福岡でケータリングやお菓子の事業を展開しているハラペコラボ。 創業者であり代表の野尻知美さんが、2020年4月から、拠点がある福岡から大阪へ移住。 なぜ福岡を手放したのか?どうやって経営を成り立たせているのか? いろいろ気になることをインタビューしました。
※前回はこちら https://youtu.be/ptE_9wGm-bk
■ハラペコラボ
■ハラペコラボ
公式note https://note.com/harapecofukuoka
■ 手放す経営ラボラトリーでは、“ティール”“ホラクラシー”など進化型組織や最先端の経営スタイルを研究。また自社でも実証実験を重ねており、その様子をYouTubeやコラムでお届けしています。 また、組織をアップデートしていきたいという企業の支援をしています。
■デジタルトランスフォーメンション時代の組織デザインプログラム「DXO」
■オンラインコミュニティー「手放す経営ラボ」
https://www.facebook.com/groups/tebanasu.lab
■twitter @tebanasu_lab
坂東:大阪に行くよっていうのが即答で迷わなかったっていうところがすごく面白いと思っていまして、そうすると野尻さん自身はご主人が単身赴任する?って聞かれたのは意外だったんですか?
野尻さん:そうですね。優しい人なので、また気を遣って言ってくれてるんだろうなぁって思いました。本当は一緒がいいように。
坂東:実際にどうですか?転居してみて。
野尻さん:4月2日に移動したんですけど、今心斎橋近くにいるんですが、本当は賑やかな場所なんでしょうけど、コロナでゴーストタウン的で、外に出る空気でもなくて、いきなりおこもり状態になって、ただ、オンラインショップのお菓子は癒されたい人が増えたのか、ものすごく伸びたんですよ。だからいつも以上に売れてて、作らなきゃいけないってなってて、福岡は活気づいてたんですよね。私おらんでもめちゃ楽しそうに仕事してるって思って、すごい落ち込んでました。
坂東:自分の都合で引っ越したのに?笑。だいぶワガママですね。笑。
野尻さん:全然私必要ないじゃん、すごい楽しそうに仕事していていいなぁってめちゃくちゃ落ち込みました。
坂東:スタッフの人たちからしたらそんな落ち込まれても、という感じでしょうね。笑。そこは順調だったんですね。
野尻さん:そうですね。特にトラブルもなくスムーズに運営は。むしろパワーアップしましたね。私がいない部分もみんなが担おうとしていって、無理しているというよりは力がついていってるような感じでより一層自分の頭で考えているように思いました。
坂東:アトリエがオープンしたのは最近ということは、大阪に行かれてからですよね。
野尻さん:リモートで作ったんですよ。
坂東:リモートで作るとはないですよね?笑。けっこうスタッフもみんなでやったり。
野尻さん:そうですね。私がスケッチ描いて、こんな風景が作りたいっていって、配置も大まかなのだけ決めてあとは使う人たちがどう配置したいのかだとか、やってってくれましたね。
坂東:デザインですね。
野尻さん:はい。
坂東:で、実行は業者さんとスタッフの方もやりながら。
野尻さん:はい。学校が休みだったじゃないですか。4、5月って。だから、小学生の子どもたちと中学生の子どもとかそれぞれのお子さんたち来てペンキ塗ってたって言ってました。楽しかったらしいです。
坂東:そうですか。ちょっと寂しいですか。
野尻さん:寂しい。。やりたかった。
坂東:逆にうまくいかなかったこととか悩んだこととか聞きたいです。
野尻さん:悩んだこと。コミュニケーションで私が浮かんだアイデアを最終的に具現化する時にその場にいた方がニュアンスを伝えたりとか組み立てたりとか手を動かしたりできるのを全部LINEとかでやるとなると、10倍くらい時間かかってるなとかありましたけど、だんだんその時間が短縮できるようになっていったと思います。
坂東:なるほど。コミュニケーションしやすくなってきたってことですね。
野尻さん:そうですね。最初イライラしてた時期もありました。何で伝わらんと〜って。
坂東:そうですよね。それは慣れですか?何か工夫がありましたか?
野尻さん:人員配置をちょっと替えました。内部にデザイナーの子よりもっと受け取ってくれる子がいたりしたんですよね。作りたいのはこういうことだよ、みたいなことを何人か具体的にキャッチできる子が頭角を表してきて、しかもパートさんとかでも。その子たちがすごい頑張ってデザイナーの子たちに、お店づくりの部分に関しても壁の色はこうした方が合うんだと思うとかってどんどん提案していってくれて、それで、だったらディレクターになってくれない?って言ったり、店舗リーダーになってくれないって言ったりしていって、そういう風にきっちりポジションをつくると、余計指示しやすくなって、デザイナーの子も作りやすくなって、通訳になるような人を間に入れたみたいな感じですね。
坂東:なるほど。それまでは野尻さんが直接やってたのを。
野尻さん:そうそう。あのアーティストなに言ってんだろう?ってなってました。今それですごくやりやすいですね。
坂東:ブログも拝見すると3人目できてからリモートでもできるように経営スタイルを変えていく段階ではうまくいかないこととか、スタッフの方がやめちゃったこともあったと書いていたんですが、それはどういう経緯であったんですか?
野尻さん:手放していく段階で、自分の作りたいものをこのスピード感でやりたいのに、伝え方というか、仕事の負荷のかけ方がたぶんいきすぎてついていけないってなったんだと思います。ものすごく応えようとしてくれてたんですけど、逆に手放されてしまいましたね。
坂東:今はそういうことはないんですか?
野尻さん:ずいぶん無くなりましたね。離職率っていう意味ではないですね。離職する人、いないですね。
坂東:何でそういう風にできたんですかね?
野尻さん:半分以上ばばっとやめてしまった時にみんな毎日泣いてたんですよ。大切な仲間が食い違って、みたいな。それぞれの人生を歩むのかみたいな。で、泣いてる景色もやっぱり辛かったし、またこの想いをしたくないなと思って、人を増やした理由はそこなんですよね。より一層みんなで分散できるようにして、1人へのプレッシャーがかかりすぎないように、この人じゃなきゃできないということをとにかく作らないことをして、代わりの人がいつでもいるような状態を作っていきましたね。
坂東:分散していったってことですね。
野尻さん:はい。誰もカリスマがいない状態。だけど作っているものが結果すごいものになれば。
坂東:そうですか。今現場はマネジメントというか、リーダー的な人がいるんですか?
野尻さん:うーん。
坂東:30人くらいだと普通はマネジャー的な人がいたりとか。
野尻さん:私の右腕的な料理長って呼んでる子がいるんですけど、彼女はグイグイ引っ張っていくぜみたいな感じじゃなくて、誰よりも低姿勢なんですよね。
坂東:なるほど。
野尻さん:で、私は情熱的というか、感情でこうしたい〜って言ったとしても、じゃぁ、これを現実に落とし込むにはこうしたらいいねみたいなすごいマイルドにみんなに言ってくれるので彼女に追随する人たちも同じようなニュアンスになっていって、そういう柔らかいリーダーというか、マネジャーたちがいますね。
坂東:柔らかくリーダーシップを取ってくれるという感じですね。
野尻さん:はい。
坂東:ついてこいとか、こうしろーみたいなことじゃない。
野尻さん:はい。
坂東:そうか。そういうチーム居心地がいいというか。
野尻さん:そうですね。ただ、ものすごいスピードで動いているので。
坂東:それは落ちてないんですね。
野尻さん:全く落ちてないですね。迫り来る納期も常にあるので、追い込まれすぎた人とかは後ろ向きになりがちだったりすると、疲れると後ろ向きになったりする時には、鼓舞しますね。私も。やれない理由とかよりはどうしたらできるようになるかを工夫していこうよ!って言って、1つばっさりやめてみる。そしたらどうなるのかを想像してみるとか、ガチガチにぎゅうぎゅうになっているのをほぐすみたいなことをしていったりしながら、みんな真面目なので、本当によく業務をやってくれようとするので、1回パンクした方がいいよとか。そしたら手放すもの見えてくるから、楽になるよ、とか。私はみんなに業務を手放してるから、次の人たちはまた自分がやるべきことじゃないことは手放していって、下に渡して、どんどん連鎖させて、結果みんなが気持ちよく働けるようにするために、まず私が手放すって言って、そういう話はしたりしますね。
坂東:そうかそうか。いかに1人1人が気持ちよく働けるようになるために、ということが念頭にあって、そのために野尻さんしかできないこと以外はどんどん手放していくと。
野尻さん:はい。ブレーンのところすら手放したらと思ってますもんね。
坂東:そうですか。
野尻さん:はい。私だけじゃなくていいんじゃないの?って思いますね。訓練だと思っているのでアイデア0から1を生み出すって。できないって言ってるならたぶん思い込みで、じゃぁ、どうやって新しいアイデア生み出してるの?っていうことをよく聞かれるんですけど、例えば鉱物お菓子だったら琥珀糖っていうのはもともとあるお菓子でそこに鉱石っていう要素を合体させたっていう、もともと違う要素を合体させたらどうなるのかってことだけなので、そういうAという要素とBという要素もともとあったけど、合体させたら世にないものだった、そういうものを常に考えていることが大事で100個とか1000個とか考えて1個くらいはヒットするものになったりするので。
坂東:100個、1000個考えるのが大変なんですけどね。
野尻さん:そうなんですか。いくらでも出てくるけどな。
坂東:それは野尻さんの特殊能力な気がしますけどね。
野尻さん:手が追いついてない感じですね。いっぱいうわーって来てて。
坂東:それを誰か1人じゃなくて集団で皆んなの脳みそをつかって作っていくのはできると思いますけどね。そうやってブレーンも手放していったら野尻さんの役割はどうなっていくと思いますか?
野尻さん:私の役割はそういうことを体系化できるということを伝えていくことだと思います。
坂東:ハラペコラボの世界観のデザインですかね?
野尻さん:あなたもあなたの世界観をデザインしたり、ビジネスにしたければできるよ。家族も仕事も得られるし、作れるし、思いのままできるよ、普通の人でもできるよっていうことを身をもって伝えたいと思います。
坂東:仕事とプライベートどっちかを選ぶっていうことじゃなくて、普通にどっちもっていうか。それが何の衒いもないっていうのがユニークで。
野尻さん:私別にリーダーシップがあった人間でもないので、普通なんです。
坂東:あんまそうは思わないですけど、そういう方が代表にいるとそうしていいんだっていう風にはなるでしょうね。だから、妊娠しちゃったんですけど、いいですかね〜。って、会社に迷惑をかけてしまうので、そうなっちゃいますが。
野尻さん:そうなったら、ぎゅーってしますね。おめでとうって言って、カバーするねって言って。
坂東:なるほど。そういう風土がハラペコラボの個性なんでしょうね。ユニークさというか。それと、生み出される作品との連動性がある気がしますね。
野尻さん:そうなんですかね。
坂東:何か1人1人の個性、想い、人生とかが1つ1つの鉱物お菓子とかケータリングとか、あるいはラッピングとか緩衝材とかそういうところに乗り移っているっていうか、別々じゃないっていう感じがしましたね。
野尻さん:女子なんですかね。
坂東:そうですね。会社の組織の風土とか、文化、価値観が非常に女性的な感性を持っていると思うんですけど、僕は素晴らしいと思うんですよ。
野尻さん:楽しいですけどね。
坂東:そういう会社が増えていって欲しいと思います。世の中は男性的な会社が多いんですけど、女性的な共感を中心とした組織がもっと増えていって欲しい、そういうサポートを僕らもやりたいと思っているのでいい気づきをいただけました。すごい面白く色々話を聞かせていただいてありがとうございました!
Spotifyはこちら