中編:会社3.0 変わり続ける組織のカタチ 納品のない受託開発で事業を行う倉貫さん。
変わり続ける世の中に合わせてサービスを常にアップデートする必要があるから納品のない受託開発というビジネスモデルを築いた。 同じように、変わり続ける世の中において人事制度や組織が変化する必要がないわけがない。 アップデートし続ける会社のあり方とは?
■デジタルトランスフォーメンション時代の組織デザインプログラム「DXO」
■手放す経営ラボラトリーでは、“ティール”“ホラクラシー”など進化型組織や最先端の経営スタイルを研究。また自社でも実証実験を重ねており、その様子をYouTubeやコラムでお届けしています。 また、組織をアップデートしていきたいという企業の支援をしています。
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上左 手放す経営ラボラトリー所長 坂東孝浩
上右 ソニックガーデン代表 倉貫義人さん
下 社会活動家/社会システムデザイナー 武井浩三さん
坂東:大手企業だけでなく中小企業でも、組織づくりは情報システムと同じだと思ってまして。人事制度や評価制度も納品して終わりみたいなところがあるじゃないですか。一生懸命作ったから、それをずっと使っていきましょう。って。
不具合があればそれを運用しながらPDCAを回していく発想は少ないですよね。
倉貫:組織もそうだし、評価もそうだし、組織の在り方や人事制度も製造業時代に作られたものだったり、法律もそういう時代に作られているものだったりしますけど。それをすることに皆さん疑問を持ってないケースが非常に多いんですよね。組織が大きくなってきたら、部署を増やして、部長を作ろうみたいな感じが当たり前になっているし。キャリアを積んだら偉くなって人を束ねることしかない。それは数ある選択肢のうちの1パターンでしかない。そもそもそれを選択するのか?というところから考えていかないとアップデートできないんだろうなって。
坂東:大きくなってきた会社のモデルを真似した方が成功確率が高いって思っちゃう。
そこに疑いを持つのは難しいし、中小企業だと大手企業の方が正しいと思っている傾向が強いから、世の中の制度は大手企業のものを持ってきているケースが多いですよね。
倉貫:疑う必要性がなかった時代もあるとは思いますが、ここ数年、従来のやり方でよいのか?というのは改めて問うてもいいのかなとは思いますね。
武井さんのいたダイヤモンドメディアさんもそうだし、僕らもテンプレとは違う選択肢がとれる時代になってきた良さがありますね。僕らが30年前の会社を企業している人間だとしたら、ホラクラシー だとか言ってる場合じゃなかったと思うし、テクノロジーもなかったし、それをしなくても事業自体はうまくいったり、高度成長時代は組織のことを考えなくても日本全体が成長しているので、多少制度が杜撰であっても会社は成長するのだからそこまで考えない。
経済が発展することの方が大事だった時代ならその選択肢をとったけど、ここ十数年の日本経済の停滞状況の中で同じように何もしなくて成長できるかどうかは難しいし、成長したところで、牌の奪い合いみたいな状態になるので、別のアプローチを考えないといけない必然性がたまたま出て来たからやっているだけという感じ。必ずしも僕らが正しいと思っていない。
武井:過去を否定しているわけではないということは理解してほしいですよね。今変わるべきタイミングに来てるということで。淡々とした表現を使いたいですね。今の社会システムとか労働の概念が出来たのが、全部ITが生まれる前じゃないですか。労働基準法も80年前だし、明治維新のタイミングで日本の社会システムの基本的なものが出来ているので、約80年前ですよね。ITがない時代の最適解だった。
倉貫:そうそう。あらゆるものがその時は最適だったんだろうな。今は、外的環境が変わったんだろうなと。
武井:これからの社会システムはアジャイル開発のようにもっと柔軟になっていくのかなという期待はあって、今までの社会システムもオンプレ※みたいな感じで作ってはリプレースする時はまるごと捨てて、もう1回作り変えることを繰り返してきたと思うんですよ。クラウドガバメントなどと呼ばれますけど、電子国家化していくと社会システム自体がクラウド化して、ずっとアップデートを細かくし続けるという期待があって、そうするともっと滑らかにちょこちょこ変わっていけるのかなって。
※「オンプレ」とは、on-premises(構内で)という英語表現由来のIT用語で、情報システムを自社設備内で完結して管理・運用することを意味します。
倉貫:自然な流れの中で少しずつ変えていく方が自然な状態ではありますよね。その時間の流れも歴史の流れもどこかでドラスティックに、明治維新で変わったということはなくて、シームレスに変わり続けているのが、世界の常みたいなのがある。それに合わせて変えていくことができる社会システムになるとサスティナブルな状態になるなと思います。
武井:そうですよね。会社というプラットフォームというかステージがあって、必要な所に必要な機能がある状態。プロジェクトとして、会計の部分はこの人、マーケティングの部分はこの人、開発チームは自社でもたなくてソニックガーデンさんがパートナーシップでいいじゃんみたいな。中と外がかなりあやふやな。そうなってくるとリアルな話、経営者すらもモジュールの1つになっていくと思うんですよね。
坂東:機能の1つとしてそこに参画しているんですね。経営と一口に言っても会社によってもテーマが違うんでしょうね。機能するためのモジュール。モジュールとしての機能。
倉貫:今日の昼間、名古屋のイベントでサイボウズの青野さんとさくらインターネットの田中さんと対談したんですけど、面白い話があって、オフィスはこれからどうなるのかという話になって、オフィス要らないよね。と。完全に無くした人もいるし、半分解約してフロアを減らしたという話があったり、サイボウズさんも地方移住する社員が増えて来てオフィスどうするみたいな。こういうことになると、
オフィスってそもそもどんな意味があったのかを考えた時に、働く場所としてのオフィスならもはやなくてもどこでも働ける。
ただ、社員の人が理念やビジョンを共有する、気持ちを通じ合うためのお祭りの場所が必要。
昔は宗教で言うと教会だったりお寺だったりがあって、祭りがある時は集まって、そういう風に年に数回集まる場は必要。そうした時に会社ってなんだろうねって話になった。
オフィスと切り離して考えた時に、もう物理的なものがなくなってしまうわけなんですよ。
今やもう完全にクラウドであって、いろんな機能がクラウドにあるのでクラウド=会社みたいになってくる状態になってきたら、セキュリティも物理セキュリティでカードや鍵でやったり、携帯を預かったり。それって全く意味のないこと。大事なことはITのセキュリティなのでそれさえとってれば、いい。アカウントを持っていることが、その会社にいることだということ。
物理的にはどこでもいいんだとしたら、シェアオフィスで人が自由に出入りしていたとしても、所属している会社のアカウントさえ持っていれば、その会社のシステムに入れる。これすると何ができるかというと、副業がめちゃくちゃしやすくなるんですよね。アカウントを2つ持っていれば、2つの会社に所属しているということ。
デジタルに所属していることでその会社に入っているということになる。
武井:セキュリティの最高レベルなのがマイナンバーカードだと思っていて、僕が武井浩三本人かどうかを証明する上で1番セキュリティレベルが高いですよね。そういうものがいろんなものを紐づいてくるといいですよね。
倉貫:そこの個人の保証をすることは1民間ではできないので国がしましょうと。アイデンティティーの保証だけは国がするということなんだろうなと思います。
坂東:マイナンバーと共に会社のデジタル化ももっと進むということですよね。
倉貫:基本、先ほどのプラットフォームという発想がこれからの組織の在り方だなと思っています。プラットフォームってITの世界でよく使う言葉なんですよね。例えば、Windowsを使っているとかMacを使っているとか、アップルのプラットフォームにのっかってるのか、マイクロソフトのプラットフォームにのってるのかであって、そのプラットフォームの下にはどのCPUにのっかってるのか。いろんなものがレイヤーになっているという発想なのがITの世界なんですよね。
概念をずっと積み重ねてきてるという。国も会社も物理的なものは何もなくて、法人って概念なんですよね。
武井:国家も概念。
倉貫:国家も概念でしかないので、ソフトウェア化してそこにレイヤーを置いてプラットフォーム化してAPIを使っていくという世界観になれるんだろうだなと。何年かかるかわからないけど。
武井:エストニアとかノルウェーとか北欧の国はそこまでいっちゃってますし、そうすると株式会社とか会社という概念が残るけど相当弱まると同時に国家という概念も弱まるというのは流れとしては間違いない。そうすると、国家がその人本人を保証するよりもブロックチェーンの方が担保力高いというのは理論上その通りなので、あと100年以内には国家が役割を終えていくと思いますよね。
倉貫:すでにFacebookは国家を超えている。国家を超えた状態で繋がるというのは当たり前であるし。
武井:今の法律による国家の概念は国土と国民と主権というものなんですよ。ただ国土を物理的なものから外すとエストニアみたいに電子国家という概念になって、主権というものをどう発揮するかに尽きてくると思うんですけど、それがティール組織でいう所のアドバイスプロセスみたいな意思決定とか、プロセスに参加する権利を誰もが持っている状態を作れれば、1つの社会集合体になりますよね。
坂東:なるほどね〜。
後編につづく。
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