福岡でケータリングやお菓子の事業を展開しているハラペコラボ。 創業者であり代表の野尻知美さんが、2020年4月から、拠点がある福岡から大阪へ移住。 なぜ福岡を手放したのか?どうやって経営を成り立たせているのか? いろいろ気になることをインタビューしました。
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坂東:今日はゲストをお迎えしてお送りします。メルティングポットハラペコラボ代表取締役の野尻知美さんです。よろしくお願いします。
野尻さん:お願いします。
坂東:野尻さんは僕は福岡で知り合ったんですけども、ケータリングの会社をされていまして、当時ケータリングでお世話になっていたんですけど、福岡に本拠地があって今でも福岡で事業をされているんですけど、今野尻さんは大阪に住んでるんですよね。
野尻さん:はい。
坂東:この春から大阪に住んでいるということで、福岡を手放して大阪に社長だけが住んでいるという状態になっているという拠点を手放す経営をされているということで面白そうだということで今回お話を聞きたいということでお声がけをしました。野尻さん、まずどんな会社かっていうことを簡単に説明してもらっていいですか?
野尻さん:ハラペコラボというARTなFOOD集団をまとめているんですけど、掲げているのはARTなFOODで遊ぶというフレーズで掲げていて、何をやっているかというと大きく2つに分かれています。1つは最初に始めた方のARTに特化したケータリング事業で、お弁当やオードブルですね。それからそのケータリングに付随した子どものワークショップなども行っています。それから上にキラキラ光っているのが石みたいなお菓子ということで鉱物お菓子という和菓子の製造をして、販売しています。
坂東:かわいいですよね、これ。
野尻さん:で、それぞれ華やかなものを作っているんですが、
坂東:すごいですよね。心が掴まれる。お弁当ですもんね。
野尻さん:これお弁当です。
坂東:めっちゃかわいい。
野尻さん:それからオードブルなんですけど、30センチ以上上底して積み上がってるかと思いきやピラミッドのような土台にさしているタワーオードブルという名前のオードブルです。12月だけツリーオードブルっていう名前に変わります。それから、サラダロードという名前のケータリングですね。よく見ていくと全部おかずとかサラダだけじゃなくて、何ならデザートまで入っているっていう全ての料理がここに組み込まれているような状態です。
坂東:これで完結しているということですね。
野尻さん:はい。お箸が止まらない、連なるサラダオードブルですね。大体、多くて100人以上の規模までやってます。
坂東:見たことないです。初めて。
野尻さん:基本的には見たことない風景をつくっていくというのを前提としてつくっています。
坂東:ARTなFOODっていうのがこうやって見ると分かりますよね。
野尻さん:はい。料理なんですけど、景色をつくっていくようなイメージです。なので、会場が変われば全く違う見え方になってくるっていうような。そして、これですね。
坂東:ブレスカンパニーですね。会社の中でやったんですけど、メンバーがお子さんも多いから外のレストランだとやりにくいけど、社内だったらできるということでやったんですけど、すごいな、これ。
野尻さん:写真撮りたくなりますよね。
坂東:撮りたくなる。そしてアップしたくなる。今の時代に合っているっていうか。これ2017年ですね、懐かしい。
野尻さん:それからお菓子の方ですね。もともと伝統的な琥珀糖という和菓子になるんですけど、寒天とグラニュー糖とお水を煮詰めて羊羹のような感じで流し込んでそれを切り出して作って何日か乾燥させて完成なんですけど、それを我々は鉱石とか宝石に見立てて作っているっていうのでパッケージも採取箱のようなパッケージを一からオリジナルで作って、世に出してます。硬そうに見えるんですけど、シャリっと柔らかいです。歯は割れません。笑。で、先程のサラダロードをご家庭で気軽に楽しめるように開発したサラダロードシート、耐水性を紙に施していて、サラダをプリントしていて、フルーツとかおかずとかナッツだけ載せるだけでもかわいいみたいな、テーブルで遊べるアイテムです。
坂東:いっぱい乗せなくてもいいんですね。ちょこっとだけでも絵になる。
野尻さん:そうです。拭かなくてもいいです。大皿もいらない。こういうアイテムを作って販売したりしています。で、仲間達と作っているんですけど、仲間達は福岡にいて自分たちで考えてそれぞれの役割を果たして会社自体は気持ちよく過ごせて、かつ回っている状態になっています。
坂東:何人くらいいるんですか?
野尻さん:今でパート、正社員合わせて30人くらいですね。ほとんどが主婦、全員女性です。
坂東:そうですか。
野尻さん:私と言えば地元で経営しながらもこうやって家族と触れ合う時間をきちっと持って運営しながらもいい時間もちゃんと作ってメリハリをつけて楽しく暮らしています。何かを犠牲にすることもなく。ずっと大事にしていることとしてはお菓子とかも作って終わりとかにせずに、ほとんどが全国に発送しているものなので、段ボール箱に入って届いて、私たちもお客さんにお会いしないままお手元に届くのでふわふわの緩衝材すらオリジナルの紙で作って可愛くして、大体この瞬間から写真を撮られて、
坂東:段ボールを開けた瞬間から。
野尻さん:普通この状態撮られないんですけど、うちはここまできっちり詰め込んでいるぞというところをみんなと共有して世に送り出したりしてます。なので、こういうグッズとかを作ったりしていってるのも、世界観を一緒に楽しんでもらえるようにという想いで作って行ったりしていますね。
坂東:世界観が素晴らしいですね。
野尻さん:はい。大事にしてます。で、今オンラインショップでほとんどお客様とのやりとりをしていたんですが、こういって石だったり彩りいいメニューをつくることができるのを活かして、お店づくりの方に着手して、今ちょうどお店をオープンしたばかりなんですけど、あえてこの時代にお店つくるのかとよく思われがちですけど、私たちとしてはこういった場所をつくってシンボルのような存在を作っておきたいなと思って、正直言うとこのカフェで儲けを出そうということは特になくて、ただ教会とか美術館とかそういうような神聖な場所みたいなものを心の中に持っておいてもらって、お菓子やフードを楽しんでもらいたいという狙いがあるので、配置もシンメトリーにしたりして神聖な場所だと思って、お店は先週オープンさせました。
坂東:間もないですね。
野尻さん:ホヤホヤです。
坂東:ここでカフェもあったり、買うこともできるんですか?
野尻さん:できます。直接全種類買えるのはここだけですね。日本全国。
坂東:アトリエっていう言い方されてますね。
野尻さん:そうですね。やっていることは例えば生産管理とか、お菓子も相当な数を出しているので品質管理とかまるで工場みたいなフレーズなんですけど、クリエイティブな場所っていう風に内部のスタッフさんにも位置付けてもらいたいこともあって、アトリエって呼んでます。そんな感じです。
坂東:こういうARTなFOODを扱っている、クリエイティブカンパニーですね。
野尻さん:そうですね。ベンチャー企業って感じですね。常に新しいアイデアがボンボン生まれて形にしていって、1000個くらいのアイデアの中から本当に世に出ていくのは1個とか2個とか。
坂東:なるほどね。野尻さんが基本的にアイデアの源泉になってますよね?
野尻さん:そうですね。徐々にこの環境に慣れてきた子たちが花開いてきて、だんだん自発的に商品開発とかをするようになってきてますね。
坂東:もともとはこういうデザインとかクリエイティブ的な仕事をしていたんですか?
野尻さん:私、OLだったんです。バックグラウンドとしては美術大学を出て、その時はインテリアとか空間デザインとか建築を勉強したんですけど、クリエイティブ畑のデザイン事務所や設計事務所に仲間たちは行ったんですけど、私は制作の場所に馴染めなくてどうにか近いところって行った時に不動産営業の道に行けば建築とか部屋案内したりとか触れられるかもしれないと思って不動産営業に行ったりしてましたね。なので、10年くらいそういうクリエイティブじゃない場所に行って、そこからたぶん今誰よりも作っているので、面白いなって思いますけどね。
坂東:そうですね。そんな野尻さんが会社がある、しかもアトリエができたばっかりの福岡を手放したっていう経緯をお聞きしたいんですけど。何でそうなったかっていうと。
野尻さん:もちろん最初は1人で始めたんですけど、7,8年前とかに個人事業の届けを出して。で、割と早い段階で1人でやるとアイデアは出せるんですけど、色々見た目がとかかわいいねって言ってましたけど、実際のところおいしくないと、もう1回頼もうとかならないだろうなと思って、最初東京から福岡に移住した10年くらい前に飲食店で何年か働いて、それはケータリング事業を後々立ち上げようという夢は持っていたので、さすがに何の経験もないのはなぁと思っていたので、働いていたお店でできた仲間、ずっと料理人でやってきたような仲間を誘って、手伝ってくれみたいな感じで、お互い1人目の子供を産み、育児しながら無理のないようにやっていこうという感じで最初から全速力でいかないと決めてやってたんですけど、1人産んだぐらいではアクセル踏んでしまうんですよね。無理してしまうというか。ちょっと仮眠取ればお弁当作れるだろうとか思って、でも実際仮眠取ってやっても疲れて幸福度は低いみたいな。で、今3人いるんですけど、2人目産んだ時に色々無理だ、無理しても子どもにくるだけだし、何か家族を犠牲にしている感じとか、自分だけじゃなくて。それだったらますます稼働時間は例えば10時から16時までとかって6時間ぐらいで勝負してできることだけをやっていく。もちろん子どもを打ち合わせに連れていくことはできるし、そういう理解のあるクライアントさんの仕事を受けるとか。子どもが熱出しても理解してくれるクライアントさんとか、あとは仲間をどんどん増やしていって、みんなで交代できる状態にしていくとか。最終的に3人目身籠った時点で、これは全部手放そうと思って、もう十月十日後には半年くらいは人の目に触れない状態になることが予測できたから、私という存在ありきだったんですけど、チームとして成立する形を模索しよう、お互いその間にって言って、でそのためにずっと準備して、私が1人でケータリングに行っていた場所も2、3人だったらいけるかな。じゃぁ、やってみよう。こんな失敗があったから改善してみようとか、最終的にはシートを作って一般の人には遊んでもらおうとか、お菓子も全部手で切っているので。
坂東:鉱物お菓子を?
野尻さん:そうなんです。型とか使わずに。振り切った方が喜ばれるかなと思って。
坂東:1個1個作ってるんですね!
野尻さん:そうなんですよ。ちょっと頭がおかしいと思うんですけど。笑。そういううちら変態だねとかって言いながらかわいいね〜、これ。かわいいかわいいって言ってアトリエで作ってるんですけど。この段階じゃまだ世に出しちゃダメだよね、とか言って。世に出したら罪だとか言って、ある一定ライン超えないといかんいかんって言って、仲間がいることで冷静な人もいたり、値段どうするとかも主婦が買いそうな値段だったり、ミュージアムショップで買う値段って違うじゃないですか。でも、私たちはミュージアムショップを目指してるからこの値段、このパッケージを目指していこう。
坂東:お菓子じゃないんですね。
野尻さん:お菓子じゃない、作品って呼んでるんです。そうやって1個1個こだわりを持ってやってますね。
坂東:そういうのも女性中心だから女性的な感性が反映されているのかもしれないですね。もし男性中心だったら1個1個手作りとかならないと思います。
野尻さん:やっぱり型をどうするかとか。
坂東:そうそう。合理的に考える。細部のこだわりが分からない。
野尻さん:ちょっと手芸ちっくなところがあるのかなと。なぜその時間をかけて刺繍をするとか思うかもしれないですけど、作ってる時間と出来上がったものを見た時の達成感が楽しくて力がなくてもできるし。
坂東:腕力がなくても。
野尻さん:そうですね。
坂東:先程の手放すの話に戻るんですけど、いきなり福岡から大阪に転居するのの前に野尻さん自身の出産の1人目、2人目、3人目というプロセスがあったんですね。
野尻さん:ありましたね。
坂東:3人目が2,3年前ですか?
野尻さん:そうですね。2年前に3人目を出産して。
坂東:その代表として自分のクリエイティブチームをやっている時に子どもを産み育てるってことを計画する人もいるんですが、そういう風には考えていなかったんですか?
野尻さん:全然考えてなかったですね。授かった、では。みたいな。
坂東:それユニーク。
野尻さん:そうなんですね。逆に3人目がいなかったらこんなに手放せてなかったのでみなさん子ども産んだ方がいいよとオススメするわけじゃないですけど、過酷なイメージよりは意外と得られるものが多かったなぁと思います。
坂東:それはそれなんですね。ご自身の家庭としての幸せとやり遂げたいこと、事業としてやっていきたいことはどうやって両立させるかって感じなんですか?
野尻さん:どうやって両立というと?
坂東:普通は会社の経営していたらそっちに偏ったり、プライベートを優先させる、女性としての幸せを優先させるとかしそうなもんですが、自然とどっちもやるっていう前提でいるんだなぁっていう。
野尻さん:そうですね。どっちも得たいと思えば得られると思ってるし、偏りたいと思っている人は偏りたいという意志なんじゃないかなぁ。ただそれだけ、ですね。決めたようになるのかなぁっていう。
坂東:シンプル!じゃぁ、3人目が産まれてその時点で現場が手放せる体制ができてきた中で大阪に引っ越すと。これは何でですか?
野尻さん:夫の転勤です。笑。
坂東:おかしい。笑。
野尻さん:最初単身赴任する?っていう口ぶりで言われた瞬間に離れ離れとかないよ、ついていくって言って、即その場でついていくよ〜って言いましたけどね。
坂東:即答ね。
野尻さん:はい。
坂東:ご主人は気を遣って?普通そうよね。
野尻さん:俺だけ行くのかなぁみたいな。
坂東:転勤に社長がついていくと。なかなかない。
野尻さん:意外と内部のリアクションも普通でしたよ。それは家族一緒にいた方がいいよね、みたいな。
坂東:そういう今までのプロセスもあって野尻さんだけじゃなくて他の方も女性が多くて子育てしている方が多いんですかね。
野尻さん:ほとんどそうですね。
坂東:そうなんですね。だから、それは家庭優先だし、家族のことをやりながらお互いに仕事を融通し合うおちう文化ができてるんでしょうね。
野尻さん:そうですね。理解としてもやっぱり経営者って24時間仕事のこと考えていたり寝ている時もアイデアを考えていたり、難しい部分をどうしても担わなきゃいけないところがあるとおもうんですけど、そういうところをみんなが分かってくれていてそのことで自分たちのために犠牲にして欲しくないなっていう気持ちがあるんだと思います。
坂東:なるほど〜。即答だったのが面白いですね。
野尻さん:そうなんですか。
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