進化型組織のつくり方セミナー20221、2月22日に実施したセミナーの内容をダイジェストでお送りします。
前回までの記事はこちら
会社への不平不満が止まる「問い」〜進化型組織のつくり方セミナーダイジェスト①〜
なんのために会社にいる?語り合うことで築く関係性 〜進化型組織のつくり方セミナーダイジェスト②〜
答えがない時代における組織の在り方 〜進化型組織のつくり方セミナーダイジェスト③〜
ミッション、ビジョン、バリューって分かりにくくないですか?
乾:では、UNIT01「言葉」の部分を解説します。
「言葉」のワークショップでは、それぞれのメンバーが大切にしていることを見つめながら、組織として大切にしていることを「言葉」で表現しながら整理していきます。
よくある会社の経営理念的な、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、考え方が少し違っています。
武井:まず、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)って分かりにくいと思いませんか?
私たち日本人ですから、ミッションとビジョンの違いも本当のところよくわかってないんですよね。
ミッションとビジョンってどっちが何だったっけ?って。
ミッション、ビジョン、バリューは、主語が何なのかフワフワして分からなくなるんですけど、より、クリアになる定義が実は存在します。
それが、why、what、how。
誰が、何に対して、何を提供するのか、これが明確になるんです。
例えば「what」
これは、「顧客と社会が受け取る価値は何なのか?」という問いに対する答えになります。
この問いに対して、みんなで意見を出していきます。
その意見の出し方が、一般的な進め方とは違います。
一般的には、経営層がまず理念を決めて、「うちの会社の理念をこんな感じでまとめたから、見といてください」「今後は、こういう風にやろうと思うんで理解して欲しい」って感じですよね。
理念浸透って言いますけど、あれって理念洗脳ですよね。
坂東:私、やってました〜。(苦笑)
武井:並べられた言葉がいかに良かったとしても、洗脳です。
だって一人一人の人生の目的や幸せの定義が違うのに、「幸せとはこうだ」って決めつけることに何の意味もないですから。
本来、自分の幸せはなんだろう?っていうのを考えるきっかけになる問いであるべきです。
あえて「べき」って言いましたけど、良い会社の理念って実はすごく「良い問い」なんですよね。
坂東:これだ!じゃ、ないんですね。
武井:そうそう。自分にとっての顧客やサービスは何なのか?に立ち戻れる問いだったりするんです。
そういう言葉を会社でつくれるといいんですよね。
社長が一人で作ると、それがどれだけ良いものだったとしても、社員からすると、こっちは受け取る選択肢しかないんでしょ?ってなる。拒否できないんでしょって。
組織は、組織が先にあってそこに人がいるんじゃなくて、そこに集まっている人たちのいろんな価値観の中で重なる部分のことを組織と呼ぶんです。
例えば、俺、坂東さん、乾さんはそれぞれ違う活動をやっていたりするけど、この場においてはこういう活動したいよね、こういうことを大切にしたいよねって重なる部分で「手放す経営ラボ」をつくってるわけなんです。
坂東:24時間がぶりよつではないですもんね。
武井:どこが重なっているかっていうことをお互いに知っていくことが重要です。
だから、みんなで意見を出していく。たとえ規模が大きな会社だったとしても、インターネットを使えば、社員の意見を集めることも集計することも簡単にできる。
ただし、集めたものをまとめました!これです!っていうんじゃなくて、立ち戻りやすい言葉や、ストーリーのように意味のある言葉に整理するのは大事ですよね。
組織は目に見えない人間関係でできてるんで、どうやって共通認識とるかが大事。
それが、言葉と形と数字なんですね。
そうすると組織の輪郭が浮かび上がって、自分の価値観と、組織の価値観が近い部分、それ以外の部分はちょっと違うから、それは別のところで別の活動をすれば良いという判断が着くようになる。
DXO「言葉」のワークショップ、進め方のポイントは文脈
乾:具体的な進め方でいうと、まず経営者がこれまでどんな歴史を歩んできたのかとか、会社を経営していく中でどんな辛いこと、嬉しいことがあったのか、とか、そんな気持ちの部分も全体にシェアしてもらいます。
その上で、社員一人一人のストーリーも聞いていく。
それぞれが重なる部分は?を繰り返していくと、自然とその会社らしい言葉が生まれてくるんです。
武井:これが文脈です。
意味は時間軸の中にしか存在しないんですよ。
仕事にやりがいを感じている人がいて、素晴らしい会社を経営している人がいて、彼らは何のためにやっているのか?そこには必ず意味がある。
そしてそれは、時間軸の中にある。
過去の人たちからどうバトンを受け取るか、その感覚がないのに組織開発をしちゃうと、もう別の会社作っちゃおうか?って話になっちゃうんですよね。
乾:歴史があっての今ですもんね。
武井:バトンを受け取るのが大事で、それは関係性の話と一緒ですけど、過去の人たちとの関係性ですよね。これがないと大きい組織だと組織に長く在籍した人たちから反対されるんですよね。
新しく打ち出した改革の提案とか、ソリューションの質の問題ではなくてちゃんとバトンを受け取ってない人は、結局、何やってもダメなんですよ。
だから、ちゃんと紡いでいくことが大事ですよね。
乾:DXOのワークショップは13回あるんですけど、「関係」から「言葉」をつくるところまでがDAY5で前半の半分近くを「言葉」のワークショップに費やします。
ここでしっかり対話ができて、組織の歴史やコンテクストを共有していくとその後の流れがめちゃくちゃスムーズになります
。
why what how それぞれを言葉を整理する
武井:究極、言葉がなくてもうまくいく組織の方がいいんですけどね。
でも、言葉で定義できると、会社に新しく入った人も、こういう感じかなぁってイメージしやすいし、議論や判断が難しい状況になった時にも、ここに立ち返るとやっぱりこの時はこうだねってなる。
まずは「why」。「なぜ、私たちの組織は社会に存在しているのか」
次に「what」。「私たちが社会や顧客に届けている具体的な価値は何か?」
最後に、「How」。「その価値を私たちはどのような姿勢や思いで届けるのでしょうか?」
サイモンシネックのゴールデンサークルだと、why、how、whatという整理になっていますが、日本人が使う場合には「what」を先にした方が議論が進むなと思って、この順序にしています。
whatがクリアになると、次はそれをどうやって届けようかっていう「How」、スタンスの考え方をイメージしやすくなる。
例えば、高付加価値高単価なものを届けるのと、リーズナブルなものをたくさんの人に届ける場合、「how」は全く変わって当然ですよね。
howって即効性のある言葉でhowが定まると、例えば広告打つ時の売り文句がガラッと変わるし、誰に対して発するメッセージなのかがクリアになるし、それに適した価格ってどのくらいなのかっていう価格設定や、市場競争の中で自社のポジションがクリアーになる。
それらがクリアーになると発するメッセージやオペレーションの仕組みにどんどん一貫性が備わっていくんです。
一貫性がある会社ってすごく安定しますよね。筋肉質というか。そういうものをもたらしてくれますね。
乾:行動に一貫性があるというか。この会社はこうなんだなって周りからも認知されるようになると強いですね。
武井:「how」が決まれば、採用基準も変わります。そうすると、ミスマッチが起こりにくくなりますよね。
ちなみにhowが整ってサービスに一貫性が生まれると、競合他社との比較競争がなくなるのでコンペが減っていくんですよ。唯一無二っていうとカッコいいですけど、お客さんからみたときに、「違い」が明確に分かるようになってるんで、アイミツを取られなくなるんですね。逆にいうとアイミツを取られることが多い会社は、こういうところを整えると会社の存在目的がシャープになっていくはずです。
主体性を育むには?「2循環の法則」
武井:二循環の法則は、僕が勝手に名前をつけました。
納得感って、物事が決まる途中経過に参画することによって高まるものなんです。
プロセスに自分が主体として関与すると自分の意見とは違った着地になっても、自分ごと感が損なわれないんですよ。
なぜならば、文脈に意味があるから。その文脈が共有されていると自然と頑張ろうぜってなりますよね。
俺は納得してないけど、会社がやれっていうからやっているっていう人はいなくなるわけで。
乾:意思決定のプロセス(文脈)が理解できてないから他人事になるわけですよね?
武井:そうですね。このプロセスにはコツがあります。
シンプルなんですけど、発散・収束・発散・収束、全体、部分、全体、部分を2回繰り返す。
初めに「発散」から始めるのも重要で、ここからやるかやらないかで丸ごと変わっちゃう。
経営者が、良かれと思って、合宿して、理念つくって、2泊3日で考えた経営理念でも、社員に伝えた時、社員は「はぁ・・・」みたいな。
これ、よくあるやつです。
社員からしてみると、2泊3日で温泉行けていいねーってぐらい。
なぜそうなっちゃうかっていうと理念が良い悪いじゃなく、自分が物事を決めるプロセスに参加してないから。
これに尽きます。
主体性とはプロセスに主体として関与することで勝手に生まれてくるものなので、このプロセスを踏まないと逆効果になりますね。
誰も幸せにならない。
経営陣も頑張ってるのに報われないんで、発散収束発散収束、これ大事。
今日、これを知っただけでも年間500万円くらいの価値はありますね。(笑)
乾:プロセスに関わってるかどうかってめちゃくちゃ大事ですよね。
武井:そうです。でも、それがなぜできるようになったかっていうとインターネットができたからです。
極端なことをいうと、オレンジやグリーン組織はインターネットがない時代の最適解だったんですよ。
でも、インターネットが生まれたら多数決しなくても物事を進めることができるようになるんです。
乾:プロセスを共有しながら、みんながそのプロセスに関わってそれぞれがどんなストーリーでこの場にいるのかを話し合っていくと、自然と会社全体の重なりが見えて、会社としての言葉が生まれてくる。
先ほど言いましたけど、DXOのワークショップのほぼ前半は「言葉」。
ここが決まればあとはスムーズに流れていきます。
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