな。
坂東:なるほど。
関戸:ただ、給与の決定と、一人ひとりが成長するためのフィードバックって、
本来別々でおこなわれるべきだと思うのですが、このやり方だとごっちゃになっちゃうんですよね。
坂東:なぜ評価とフィードバックは分けるべきなんでしょうか?
関戸:分けていないと、正しいフィードバックがおこなわれない可能性があるんですよね。
「このぐらい成果出すなら、このくらい上げてもいいよ」みたいな話になったり。
そういう議論って、本人のめざすキャリアや働き方が置き去りにされていて、すごく不健康。
坂東:不健康かあ。なるほどね~。
関戸:なので、フィードバックと給与に対する議論は、次回の給与会議からは完全に切り離すことにしました。
うちは6か月スパンで給与を決めるんですが、次回の給与会議から始まる新しい取り組みとして、5か月かけて毎月、
社員はフィードバック面談を実施するようにしました。面談する相手は自分で指名できます。
そして、そこでは給与の話は一切しない。指名された相手も、給与の話はしない。
「あなたは何をめざしているの?」「それならこうした方がいいね」みたいな、
あくまでも個人の希望や目指すビジョンに基づいたフィードバックだけを行うんです。
坂東:なるほどなるほど。
関戸:毎月のフィードバックの内容を記録しておくことで、この5ヶ月間その社員がどんな目標を持ち、
どんな働き方をしていたかがデータとしても、実感としても自分の頭にも残るんじゃないかと思っています。
現在、このフィードバック面談が一周したところで、それを参考指標に、
これから始まる給与会議で自分の給与を自己申告してもらうんです。
坂東:自己申告なんですね!
関戸:他の社員はその数字を見て、高いか低いかだけを投票する。
坂東:へ~~!
関戸:何で高いと思ったか?とかも書かない。それフィードバックになっちゃうんで。
坂東:徹底してますねえ。
関戸:本人はその投票を見て、自分で給与を書き換えるんです。
「みんな低いと思ってるんだ。じゃあ上げようかな」とか「この金額だと高いと思われてるんだ」と。
ただ、それを見て書き換えるか書き換えないかは本人の自由。
本人が「それでもこの金額がいい」と言えば確定です。
坂東:かなり大きな変化ですね。
関戸:そうなんですよ。おもしろいのが、この給与の決め方の改定プロジェクトに、社長の武井が入っていないところ。
坂東:え!そうなんですか。
関戸:僕が中心に立ち、社内のメンバーや外部のアドバイザーと協力して決めていきました。
坂東:武井さんも本当に徹底してますね(笑) ちなみに、今回はどうしてこういう仕組みになったんでしょう?
関戸:やっぱり給与の納得感ってモチベーションにダイレクトに影響するし、
それが人に決められちゃうとパフォーマンス出ないのかな、と。目標も評価も自分で決めるからこそ、
自分のコミットも高まると思うんです。「自分で決めた目標なんだから、絶対達成しよう」みたいな。
坂東:確かにそうですね。
関戸:前半でお話した株式会社ゆめみさんには、
組織づくりについて教わりたくて直接社内の人にお会いしにいったんですが、
そのときに話題に出てなるほどなと思ったのが、
「転職して来る人って、全員こういうプロセス通ってますよね」ということ。
「前職いくらでしたか?」「いくら欲しいですか?」みたいな会話があって。
基本的には自己申告から始まっていて、それを半年に一度やる感覚というか。
それがかなり腑に落ちたんですよね。
坂東:なるほどね〜。
関戸:自分を転職市場に晒すのと同じことですから、その都度しっかりと納得感を持って次に進めるんです。
何年も付き合っているのに、プロポーズしない男は嫌い。
坂東:本当にどんどん変化していくんですね。会社を有機的な生き物として捉えると、
中にいる社員のタイプや人数によって組織の在り方って変わりますもんね。
関戸:そうですね。そのときそのときで最適な仕組みにしたいなと思っています。
坂東:「何人規模だったらこういう組織がベスト」みたいな型って無いですもんね。
中にいる人の価値観とか、事業の成長度合いによっても変わるでしょうし。
関戸:「1000人まではこの組織で耐えられるだろう」とか想定しておく分にはいいと思うんですよ。
大事なのは、ダメだったときにすぐに変えるという順応性。
一度壊して再構築するための『壊す力』がすごく問われる時代だと思いますね。
坂東:御社には、十分その力が備わっていそうに見えますね。
関戸:あんまり恐れずにやりたいな~とは思ってますね。
坂東:考える地頭というか、常にそのときの最適解を考えるクセは付いてるんじゃないですか?
関戸:考えるのは好きです。
坂東:そうなんですね。
関戸:僕、「凡事徹底すると非凡を生む」っていう言葉がすごく好きなんですよ。
坂東:おー!そうなんだ。
関戸:とにかく基本!何よりも基本!みたいな。
坂東:ダンサーの心構えですね(笑)
関戸:ダンサーって本当にそうなんですよ。
「コイツ、めちゃくちゃアップダウン上手いな」みたいな(笑)
坂東:どんだけ練習したらこうなるんだ?!みたいな(笑)
関戸:さっき、ゼロから1を生むみたいな話をしましたけど、感覚で生み出しているのではなく、
コツコツ基本を積み重ねた結果なんです。
坂東:さっきのWEBデザインの話もそうですね。
関戸:コツコツを積み重ねていると、ときどきポンッて非凡なものが生まれてきたりして。
坂東:生まれる、生まれる。
関戸:それが楽しいんです。僕の人生は常にそれを待ってる感じです。
坂東:基本を繰り返すことは苦にならないんですか。
関戸:意外と楽しんでいます。
坂東:なるほど!おもしろいです。
関戸:だから、色んなことに手を出すのがあまり好きじゃないんですよね。
昔はダンサーとかWEBディレクターの一番をめざしていたんですけど、どこかのタイミングで
「ダイヤモンドテールという商品のWEBディレクターとして日本一になろう」と決めて、
普通のWEBディレクターの道を捨てました。そうしたらすごくすっきりした。
坂東:へ~!捨てたんですね。
関戸:ダイヤモンドテールも5年くらい前は初期費用70万円くらいで競合とそこまで変わらなかったんですよ。
でも僕が覚悟を決めてから、3年ぐらいかけて初期費用300万円でも売れる品質をつくっていった。
坂東:なるほど。確かに決めることは、捨てるということとイコールかもしれません。
関戸:そうですね。決めて捨てる。だから僕、アレがすごく嫌いなんです。
5年ぐらい付き合っててプロポーズしない男。
坂東:へ~~~!
関戸:あれ、本当は「プロポーズしない」ということを自分の中で決断してると思うんですよ。
プロポーズができないんじゃなく、しないと決めている。
坂東:なるほど。それなら「結婚しない」と言えよ、と。
関戸:そうそう。決断する材料は付き合って1年半、長めに見ても2年あれば揃うと思うんですよね、プロポーズに関しては。
坂東:まさかこんな話になるとは思ってなかったですが、おもしろいです(笑)
関戸:ちゃんと決断して、何か一つに向き合う。
仕事で「これを極める」と決めたら、コツコツ基本を徹底する。
坂東:会社全体で、日々のルーティンが息を吸うようにうまく回っていて、
それを積み重ねることで非凡なものを生み出していきたいという感じですかね。
関戸:そうなんですよ。
理想としては、普通に仕事しているだけで基本が身につくというか、「トレーニングしている」という感覚が無いところまで持っていきたいですね。
坂東:会社のミッションとか方向性について考えることもそうなんでしょうね。
関戸:今回取り組みはじめたフィードバック面談が、
そのための役割を一部、果たすのではないかというのが現在の仮説です。
毎月1回、「自分はこの会社で何をしたかったのか」を見つめ直すことで、
会社の存在意義についても考えることになる。
これが日常会話に出てくるくらい、無意識に落とし込まれていけば最高ですね。
坂東:なるほど。いや~、本当におもしろかったです。ありがとうございました!