5/28【手放すTALK LIVE#19】「上場企業の社長を手放し、禅の道へ。 禅の心で人と組織はどう変わる?」をテーマにトークライブを開催しました。トークライブの一コマをお届けします。
ゲスト紹介 島津清彦さん
株式会社ZENTech 代表取締役CEO/株式会社シマーズ 代表取締役
Zen Method®︎ Academy 学長/曹洞宗僧侶<僧名/禅清(ぜんしん)>
◆経歴
元スターツピタットハウス代表取締役。元ソニー不動産取締役。東日本大震災での被災、初めての伊勢神宮参拝を機に上場企業の社長というキャリアを捨て、2012年、経営人事コンサルタントとして独立起業、株式会社シマーズを設立。その後、多くの世界一流リーダーが禅に辿り着くことを知り、自らも出家得度し仏門入り。経営者と禅僧という二つの顔をもちながら、官公庁、大手企業、ベンチャー企業など業界や規模を問わず、禅の智慧を活かした経営・組織開発・リーダーシップ開発のコンサルティング、講演、坐禅・マインドフルネス指導等を行う。2018年7月、株式会社ZENTechを設立。禅とサイエンス、テクノロジーを融合、活用し、一人一人が自分らしく、生き生きと活躍する社会の実現を目指している。ミッションは〝世界を全機現する〟こと。
◆メディア出演・取材
NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』BSジャパンTV『日経プラス10』、日経ビジネス、日経アソシエ、朝日新聞、毎日新聞、AERAなど多数取材出演。
◆著書
『仕事に活きる禅の言葉(サンマーク出版)』※日本とイタリアで出版
『翌日の仕事に差がつく おやすみ前の5分禅(天夢人)』
『Zenkigen』米国で電子書籍出版
スピーカー 武井浩三
ダイヤモンドメディア株式会社創業者、(一社)自然経営研究会 発起人/代表理事、(一社)不動産テック協会 発起人/代表理事、ホワイト企業大賞 企画委員会 委員 手放す経営ラボラトリーCPO
2007年にダイヤモンドメディアを創業。
経営の透明性を徹底的にシステム化した独自の企業文化は、「管理しない」マネジメント手法を用いた次世代型企業として注目を集めた。現在は、創業した会社を自ら手放し、ティール組織・ホラクラシー経営等、自律分散型経営の日本における第一人者としてメディアへの寄稿・講演・組織支援など多岐に渡る活動を行う。2019年10月手放す経営ラボラトリーにCPOとしてジョイン。
著書
『社長も投票で決める会社をやってみた。』(WAVE出版)
『管理なしで組織を育てる』(大和書房)
『自然経営 ダイヤモンドメディアが開拓した次世代ティール組織」』(内外出版社)
モデレーター 手放す経営ラボ所長 坂東孝浩
大学卒業後から、一貫して大企業~ベンチャー企業まであらゆる組織の課題解決に携わってきた。その数800社以上。しかし、時代や環境の変化が激しさを増してくるとともに、研修や採用ブランド力向上などの手法では根本的な課題解決ができないと感じ始めた。そこで、手放す経営ラボラトリーを設立。最先端の組織や経営スタイルを研究、自社でも“手放す経営“を実践している。
現在は新しいカタチの組織デザインと、組織改革の実行支援を通じて全国のクライアント企業のサポートを行なっている。
武井浩三が師匠と呼ぶ人物
坂東:武井さん(以後たけちゃん)が師匠って言う人はそんなに聞いたことがなくて。どういうところで、島津さんをそう感じてるてるんですか?
武井: 普段は「師匠」という概念を感じることはないんですよね。でも、やっぱり天外伺朗さんと島津さんは師匠と感じてる。なんでだろうな?
島津:それは、ありがとうございます。でも、生きてる師匠がいるって幸せなことなんですよね。メンターとか言い方は何でもいいんですけどね。もちろんブックメンター的な、歴史上の人物とか書籍とか、それでもいいと思うんですけど。
本当に困った時に、泣きたい時に、夜中でも電話がかけられる人みたいな。
そういう存在に僕もなりたかった。
経営塾やってた時には、若手には「何かあったら相談してきて」って言っていた。
そうは言っても、みんな忙しいし気を遣うから電話してこないですよ。
24時間OKって言ったって、夜中に電話してくることはないって分かってはいるけど、こちらはそういう覚悟でみんなと向き合ってたりしてたんですね。
今までの経営の経験からも、そういう存在になれたらいいなぁって思っています。
まさに日本とか世界を担う皆さんに、ちょっとでもお役に立てればいいなあっていうので、経営塾を始めたんですよね。
武井:会社経営だけじゃなく、みんな人生いろいろ迷うじゃないですか。
僕も勉強すればするほど選択肢が増えていって迷うわけですよね。
どの戦略が適切なのか、この戦術、やり方で良いのか、コスパはどれがいいのか…、学べば学ぶほど迷う。
さらに組織の中で起こることは、打ち手の選択肢だけじゃなくて、関わってる人たちとどう合意を取っていくかも含めて迷う。
以前、自分の中で手応えがなかった時期、いわゆるティール組織の書籍の中で言っている組織の進化度で言うグリーン組織みたいな感じの時があった。
1人1人の考え方をできるだけ尊重したいってなると、みんな違うこと言うから迷うんですよ。
島津さんに出会ったのは、そのすごい迷ってた時期。
未だに覚えてますけど、具体的には営業戦略どうしたらいいのかを迷っていて、島津さんに電話して聞いたら、
「なるほどね」って。
「でもさ、ぶっちゃけ武井君の中にもう答えあるんでしょう?」って言われて。
「ああ、あるわ」と思って。
答えはあったんだけど、いろんなことを考えすぎてた。
人の顔色伺ったりとかで迷ってたんですよね。
考えたらキリがないから、俺の中で今ある答えはこれだから一旦これでやりたいって伝えようって思えた。
それから、メンバーとコミュニケーションをとった。
もちろんいろんな感情の動きはその場でありますけど、その結果、営業は結構安定しました。
だから俺の中では、あの一言はめちゃくちゃ大きかったですよ。
島津:仮説は意識してない中にもなんかあるんですよね。
うまく機能しない時に、もう自分がどっぷり降りてプレイングマネージャーになるか、逆にもうそこは手放して諦めるかって大体どっちかなんですよね。
思いっきり入るか、逆にマネジメントできないんだったら、全部手放して配置替えをするか。
そこはその2つしかないんですよ。
やるかやらないかみたいな。すごい絞り込んでいくとね。
相談された時は、会話の中で「こう思ってるんだろうな〜」があった。だから、「もう、あるんでしょ?」と話したら、「ああー」みたいな話。懐かしい。
禅語でもある「覚悟」とは?
武井:僕が島津さんに感じるのはものすごい絶妙なバランス感覚。
バランスっていうよりは、感性なんだと思うんですよね。直感力と言うか。
僕はダイヤモンドメディアの時に創業経営者だったんで、ものすごい執着が生まれやすいなって思っていて。
最近改めて感じますけど、島津さんってそういうのがなくて、ニュートラル。
島津:手放すと伸びるんですよね。マネジメントを手放したらね、そこから伸びる。
坂東:禅の中にも「手放す」のような言葉がいっぱい出てくるんですけど、さっき覚悟っていう言葉、島津さんから出たんですけど、「覚悟」も禅語なんですよね?
島津:そうですね。覚悟の「覚」って「さとり」って読むじゃないですか。
目覚めるの覚めるっていう。
「悟」はもうズバリ「さとり」ですよね。
だから「さとり×さとり」ってどんだけ悟りやん!みたいな言葉の覚悟って、結局どんな「さとり」かというと、「執着を手放す」こと。
その時が覚悟の状態ですよね。
一番の執着って生に対してじゃないですか。死ってことですよね。
だから死の怖さを手放した時に、究極の覚悟つまり、それはもう悟りの状態。
何も怖くない。でもそれはなかなか難しい。
例えばキャリアにも「死」がある。それは経済的な死。
それもやっぱ執着があるじゃないですか。収入を手放す。
でも、手放した時に新しいものが入ってくる感覚って、皆さん多分あると思うんですよね。
転職したり、退職したり、別れたり、何か捨てたりすると、何か新しいことを発見したりする。
だけど、みんな手放したくない。
でも、結局持てるキャパには限界があるんですよ。だから持っているものを定期的に手放していく。
手放すって、何も会社の中でリストラをするとか、そういうことではない。
例えば、僕のクライアントのとある社長は約20人の社員をずっとマイクロマネジメントしてたんですよね。
全システムからメールのあれからお金までって。
でも、頭打ちがくるんですよ。
だったら、そのマネジメント手放した方がいいんじゃない?って。
これ、AさんBさんに任せた方がいいんじゃない?って。
「お金のこれも任せるんですか?」って抵抗してましたが、それを手放したらそこからグングン伸びた。
僕は結構ナンバー2やナンバー3の人ともコミュニケーション取るので、その伸びた時期の1番の要素がマネジメントを手放したこと。
結局振り返った時に、そこからうちは変わりました。って。社長も言っていた。
そこからぐっと伸びていったわけなんですけれども、だからそれが「覚悟」。
まさに執着を手放すっていうところ。 つながる言葉ですね。
坂東:マイクロマネジメントってのは執着してるわけですよね。
島津:そうですね。でも、限界がありますからね。
坂東:なるほど、なるほど。行き詰まっていたっていうことで、思い切って手放してみた。
それでも覚悟するって結構難しい気がするんですけど。
島津:難しいでしょうね。
執着を手放すと手に入るもの
坂東:背中を押すというか寄り添うという感じなんですかね?
島津:そうですね、両方ですね。
背中を押しながら寄り添う。まあ、とにかく1回やってみなさいよ、みたいな感じ。
自転車でもそうだけど、ずっと補助輪つけたまま走ってたらさ、やっぱりスピードに限界がくる。
1回補助輪外してみなよ、みたいな。
そういうところですよね。その細かいマネジメントを手放したことでそのナンバー2、ナンバー3が一気に伸びたわけですよ。
急にこんな仕事が来た!みたいな感じで。
今まで社長がやっていた仕事も「自分がやっていいですか?」と聞いてくるようになった。
当然社長は楽になった。
楽になるということは、次のことにもっとリソースが割ける。
新しいこととか、新規事業に時間が割けるようになってくるわけですね。
手放すことで、また新しいことがまた1歩進んで行くっていう。なんかロケットが途中でバーンと切り離しながら登っていく感じ。どんどん切り離してって上に伸びていくみたいな。
坂東:さっき武井さんが絶妙なバランス感覚って言ってましたけど、「やっちゃえばいいんじゃないですか?」と言っちゃうことが、人によってはドライに聞こえちゃったりすると思うんですが、島津さんにはそれだけじゃない絶妙な感じがあるのかなと思ったのですが。
幸せとは?
武井:島津さんは人っていうものをめちゃくちゃ知ってるんですよね。
まあ、僕が言うのもあれだけどね。
東証1部上場企業のSTARTS、結構有名な大きいコングロマリットの会社にいらっしゃったんですけど、その会社の人数が200人とか250人くらいの時に新卒で入ってそこからどんどん大きくなって。
そこで最年少役員になって人事の責任者なんかもされてて。
島津:人事部長の時4年間で6000人面接して1000人採用したんですかね。
坂東:すごい。
島津:もうマシーンですよ。もうクタクタです。1日20人近くを毎日面接してるんでよ。
そうすると自分の中でプロファイルができてくる。そのプロファイルをカチャカチャすると、きっとこういう形で活躍するだろうなとか、こういう配属先が良いだろうなとか、そういうのがだんだん見えるようになってくる。そして、本当にみんな自分らしく活躍している。
坂東:だから、島津さんはちゃんと人を見てるんですね。
島津:人ですね。だって幸か不幸かは全て人間関係ですよね。
例えば給料が多いとか少ないとか、健康とか不健康ってあるけど、本当に寄り添って心配してくれている人がいるかどうか、とかね。
寄り添ってくれる家族がいたらそれでもう幸せじゃないですか。極端な話。
僕は震災でそれを実感したわけですよね。お金ってやっぱりただの紙だから、それをよく使うも悪く使うも人間。色をつけるのは人間だからだから、本当に幸か不幸かももう人間関係。
だから人を学ぶ人間学っていうか、人間大好きだし、人間とは何かみたいなのは、やっぱりそういうのはやっぱり結構ずっとそういう本を読んでましたね。20代30代は。
坂東:なるほどね〜。
※島津さんのトークライブの模様はアーカイブとしてこちらから視聴いただけます♪
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