AFRIKA ROSE新旧代表と語る Well-beingな代表交代の進め方
アフリカローズ創業者の萩生田愛さんは、こうした想いをもって2012年に事業をスタートしました。
現在、広尾店、六本木ヒルズ店、そしてオンラインストアで、ケニアから輸入した生命力溢れる世界最高品質のバラの花束やバラ関連グッズを販売。多くの人に愛されています。
ところが、今年3月、萩生田愛さんは代表権を手放しました。
強い想いやビジョンを持っていたはずなのに、どうして?
誰に、どうやって引き継いだの?
創業者が代表でなくなっても、
想いは継がれていくの?
スピーカー 萩生田愛さん 株式会社Asante (AFRIKA ROSE)創業者
◆プロフィール
1981年生まれ。東京都出身。大学卒業後、大手製薬会社勤務を経て、2011年ボランティアでケニアに渡航。小学校の建設支援をする中で学校をつくっても学校に通えない子どもがいることを知る。ケニアの失業率は当時40%、家計を支えるために子どもが働かなければならない現状を目の当たりに。援助や支援ではなく、雇用をつくるフェアトレードという形で2012年、ケニアに力強く咲く生命力溢れるバラの輸入、及びオンライン販売を始める。2015年10月、広尾にAFRIKA ROSE路面店を出店。2018年、第一子出産。2019年4月、AFRIKA ROSE & FLOWERSを六本木ヒルズ内に出店。著書:AFRIKA ROSE 幸せになる奇跡のバラ(ポプラ社)
スピーカー 田中秀行 株式会社Asante (AFRIKA ROSE)“新”代表取締役
◆プロフィール
1979年、埼玉県出身。大学卒業後、金融業界在職中にフランスに留学。
2012年にフラワーデザイナーとして独立。2013年、萩生田の思いに共感しプロボノとして関わる。
2015年、株式会社Asanteの取締役に就任。現在、株式会社Asante取締役、兼、フラワーデザイナーを務める。
スピーカー 武井浩三 AFRIKA ROSE取締役/社会システムデザイナー
ダイヤモンドメディア株式会社創業者、(一社)自然経営研究会 発起人/代表理事、(一社)不動産テック協会 発起人/代表理事、ホワイト企業大賞 企画委員会 委員 手放す経営ラボラトリーCPO
2007年にダイヤモンドメディアを創業。
経営の透明性を徹底的にシステム化した独自の企業文化は、「管理しない」マネジメント手法を用いた次世代型企業として注目を集めた。現在は、創業した会社を自ら手放し、ティール組織・ホラクラシー経営等、自律分散型経営の日本における第一人者としてメディアへの寄稿・講演・組織支援など多岐に渡る活動を行う。2019年10月手放す経営ラボラトリーにCPOとしてジョイン。
モデレーター 坂東孝浩(手放す経営ラボ所長)
大学卒業後から、一貫して大企業~ベンチャー企業まであらゆる組織の課題解決に携わってきた。その数800社以上。しかし、時代や環境の変化が激しさを増してくるとともに、研修や採用ブランド力向上などの手法では根本的な課題解決ができないと感じ始めた。そこで、手放す経営ラボラトリーを設立。最先端の組織や経営スタイルを研究、自社でも“手放す経営“を実践している。
現在は新しいカタチの組織デザインと、組織改革の実行支援を通じて全国のクライアント企業のサポートを行なっている。
タイトル
坂東:で、あれですよね、代表交代に向かうわけですけれど、それはどういう経緯でというか、私もぜんぜん知らなかったんで。
田中:それは、まあ……
武井:愛さんから。
萩生田:アフリカローズを立ち上げて10年がたつっていうタイミングで、まあ、そういうことはもう書いてあるんだけれど、でも、そこは抜きにして、社長がキャリアを変えてもべつにいいし、創業者が変えてもいいじゃんっていう感じですかね。っていうのが私サイドの自分のエゴの視点で、会社の視点でいうと、10年たって創業者が引っ張ってきたっていう時代が終わったから、ひとりひとりがティール組織的に活躍する、組織をつくっていくっていうフェーズになるためには、やっぱり創業者がいるとちょっと邪魔っていうか、存在が客観的に大きすぎる。だから、「AとBどっちがいいですか」っていうときに私が「Bがいいです」って言ったら、みんな尊重してくれてBになりがちというか、私はいち意見として言ってるのに、Aになってもいいのに、話し合って「A’B’……じゃあCだね」とかになってもいいのに、結構Bに寄っちゃうっていうこともあったから、存在として大きいから、ちょっとステップバックするような感じで、組織的な私の関わり方を、位置づけ的に、そういうふうにしたほうがいいのかなって思ったり、ひでくんと私のスピード感って、私は結構火がついてパッとやるみたいな感じだけれど、ひでくんは、ペースはゆっくりなんだけれど確実にやっていくコツコツ系なので、ペースが合わないときもあるんです。でも、私のペースは創業期にはよかったかもしれないけれど、ひでくんの、みんなを巻きこみながら、ゆっくりでも、ちゃんとみんなを確認して、ひとつずつ進めていくっていう進め方が、これからのアフリカローズの組織のあり方に、ひでくんがリーダーになったほうがいいのかなって思ったっていう感じですかね、組織的な感じで。
坂東:へぇ~。
萩生田:で、武井さんも加わってくれて3人になったし、あと、ティール的にちょっとオープンになって、組織のみんなもちょっとずつ慣れてきはじめた、2年以上たったので、このタイミングかなって思ったっていう感じですかね。
坂東:なるほど。自分がいなくなってもいいような体制をつくってきたっていう感じなんですか?そういうことをべつに思っていたわけじゃない?
萩生田:まあ、意識はして、でも、いなくなってはいなくて。
坂東:ああ、そうですね。
萩生田:いるんですけれど、でも、社長じゃなくても、うーん、なんていうか、私が中心にいるんじゃなくて、みんな中心で、私はちょっといるぐらいな、同じ立ち位置、平等な立ち位置、いちメンバーとして、っていうぐらいの立ち位置になってもいいようには、もちろん10年以上、武井さんとひでくんと一緒に準備をしてきて。そのときは、代表交代とか代表を退くとかっていうところまでは考えていなかったけれど、実際そうなってデンマークに行ったんですけれど。
坂東:去年ですよね。
萩生田:去年。デンマークに4か月間。不在にしても組織が回ったんですよ。
坂東:お~。
萩生田:「あ、回った。すごーい!」と思って。
坂東:お子さん生まれたときは回らなかったけれど。
萩生田:「回らなかったのに今回は回った。すごーい!」と思って、すごく感動して、「じゃあ、いなくても回るってことは、このまま……」って。でも、卒業するとか私が本当にいなくなっちゃうっていうのは私も寂しいし、やっぱり関わっていたいから、大切な存在だから、どういう形がいいのかなって思ったときに、やっぱり、ひでくんに社長になってもらいたかったっていう感じですかね、私が。
坂東:いつそう思った?
萩生田:それは伊勢神宮に行ったとき?
田中:猿田彦神社だよね。
萩生田:猿田彦神社、そう(笑い)
坂東:渋いね(笑い)わかりますよ。
萩生田:伊勢神宮に行ったんですよ。
坂東:いつですか?
田中:7月かな。伊勢参りに行く前。
坂東:去年の?伊勢参りに行く前に?
萩生田:うん。で、猿田彦神社っていうのは道を示す、そういう役割があるって友だちから聞いて、おみくじを引いたら……
田中:鳥かご……飛び立つタイミングでしょ、みたいな感じのお告げがあって。
萩生田:そう。
田中:僕ともうひとり、3人で回ったんですよ。で、僕とそのもうひとりの人はサササーッと回って、「じゃあ行こうか」みたいな感じでいたんだけれど、愛さんがぜんぜん帰ってこなくて。そうしたら、やっぱり目的が猿田彦神社だったんだよね、そのときは。
萩生田:そうそう。伊勢神宮じゃなくて猿田彦神社に行きたかったっていう(笑い)
田中:で、「すげー時間かけてんな」っていうので。
坂東:次の道を知りたかったんですか?
萩生田:なんていうか、お告げのタイミングっていうか、ある程度決まっているんだけれど、ちょっと背中を押してほしいみたいな、神がかったなにかが欲しいみたいなタイミングあるじゃないですか。
坂東:はいはい。
萩生田:そんなときで、「鳥かごの鳥が飛び立つタイミングで、そのほうが世の中的にもうまく回るし、すごくいい未来が待っているでしょう」みたいな、「ちょっと、ひでくん話があります」って言って、「実は代表……」ってそこで、夜のね。
田中:そう。なんかそんな感じで、「ああ、愛さんらしいな」っていうふうに思ったのと……
坂東:思ったんですか?そこで。へぇ~。
田中:愛さんは本当に鳥というか、自由に羽ばたいていたい人かなって改めてわかったので、なんていうか、アフリカローズとしても、愛さんが自由な状態で羽ばたいているっていう状態がいちばんいい、っていうふうに思ったっていうのがあります。アフリカローズにとってもいいし、いるスタッフさんにとってもいいみたいな。デンマークに行くときに、「自分は行くのは決めていたけれど、本当にいいんだろうか?」っていう、ちょっとだけ迷いがあったと思うんですよね。
萩生田:そう。いつも迷うからね(笑)
田中:そう。それが猿田彦神社のおかげで100パーセントになったみたいな。そのときに、結構直感で感じるっていうタイプでもあるから、そのときにそういう話をしてくれて、じゃあ、それを武井さんと一緒に話そうかっていうところから、「じゃあ、どうやっていこうか」みたいな話が始まったっていう感じですね。
萩生田:うん。
坂東:お~。じゃあ、結構最近っていうか。
萩生田:そうですね。デンマークの……
武井:1年ぐらいあとですね。
萩生田:そう。
坂東:それ聞いたときはどう思ったんですか?
田中:いや、ぜんぜんありだと思いました。
坂東:ね。そういうタイプですよね、たけちゃんってね。
武井:俺もダイヤモンドメディアっていう会社を辞めて、たくさんのことをやるようになって、さらに自分っていう人間が解放されたっていう感覚があったので、愛さんもそうだなと思って。やっぱり創業者って、うまくハマっているときはすごい力になるんですけれど、創業者自身が会社にとらわれちゃうっていうのはすごくあると思って。
坂東:とらわれちゃうね。
武井:そう。犠牲を払いすぎちゃうというか。
坂東:ああ。
武井:子どもみたいな存在になりすぎちゃって、「自分を削ってでも会社のために」って社長ががんばればがんばるほど、アイデンティティがくっついていっちゃうんですよね。だから、たとえば会社を批判されると自分が傷ついちゃうんですよね。
萩生田:うんうん。
武井:それぐらい一体化しちゃうんですよね、創業者って。
坂東:はいはい。会社も自立できないし、社長も自立できない、自分の人生が何だかわかんなくなっちゃうみたいな?
武井:そう。子育てできない親みたいな関係性に、会社と創業者ってなるんですよ。
坂東:子離れですね。
萩生田:子離れね、うん。
武井:そう。でも、それを形的に、愛さんの場合は「代表だからやんなきゃ」っていう思いがすごく強かったんだろうなと思って。
萩生田:うん。
坂東:そうでしょうね。そもそも思いを持って立ち上げているからね。
武井:そう、子離れ。で、そこに対して「べつに自由でいいですよ」って言っても、やっぱり今の社会だと、登記簿だと「この人が代表」って載っちゃうし、銀行との取引も「この人が代表ね」ってなるし、社会が自由にしてくれないんですよね。
坂東:そうですね。
武井:そういうのもあるなかで、だとしたら、べつに業務の内容ってビフォーアフターで何も変わっていないんですけれど、形式的にひでさんに変えていくほうが、みんなにとっていいんじゃないかなって俺も思ったし、まあ、ひでさんは現代社会的には大変なところもありますけれど、連帯保証人とかね。
坂東:どうしたんですか?どうしたんですか?
田中:「どうしたんですか?」って、どういうことですか(笑)
坂東:受け継いだんですか?
田中:そうですね。たぶん愛さんとしては、そこらへんのプレッシャーとかっていうのは結構あったんだろうなとかって思って。
坂東:男前じゃないですか。
田中:いやいや、男前とかっていう話でもないし、実際、会社のお金がなかったら僕、ぜんぶ出していたし、そういう意味では、アフリカローズに対する思いっていうのは、たぶん、いちばんあるんじゃないのかなって思っているという。
坂東:ああ、そうかそうか、そんな特別なことじゃないと。もう、ずっとそういう思いでやってきたと。
田中:そうですね。それぐらい僕にとっても大事な場所っていうところではある、っていう感じですかね。
武井:でも面白いのが、ひでさんは他にも社団法人をやっていたり、他の会社の執行役員をやっていたりとか。
坂東:ああ、そうですか。
武井:自己表現っていうものを、アフリカローズ以外にもやっていたんですね。でも、たぶん愛さんからすると、「ひでくんばっかりズルい」って。
萩生田:ああ、ズルいって思ってました(笑い)
武井:(笑)
萩生田:うん、ズルい。私だっていろいろやりたいのに、好きなこと。なんか、あんたばっかり遊んでて……
坂東:(笑)
萩生田:遊んでていいんだけれど、そういう感じ。うらやましいっていうか、ズルいって思った。
坂東:自分の人生を生きているわけですね。
萩生田:うん。
田中:でもさ、俺よりもはじめに、たぶん他の団体には関わっているわけじゃん。
萩生田:まあ、そうなんだけれど。
田中:でもそれは、ほら、やりたいことではなかったっていうか。
萩生田:えっ?
田中:だから、なんていうのかな、僕はもちろんやりたいことだったり相談されたことに対して、そこに答えているあいだにそういう場がどんどん増えてきたっていう感じなのね。でも、たぶんもっと前に愛さんは、ほら、愛さんはそういう声かかる感じじゃない?
萩生田:うん。
田中:それでアフリカローズ以外にも理事とかやっていたりしたじゃん。
武井:うん。社団法人もやっていましたね。
萩生田:ああ、そうでしたね。自分のことは棚に上げるっていう(笑)自分もやってたね。やってました。
田中:で、それがやりたいことではなかったから、心地よくなかったっていう感じじゃない?
萩生田:ああ、そうですね。ひでくんは受け身っていうか、声がかかってやるタイプじゃん?
田中:うん。
萩生田:私は自分が言って始めたいタイプだから。
坂東:つくりたいんですね。
萩生田:そう。つくりたいタイプなんですよ。人の器に私が入っていくタイプじゃなくて、それは居心地が悪くなっちゃう。自分がつくったものに「みんな集まって」ってやりたい人なの。だから生み出したいの、新しいものをどんどんどんどん。って最近わかりました。
坂東:それができていなかったんですね、アフリカローズ以外に。
萩生田:そうですね。「アフリカローズが主軸だから、こっちが本業で他は遊び」みたいな、「こっちもちゃんとできていないのに、やっちゃだめ」っていう、そういう制限を自分自身でつくっていて。それなのに、同じ取締役なのに、ひでくんばっかり他のところでもやってズルいなって。
坂東:楽しそうにして?
萩生田:いいなあと思って、「私だって……」みたいな。なんか、よくわからないと思うけれど、あんまり(笑)
武井:いや、俺も……
坂東:たけちゃんもそうですよね。
萩生田:うんうん。
武井:ダイヤモンドメディアのときに、俺、同じ感覚を持ってたんですけれど、俺もダイヤモンドメディアの頃から自然経営研究会とか、不動産テック協会とか、社団法人をいくつかやっていたんですけれど、でも、やっぱり「会社に売上持ってこなきゃ」っていう思いが強くて、何かそういう社外活動をやっていても、「ダイヤモンドメディアの売上につながらなかったら、やっちゃだめ」みたいなプレッシャーっていうか、勝手に責任感を感じていて。
萩生田:そうそう。すごい思う。
武井:みんなと話すと、みんなはべつに気にしていないんですけれど、自分だけが気にしていて、なんか気になっちゃうんですよね。
萩生田:うん、そうそう。まさにそんな感じ。
武井:それがすごく苦しくて。でも、創業者の呪縛みたいなのは、たぶんあるんですよね。だったら本当に最初から、始めるときからカジュアルに、みんながいろんなことをやりながら、「この場では、こういう目的のために集おうよ」みたいなほうが健全だなって思うんで。
萩生田:うん。
坂東:なるほどね。
武井:だから愛さんには、愛さんが表現したいことをどんどん個人として、アフリカローズのビジネスにしようとしなくていいから、どんどんやっていくほうが、結果として愛さんの影響力が巡り巡ってアフリカローズのお客さんを増やすかもしれないし、どこかでビジネスにつながるかもしれないし、それは結果の話なので、重要なのは、愛さんが愛さんらしく生きるっていうことが絶対先じゃないですか。
坂東:そりゃそうだわ。
田中:そうですよね。
武井:だから、ひでさんに「お願いします、連帯保証人」って言って。
坂東:(笑)
萩生田:(笑)
武井:「えーっ!」って言って。
坂東:いや、言うよ(笑)
萩生田:そうだろうね、うん。
武井:「俺はノーノー」って、「俺はいいです」って(笑)
田中:まあ実際、信用金庫の人からも「本当に大丈夫ですか?」って何回も言われたんですね。
坂東:そうでしょうね。「嫌です」って言わなかったんですか?「これを機に外してください」みたいな、個人保証。
田中:もちろん何回も考えたし。「最悪、自己破産すりゃいんだから」みたいなことを……
萩生田:やだあ。えっ、そんなこと誰が言ったの?
武井:俺(笑)
萩生田:やだあ、武井さん。
武井:お金なんてどうでもいいですから。
坂東:まあ、でも、ぶっちゃけそうですよね。
田中:でも、それはやっぱり、受けた側は自分の人生もあるしさ、それはすごく考えますよ。
武井:そりゃ考えますよね。
坂東:うんうん。
萩生田:うん。だから、代表ってすごいことですよね、責任っていうかね、本当に。ただの2文字だけだけれど、結構責任はありますよね。
武井:今の社会だと過度に責任が寄っちゃうんだよね。
坂東:寄っちゃう寄っちゃう。
武井:それはもう社会の仕組みの問題なんでね。だって、俺、ダイヤモンドメディアの経営をしていたときに銀行とずっとやり取りしていると、連帯保証とか僕もしていましたけれど、結構理解してくれる銀行があって話を聞いたら、代表者に連帯保証をつけたときと、つけていないときの借入が焦げついたときの回収率って、まったく変わらないらしいんですよ。
坂東:まじっすか!?
萩生田:へぇ~。
武井:「じゃあ、なんで連帯保証をつけてるんですか?」って聞いたら、「惰性です」って言ってました。「過去の惰性で、意味もないけれど形式的に残しているだけだ」と。
坂東:めちゃ本音じゃないですか。
武井:そうそう。それを金融機関の人が言ってましたけらね。
田中:まあ、そんななかで僕は受けたわけで、その他にもいろいろ活動をしているんですけれども、いろんな活動をすることによって、すごくいいこともたくさんあって、いろんな組織に属しているとそのなかの課題があって、すごくいいことっていうのがあるから、それをアフリカローズにどうやって取り入れていこうかっていうことも考えられるし、結局「売上を持ってこなきゃ」みたいな話があるじゃないですか。
坂東:はいはい。
田中:僕、そこまで考えていないけれど、僕がアフリカローズをやっているっていうことをもうみんな知っているわけだから、何かのときに絶対アフリカローズを使ってくれるっていう、すごくいい循環があるなと思って。
坂東:それはそうです、はいはい。
田中:じゃあ、関わる組織というか、そういうものってたくさんあったら、それはそれですごくいいなって思っていたんですよね。
坂東:だから、代表になったけれど、他の活動をやめているわけではない?
田中:もちろん。結果いいことしかなかったなっていうふうに。
坂東:あ、いいことしかなかった!?
田中:うんうん。
坂東:すげー。
田中:だから、愛さんもいろいろ自分でやりたいことっていうのが今あると思うし、愛さんは自分でゼロイチをつくっていきたい人だと思うから、これからどういうことが生まれるのかっていうのは、すごく楽しみだなっていうのはある。
坂東:すてきな人ですね。
武井:でしょ?
坂東:うん。
武井:お酒飲んでないときはね、すてきなんですよ。
坂東:よかった、知れて。
田中:そんなんではないから(笑)なんなら変わんないからね、言っとくけど(笑)
坂東:まあ、たしかにね(笑)愛さんはやりたいことが他にあって、そうしたいと思ったんですか?
萩生田:いや、「これがやりたいから」っていうことがあったわけではなくて、アフリカローズの組織のフェーズと、あと、自分の呪縛っていうか、もうちょっと自由に表現してみたいっていうことでこういうことになったんだけれど、結果、畑を1年前から始めていて、リジェネラティブ・オーガニックといって、パタゴニアとかがやっている、土の再生を目的とした、農業じゃなくて暮らしのあり方っていうことで、野菜じゃなくて、やっぱり花が好きなので、花をやっていきたいなあと思ったんです。
坂東:ほお。
萩生田:なので、そのリジェネラティブ・オーガニックのお花畑をたくさん日本につくって、地産地消、輸送とかでCO2もかからないお花畑をつくって、地球の土にとってもいいし、心の中にとってもいいですよね。
坂東:そうですね。いいですね。
萩生田:花を見てもいいし、摘んでも。そういう心の中にも花を咲かせるような活動をしていきたいなと思っています。
坂東:いいですね。まさかアフリカローズの競合店舗をつくっちゃうみたいな?
萩生田:いや、それは一緒にね。協業っていうか、ティール組織……
武井:意地悪(笑)
坂東:いや、なんか、ひでさんがそういう目で見ているんじゃ……(笑)
田中:いやいや、見てないでも、そういうのをさ、愛さんが何かをやりたいなっていうのを僕も聞くことで、僕もいろんな人と関わっているなかで、「愛さんがやりたいこと、どこかでできるだろうか?」みたいなことは、アンテナもあるし。
萩生田:そう。そういうところがあるよね。本当に優しいよね。いつもそうなんですよね。
坂東:優しいですね。
萩生田:本当にそうなんですよ。本当に優しいんです。
田中:心臓に悪い、そんなに優しいって言われると。
萩生田:いや、本当に優しい。優しいんですよ。
坂東:でも、なんか、本当、創業者とか社長って、その会社のために人生を費やさなきゃいけない、フルコミットしなきゃいけないみたいなのが、本人もそうだし、まわりもそういう先入観あるじゃないですか。
萩生田:うんうん。
武井:うん。
坂東:「えっ、辞めるんですか!?」って。
萩生田:うんうん。いろんな人から言われました。
坂東:言われますよね。
萩生田:うん。「辞めてないです。ぜんぜん関わってます」っていう。
坂東:でも、100パーじゃないといけないみたいな、自分自身も思っていたところがあるじゃないですか。私もそうだったし。
萩生田:うん。
武井:たしかに手放す経営ラボもコミュニティカンパニーっていって、坂東さんが議決権を持っていないっていう。
坂東:持っていないですよ。私、14パーしか持っていないですよ。
萩生田:手放しましたね。
武井:……えっ、なになに?渋い顔して。
坂東:なんか葛藤はありますよ。やっぱ「自分のものだったのに」みたいなのもあるし、ちょっとつまんない感みたいなのも。でも、それは私にとってはリハビリだと思っているんですよ。そういうふうに思うっていうことが癒着しているじゃないですか。癒着なんですよね、やっぱ。だから、本当にやりたいことだったら本当にやればいいけれど、だけれど、自分の人生って何なのかっていうのを考える機会にももちろんなるし、たけちゃんも言ってますけれど、ビジネスモデルの寿命がどんどん短くなってきて、そのときに社長がずーっと居続けるっていうのは健全じゃないっていうか、まあ、そういう人もいるんだと思うんですけれど、ビジネスモデルとか会社の成長の度合いとかに応じて、どんどん会社って変わっていく、組織も変わっていく。そのときに、経営者も必要に応じて変わっていく。経営者自身が変わるっていうこともあるけれど、経営者そのものが変わっていく、チェンジしていくっていうことが当然あっていいなって思うんですよね。
萩生田:うん。そうですね。
坂東:でも、上の世代の人からは結構いろいろ言われたんじゃないんですか?どうです?
萩生田:上の世代の人?
坂東:うん。年配の人とかからは意外とネガティブなことを言われたりとか、あったんじゃないかなと。
萩生田:株主さんからは、反対はされなくて。
坂東:そうですか。
萩生田:一応、会社の顔では続けてほしいし、3年とか5年とかは少なくとも経営として残ってもらいたいとは言われましたけれど、代表をひでくんに譲るっていうことに関しては反対もされなかったし、むしろ「あ、斬新ですね」みたいな、「引き続き応援します」って言ってくださいましたね。
坂東:なるほどですね。私、「自分の株の議決権を減らしたい」って言ったら、めちゃくちゃ反対されましたよ。
萩生田:へぇ~。なんでなんだろう。
坂東:「何かあったらどうするんだ」っていう。だから心配してくれているんですよね、私のことを。「何かあったときにイニシアチブがとれない。でも結局、責任は自分がとらなきゃいけなくなるよ」みたいな。あとは融資の問題もあるし。私は今、自分で個人保証して借りている部分があるから「そういうのをどうするんだ」みたいな、心配からの反対をしてくれましたね。
萩生田:そうか。武井さんも経営に参画してもらっているので、ティール組織的に運営したいっていうこととか、あと、今後の株式のあり方とか方向性とかもシェアしたので、アフリカローズが目指している経営スタイルというか、「社会にこういう形でインパクトを残したい」っていうところもたぶん理解してくださって、そのなかでのひとつのアクション、実際に見えることとして、代表が替わりますよっていうことだったから、そういう説明をしましたよね。
坂東:なるほどですね。何か気持ち的に変わったとかはあります?
萩生田:もう、すごく楽になりました。さっきも2階で話していたんですけれど、なんていうか、もう本当に「鳥になったかなあ」みたいな。本当に細かい話ですけれど、SNSの投稿ひとつとっても、ぜんぜん変わったんですよね。発信する内容が、いままではアフリカローズのことしかだめだし。
坂東:ああ、なるほど。自分の個人的なね。
萩生田:そう。個人的なことでも、バラにちょっと関わるようなこととか、星の王子さまだったらいいけれど、みたいな。あと、ビールは好きなんですけれど、クラフトビールはすごく大好きなんですけれど、「バラとビール」よりも「バラとワイン」のほうが一般的に合うから、ワインを飲んでいる写真はアップするけれど、ビールではアップしないとかね。
武井:そこまで気にしてたんだ。
坂東:やっぱ純粋なんだね。
萩生田:自分の中で行動を設けて、「これはだめ」「これはいい」で、勝手にアップされたら「これ消して!」とか、結構すごく、そこまで気を遣ってやっていたところがあって。あと、ちょっとスピリチュアルなこととか、不思議なこととか、そういうこととかも……政治的なこととかも、すべて何もしていなかったです。すごく積極的にやっていた。
坂東:アフリカローズの代表としての振る舞いですね。
萩生田:代表として、そう。
坂東:プライベートがないっていうか、パブリックな。
萩生田:そうですね、パブリックな感じで。でも、それが一切なくなって、チューリップの写真とかも、上げたこともなかったけれど、最近チューリップとか、スミレとか、他の花の写真も上げちゃったりして(笑い)すごく軽くなった。
坂東:それぐらい気を遣っていたっていう?
萩生田:そうですね。
坂東:べつに誰から何を言われているわけでもないのにね。
萩生田:うん。自分でつくった自分のルールに縛られていたっていう感じがします。
坂東:レギュレーションがね。
武井:創業者の呪縛ですよね。
坂東:呪縛よね。
武井:絶対ありますよね。
坂東:うん。
萩生田:そう。だから変な話、私が代表のときに、ひでくんがローズ以外の花を上げていたら、「アフリカローズなのに、なんで他の花上げてんの!?何やってんの!?」みたいな感じで思っちゃっていて。
武井:(笑)
萩生田:それはやっぱり、自分がやりたいのにできていないっていうことを、ひでくんはぜんぜん悪いわけじゃないんだけれど、そこに行っちゃってた、怒りがね。
坂東:自分も花好きなのに。
萩生田:そうそう。「自分もやりたいのに、できていないのに、この人は自由にやっていてズルい」みたいな。だから、そこまで追い詰められていたっていうか、そのときは自分が気づいていなかったけれど、振り返ってみると、そこまで結構責任感というか、自分のルールに縛られていたのかなあって。それがぜんぜん解放されちゃって、すごく楽しい。
武井:手放しましたね。
坂東:手放しましたなあ。
萩生田:うん、手放しました(笑)しかも、きのうまで3日間、酵素ジュースでファスティングしていて今日が復食1日目なので、食べるエネルギーも手放して、結構とことん手放して今日に臨みました。
坂東:今日のために?
萩生田:今日のために、はい。
坂東:すばらしい。なるほど。ひでさんのほうはどうですか?代表になってみての心境の変化みたいなのは。
田中:「忙しいんじゃない?」とか、よく聞かれるんですけれど、「変わりませんよ」っていう感じですね。
坂東:変わらない?
田中:特に何も変わりませんね(笑い)今までとやっていることは一緒だし、何で大変だったかっていうと、書類が若干大変なぐらいで、登記を書き換えて、それから銀行にそれを提出しなきゃいけなかったり、求められたりとか、そういう意味では大変かな、っていうぐらいを話します。「代表になったから大変でしょう?」「なんにも変わんないです」って言ってます。
坂東:なんかいいですね、この自然体な感じが。
萩生田:うんうん、いいですよね。こういうことをできますよ。
坂東:ほんとね。まあ、もともと、それだけの責任感と思いをもってやってきているっていうことで。
萩生田:うんうん。
武井:そう。手放すって手放す側だけの話じゃなくて、受け取る人も必要だったりするんでね。
坂東:ほんとほんと、うん。
萩生田:うん、たしかに。
武井:受け取る人がいないのに手放すと、無責任になっちゃうんですよね。手放せばいいっていうわけじゃなくて。
坂東:たしかに。
萩生田:うん、大事だ。
武井:これ、俺の好きな、「落ち葉は枝が葉っぱを落としているのか、葉っぱが落ちているのかどっちか」っていう話で、両方があって成り立つ話で、手放すっていうのも、受け取る人がいて成り立つものなんですよね、本来。
萩生田:ああ、哲学的。
武井:でも、それって「おまえ受け取れ!」とかって強要するものじゃなくて、自然と、葉っぱと枝の関係と同じように、落ちるときに落ちるし、バトンを渡すときに自然と渡すんで。
萩生田:うん。
坂東:うーん、たしかにね。
武井:僕もダイヤモンドメディアのときにそれを経験したので、半年間ぐらいみんなでずーっと話して、その結果何が起きたかっていうと、「誰がバトンを受け取るか」っていうのをすごい話すんですね。で、やっぱり焦らなくてよかったなと思って。
坂東:なるほど。みんなで話したんですね、当事者どうしとかじゃなくて
武井:そう。俺が「おまえ受け取ってほしい」って言ったわけじゃなくて、「武井さん、俺がやるよ」って言ってくれたから俺は辞められたんですよ。
萩生田:ふーん。へぇ~。
坂東:それがなかったら、まだ続いていたかもしれない?
武井:かもしれないし、どうにもならなかったかもしれないし。でも、それってタネとかと一緒で、芽が出るときに出るぐらいな話で。
萩生田:うん、機が熟した?
武井:そうそう。人間がコントロールできるもんじゃないですよね。
萩生田:うん。
坂東:私、手放す経営っていうのを始める前に、手放すっていうことを実践したんですよね、会社の中で、たけちゃんからアドバイスをもらって。そのときは、今思い出したら、受け取ってくれる人いなかったですね。そんなこと何も考えずに「手放すよ!」みたいな、「みんなで話し合って決めよう!」みたいな、「さあ行くよ!言って!」って言ったら、めっちゃ辞めていったんですよ。
萩生田:えーっ!?
坂東:社員半分ぐらい辞めちゃった(笑)「じゃ、辞めまーす」みたいな感じで辞めていって、「あれっ!?」と思って。
萩生田:結構キツいですね。
坂東:うん。だから、そういう何のプロセスもなく、話し合いもなく、受け取ってくれるかどうか確認もせず、「手放したら当然受け取ってくれるもんだ」って思い込んでいました。
萩生田:へぇ~。面白い。
武井:ちょっとね、俺もそこにちょっと責任を感じて、だから今は一緒にやってる。
萩生田:あ、そうなんだ。
坂東:そうそう。だから、今の話はすんごく響きますよ。
武井:でも、それを経験しているってすごい。なかなかこれを経験している人もいない。
萩生田:うんうん。すごい。
坂東:そうですね。ネタにしないと(笑)なんか、すごい自然な感じ。ここのなかではすごく自然なプロセスだったんだなっていうことがわかりました。
田中:ここまでの過程の中でもちろん、愛さんが僕に「こいつムカつく」って言っていたように、僕も、それはそれであるわけですよね。
坂東:そうでしょうね。
田中:だけれど僕は、そこで最終的に行き着く場所っていうのが、これを始めてくれたことに感謝だよっていうふうに思う、最終的にはそこに行き着くんです。結局、これをやっていなかったらたぶん会っていないと思うし、武井さんにも会っていないですよね。
坂東:うん、たしかに。
萩生田:うん。
田中:すべてはつながっているなっていうことを思うと、「そういう意味では感謝だよな」っていうふうに思うっていうのはありますね。みなさん、そういうふうに思ったりしますよね、結局。……あれ?ない?
武井:いやいや、ありますあります。
萩生田:うん。
武井:でも、それをひでさんが言うからすごくすてきだなあと。
萩生田:うん。
坂東:うん。すてきです。
武井:俺は2人の友情というか、僕がジョインする前の関係とか知らないんで、そういう話を聞くと、本当に深いところでつながっているなっていう。
坂東:ほんとね。
武井:たぶん前世から何かあるんでしょうね。
萩生田:ふーん、そうなのかなあ。
武井:なんか、俺から見ると腐れ縁に見えるんだよね。
坂東:そうそう、単なるビジネスパートナーではないです。
武井:うん。なんか面白いんだよね。
萩生田:そうなのかな。そういうふうに考えたことなかったですね。
田中:いや、面白い。
坂東:たしかに。
萩生田:でも、ほんと楽しい10年だった。まあ、もちろんこれからも一緒にやっていくんだけれど、でも、10年を振り返るとするとすごく楽しい10年だったし、すごくたくさん助けてもらったし、支えてもらったし、一緒に乗り越えたり、夜中にペンキ塗ったりとか、のこぎりで切ったりとか、夜な夜な、いろいろやりますね、なんか作業を。「間に合わないんじゃないか」みたいな、「大丈夫だよ!」みたいな感じで、「よし!がんばろう!」って。明け方「うわ、もう眠い。おお、できたね。帰ろう」みたいな、そういうのを一緒に乗り越えてきて、まあ、若かったっていうのもありますけれどね、30代だったから。
武井:すてきですよね。
坂東:すてきすてき。
萩生田:ここにいつも最初の頃は2人でいて、常連さんとか仲いい人がみんな来てくれて、「じゃあワイン開けよう」って言って、ワインでみんな「かんぱーい!」って言って、そうしたら、またお友だちが何人か入ってきて、みんなで紹介して友だちになったりとか、そんなのを毎晩毎晩やっていて、すごく楽しかったし。
田中:今ではちょっとあり得ないと思うけれど、日によっては昼ぐらいから飲みたくなるじゃないですか、お店をやっていて。
坂東:なりますね、うん。
田中:で、2人で「まあ、今日はいっか」みたいな感じで飲み出したりとか、結構それが楽しかったです。
萩生田:うんうん、すごく楽しかった。
武井:そうですね。僕、今日も3時ぐらいから飲んでますけれどね。
萩生田:それ、いつもじゃん(笑)
坂東:聞いた聞いた、うん。ここでいい気分になっちゃってる。今でもあるじゃないですか。まあ、でもいいですよね、そういうのも。なるほど。ありがとうございます。