ブックレビューでは、みなさんの組織をアップデートしていくのに役立ててもらえるような書籍を紹介していきます。
今回ご紹介する書籍は「奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ」 リカルド・セムラー著(総合法令出版)
■手放す経営ラボラトリーでは、“ティール”“ホラクラシー”など進化型組織や最先端の経営スタイルを研究。また自社でも実証実験を重ねており、その様子をYouTubeやコラムでお届けしています。 また、組織をアップデートしていきたいという企業の支援をしています。
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坂東:今回はブックレビューで『奇跡の経営』を紹介したいと思います。
小野:新しい本ですか?
坂東:いえ。2006年に出版された本で、今2020年だから、もう16年前です。
小野:えー!けっこう前!最近買って読んだという事ですか?
坂東:僕は4.5年前に買って読んだんだよね。その後、2017年の6月に著者のセムラーさんが来日をして講演されたんだけど、その講演に参加したことが決め手となって、手放す経営を始めました。
小野:『ティール組織』と『奇跡の経営』が坂東さんの運命を変えたという事ですか?
※ティール組織をもっと詳しく知りたい方はこちら
坂東:『ティール組織』は手放す経営を始めようと決意した後に出たものなので、奇跡の経営の方が先です。経営を手放す型にしようと思った最後のひと押しの本です。だからとても印象に残っている本です。2006年に発売されて結構売れて、これを読んで経営スタイルを変えようと思った経営者も多かった。知ってる人は知っている本です。セムラーさんはブラジルのセムコという会社を経営していて、ブラジルで就職人気企業ランキングで1位!
小野:日本ではセムコという会社は聞かないですね。
坂東:日本には進出してないと思う。元々、製造業をしていて、今はコンサルや教育や色々な事業をしていて、奇跡の経営ってだけあって、斬新な事が書いてあって。斬新というのは、組織の階層や組織図がなかったり、ちなみに今は5000人ぐらいの規模の会社になっています。ビジネスプランがないとか、企業理念がないとか、業務フローがないとか人事部がないとか…。そんな普通の会社ではないような感じ。小野さんはもう慣れてるかもね。
小野:ティール組織にリンクしているからなんとなく想像ができます。
坂東:これが15年ぐらい前に出た時は、今の話はめちゃくちゃ斬新だったからかなりセンセーショナルだったらしい。
小野:私もそんな経営スタイルを知ったのはここ2年ぐらいですよ。
坂東:そうだよね。周りにそんな会社があるわけでもないしね。これは講演でセムラーさんが言っていたんだけど、2017年の時、従業員5000人で人事の仕事をしている人は2人しかいないって。
小野:えー。
坂東:信じがたいよね。経費の承認をする人もいないし、離職率も実質ゼロで。こういった不可思議な経営をしているのにすごい成長しているんだよね。1994年の時点で売上が400万ドル(4億円)で10年たった時に2億1000万ドルだから210億円になったって。めちゃくちゃ伸びてるんだよね。だからこそセムラーさんに説得力があるよね。
小野:それで業績下がってたら誰も真似しないですよね。
坂東:今でもこれを読んで、これを目指してる経営者もいますよ。ここに書いてあるんだけど、副題で『1週間毎日が週末発想のススメ』って書いてあるんだよね。
小野:1週間毎日が週末発想って仕事しないでいいのかな?
坂東:そうなんだよね。そんな楽園みたいな組織なの?しかも奇跡の経営ってなってるから、勘違いする人も多いみたいで。ブラジルの中ではユートピアみたいな会社なんじゃないかって学生に人気みたいで。でも学生はほとんど採用しないみたいなんだけど。この週末発想がどういう事なのかって事だよね。
小野:そのヒントが書いてあるんですか?
坂東:週末発想は何かという事なんだけど。大きく2つあって、毎朝目覚めた時に土日だったら嬉しいじゃん。でも月曜だとやだなーって思うって一般的に言われるよね。毎朝、今日が楽しみだなと思って起きることを目指したいって。
小野:そう思える会社で働いた方が幸せって事ですよね。
坂東:そう思えるようにしたいと思って会社のしくみを作っている。そう思えるようになるには、1週間を平日と週末に分けない。分けるから平日が辛く感じてしまう。
それは会社が就業規定を決めているから、そうして働かないといけないけど、1週間の7日間をどのようにくぎるのかを自分で決められたら、もっと毎日が過ごしやすくなるんじゃないかと。誰かに決められるのではなく。自分の時間は3種類あって、「仕事」「余暇」「のんびりとした時間」の3つに分けてて、その3種類の時間の組み合わせを自分自身で好きなように組み合わせる事ができたら、毎日がもっとより楽しくなるんじゃないか?ということをこの会社では決めているんだよね。製造業だけどシフトもなかったりする。
小野:与えられた仕事を自分のペースでやればいいって事ですよね。休みの日がかぶって稼働しない日とかも出てくるんじゃないんですか。
坂東:それ心配になるよね。でもみんな大人なんだから自分が休みたいからって仕事に穴を開けたりはしないでしょ。って。それは信じなさすぎなんじゃない?という発想から、管理を手放すということになっている。
すごい面白い事例があって、ブラジルの会社で、ブラジルといえばサッカーだよね。ある年、ブラジル代表がW杯に出場して決勝まで進んだんだよね。当然ながらみんな観るわけよ。仕事どころじゃないよね。ってなりそうだけど、その時に大口顧客のスーパーの棚卸し業務の日と決勝の日が重なって。そこにはブラジル最大のスーパーだからセムコ社から1000人の社員を出さないと棚卸しができないという事になって。これどうするのか?ってなるよね。
小野:うわー、これ普通なら下っ端から行かないといけないですよね。入社の浅い人から順番に。
坂東:結局そこの責任者は下っ端からとかではなく全部現場に任せたんだよね。そしたら結局うまくいったという話だったんだよね。
小野:すばらしいですね。でも私はあの人よりはサッカー好きじゃないから思いやりの気持ちで出社しようって気持ちになるんでしょうね。
坂東:やっぱり全国民がサッカーが好きなわけじゃないけどね。試合の2時間以外は仕事に行きますとか。チームに任せてたらお互いの中で融通をきかせ合ってやっていけた。
小野:信じて任せられるのもすごいですよね。もし行かなかったらどうなってたんだろうって。
坂東:今まで信頼関係の積み重ねがあったからできたんだろうね。
小野:ブラジル人ということがなんだか意外ですけど、日本人ならなんかちゃんと仕事しそうな感じありますね。国民性ありますよね。私の姉は今ブラジルと同じ南米のコロンビアに住んでいるんですが、なかなか人間関係が難しいみたい。国外にいると日本人の国民性のすばらしさに気づくと言ってますね。
坂東:国民性もあるかもしれないけど、セムコの場合は、会社と社員に信頼関係があって、前提としてみんな大人なんだからできるでしょ?っていうことが染み込んでる。言われたら期待に応えようってなりやすいかもしれないよね。管理しないとサボるでしょって思われてたら、信じてくれてないって思うしね。その話を聞いた2番目に大きいスーパーから1週間後にうちの在庫棚卸しも任せたいと依頼があって。そこは同じW杯の決勝の日に棚卸しをしたけど人手を集めることができなかったらしくて。何でできたのかって発注がきたみたい。あとはミーティング出欠も自分で決めていいし、途中参加もいいし、途中退出もいいし。堂々と遅刻して言いたいことを言って出て行ったりするから、取引先の人は不思議に思うみたいで。
小野:それを受け入れてくれるってすごいですよね。
坂東:それで仕事が成り立つのがすごいよね。それから新規プロジェクトのミーティングに号令をかけても誰もこなかったりするらしいんだよね。そんなの嫌じゃない?採用活動でグループ面接にも誰もこないこともあるって。
小野:え?どういうことですか?
坂東:それは社員のメッセージだと。この部署の人はこの候補者が欲しい人はいないということなんだと。それをみなして採用をやめる。という判断。
小野:わかりやすい。忖度もなさそうですね。スマートですね。普通だったら顔色伺って参加したくないミーティングにも参加する事ありますよね。そして参加はするけど、やる気はないから座っているだけ。結局誰がやるのという状況になって、何のために集まったのかみたいな。
坂東:誰もやりたいと心の中では思ってなくても、上司がやりたいからいやいや進めるんじゃなくて、やりたくないならやらなくていいんじゃないって、個人の意見を最大限尊重してるという事だよね。
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信頼関係を組織の中でどう育んでいくのか?
その根底には目の前の人を一人の大人として尊重し合っている。ということがポイントになりそうですね。
信じて任せてもらえるから、期待に応えて頑張ろうとする。
信用されずに、ルールに縛られて、ルールを違反した時の罰則でコントロールされると、やる気がなくなる。
最低限だけのやっつけ仕事になってしまう。
なんとなく、想像つくとは思います。
「信じて任せきる」
さて、皆さんは周りの人との関係性、信じて任せ切れていますか?
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つづきはPART2のyoutubeで。