ブックレビューでは、みなさんの組織をアップデートしていくのに役立ててもらえるような書籍を紹介していきます。 今回はこの「自然経営」を名著だと絶賛する、石野 慧太さんと共にお届けしていきます。
書籍はこちら 「自然経営 ダイヤモンドメディアが開拓した次世代ティール組織」 武井浩三/天外伺朗 著(内外出版社) https://amzn.to/3kvyYye
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坂東:今日はブックレビューということで、自然経営という本について簡単に紹介していきたいと思います。今日はスペシャルゲストとしていっしーさんこと、石野慧太さんと一緒にお送りしていきたいと思います。
石野:よろしくお願いします。
坂東:いっしーさんと呼ばせてもらいますけども、ちょっと何者か自己紹介してもらっていいですか。
石野:初めまして。石野慧太と申します。今、フリーランスで法人向けに、簡単に言えば組織開発の仕事をしておりしまして、その組織開発の中で仕組みにアプローチするという点においてDXO、坂東さんたちの価値観にすごく共鳴しているので今一緒に活動もさせていただいています。
坂東:一緒にオンラインコミュニティでもやっていて頼りにさせていただいています。で、いっしーさんはこれが名著だと!語るなら俺しかいないと!笑
石野:そういうことにしましょう!笑
坂東:なので、語ってもらおうということで入ってもらってるんですけど、この本が自然経営という本なんですけども、誰が書いているかっていうと天外 郎さんと武井浩三さんの共著なんですよね。天外さんはもともとソニーにいた方で今天外塾っていう経営者向けのセミナーを行っている方ですね。天外塾とかは受けたことあるんですか?
石野:僕は名前は結構知ってますけど受けたことはないです。
坂東:本はかなり読んでるって聞きました。
石野:そうですね。この本にも書かれてますけど、武井さんご自身も今までとは違う経営というものを追求していこうとした時に天外さんが10年前くらいに書かれた本を読んでと言われていたので、結構今いう次世代型経営に関する著書をけっこう書かれている方なので、気になって遠くから本を読みみたいな感じですね。笑。
坂東:昔のソニーが今僕らが言っている進化型組織、ティール組織とかありますけど、そういったものに近かったというようなことを言ってますよね。天外塾というセミナーを行われてるんですけど、その中で武井浩三さんの武井塾という講座があって、この本はその講座の講演録になっています。だから口語でずっと進んでいく感じで分かりやすくいいと思いますけどね。
石野:そうですね。講座の内容の臨場感が伝わってくる内容だと思います。
坂東:で、副題としてダイヤモンドメディアが開拓した次世代ティール組織って書いてあってダイヤモンドメディアっていうのは武井浩三さんが創業した会社なんですけどもそこの会社が12年ほど経営をされていて、非常にユニークな経営スタイルでその会社を事例に挙げながらティール的な経営スタイルとか、自然経営というのは武井さんが標榜されている経営スタイルなんですけども、それについて語っていてティール組織っていう本はかなり10万部くらい売れましたけども、それの実践版がここに書かれているというような感じですかね。
石野:そうですね。
坂東:いっしーさんがこれが面白いっていうのは端的にいうとどこらへんなんですか?
石野:武井さんが言ってると思うんですけども、ティール組織の本に書かれている、3大要素ってあるじゃないですか。あれは特徴なので、結果としてそうなっていくっていう表現を言われていたと思うんですね。で、この本が面白いなと思ったのは、じゃぁ何を整えていけば、そういったティール組織のような特徴になっていくのかっていう、より原因というか、上流というかですね、そういうところを探求して突き詰めて、かつ実践してきてこられたものが書かれているっていうのが僕はけっこう何で何で星人なので、かなり何での上流から考えていらっしゃったというところがすごく本質的で面白いなって思ったところですね。
坂東:確かに。12年も前からずっと自分なりに考えて組織運営を武井さんはやってきたんだけど、それが非常に本質的に会社とは何か?とか、法人って何だろう?とか、株式って何?みたいなことから組織づくりも会社の経営だけじゃなくて教育とかまちづくりとか都市づくりとか農業とか色んなところからインスパイヤーしながらどういうあり方がいいのだろう?と考えているのが、本の中では色んな展開がでてきていて、思いつきとか閃きじゃなくて、めちゃくちゃ深く考えているんだなみたいなことは分かりますね。
石野:ここまで考える!?っていう風に読んだ方は、考えたことない!って思う方が多いと思いますね。
坂東:だからパッと見て現象で現れるものはかなり思い切った形で例えば、ダイヤモンドメディアっていう会社では上司や部下が一切ないとか、働く場所や時間が自由とか、会社のお金の情報も全部オープンで給料額もみんなオープンだったり、理念だったりビジョンだったり経営計画もないし、社長も役員も選挙で決めるみたいな。それだけ聞くとなんてとんでもない会社なんだろうみたいな。丸投げしてるっていうか。
石野:何でもあり、自由奔放みたいな感じに思っちゃいますね。
坂東:管理しない経営みたいな言い方もするけど、でもそれが放置してるんじゃなくて考えに考えぬいた末にそういう風になっているというところが垣間見えるのが説得力が出ますよね。
石野:今言っていただいた会社の特徴って2018年の夏に天外塾でされていたことを扱われていて、その当時の会社の状況についてなんですけども、どういう紆余曲折を経てそうなったのかっていうことが書かれていたりとか、あとは管理がない、自由っていうと会社員の方にとっては理想郷に思われがちな感覚あるじゃないですか。でも、誰にとっても理想郷とかっていう書かれ方が一切ないじゃないですか。要は、合わない人は去っていくという、そんな言い方ないんじゃないのっていうくらいハッキリしているというか、人によってはポジティブだと思えないような去るもの追わずのところも正直に載ってるところがリアルだなぁってのは思いますよね。
坂東:確かに。リアルな体験談が語られていて、定着率も高いわけじゃないし、どんどん人が入れ替わっていくし、だけど、離職が悪いっていう概念がないみたいなね。あとはすごい悩みながら試行錯誤しながらやり続けているっていうことは再三出てきているのでスパッとこうだ!みたいなことでやってるわけじゃ全然ないっていう感じですよね。
石野:従来の本ですと静的な部分、決まった切り口からしか浮かび上がらせられないからもどかしいって書かれてましたからね。簡単に切り取れるものじゃない。
坂東:経営っていうのはこういうものだっていうのではなく時間軸の中で流れていく、常に変化していくもので本だと一瞬を切り取っちゃうけど、それが正解みたいな、理念とか決めない方がいいみたいな。社長は選挙で決めた方がいい。そういうことじゃないということが、この本では分かるかもしれないですね。それで、ティール組織という本と連動されて書かれていて、ティール組織という本は何の本だって言えばいいですかね?
石野:すごいフリをしますね!笑。僕が聞きたいですよ、日本中の進化型組織を調べてこられた坂東さんの思うものを。僕は僕なりにはこういう本かなと思いますけど、見てきたものの重みが違いますからね。
坂東:いやいや、重みとか言われるとハードルが上がるじゃないですか。僕もティール組織の専門家じゃないので、何とも言えないですけど、組織論の本ですね。600Pぐらいあるんですが、なぜか10万部くらい売れたというのは何か理由があると思うんですけど、1つ大きなトピックなのは組織の進化を語っているということで、組織が歴史と共に進化していって、今ティール組織っていう進化型の組織の形が今までなかったような新しい形の組織がぽつぽつと世界中で生まれようとしているのが分かりやすく書かれているのがティールとか、オレンジとか、アンバーとか色分けにしながら組織の進化を語っているというのは今までにないユニークなところだったのではないかという風に僕的には思ってるんですよ。その中で、さっきいっしーさんも言われたようにティール型の組織というのは世界中にぽつぽつと出ていて、それは結果的に同じような特徴を3つ持っている。目指していた訳じゃないんだけどということで、1つが存在目的を持っているとか、自主経営・セルフマネジメントが機能しているとか、3つ目が全体性・ホールネスがあるっていうことなんだけど、それが大事だって書いてあるんですけどよく分からないですよね。正確にいうとセルフマネジメントはよく分かるんだけど、進化する目的とか全体性って言われても分かりづらくて、つまりそれは組織の哲学とか概念、パラダイムについて書かれている本なので考え方・あり方よね。これからの組織っていうのはこういうあり方・考え方の組織が増えてくるよみたいなことを示唆している。で、なるほど〜!みたいな感じで、何となくすごく衝撃を受けるんだけど、それでどうしたらいいの?という時にそれを前々からそういったパラダイムで実際に経営をしている会社がここにあったと。つまり、武井浩三さんのダイヤモンドメディアだということでダイヤモンドメディアに置き換えてティール的なパラダイムっていうのはうちの会社ではこういう風に整理してやってますよというのが語られてるんで、いっしーさんはこれセットで読んだらいいんじゃないかって言ってたけど、確かにそれはいい考えだなと思いましたね。で、存在目的・自主経営・全体性っていうのがティール組織の中で大事な要素だと書かれてるんだけど、それを武井さんなりに自分の会社で実践している時のポイントみたいなのがあったじゃないですか。そこについて簡単に触れていければいいと思うんですけど、何でしたっけね?
石野:ポイントって、インフラの3要素ですかね。このインフラの3要素を整えていくことによってセルフマネジメントが生まれたり全体性が生まれたり、結果として組織の方向性の存在目的が生まれてくるんじゃないかと武井さんが捉えているところの話ですかね。
坂東:そこの話ですね。要するに武井さんが自然経営っていう風に言ってるのは武井さんなりにはそういうような言い方をしてるんだけど、自然経営って何か?っていうと、しぜんじゃなくてJINENって読むんですけど、自然の摂理にのっとった経営スタイルとか生命体のように変化するという言い方をしてるじゃないですか。そういった組織のことだよと。そういうことを意識して経営をしてきたよっていうことを言ってるんですけど、分かるよな分からないような。
石野:武井さんのすごいところって生命体的な組織だったりとかっていう自然の摂理にのっとったっていうのはすごくいいなっていう風に直感的に感じるじゃないですか。
坂東:直感的にね。そうよね。
石野:でも、それを直感的に、感覚的にいいなっていうだけじゃなくて、じゃぁそれをそうたらしめている要素ってなんなのか?っていうのを突き詰められて実証実験されて、かつ、まずこの3つみたいに磨き上げてるところがすごいなと思ってて、そこが武井さんと一緒に自然経営研究会されている山田さんも含めた方達の産物だと思うんですけど、作品というか、それこそ自然の摂理で生まれてきたコンセプトが自然経営みたいな。
坂東:生命体的にっていうのがこの本の中でも人体に例えてるのが分かりやすかったなと思っていて、今までの僕らが知っているようなヒエラルキー型とかピラミッド型の組織を人の体に例えると、脳みそがトップで体に指示命令を出している。だから脳みそが偉い。けど、本当は人体っていうのは脳みそだけが指示命令出してるわけじゃなくて、最近の人体学の研究だと臓器同士がお互いに指示をしあったり臓器同士でやりとりしてたり、血液とか骨とか筋肉とかもそれぞれ色んなメッセージを発信したりしていると。お互いに複雑に連携し合っているんだ。で、体を成り立たせているんだ。だから何が偉いというのを一概に言えない。で、それぞれの臓器とか体の部分が全部重なって人間として成り立っているということで、組織もそのようにできたらいいんじゃないかと、つまり社長とか経営陣がすべての指示をしてコントロールしてっていうことじゃなくて、組織に所属している人たちがそれぞれお互いに自由に連携し合って、相乗効果を生みながらお互いに意思決定をチーム単位や個人単位でし合いながらしなやかに柔軟性を持って事業に向き合っていくっていうことができるといいんじゃないかと。なぜかというと、今は非常に複雑化した時代なので。
石野:VUCAとかバズワードっぽいのがありますよね。
坂東:そう。だからこれって決めた事業がそのままよっしゃ!って行ければいい時代じゃなくて、時代の変化も激しいし、競合もどんどんでてくるし、それを子育てに例えたのが面白いなと思ってて、子どもって予測もできないし、計画もできないし、それ通りに動いてくれないし、だけどなぜか組織だと会社が計画を立てたり予測したことはちゃんとその通りみんなができるっていう風に僕らって何となく思い込んでるんだけど、そういう時代でもないよねと。人間ってそんなに単純なものでもないよねと。だから、人間とかチームとかをコントロールするんじゃなくて、ハンドリングするっていうか。予測できない複雑なものだっていう前提で、それをどうやって成り立たせていくのかっていうことが自然経営っていうところの1つの拠り所なんだというような、僕はそういう理解をしていて、それはなかなか素敵だなと思ったんですよね。
石野:複雑系のマネジメントですとか、自己組織化っていう表現で言われていて、その観点から先ほどインフラの3要素っていうのを見出されたって書かれていたので、情報の透明性のことですとか、力の流動性とか、感情と境界の開放性、その3つを整えていけば、っていうことを言われていて、このへんが自然経営っていうコンセプト自体がもともと福岡正伸さんっていう自然農法を提唱された方にインスパイアーされたって武井さんも本に書かれていたので、それ自体が耕さない肥料をあげない、雑草抜かない、農薬をまかないというある種何もしないっていうところからきているので、インフラ整えるっていうのは組織の土壌を整えるという置き換えをされているような気がしていますね。
坂東:それを自己組織化とか複雑系マネジメントというと言葉が分かりにくいんですよ。笑。だから、すごい敷居が高くなっちゃうんだなと思ってね。
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