進化型組織導入中の会社の給与制度デザインプロジェクトのサポートに関わりました。
いままで経営トップのさじ加減で決めており、ブラックボックスになっていたために、社員の不信感が芽生えるもととなっていました。進化型組織を導入するにあたって、今後はできるだけオープンにしたいし、自己申告制にもしたいという社長。
有志のチームをつくり、ディスカッションを重ねましたが、議論伯仲!
最終的にどんな給与制度になったのか・・・?!坂東がどのようにサポートし導入していったのか、お楽しみください。
No.039 給与制度デザインのポイント
ある会社で給与制度をつくるサポートをさせてもらいました。
ちょうど先日その会社でキックオフミーティングがありました。
10月から新年度なんですけども
そこで新しく給与制度をアップデートして使っていこうということでその発表がありました。
私も参加してきたんですが
4ヶ月くらい前から給与制度デザインプロジェクトを立ち上げまして
社内で給与制度をつくることをやってきたんですね。
その会社はIT系で社員数は20名くらいです。
これまでの給与制度は、社長が基本的に全部決めていまして、
課題が2つありました。
1つは、社長が決めているので基準が見える化していなかったということ。
2つは、給与を誰がいくらもらっているのかというのは分からず、金額がバラバラになっていたり、この人は高いんじゃないか、実際より安いんじゃないかという不具合が生じていた。
これらをいよいよ是正しなきゃいけないことになり、
それで新しく作ろうということになったわけです。
この会社は少し前からティール組織化したいということで
会社の意思決定をしまして、進めていました。
そのため、
ティール的なパラダイムと、会社がこれからどういう会社らしさ・個性を具現化したいかということに基づいて給与制度を設計した方がいいだろうということで、まず何のための給与制度改革なのかを考えました。
それは社長と一緒に考えながら、
社員の中から有志でこのデザインに関わりたい人が何人か
出てきたので、その人たちを中心にチームを組んでやったわけです。
ポイントとしては
1つ目は自主経営(セルフマネジメント)です。
これから環境の変化にもっと耐えられるような柔軟な組織にしていきたい。
その際に、1人1人が意思決定できる、あるいはチーム単位で意思決定が素早くできるということがすごい大事だよねとなりました。
であれば、そのようなことが促進できるといい、ということが1つ。
それからもう1つは、今後オープンにしていきたい。
基準もはっきりさせた方がいいし、自主経営(セルフマネジメント)で意思決定をしていく際には情報が公開されていることが大事なので、そういう意味では評価の基準であったり、評価の内容や給与についても公開していくことによって自主経営が進むだろう、
オープンな風土の会社にもしていきたいということもありました。
そういったところを念頭において、今までの課題を解決できるような
制度設計をしていったわけです。
定期的にディスカッションを行い、
あるときは2チームに分かれてたたき台を出してもらうなどして進めていきました。
しかし、ミーティングがけっこう紛糾しました。
なぜかというとエンジニアの方々なので、皆さん非常にロジカルですし、
細かいところに気がつくんですよ。
それはとても優秀なことの証なのでいいのですが
たたき台をつくった時にあとはこういうケースがあるよね、とかこういう場合はどうしたらいいですかね、といった話でかなり議論が細かくなると話が進まなくなっていきます。
そのため、社長が途中から引き継いでつくっていきますが
なるべく見える化しながら決めていこうということで、精密な制度を考えられました。
アルゴリズムを作って出そうとか、こういうパターンの人はこうだという昇給率(
あくまで例。会社で勤続年数が長い人はちょっと評価を高くしたいということで、昇級率を高くする。他社で経験積んできた人はちょっと低いなど)等を細かく設定した方が精度が高くなるのではないかということで、考えました。
しかし、それについても例えば高卒の人の場合はどうなるのか?
全然違う業種に入っている人の場合はどうなんだ?年齢は?
というつっこみがたくさん入るんです。
つっこみが入る風土自体は素敵なんですが
それでごっちゃになりまして、なかなか決まらなかったんです。
面白かったとは今は言えますが
過程では大変でしたね。
こういった話し合いを繰り返して
細かく細かくなっていきました。
そして、いよいよ最後の最後になって
社長が方針を一変させてとてもシンプルな制度に決まり、
そうやっていい感じに収まりました。
結果的には、ざっくりな紹介になりますが、
給料は半年ごとに変えていく。
毎月1回360度のアンケート調査をする。
その内容をもとに毎月チーム単位で面談をしていく。
この面談は、お互いにフィードバックし合うためのもので給料とは直接結びつけない。
この毎月のフィードバック・面談を基に半年にいっぺん自己申告で
給与を申告する。
自己申告でそのまま行くかどうかというのは迷ったんですが
いったんは自己申告したものを基に社長面談ですり合わせを行い、
最終的に社長が決めるという形にしました。
結局、最終的にはトップダウンで決めるということになったんです。
大きかったのは
月1面談とそのためのアンケートを調査をすることと、
自己申告というプロセスを入れることです。
細かい制度設計はせずにシンプルにいこうという
話になりました。
実際、プロジェクトチームに関わっている人は
非常に納得感を持って受け止められて、
キックオフでのみなさんの反応もよかったんです。
なぜ反応がよかったのかを考えてみたところ、
何ヶ月か議論してきて、し尽くしたというプロセスを取ったのが
よかったんだろうなと思ったんですね。
最初から最終的には社長が決めるってことを決めていたんです。
そして、
その通りに決めたんですが、色んな話をしていく中で、
何のためにこれを作るのか?何が大事なのか?といったことを考え、議論する機会を持ったので決めたことには納得感があります、と受け止められた。
そのため、今後の運用もスタートではうまくいくんじゃないかと思っています。
今回の給与制度を決めるときに、評価も連動してくるんですが
これは会社の事業内容、ビジネスモデル、組織の状況によって、どういう制度設計をするのがいいのか答えは一概にはないと思っていますが、
自主経営ができるようにしたいとか、情報の透明化をしていきたいといったテーマがあればそれに沿った形のデザインは大事になります。
こういったプロジェクトを進める上でのポイントを私なりにまとめると
3つあります。
1つ目、決める人を決めておく。
最終的にどのように決めるのか誰が決めるのかということを決めておいた方がいいです。
今回の場合は社長が最終的に決めるということを最初から言っていました。
ここが決まっていないとずっと合議制になり、最終的に多数決病みたいに多数決で決めようとなるとスムーズに決定できないと思います。
2つ目は目的です。何のためにつくるのかをぶらさないようにするというのはとても大事だと思います。給与額を決めることが目的なのか、給与制度を活かして何をしたいのか、どういう組織にしたいのかといった目的ですね。この目的は話をしているうちにズレやすいですね。ミーティングの際には毎回確認するようにしていました。
3つ目は制度はできるだけシンプルにつくることですね。
私はないならないでもいいと思っています。
できるだけ簡単にするということと、運用を楽にする。運用上で改善を前提にしていくと決めたらこのままずっと行くぞということじゃなくて、今の段階では最適だと思っているけど、不具合が起きたらどんどん変えていこうという前提で作ってるよというアナウンスをしておくのは大事かなと思います。
そうすることによって会社の状況は常に変わりやすいですから、最適に調整していくことができていくと実情とズレにくいと思います。