ある企業での「イノベーションが生まれる環境づくり」プロジェクトに関わってきた1年間をふりかえります。
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坂東:ある会社でのプロジェクトが3月末で一区切りになったのでその話をしたいんですけども、400人くらいの会社でイノベーションプロジェクトというのが去年の4月から始まってですね、小野さんにも少し話していたと思いますが、会社として新規事業をどんどん生み出していけるような体制にしたいと。親会社から仕事が降りてきてるので今は困っていない。だけど、自分たちでも事業の柱を作っていきたいと。で、イノベーションを起こしていく時にどうするかっていうと、まず社員全員の就業時間の15%を空けようと。その15%を使って何かイノベーションに繋がるような取り組みをしようと。
小野さんが今、1週間のうち15%を空けるってなったらどうする?
小野:何をしたいですか?ってことですか?
坂東:まず空けられるかってことですね。
小野:うーん、1週間で15%ってどのくらいなんでしょうね。仕事してる時間のってことですよね?
坂東:そうそう。フルタイムで働いている人は週40時間なんだけど、そのうちの15%って6時間なのよ。だから、約1日。で、今までの仕事量が変わるわけじゃないの。今まで5日間でやってた仕事を4日ちょっとでまずやらないといけないってのが大変じゃない?で、残りの時間で何かやってっていうことなんですよね。
小野:確かに、残業代足してやるんじゃなくてってことですよね。
坂東:そうそう。残業でやるってなるとそれはそれで文句出るじゃん。残業を強制させることも難しいし。既存の業務をギュッと圧縮して15%空けなさいってことなので、なかなかハード。なので、1年前やるって言った時はけっこう本当にやるんですか?みたいな違和感とか口には出さないけど反発な空気があったんですよ。
小野:400人全員がですか?
坂東:そう。すごいよね。で、それはなかなか個別に任せていてもきっとうまくいかないだろうからってことで、プロジェクトに私たちも入らせてもらってプロジェクトミーティングをやって各部門から推進リーダーを決めてもらってその人たちが集まって月に2回ミーティングをしながらどうやっていけばちゃんとそういう活動ができるかなってことを話し合いながら進めていこうっていうことをしてたんですよね。プロジェクトリーダーになる人は役職者じゃなくて、若手社員の方がいいっていう話もして、役職者じゃないから色々指示命令とかしにくいんだけど、そういう人たちでどうやってやっていくのかってのを試行錯誤したんですよ。結構、みなさん苦労しながらやってくれたんですよね。
小野:3月で一区切りっていうのは半年くらいですか?
坂東:4月から1年間やって、毎月15%を目標なんだけど、どのくらいのパーセンテージでみんなが空けられたかを計測して今月は8%、4%。15%いきましたみたいなチームもあったりしたんだけどね。空けるのがまず大切なのと、空けたところで何するのか?っていうのを考えて実践する、新しいことやっていかなきゃいけないってことなんで、どっちもそれなりに大変です。
小野:それは自分たちで考えないといけないんですよね?
坂東:そう。やりたいこととか興味があることの延長線上でいいよっていうことだったのでどういう風にチームを組んでもいいし、そういうのがない人はまず勉強から始めようみたいなことをそれぞれやっていて、定期的に発表会をやったりして、じゃぁこのAIについて勉強してみようみたいなこととか。ということでやって3月の末に月末にまるまる1週間、最後の集大成のイベントをやって5日間の中で毎日色んなチームがこういうこと取り組んできたみたいなことを発表するようなお祭りを開催したんだけど、それも若手社員が中心となって企画して、今までは部長とか偉い人たちがコントロールしながらやってたのがそういうのは全然なく、いわゆるボトムアップでやってったので、それはすごい良かったねっていう話で一区切りになったんだけどね。
小野:オンラインでですか?リアルで?
坂東:オンラインで。コロナがあるので。
小野:その400人の社員は同じところにはいなくて、全国に分散してる?
坂東:いくつかの拠点で分かれていて、基本的には出社してる人が多くて、コロナ下なのでテレワークの人も増えてきたっていう感じ。そういう中で働き方も変わる中で、どうやって進めていけばいいんだろう?みたいなことを試行錯誤している感じだった。社長がやっぱりそれだけの決断するのがすごいなと思って。私だったら言い切らないなと15%空けろと。それでパフォーマンスがバッと落ちるかもしれないし。自分が社員でも嫌だろうなって。ちょっと面倒くさそうっていうか。
小野:でもそれをやった後、これからはどうなるんですか?その15%を常に空けていって、そのイノベーションを起こし続けようみたいな感じなんですか?
坂東:それで1年終わったけど、これは継続していこうということになって4月からまた新しい仕組みを作ってスタートしてそこにも継続的に関わらせてもらってるんだけどね。去年までの反省を活かして。去年はまずイノベーションを起こすっていうことが社員のみなさんの頭の中に染み込むっていうことが大事だった。そんな発想が今までなかったから。あとは15%空けなきゃみたいなことも最初はみんなイヤイヤだったんだけど、1年経つとそれに少し慣れてくる。やんなきゃねと。すごく積極的な人もいれば、まだイヤイヤな人もいるんだけど、4月になって2年目のキックオフやった時に去年は「本当にやるんすか?」みたいに言ってた偉い人とかが、今年のキックオフでは「どういう風にやっていくかちゃんと考えないとですね」とけっこう前向きになっていたり、社内の空気が大分変わってきている。これはやらなきゃいけないことなんだっていう風になってきてんのがすごい変化だなぁと思ったのよ。
イノベーションっていうのは起きるかどうか分からないんだよね。結果的に起きるものだと思っていて、計画を立てて1年間で3つのイノベーション起こそうみたいなことって無理だと思うんですよ。イノベーションってどういう時に起こるかって、私が考えているのはまず余白がないと生まれない。スキマっていうか遊びがないと。だからそういう時間の余白をまず作った。遊びの時間を作ったからといって生まれるかどうかは分からない。キチキチと毎日やることがめっちゃ詰まってる中でイノベーションが生まれるってことはないと思ってるんですよ。だから管理型の組織ではイノベーションではすごく生まれづらいと思ってる。あともう1つは偶発性から生まれるものだと思っていて、木からリンゴから落ちるのを見て、ニュートンがそれだ!と思ったように、それって計画してないし、あとは散歩してる途中にはっ!と閃くみたいな。いつ生まれるか分からないから、それも計画ができない。余白をまず作るってことと、偶発性がどうやったら色んな化学反応が生まれるのかっていうことをできるだけデザインして、あとは結果的に生まれるのを待つっていう感じだと思う。普通の仕事の仕方とはイノベーションの生まれ方っていうのは全然違うなぁと。
小野:確かに。目標も何もないものに向かって、偶発的な奇跡を信じてって感じですよね。
坂東:イノベーションの目標とか立てられても嫌じゃない?難しいしさ。なので、生まれる余白をつくるっていうことをやっていって、でもなかなかそういうプロジェクトに関わるのは楽しいし。
小野:イノベーションが起きたときに立ち会えるのもいいですね。
坂東:2年目以降は私としては人事制度とかも何らかアップデートしていく必要があるんじゃないかなって思ってて、きちっとした会社なのでちゃんとした評価制度とかあるんだけど、イノベーションが起こるかどうかとか、イノベーションが生まれるまでにたくさん失敗も当然あるわけよ。一発思いついて当たるとかないから。失敗してもいいっていう評価軸を作らないとみんなチャレンジしないじゃない?そういったことももっとアップデートしていきたいなって感じなんですけどね。そんなプロジェクトに実は携わっていました。
小野:また始まるんですね。
坂東:4月から始まってるんで、1年経ってどうなるか楽しみです。
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